「ところで」、とダンブルドアは言った。
「荷物はそれだけ?」
ダンブルドアの視線はメアリーポピンズの膝上の色鮮やかなカバンに注がれた。
「そう。」メアリーポピンズは自慢気に言った。
「じゅうたんで作ったのよ。」
ダンブルドアはとたんに不安に感じた。
彼女がそんなカバンを持ち歩くこと自体、なんとなく政治的に正しくなさそうだし、第一、膝に乗るくらいのサイズのカバンにローブや着替え、鍋一式に一年生の授業に使う教科書全部が入りきるものなのだろうか。
同時にダンブルドアは自分のスーツケースを見つめた。自分の荷物は彼女の3倍近くある。
一般的に女性の荷物のほうが着替えなどで容量が大きくなるはずなのに、反対に自分の荷物のほうが多くコンパートメントを占領してしまっている。
この状況にダンブルドアは、少し、決まりが悪くなった。
すでに汽車は発車し、メアリーは窓の景色に興味をなくしていた。
会話の少なくなったコンパートメントの中で、ダンブルドアは、必死に言葉を探していた。
彼はオランダ人形のような容姿の美しい少女に惹かれていた。
むしろ、このコンパートメントに入った理由は、ホームで窓を見つめるポピンズの姿を見たというのが大きい。
「そ、そういえば、きみはどこの寮に行きたいんだい?」とダンブルドアはおずおずと聞いた。
「そうね」メアリーポピンズは思案しながら言った。「うーん、どこの寮にも良さがあって、いいと思うのだけれど、血筋として、親戚にスリザリンの人が多いから、自分の意思に関わらず、スリザリンに決まっちゃうと思うわ。」
「スリザリンだって!」ダンブルドアは、興奮して、メアリーポピンズを見つめた。
「スリザリンのやつらなんか、みんな最悪だよ。それより勇気あるものはみんな...」
ダンブルドアは言葉を続けられなくなった。
メアリーポピンズは、恐ろしい目つきでダンブルドアをにらんでいた。
「それ以上、私の身内のものを侮辱してみなさい。」
不穏な空気がコンパートメントを渦巻き、ダンブルドアは文字通り息をすることができなくなった。しだいに頭の血管が浮き出るようになり、ダンブルドアは苦しそうにうめいた。
「あの、ここ空いてるかしら」その時、赤毛の女の子がコンパートメントに入ってきたのがダンブルドアを救った。
「あら、どうぞお入りなさいな」
メアリーポピンズの表情が明るくなったとたん、ダンブルドアの息がつげるようになった。息も絶えだえの彼の表情は蒼白になっていて、ひざがガクガクとふるえていた。