神機使い達は任務に出ればいつ死んでも可笑しくないほどの環境で戦っている。
そのため、特殊な装甲で囲まれて神機を扱っても周りに被害が出ないように設計されたトレーニングルームが彼らの死亡率を少しでも下げようと用意されている
複数あるトレーニングルームの一室の中でバスターブレイドと呼ばれる大きな大剣を十代前半のまだ子供と呼べる少年が軽々と男めがけて振り下ろす。
しかし男はニヤリと笑うと流れるように素早く展開した装甲でその刃を受け止めると、その斬撃を受け流しながら体をくるりと回転させ勢いよく手に持った大剣を振りぬいた。
それを間一髪ステップで避けると少年はひとまず距離をとる。
切っては防ぎ、避け、反撃することを何度も繰り返す。
それ何度も繰り返した男が構えを解いて大剣を軽々と片腕で担ぎ上げると少年もそれにしたがって構えを解く。
「強くなったなぁソーマ」
「・・・・・・・」
ニコリと笑って少年をほめる男が時間を確認するとすでに時計は十二時を過ぎていた。
「そういやそろそろ昼か。一緒に飯を食いにいくか?」
「・・・・・・いいんですか?」
「大丈夫だって。こんな事じゃ上も怒らねえだろ。それにリンドウもいねえし俺一人の飯は不味いからな」
男は手にしていた大剣と少年の物を元の場所に戻すと、少年を連れ食堂に向かう。
物資不足の時代、特にひどい食糧事情の極東支部で配給される食事はジャイアントトウモロコシを焼いたものやレーションだけなのだが不思議と男は旨そうに食べていく。
少年もいつもと変わらない食料をなんの感想もなく腹に収めていると近くの席に座って同じように食事をとっている神機使い達の会話が聞こえてきた。
「またあの餓鬼と一緒に出撃した奴が死んだらしいぞ」
「またかよ・・・・・。これで何度目だ?」
「全員アナグラでもかなりの実力者だったし、ホントにアイツは呪われてんじゃねえか?」
「俺は絶対アイツとはミッションに行きたくねえな。殺されちゃたまらん」
「・・・・・・・・」
少年は自分のことを話しているのだと気が付いてもなんの反応も示さなかった。
彼らが言っていることは事実であって、少年とミッションに出かけたメンバーは殆どが殉職している。
少年はある事情により子供でありながら他の神機使いよりも性能面で一段階以上上をいっている。
常時人が足らないこの極東支部で、他の神機使いよりも戦力になりうる少年は当然難易度の高い任務に就く。
そうすれば必然的に少年とミッションに赴く神機使い達の死亡率は高くなるし、不幸なことに彼らよりも強い少年は過酷なミッションの中、一人生き残ってしまうのだった。
「悪かったな。嫌な思いをさせた」
「別に、俺は大丈夫です」
「そっか。じゃあまたな」
「・・・・・・・・・オルディンさん」
「どうした?」
男は自分の部屋と化している地下の牢獄に足を向けた時、少年に呼びかけられて不思議そうな表情をして足を止める。
「アンタはあんなところに閉じ込められて、自分の力を恨んだりしないんですか?」
「いや。まったく恨んでない」
少年の目をじっと見つめ返してはっきりと答える。
男もまたその特異な事情から並外れた力を持ち、他人に疎まれる存在だった。
そんな男はきっぱりと迷いなく言い切ったことにめったに変わらない少年の表情がピクリと動いた。
「どうして、そんなはっきりと言えるんですか」
「俺を殺さずに閉じ込めているだけってことはさ、本当に大変な時にはみんなが俺を頼りにしているってことだろ?それに助けた相手から感謝されたりするのは純粋にうれしいしな」
「そうですか」
男の答えに納得したのかは分からないが少年は男と別れ、自分の部屋に帰っていく。
「で、隠れて盗み聞きをしている眼鏡のおっさんの用件はなんだ?んで、あの話は上に通してくれたか?ソーマにはああ言ったけどはやく牢獄から出たいのも確かだからな」
「ソーマ君が悩んでいた様だからどうしようかと思っていたんだが、心配は杞憂だったようだね。それと君の要求はもう少し待っていてくれないかい?ようやく落としどころが見つかったからね」
「ま、楽しみにしておくよ。少しでもアラガミの被害者を減らすのが俺の一番の望みだからな」
男は背中越しに眼鏡をかけた男に手を振ると地下に続く階段を下りていく。
男が階段を下りて行ってからも数分その階段を悲しそうに眺めていた眼鏡の男は踵を返して自らの戦場へ向かう。
「彼が最前線で戦えれば殉職数もかなり減るんだけどね・・・・・。急がなければ・・・・」
眼鏡をかけた男は先ほどとは変わり厳しい表情をして自分の研究室に戻っていった。