レベルが高くても勝てるわけじゃない   作:バッドフラッグ

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22話 棺桶と鎮魂歌(3)

「ユナちゃぁああああああん!」

 

 野武士面の男が隣で叫ぶ。

 今日はユナのライブコンサートだ。彼女のファンは着々と増えてきていて、今回はなんと7層の広場がプレイヤーでいっぱいだ。彼女の歌声が正当に評価されればこのくらい当然。いいや、まだまだ足りないくらいだろう。本当なら会場はチケットの購入式で、争奪戦が始まるくらいが正しい評価だ。

 ファンが増えたことは私も嬉しい。しかしこういったミーハーなファンが加わるのはいかがなものだろうか。

 こいつはちゃんとユナの歌を聞いているのか? 彼女の容姿に惹かれてやってきてるだけじゃないのか? この男――風林火山のギルドマスター、クラインならあり得ると私は思っている。

 

「うるさいっす」

 

 無性に腹が立って思わず手が出た。肘でその脇腹をど突いた。彼は今、防具の胴鎧を着けていないため、羽織りと着物にしか阻まれずアバターまで衝撃がよく通る。

 

「うぐっ!? なにすんだテメェ」

「その汚らしい声でユナのライブを汚すんじゃねえっすよ」

「んだと!」

「おい、始まるぞ」

 

 近くにいたプレイヤーの呟きで私たちはいがみ合いを止めた。

 黄金色の光でライトアップされた舞台にユナが登る。ここ7層は賭け事がテーマのゾーンで、煌びやかな街並みが特徴だ。

 今回の会場に決まった巨大カジノ店前にある広場は、スペースもさることながら野外コンサートホールばりの美しい演出を感じることのできるとっておきの場所だった。

 なぜ今までここが使われなかったからというと、ユナはそんな派手な場所でライブやって人が来なければ恥ずかしいと躊躇っていたからだ。けれどこれだけの人数が集まれば彼女の不安も払拭されたことだろう。彼女は「でっかいところで歌いたい」と常々言ってたので喜んでもらえているはずだ。

 

「ユナァアアアアアアアアアアア!!」

 

 張り裂けんばかりに声を上げ、私は両手に持った紫色のサイリウム――によく似た発光する鉱石アイテムを力の限り振った。

 

「……お前も十分五月蠅いっての」

「静かにしろ」

「――はいっす」

 

 いつのまにか隣に立っていたノーチラスの声で我に返る。あー。テンションが上がり過ぎてる。自重しなければ……。自重出来るか? いいや無理だ。限界だ! イヤッホォオオオ!!

 

「あはは……。盛り上がってるわね」

 

 私に気がついてユナが小さく手を振ってくれた!

 

「皆! 今日はきてくれてありがとう! 色々お礼とか言いたいけど、私は歌手だから。この気持ちを歌に込めて届けるわ。それじゃあ行くわよ! 最初の曲――」

 

 演奏はユナのリュートではない。あの演奏も私は好きという言葉では足りないくらい好きなのだが、今日は有志で集まったバンドメンバーによる生演奏である。1万人――現在は6千人くらいだったか――もいるのだから探してみれば楽器経験者はそれなりにいた。ユナのライブに感銘を受けた彼らはバンドを結成。高価な楽器アイテムはすべて寄付金で購入された。私も10万コルくらい投資している。

 設備もそろえば鬼に金棒。竜に翼を得たる如し。あまりの迫力に卒倒しかけたことは数知れない。私が倒れていないのは彼女の歌声のおかげだ。彼女の歌が続く限り私は絶対に倒れない。

 

 ライブは自然の摂理ではあるが大盛況のうちに終わった。

 金を取れば億万長者待ったなしだが、ユナはそういうことはしたくないとのことで、この場は全て無料で執り行われている。

 ただ金にガメツイ商人ギルドなんかが、イベントアイテム――このサイリウムものどきや、録音クリスタルをここぞとばかりに売りつけて儲けていた。流石に録音クリスタルはユナたちに収益の何割かを払っているようだが、なんとも言い難い胸のわだかまりを感じずにはいられない。なので私の持っている物はALFの倉庫から自腹で購入したものだ。

 

「かぁーっ! やっぱしユナのライブは最高だな」

「ちゃんと聞いてたんすね」

「なぁ。お前俺にちょっと冷たくない?」

「それは……。まぁ、ごめんっす」

「ま、別にいいけどよ」

 

 夜も更けてきて、集まった観客はまばらに帰宅を始めていた。

 私がだらだらとその場に残っているのにはもちろん理由があった。クラインは勝手に私に付き合って残っているだけだろう。さっさと帰ってほしい。

 私がどうやってクラインを追い返すか考えている間に残念ながら、いや嬉しいことだがタイムリミットはやってきてしまった。

 

「やっほー。今日も来てくれてありがとね」

「今日も最高でしたっすよ」

 

 小声で話しかけてきたのはフードを被った女性プレイヤー。

 顔を隠しているが、中を見れば誰かなどすぐにわかる。そうでなくともここにいる連中なら声を聴いただけでわかるはずだ。

 さきほどまでステージで歌っていたユナが、そこにいた。

 なぜなら彼女のマネージャー、ノーチラスがここにいるからだ。彼の側で待っていればユナに会えるという作戦はここのところ成功し続けている。

 

「なっ!? ユ――」

「ふんっ!」

 

 クラインの口に、彼の持っていたサイリウムもどきを奪い取り高速で突き入れた。

 虚を突いた完璧な技。その軌道はまさに細剣基本ソードスキル『リニアー』に匹敵するだろう。

 彼は顎が外れたのではと思えるほど大口を開けて苦しんでいる。しかし痛いはずがない。一定以上の痛覚がカットされるのがソードアートオンラインの仕様。園内ではダメージが入らないため危険もない。

 

「大声を出すな。それからお前もあまり騒ぐな」

「はーいっす」

 

 ノーチラスが額を抑えてながら注意を促した。最近は気苦労が絶えないようで、彼の眉間には常に皺が寄っている。

 

「お前、ユナちゃんと知り合いだったのかよ」

「そうっすよ」

「教えてくれればいいのによぉ……」

 

 誰が教えるものか。

 

「始めまして。いつも最高の歌を聞かせてもらってます。俺の名はクライン、23歳独身。ギルド風林火山のマスターやってます。よかったら今度一緒に食事なんていかが――イタタタタタッ!?」

 

 私とノーチラスのダブルアタックで、クラインの腕をあらぬ方向に曲げたり、鳩尾に拳を叩き込んだりした。

 

「い、いつもありがとう……」

「相手にしちゃ駄目っすよ」

「そうだぞ。……いくらファンでもそういうのは止めてもらいましょうか」

「わかったわかった。ギブギブッ!」

 

 袋叩きにされてたクラインが降参したところでようやく手を離す。解放されたクラインはやれやれ、と言って和服の襟を正した。

 この男、黙っていれば問題ないのだが口を開けば口説き文句ばかりが飛び出てくる。よく結城さんにちょっかいをかけては冷たくあしらわれていた姿を私は何度も目撃していた。

 

「そうだ、エリちゃんは今度の日曜日暇かな?」

「暇っすよ」

 

 予定は確認していないが、今暇になった。

 

「お前も……。いや、もういい」

「どこか遊びに行くんすか?」

「うーん。遊びに行くわけじゃないんだけど、フィールドに出ようかなって。でもエ――ノーチラスが1人じゃ危ないって言うからさ。よかったら一緒に来ない?」

「もちろんいいっすけど……。ノーチラスは来れないんすか?」

「いや。僕も行くけど……。その、上層の方だと不安があってね……」

「ちなみに何層を予定してるんすか?」

「57層」

「えぇっ!? 57層つったらバリバリの最前線じゃねえか」

 

 平然とユナは言うが、クラインの驚きも無理はない。

 現在の最前線は58層。それもフロアボスは2日前に攻略されたばかり。

 つまり57層といえばまだ未踏破領域の残る超危険地帯だ。私の部下だってその辺りに近づくのは2人くらいしかいない。

 

「エリちゃん、腕は立つんだよね?」

「そりゃ自信はあるっすけど……」

 

 あまり言いたくはないが無理して向かうような場所ではないし、足手まといを連れて安全を保証できるかというと無理だと言わざるを得ない。

 攻略組だって十分なマージンと高度な連携を可能にしたパーティーでようやく挑むような場所なのだ。素人には斬り合いをさせるだけでも怖い。

 

「安心してくれ……。ユナはかなり腕が良い」

「ノーチラスが言うんなら間違いないんだろうすけど」

 

 ノーチラスはKoBのメンバーだ。2軍落ちしていて、最前線での戦闘経験はないと言っていたがそれでも一流とそうでないプレイヤーの差くらい熟知しているはずだ。そもそもユナに過保護な彼が贔屓目で言うはずもないというのが私の見解だった。

 

「なんだったら俺もついて行きましょうか? こう見えて、俺も攻略組の一員なんですぜ」

 

 そう。このクラインという男、実は()()()の実力者だ。

 攻略組の中でもトップクラスのプレイヤーだというのだから侮れるわけがない。彼の指揮するギルドは1パーティー分の人数しかいない小ギルドであるが連携は悪くない。クラインの指揮能力や状況判断があれば攻略組として申し分ないだろう。初期メンバーから欠員が1人も出ていないのも驚愕に値する。それを除いてもまだクラインの実力を評価するには足りない。彼は個人技能でも強豪プレイヤーだ。DDAのギルマスにデュエルで勝利を収めたという噂がクリスマス以降広がっており、DDAも現在までそれを否定していない。彼がいて負けるということは、ヒースクリフがいなければ勝てないのと同義だ。

 気は進まないが、彼を誘うメリットは果てしなく大きい。

 

「いいよ。これが初めてってわけじゃないし。新しい階層の攻略も大変でしょ?」

「そうですか……。まあ友達同士仲良くやりたいって言うなら無理にとは言わないですけどね。でもなにかあったら連絡してください! 地の果てからでも助けに行きますよ」

「ありがとう。クラインさんも頑張ってね」

「はいっ!」

 

 ちゃっかりクラインはユナとフレンド登録を成功させていた。

 意外とやり手じゃないか。許さん。

 

「断ってよかったんすか? これでも本当に強い人なんすけど……」

「危ないと思ったらお前の方でダンジョンに入る前に止めてくれ。最初はユナもフィールドをうろついて様子見するだろう」

 

 階層は町や村、主街区といった圏内。フィールド、ダンジョン、迷宮区といった圏外で構成されている。

 圏外の中でどの層も共通してフィールド――特に主街区付近は強力なエネミーは出現しないようになっている。57層もそのはずだ。

 そこで実力を確認してから考えても遅くは……ないだろう。たぶん。

 一応部下をすぐ応援に駆け付けられるよう待機させておくか。それでも来られる人数が極端に少ないため安心はできないのだが……。

 

「わかったっす。それじゃどこで待ち合わせにするっすか?」

 

 それから少し確認作業をして、私たちは解散した。

 

 

▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 日曜日、ユナとノーチラスの2人とは57層の主街区『マーテン』で合流した。

 レンガ造りの味わいある街並みには、攻略組の一団や新しい層を見に来た見物人、アイテムを買い付けに来た商人と思われるプレイヤーで賑わっていた。

 私たちは朝食がてら知らないNPCレストランで未知の料理を頼んだ。私の頼んだ煮込み料理は味が薄く微妙であったがバフに関してはガード性能上昇がかかるため悪くない。――のだが、料理は一品丸々食べなければ効果を発揮しない。途中私はユナの申し出を喜んで承諾してしまい食べ比べをしたのでバフを受けるにはもう一度これを食べなければならなかった。

 正直効果値も高くないだろうし、ALFのキッチンでも人気のデザート系アイテムで口直しがてら高い防御上昇バフをかけた。当然3人分用意してある。

 

「確認っすけど、2人の武器はどんなのっすか?」

 

 ノーチラスが片手直剣と格闘を組み合わせたスタイル。

 ユナは細剣と楽器を使い分けるスタイルだということは聞いている。

 ちなみに楽器は殴るのではなく演奏するものだ。ユナは『演奏スキル』というエクストラスキルを習得しているらしく、一定時間演奏することでパーティーにバフをかけられるのだとか。ただし演奏中は両手が塞がり、ヘイト上昇効果があるとのこと。簡単なノックバックで演奏は停止させられるが、転移結晶などにみられる行動不能状態にまではならないため回避行動は可能らしい。

 

 2人の武器はそれぞれ標準的な形状。

 ノーチラスはSTRに比重が傾いているようで、武器防御に向いた重く短い剣。

 ユナはAGIに比重を置いたスピードタイプ。細剣使いには珍しい、刺突特化ではなく斬撃属性にも攻撃力を割り振った剣だということを、私は形状から看破した。

 ともあれ私は汎用型PvE装備として、AGIの上昇するアクセサリーと中盾に長剣のスタイルを選択。多数のエネミーとの戦闘に強く、大型エネミーと遭遇しないこの近辺では一番の組み合わせで、これなら2人の苦手な部分も丁度補える。

 

 57層のテーマはアンデッド系。

 フィールドには多数のゾンビ系エネミーが徘徊している。小型タイプのゾンビは出現数の多さが厄介だが個々の動きは遅い。対処手段は高火力で集まる前に倒すか、タンクが集めて範囲攻撃で薙ぎ払う、だ。

 今回は前者で始めて、駄目そうなら後者に移行ということに決めた。決めたのだが……。

 

「ハァァアアアア!」

 

 ノーチラスがゾンビを踏み台に三角跳びをし、勢いのまま奥のゾンビに斬りかかる。土煙を上げて地面を滑ると反対に飛び跳ねゾンビが振り向く間もなく背後から一突き。体術スキルによるタックルを駆使して刺さった剣を抜きながら追撃を両立。倒れたゾンビの腕を踏みつけ反撃を封じつつ起き上がれないようにすると、滅多切りにして撃破した。

 まるで重力や慣性を無視したようなアクロバティックな動きには私も多少覚えがある。ソードスキルによる物理エンジンの上書きだ。しかし最初の三角跳びは純粋なバランス感覚によるものだ。これで2軍とは現在の攻略組はどれだけ強いのだろうか。

 

 そしてユナもユナでずば抜けていた。

 彼女は姿勢を低くして突撃。ゾンビがソードスキルによって突き出した鍬を潜り抜け、伸ばす腕に合わせて刃を突き立てた。ユナの突撃速度と体重、それにゾンビのソードスキルによって生まれた腕の速度やゾンビ自身の体重までが加わり、肩から腕が斬り落とされる。さらにそこからもつれた姿勢を戻そうとするゾンビに合わせて太ももに剣を突き刺すと体勢が崩れて糸の切れた人形のようにゾンビが倒れる。動こうとする部位に先んじて攻撃することで行動を完全に封じている。

 大型エネミーであれば相手の動きや重量を利用した攻撃というのは私だってやる。だがこのサイズともなれば難しい。できないとは言わないが面倒だ。それなら攻撃力で押し切る選択肢を取る。しかしユナは敵の数が増えようとこの動きを繰り返した。つまり彼女にとっては苦も無くできる程度の技術ということなのだろう。

 

 私の出番は回ってこない。アタッカーだけで押し通せるのだから当然だ。弱すぎるエネミーを相手にするならタンクは荷物にしかならない。

 AGI特化、軽装に変えて私もアタッカーの真似事を始めた。もちろんゾンビ数匹に後れを取るようなことはないが……。なんだか負けた気分だ。今日は私のちょっといいところを見せてやろうと思ったのに。

 

「こんな上層に来る理由がわかったっすよ……」

 

 ユナにとって上層での戦闘が、一般プレイヤーにとっての中層のバランスなのだろう。

 

「え、もしかしてフロアボス戦にも参加してるっすか?」

「今のところはないらしいけど……」

 

 ユナはちゃんとしたパーティーさえ組めば、すでに攻略組としてはやっていける強さだ。ノーチラスは言葉を濁すが、彼とてそれは当然理解している。

 

「ユナはどうしたいんすかね」

「私?」

 

 どうやら剣を振り回しながらでもこちらの会話はちゃんと聞こえていたようだ。

 狩っていたゾンビに止めを刺すと、ユナは血糊を払うように剣を左右に振って腰の鞘に納める。

 

「ギルド間の勢力争いみたいなのに加わりたくないから、しばらくはいいかな……。ギルドに入ったら嫌でもそういうことになるでしょ? 歌にそういうのを持ち込むのは好きじゃないのよね。そりゃあ攻略組には悪いと思ってるけどさ。だから攻略が行き詰まるまではこのままでいようかなって」

「そうだったんすね」

 

 ノーチラスはKoBなのにユナはギルドに所属していないのが少々腑に落ちなかったが、なるほど納得だ。

 かつての結城さんを思い出すが、彼女は結局ギルドに入ってサブマスターまでやっているわけだし。ユナはそれとは別だ。そもそも攻略組に入ることは義務じゃない。

 

「さてと。私とエーくんの実力は見てもらえたと思うけど、ダンジョンまで行って大丈夫かな?」

 

 これだけの実力を見せられて断れるわけがない。

 私はユナの提案を了承したが、ノーチラスだけはなにやら不安を募らせているようだった。

 

 

▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 向かったのはこの階層にある入り江で、元は海と繋がっていたらしい湖は外周まで続いている。ここに停泊している幽霊船こそが私たちの挑むダンジョンのボスエリアだ。

 道中がダンジョンの役割を果たしており、出現するゾンビは海賊の格好をした動きが機敏なタイプに変わる。中にはゾンビ鴉やゾンビ犬まで出現した。やっかいなのは指揮官タイプのゾンビで、これがいるとゾンビは連携するようになり、各種ステータスも上昇する。ヘイトも無視するようで戦場のコントロールが一段と難しくなった。

 このエネミーのギミックが完全なヘイト無視ではなく、指揮官に与えたヘイト依存だということは、ユナの演奏スキルによるヘイト増加ですぐに判明した。

 とはいえ私がヘイトを稼ごうにも綺麗に隊列を組まれると突破は難しく、2人の機動力に依存して指揮官から倒す戦法が最も安定したため、その形で落ち着いた。

 

「ここまでいいところなしっす!」

「まあまあ。この先できっと出番があるから」

 

 この先というのはダンジョンの主との戦闘だ。

 幸いここのボスはHPが低く、3人パーティーでも倒せるだろうことは事前調査で判明していた。雑魚が大量に出現するらしく転移結晶での離脱は難しいとの話だったが、裏技として回廊結晶などという高価なアイテムを持ってきている私には関係のないことだ。

 回廊結晶も転移結晶と同じで使用中は行動不能になり、途中で攻撃を受ければキャンセルされてしまうが、転移結晶と違い一定時間別空間と繋がる門を形成できる。この門は使用者が通過しても効果時間の限り開いたままだ。なのでこの回廊結晶を使うプレイヤーだけを守り通せば複数のエネミーに囲まれようと離脱が可能という絡繰りだ。

 

「じゃ、回廊結晶は預かっておいてほしいっす。転移のときにはコリドーって叫んで起動。その後どこかの主街区の名前を言えばそこへの門が開くっす。ただ私が撤退じゃなく退避って言ったら主街区の名前は言わないで使ってくださいっす」

「そうするとどうなるの?」

「マーキングしたポイントに門が開くっす。間違って主街区の名前を言わなくても、まあ大丈夫っすけど、間違って主街区の名前を言うことはしないでくさいっすね」

「なんかスパイ映画みたいで面白そうね。退避って言ったらそのまま使う。うん。大丈夫、覚えたわ」

 

 私たちはそれからダンジョンボスの行動パターンの確認と対処方法についての相談を安全エリアで始めた。といってもそれほど変わった戦略と取るエネミーではない。詳細な打ち合わせも、私の誘導方法とユナの使う演奏バフのタイミングくらいだ。

 全体把握はノーチラスにやらせようとしたが、ユナが受け持った。

 彼に今日はいつになく甘いと思ったが、よくみるとノーチラスの顔色が少し青い。

 

「大丈夫っすか?」

「ああ。僕は大丈夫だ……」

 

 大丈夫な様子ではない。しかしユナはそれに気がついているが止めようとしていないあたり、本当に大丈夫なのか、それともなにか考えがあるのだろう。

 私は全面的にユナを信頼して戦闘を始めることにした。

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