「わたしはネリー・ノアというの。」とその赤毛の少女は名乗った。
メアリーはまゆを上げた。「すると直系の?」
聖書の時代から、ノアの一族は春を呼びこむ特別の儀式を担当してきた。その儀式は人類を滅ぼす大洪水のあと鳩が春をもたらしたことにちなむとされている。
もちろん、もとをただせば、人類はみな、ノアの残した子孫ということになるのだが、直系の一族が存在していることをメアリーは知っていた。
「まぁね。」その少女はきまり悪そうに笑った。
「あまり、人にそのことを知られたくないから、普段は
「ノアの直系の話は魔法界では有名な話だからね」とメアリーは同意した。
「ところで、その子は大丈夫なの」ネリーは心配そうに顔面蒼白のダンブルドアを見た。
とたん、メアリーの表情は硬くなった。やがて、少し考えたメアリーは
「私としたことが、少しかっとなってしまって魔法の制御ができなくなってしまったようです。謝罪を受け入れてくれますか、ダンブルドア。」と優しい声で言った。
ぶんぶんとダンブルドアは首を前後に動かした。
「それでも、スリザリンがどうとか、グリフィンドールがどうとかで人を判断するのはそもそも間違っていると思いますよ。私のおじも、いとこもみんなスリザリン生でしたが、みんな尊敬できる、りっぱな魔法使いになりました。なかには月に移り住んで、大事な任務を行っている方もいます。」
「あなた、もしかして、メアリー・ポピンズ?」ネリー・ルビナがびっくりして言った。
「ああ、失礼しました。まだ名乗ってなかったですね。そうです。私がメアリー・ポピンズです。」
「コリーのおばさんが言ってたわ。南極ではあなたずいぶん無茶したらしいじゃない。」
「コリーのおばさんを知ってるの?」メアリーは驚いた。魔法界でパン屋を経営しているコリーのおばさんはメアリーのいとこのいとこという関係にあたり、昔から仲良くしていた。話してみれば、ネリー・ルビナとは共通の知り合いが多いことがわかり、ホグワーツに到着する頃には2人はすっかり意気投合する仲になっていた。
汽車がとまったところには「森番」と名乗る痩身の男が立っていて、機敏な動きで、新入生を誘導した。「森に棲む魔法生物を管理する仕事」だと本人は語っていたが、その痩せている体で魑魅魍魎の危険な生物に対応できるのだろうか、とメアリーは一抹の不安を感じた。