レベルが高くても勝てるわけじゃない   作:バッドフラッグ

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73話 棺桶に感傷を(3)

 最近はフィールドに出るプレイヤーが格段に増え、人目に付き易くなった。

 かといって人の少ない最前線はモンスターやトラップが手強く、攻略組の索敵スキルを絶対に誤魔化せる自信もないため近寄り難い。

 PoHに教わった犯罪者フラグ解消クエストを受けさせてくれるNPCには、プレイヤーによる見張りが交代で立てられるようになり、以前のようにカーソルカラーをグリーンに戻して圏内に潜伏することも出来ないでいる。

 おかげで趣味(殺人)に割く時間は減る一方。

 逃亡とレベリングにばかり勤しむ毎日だ。

 折角自由の身になったというのに、これでは本末転倒もいいところ。

 

 どうにかならないかと思っていた矢先、PoHから絶対に見つからない拠点を手に入れたという一報が届いた。

 俺だって隠れ家を探し回っているが、なかなかこれといった場所は見つかっていない。

 そんな場所が果たして本当に存在するのか。

 半信半疑のまま集合地点へ行ってみると、招かれたのは俺だけではなくザザも同じようだった。

 そこから移動は高価な転移結晶を使う警戒ぶり。

 連れてこられたのは薄暗いダンジョンの一角で、少し歩くと風景はじめっとした監獄に切り替わる。

 左右には空の鉄格子。蝋燭の灯りがうっすらと通路を照らし、索敵スキルにはモンスターの代わりにプレイヤーの反応があった。

 

「なあ。ここ何処なんだよ?」

「すぐに教えてやる。少し待て」

 

 PoHを先頭に俺たちは道なりに進んでいくと、重厚な石扉の前で立ち止まる。

 彼はノックをして名乗りをあげるとガシャリと鍵の開く音が反響した。

 このシステムは宿なんかで壁越しに会話するための機能だ。

 ダンジョンでもその機能があるのかと久々に攻略組らしい思考を呼び覚ましていると、俺はそこで待っていた懐かしい人物と邂逅を果たした。

 攻略組の二台巨頭。

 アインクラッド解放隊のリーダー。

 絢爛豪華な一室で、デスクチェアに深く腰かけた男は――。

 

「キバオウ?」

「久しぶりやな」

 

 攻略組を抜けて以来の再開だった。

 こいつは俺がいた攻略組派閥のトップだ。

 俺が攻略組に入ったのは彼に声をかけられたからであり、多額の賞金を懸けているのも半分は彼の仕業であった。ちなみにもう半分は攻略組の2台巨頭の片割れ、ドラゴンナイツブリゲードのギルマスであるリンドの支払いだ。

 

「黒鉄宮地下監獄ゾーンへようこそ」

 

 PoHは俺たちに振り向くと、仰々しい素振りでこの場所の名を口にする。

 

「オイオイ! どういうことだよ……!?」

 

 黒鉄宮地下監獄といえば犯罪者プレイヤーが収監される場所だ。

 まさか騙されたのかと、俺とザザはすぐさま腰に下げた武器に手を伸ばす。

 

「慌てるな。そういう話じゃない。木の葉を隠すなら森の中。犯罪者を隠すなら、檻の中だ。ここはとあるギルドが購入してな。プレイヤーゾーンになったんだよ」

「キバオウは?」

「ワイはそのギルドのサブマスやで。ここの提供者っちゅうわけやな」

「アインクラッド解放隊はどうなったんだよ?」

「自分、情報古いなあ。アインクラッド解放隊は吸収合併して、今はギルドMTDになっとるで」

 

 情報に疎いのは仕方がないだろ。おまえのせいで街にしばらく入れてないのだから。

 ……MTDは情報発信系のギルドだったか?

 βテスターがギルマスで、周囲の反感を上手く宥めて大御所になったとかいう話はだいぶ前に聞いたことがある。

 

「出入りは面倒だが、悪くない場所だぜ。追手は来ねえし、すぐ近くにはレベリング用のダンジョンもある。それになによりカーソルカラーをグリーンに戻すギミックもある」

「だけどなあ……」

 

 ちらりとキバオウを一瞥。

 

「なんや。ワイのことが気に入らん言うんか?」

「………………」

 

 端的にいえばそういうことだ。

 

「命令されるの好きじゃねえんだよ」

 

 キバオウは威張り散らして頭ごなしに命令をしていたため嫌いだった。

 殺す予定のブラックリストにも入れていた。

 こいつがまだ生きてるのは、攻略組のトップということで手が出せないでいたからに過ぎない。

 

「ザザもか?」

「そうだな。俺も、好きでは、ない」

「なら2人にはキバオウから命令はなしでどうだ」

 

 PoHは俺たちを仲間に加えたいのだろうか?

 他にもPoHには仲間がいるらしいから、そいつらに頼む手だってあるだろうに……。

 あ、違う。これは冷静に値踏みしている目だ。やべえ。断れば殺される。そりゃそうだ。秘密を知ってるやつは少ない方がいいに決まっている。

 この場から上手く逃げられるとしても、PoHまで敵に回すのは避けたい。

 それだけ彼の殺しのテクは並外れてやがる。

 あとPoHのことは嫌いじゃないってのも理由のひとつだ。

 

「いいだろう」

「しょうがねえなあ」

「………………」

 

 キバオウは不服そうにしている。

 その顔が見れただけでも良しとしよう。

 考えてみればキバオウ以外断る理由もないしな。

 

「わかったわかった。ここはあんさんの顔を立てたろやないか。ただしや。約束の仕事はきちっとしてもらうで」

「政敵を殺して欲しいんだろ? 安心しろ。そういう仕事は慣れてる」

「慣れてるって、あんさん何者なん……? まあええ。ワイとしては仕事して、こいつらの手綱しっかり握ってくれるんなら文句はなしや」

「契約成立だな」

 

 握手を交わすPoHとキバオウ。

 キバオウが命じる側であり、立場が上のように普通は思うだろうが、PoHに限ってはそんなことにはならないだろう。

 むしろ俺にはこれが悪魔の契約かなにかに見えて仕方がない。

 

「そういうことだ。攻略組にはあんまり手を出すんじゃねえぞ」

 

 ザザは嫌がるだろうが、俺は最初から返り討ちに合いそうな攻略組に手を出すつもりはない。

 俺は殺したいだけであって、殺される趣味はないのだから。

 

「了解、ボス」

「ボス?」

「俺たちのボスはそこのキバオウじゃなくてあんたなんだろ?」

「それもそうだ。だがまあ、お互い気楽にやろうぜ。所詮はゲーム。そうだろ?」

「いいね、そういうの」

 

 あんまりゲームやったことないけど、言わんとしていることは理解できる。

 こんな本当に死ぬゲームなんて作るやつが悪いのであって、中でHPを0にして回ってる俺たちが悪いわけじゃないってことだ。

 そもそも俺は望んで始めたわけじゃないし。

 責任は全部ここに押し込んだあいつらにある。

 ならどうしようと俺の勝手だ。

 

「攻略組を狩るときは声をかけてやる。ザザはそれでいいな?」

「わかった」

 

 ザザはしぶしぶといった表情――かどうかはマスクでわからないが、頷いた。

 

「俺にはなんかないの?」

「そうだな……。キバオウ。囚人借りるぞ」

「なにすんねん?」

「ちょっとした遊びだ」

 

 この後俺はPoHから囚人を使った遊びを披露してもらった。

 監獄ゾーンは圏内であるためHPは減らない。

 痛覚もソードアートオンラインはカットされるため痛みもない。

 けれども人の精神というやつは意外と脆く、簡単に壊すことができるという。

 所謂、拷問というやつだ。

 水を使って溺れていると錯覚させる水責め。

 目隠しをして大音量の音を耳元で永遠に聴かせる音責め。

 不安定な姿勢で拘束して眠らせないというものも教わった。

 これらの方法では死ぬことがないためエコロジーかというと、一度発狂してしまえば再利用もできないので、そうでもない。

 しかし普通に殺すよりも刺激的で楽しい。

 中でもお気に入りは、自分の手でやっている感覚が強い水責めだ。

 

 

▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 エリにゃんが加わったのはすぐのことだった。

 キバオウの紹介で、MTDから引き抜いた攻略組のタンクという触れ込みだった。

 大方、集まったメンバーが自分に従順じゃないことが嫌だったのだろう。

 彼女もこんなところに来るくらいだから神経の図太いやつだった。あと身体の方も太かった。

 ザザは殺しの趣味が合わないやつだが、エリにゃんは性格が合わないやつだった。

 なにせ仕切りたがりで、細かいことを一々気にして注意までしてくる。

 あまりの面倒臭さに思わず殺したくなるほどだ。

 攻略組のエースなのも鼻持ちならなかった。

 

 それでも彼女を尊敬している部分もある。それは殺しの方法についてだ。

 5人の中で一番好きなのは誰かと問われれば、自分の殺し方さえ抜いて、エリにゃんに軍配が上がるほどである。

 ザザは言わずもがな。

 キバオウは自分では決してやろうとはしない。

 PoHのも好きだが、いささかスマート過ぎる。

 対して彼女の殺し方は支配的で優越感に浸らせてくれるものだった。

 俺は試しに一度模倣してみたが、かつてない興奮に酔いしれることができたくらいだ。

 殺す際、楽しそうに笑うのも好感が持てる。

 

 惜しむべくはあまり殺しをしないことだろうか。

 彼女は当初、自分から殺そうとすることは全くなかったのだ。

 それが変わったのは25層でMTDが大敗を喫した後。ギルド名がアインクラッド解放軍になり、治安維持部隊が設立されてからだった。

 治安維持部隊とは名ばかり。

 隊長に就任したエリにゃんが育て上げたのは、PKKに特化した殺戮部隊というのだから皮肉が利いている。

 彼女は鎮圧活動と称して、裏で死体の山を作っては積み上げていた。

 

「エリにゃん。今度一緒に狩り行こうよ」

 

 あるとき、俺はそんな誘いをした。

 

「レベリングっすか? えー、嫌っすよ。背中任せたくないっす」

「違う違う。狩りってモンスターのことじゃなくてプレイヤーの方ね」

 

 彼女が披露してくれる殺しに憧れ、普段はどんな殺し方をしているのか興味がそそられたのだ。

 それにキバオウは殺しをしないので除外すると、この中で俺が同伴したことがないのは彼女だけということでコンプリートしたかったのもある。

 

「どっちにしろ嫌っす」

「いいじゃん。部下連れてきてもいいからさあ」

「一緒にいるとこ見られたくないんすよ」

「酷くない?」

「そういう意味じゃないっすよ。ただ、自分の置かれてる立場を今一度考えることっすね」

 

 そういえば俺、指名手配中だった。

 そして彼女はそういった人物を追いかける組織のトップだった。

 

「バレないようにこっそり行くからさあ」

「正直者っすねえ……」

 

 言われてみればその通りだ。

 黙ってついて行けばよかったのかもしれない。

 

「こっちの索敵スキルに引っかかったら部下に言い訳できないんすよ。そのときは黙って殺されてくれるっすか?」

「殺気出てるよ?」

「見せつけてるんすよ」

「やだ怖い」

 

 でもそれなら、彼女の部下から逃げ切れるならついて行ってもいいってことか。

 

「はぁ……。最近の戦闘記録があるんで、それ見るだけで満足してくださいっす」

 

 俺の考えを読んでか、エリにゃんが妥協案を持ちかけてくる。

 

「そういうのコレクションしてるんだ?」

「違うっすよ。部下がこっそり撮ってたのを押収した物っす」

 

 エリにゃんはもう一度溜息を吐いてから、映像記録結晶をアイテムストレージから取り出した。

 彼女は結構な苦労性だ。

 今もキバオウから頼まれたのであろう文書系アイテムを偽造している最中だったし、そうでなくとも治安維持部隊と攻略組を掛け持ちしている。

 俺だったら忙しさに辟易して、誰か殺すついでに抜けてるだろう。

 

「面白、そうだ」

「俺にも見せろ」

 

 聞いていたのか、PoHとザザが集まってくる。

 

「やっぱりなしで――あっ!」

「いいだろ。減るものでもないんだ」

 

 引っ込めようとした手から、PoHが素早くクリスタルを盗み取った。

 取り返そうとエリにゃんが手を伸ばすものの、身長差のせいで掲げられたクリスタルには届かないでいる。

 彼女はクツクツと笑うPoHを睨み付けたが、すぐに諦めて文書の改竄作業に戻って行った。

 

「ジョニー。食い物持ってこい」

「オーケー、ボス」

「ザザはドリンクだ」

 

 俺たちは並んでソファに腰かけると、スナック片手に鑑賞会を始めた。

 立体スクリーンに映し出された風景は最初、整然とした建物の中。

 10人くらいのプレイヤーが密集にしているにも関わらず、まだスペースがある大きな部屋だった。

 大理石の壁に掲げられているのはアインクラッド解放軍のギルドシンボル。集まっている男たちは黒を基調にした鎧姿であることからギルドのメンバーであるのは明白だ。

 巨体の男たちに囲まれているのは同じく全身鎧を身に纏ったエリにゃん。

 彼らは今か今かと獲物を待ちわびる、飢えた獣の群れであるかのようだった。

 

「隊長。今回のターゲットはレッド(殺人)ではなくオレンジ(窃盗)とのことですが、如何しますか?」

 

 エリにゃんの隣に立つ男が毅然とした姿勢と声で問いかける。

 

「なにか問題でも?」

「いえ。どこまでやって良いものかと」

「いつも通りっすよ。適当に残すように」

「つまり殺しても?」

「勿論。ただし周囲に一般プレイヤーがいた場合は厳禁っすからね」

「了解しました」

 

 彼女の回答に男たちが沸き立つ。

 これが治安維持部隊の本当の顔か。

 見ているこっちまで一緒になってワクワクしてきちまうじゃねえか。

 そこからしばらく画面に動きはなかったが、それがむしろ緊張感を煽る良い演出になっていた。

 固唾を飲んで凝視していると、突然部屋に青紫色の穴のようなものが開く。

 たしか回廊結晶の門だったか。遠隔地と空間を繋げる超高級アイテムだ。こんな代物を使って狩りができるなんて贅沢なやつらだが、これだけの大人数だと転移結晶よりは安上がりなのかもしれない。

 門が開かれるや否や、エリにゃんを先頭に彼らは一目散にその中へ跳び込んでいく。

 

 風景は変わってダンジョンの中に。

 天井の高い広大な空間は、もしかすればクリア済みとなったボスフロアなのかもしれない。

 ステンドグラス調の鮮やかな色彩に包まれたそこには、腰を落ち着けて食事をしていたプレイヤーたちが沢山。たぶん10人以上いる。

 

「全員動くなっす。逃亡を試みれば実力行使に出るっすよ」

 

 そんなつもりさらさらないだろうに。

 エリにゃんは下卑た笑みを浮かべながら、彼らに降伏を促していた。

 

「軍の連中か!?」

 

 盗賊一味が驚いている隙に、彼らは早足で彼らを取り囲むよう位置取りをしていく。

 足こそ速くはないが、迷いがない分早い。

 ガチャガチャと連中が武器を抜いたのは、周囲を完全に囲まれた後だった。

 

「転移――うわっ!?」

 

 誰かが転移結晶で離脱を計るも、すぐに小型のナイフが投擲されクリスタルを弾き飛ばされた。

 床に転がるクリスタルとナイフの渇いた音に、慌てていた彼らも一瞬で静まり返る。

 

「おやぁ? 折角警告してあげたのに。これは仕方がないっすねえ」

「違う! 今のはあいつが勝手に――」

 

 エリにゃんにつられてゲラゲラと不気味な笑い声が響き渡っていた。

 その異様な合唱にリーダーらしき男はすっかり気押されている。

 

「やれ」

「クソッ!」

 

 エリにゃんの淡白な号令。

 けれど彼らもオレンジとはいえ怯えているだけの子羊ではなかったようだ。囲まれながらも手にした武器で果敢に反撃を行う。

 両陣営10人以上。始まったのは今まで見たことのない、大規模なPvP(殺し合い)だった。

 人数はたぶん治安維持部隊の方が少ない。その上2人を近接戦闘ではなく、外周に配置して投擲での牽制に従事させているため人数差は広がる一方だ。

 撮影者もどうやらこの牽制要員の1人であり、おかげで戦闘の全体がよく見渡せる。

 彼は転移結晶を使おうとするプレイヤーを止めるための役割のようで、開幕で見せたようにクリスタルを狙い撃ちにこそ出来てはいないが、ダメージを受けるだけでも発動はキャンセルされるので問題はないみたいだ。

 

「リーダーから狙うのが常套手段っすよねえ!」

 

 乱戦の中でもハッキリ聞こえる張り上げた声。

 リーダーに斬りかかったエリにゃんは、逆に大勢のプレイヤーの注意を引いて襲われてしまう。

 

「隊長。援護は!?」

「結構。各員自分の役割を果たせ」

 

 なるほど。自分に注目させて人数差を部分的に覆すのが狙いだったようだ。

 彼らはエリにゃんの狙いに気がつけないのか、5人がかりで我武者羅に剣や槍を振り回す。

 確かにエリにゃんを殺せれば動揺が広がり逃げ出す隙も生まれそうだが……。

 彼らとエリにゃんの実力には大きな隔絶があり、傍目から見れば不可能なことはすぐに理解できる。

 そもそもこれほどの大人数で攻撃しても互いの武器が邪魔で上手く動けないだろう。頭に血が上ってそんなこともわからなくなっているのだろうか。

 いや。彼女が連携させない立ち回りをしているせいもあるようだった。

 エリにゃんは攻略組でタンクを務めるだけあって盾の扱いが絶妙だ。

 生半可な威力の武器では最前線の装備である大盾は崩しようがなく、大技のソードスキルを使えば同士討ちをさせて攻める気概を削られる。

 背後を取れれば最善だが、そこは足捌きと周りの戦闘状況を利用して容易には立たせないでいた。

 抜いた剣はほとんど振るわず、盾で殴りつけるだけで時間は浪費されていく。

 次第に他の連中が麻痺武器でオレンジプレイヤーたちを拘束していくと人数差は埋まってしまい、最後には合流した全員で5人は袋叩きにされた。

 

「Good game.流石はエリだ」

 

 PoHが拍手を送る。

 

「そうっすか? これだけレベル差があれば誰でもできるっすよ」

「……そこじゃない。俺が評価したいのは実力を周囲に知らしめてる点だ。部下を従わせるためにやってるんだろ。単純だが良い考えだな」

「それはどうも。同レベル相手にこんなことはしたくないっすけどね」

「したくはないだろうが、出来るんだろう?」

「さあ。相手によるっすよ」

「それもそうだ」

「なんか2人で頭良さそうな会話してる……」

 

 相変わらずエリにゃんは細かいところまで考えてんだな。それにPoHも。

 そうまでしないと人の上に立つのは無理なのだろうか? だったら憧れこそするが、俺にこういう戦法はできそうにない。

 

「つうかさあ。エリにゃんって実際どんくらい強いわけ?」

「んー……。かなり強いと思うっすよ。なんせ場数が違うっすから。対人戦の経験ならSAOでも随一じゃないっすかね」

「ああ。そりゃそうだ」

 

 俺も結構殺してきたと思うけど、日常的にレッドやオレンジプレイヤーぶちのめしに行ってるんだからそうなるのか。

 

「え。じゃあザザとエリにゃんどっちが上?」

「あー、そいつはなあ……」

「エリだ」

 

 PoHが言葉を濁し、ザザが断言する。

 

「なんかあったの?」

「この前ザザがエリに殺されかけたんだよ」

「うわぁ……。マジで?」

「襲撃されたのは私の方っすよ」

「俺が止めなきゃお前、ザザのこと殺してただろ」

「それはだって……。生かしておいたらまた来るかもしれないじゃないっすか」

「否定は、しない」

「ほらあ」

「ザザ、お前いい加減にしろよ」

「………………」

 

 俺のいないところで一悶着あったらしい。

 ザザならいつかやりかねないと思ってたけどもさあ……。

 

「もしかして次は俺の番?」

「その予定は、ないな」

 

 それはそれで釈然としないんだけど。

 

 ――映像はどうやら続きがあり、捕まったオレンジプレイヤーはジャンケン大会で殺される生贄を決めるという狂気の沙汰が始まっていた。

 大の大人が泣きながらジャンケンをする光景はシュールで笑い、首を跳ねられるのを焦らされている光景でもう一度笑えた。

 こんな素敵なショーなら何度も繰り返し見たかったのだが、エリにゃんが今度はしっかりとクリスタルを確保すると早業でデータを削除したため、鑑賞会はそれで解散となった。

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