レベルが高くても勝てるわけじゃない   作:バッドフラッグ

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82話 棺桶に感傷を(12)

 BoB予選から一夜明け本戦当日。

 昨夜はキリトと予選のログを見て、作戦の練り直しに明け暮れた。

 

 ザザ――こちらではSterben(ステルベン)と名乗っている――の戦闘スタイルはスナイパー。長距離から一方的に攻撃するという、SAOとは正反対のスタイルだ。

 Aブロック決勝戦で彼は、前大会の準優勝者『闇風』を打ち破っている。

 闇風は短機関銃M900AをメインウェポンにしたAGI特化のビルドだ。

 その人間離れした速度を用いたジグザグ移動で間合いを詰めていったが、距離500メートルに入ったところでザザが1射。ヘッドショットによる幕引きとなった。

 俺も彼に近いステータス構成なだけに、順当に戦えば同じ末路を辿るのは間違いないだろう。

 

 対してFブロックを優勝したキリトはこれまでの常識を打ち破る戦法で勝ち抜いてきた。

 キリトはメインウェポンに近接武器を選択。カゲミツG4というフォトンソードを装備している。サブウェポンは俺と同じでFNファイブセブン。だが彼の最大の特徴は左手に持つ盾だ。

 宇宙戦艦の装甲板を素材に使ったそれは、7.62mmクラスの弾丸さえ容易に弾く。

 彼の戦法は盾を使い近づいて斬る。それだけだ。

 それだけだが、対策の目途が立たない異様な強さを発揮した……。

 手足を晒して被弾するミスは一切なく、背後を取ろうとすればフォトンソードで両断。グレネードで崩そうとしても、爆発前に盾で打ち返されるか回避される。機動性を使って退き撃ちをするにはステージが狭く、そもそもキリトが速くて逃げ切れない。

 唯一の()()()()は決勝戦の1発のみ。

 それだってアンチマテリアルの放つ50口径の威力を完全には無効化出来ず、ガードの上からダメージを受けただけに過ぎない。

 その試合もダメージを受けると理解した途端に、躊躇なく鉄壁の盾を投棄。防御を捨て回避に絞り、以降被弾することなくシノンというプレイヤーに勝利を納めた。

 そんなわけで試合時間の合計は計算するまでもなく俺が最長であり、キリトが最短だった。

 

 Fブロック決勝戦の結果を見る限り、キリトを狙撃で倒すのはザザといえど難しいだろう。

 しかしザザはキリトの盾と同じ素材のエストックをサブウェポンとして隠し持っている。

 近接戦が始まればどちらが勝つかはわからない。

 オーディナルスケール事件のときに見た実力は確かに高かったが、あくまで彼の専門はPvE。ザザはPvPがメインの武闘派だ。

 けれど俺が加われば2対1。数の有利でギリギリ勝利出来るだろう。

 厄介な狙撃はキリトがなんとかしてくれる。

 予測線なしの不意打ちであろうと、何故か彼はガードが間に合う。俺も索敵能力ならザザに勝っているだろうから、2人揃えば問題ないだろう。

 

 本戦のバトルフィールドは予選の10倍。直径10キロの円形をした、ISLラグナロクという名前の孤島が舞台だ。

 直径10キロといえばSAO最大の階層である第1層と同じ規模。

 そこにフルレイドより2パーティーも少ない30人しかいないのだから、いかに広いかよくわかる。

 普通に歩いているだけでは遭遇するのも一苦労だが、15分間隔にプレイヤーの位置情報を送信するサテライトスキャンが行われるおかげで探す手掛かりくらいにはなる。

 もっとも、あくまで手掛かり程度。

 スキャン後に移動していれば発見される可能性は低くなる。

 本戦も予選と同様時間無制限。

 SAOのような広範囲索敵スキルなどないため、隠れようと思えば徒党を組まれて探されない限り、いくらでも隠れていられる。

 優勝だけが目的なら持久戦に持っていき、寝込みを襲撃するという手が最適だ。

 あるいは遺跡などの閉所に陣取って、キリトの近接能力を頼りに迎撃していくのもいいだろう。

 だが今回の目的はあくまでザザを倒すこと。

 他のプレイヤーによもやザザが負けるとは思わないが、長期戦に持ち込むと時間制限で彼は勝負を降りざるを得なくなる。

 大会規定に時間制限はなくとも彼がログインしているのは病院だ。仮に夜間ログインを継続出来ても、朝になれば誰かが強制ログアウトをさせるだろう。

 同じような理由で待ちの戦法も難しい。

 あまりにこちらが有利な地形であれば、SAO時代の彼ならいざ知らず、今の彼では誘いに乗ってこないことは大いにあり得る。

 

 よって長々と議論した癖に、立てた作戦といえばせいぜいが合流してからザザをサテライトスキャン頼りに襲撃するという陳腐なものだった。

 合流場所はフィールドの中央に位置する都市廃墟地帯が、移動も待機も簡単で無難だろうという結論に至った。

 あとは固まって行動。

 所謂出たとこ勝負というやつだ……。

 

 

▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 

 ――なのだが。

 

「見つかんねぇ……」

 

 本戦開始から1時間。

 キリトとの合流はスムーズに行えた。

 フィールド西部の草原地帯に配置された俺は戦闘を避け慎重に中央へと向かい、南の山岳地帯に配置されたキリトは見つける傍からプレイヤーを蹴散らして到着。合流したときにはすでに参加者の半数近くが脱落しており、そのうち5人はキリトの手による撃破だった。

 

「サテライトスキャンに映らないなんてこと、有り得るのか?」

「砂漠にある洞窟がたしか、スキャン無効らしいけどさ……」

「流石にゲーム開始からずっと立て籠もってるなんてことはないだろ」

 

 行われたスキャンはすでに4回。

 そろそろ5回目が行われる。

 それら全てにステルベンの名前はなかった。

 撃破されたわけでも、不参加というわけでもない。

 敗退プレイヤーの中に彼の名前はなく、参加者はちゃんと30人揃っている。

 しかし生存者と敗退者の数を合わせれば29人。

 彼がなんらかの方法でスキャンから逃れている可能性は高い。

 

「ふむ……」

 

 5回目のスキャニングを見てキリトは考え込む。

 映っているのは前回から2人減って13人。

 廃墟地帯に徐々に集まってきているのが4人。

 ザザの姿は変わらず見つからない。

 なお、スキャンは建物内であろうと発見される。

 今まさに俺とキリトは崩れかけた廃墟の中でスキャン端末を操作しているところだが、場所と名前はハッキリと映されていた。

 

「ステルベンの居場所はたぶん東の田園だ」

「なんでそう思うんだよ?」

「砂漠は他のプレイヤーがいる。おそらく洞窟は探してるだろうから、ここにいるとは考え難い。それと前回東にいたプレイヤーが1人やられてる。付近にいるプレイヤーはさっきから動きのないこいつらだけで、不自然だ」

 

 キリトは手持ちの情報から推測を立てていく。

 

「なるほどね。田園地帯にも洞窟みたいにスキャンされないエリアがあったわけか」

「そういう噂はあるのか?」

「俺は聞いたことないけど……」

「ならステルベンはスキャンを無効化する装備を持ってるんじゃないか?」

「おいおい。そんなの有りかぁ? それこそ噂にも聞いたことないぜ」

「GGOはSAOの縮小版であるザ・シードで作られてるんだ。SAOにだってそんな理不尽な装備はゴロゴロあっただろ」

「なにそれ知らないんだけど。ザ・シードってそういう物だったわけ?」

「ああ、そこから説明しないといけないのか……。その話は後だ。ともかく、俺は理不尽な装備があってもおかしくないと思ってる」

 

 製作者不明のフリーソフト、ザ・シードの出所を何故キリトが知っているかは語らなかったが、彼の様子から不確定な情報でないことは読み取れる。

 

「その前提で考えるとしてさ。俺たちは田園地帯に打って出るわけ?」

「そうすると森林で睨み合ってるやつらが先に釣れそうなんだよな……。だったら西の草原地帯に進んでこの3人を倒して迎え撃つべきだと思う」

 

 キリトが指差すのはここから西に1キロ程度の距離まで詰めてきている3人のプレイヤー。

 彼らを排除すれば西から南にかけて大きな安全地帯を築けるが――。

 

「…………いや。南下しよう」

「それだと西と南東にいるやつらに挟まれないか?」

「西の連中は中央に向かってきてる。もうすぐここで戦闘が起こるだろうから、ステルベンが俺たちを追って来れば乱戦に巻き込まれて弾を消費してくれるかもしれないだろ。それに南はお前が掃除したおかげでプレイヤーがいないからな。南東のやつは1人だし、そっちを片付ければいい」

「うーん……」

「早く決めろよ黒猫。悩んでると俺らも乱戦に巻き込まれるぜぇ」

「わかった。こっちじゃ経験はお前が上だしな。従ってやる。あと今の俺はブラッキーだ」

「おっと。そうだったそうだった」

 

 わざとキリトを黒猫呼びして急かせると、俺は装備をチェックして外へと出た。

 廃墟地帯というだけあって倒壊した瓦礫が道を塞ぎ、周辺は迷路のように入り組んでいる。

 隠れる場所も多く、狙撃には適した環境だろう。

 建物の中を通るのは勿論のこと、俺たちは順路に沿わない地形を移動して不意打ちの可能性を減らしつつ南下した。

 やっぱり仮想世界は最高だ。

 これだけ走っても息ひとつ乱れない。

 それでも迂回と警戒で1キロの移動に10分くらいかかったが……。

 

「待て。先行してくれ。後ろを塞ぐ」

 

 廃墟地帯もじきに終わるというところで、キリトが警戒を強めた。

 彼とのコンビネーションは概ね良好。

 大会前の1週間でPKなどの予行演習した成果だ。

 

「オーケー」

 

 揃って路地を飛び出し、背中をキリトが守るよう列を組む。

 射線の通る直線の大通り。

 第六感など備わっていなくとも、経験から嫌な気配を俺も感じていた。

 視線を走らせるがプレイヤーの影はない。

 空振りかと思ったが。

 

「気づいていない振りをしろ」

 

 キリトは見つけたのか、警戒を解かない。

 言われるがまま、俺が背を向けて一歩を踏み出した瞬間。

 ――乾いた音が響いた。

 

「50口径じゃないな。来たぞ」

 

 キリトが俺を狙った銃弾を盾で防いだ音だ。

 振り向くと弾道予測線がピタリと俺の額に狙いをつけている。

 逆算すれば狙撃手の位置がすぐに見つかった。

 確認したはずのビルの3階。黒いマントでシルエットしか判別できないが、今大会のスナイパーは2人だけなのでザザで間違いないだろう。

 見落としたのか?

 いや。そうではない気がした。

 

「ここで決めるぞ」

「ガードは任せたぜ」

 

 キリトを壁に全力のダッシュで距離を詰める。

 盾が邪魔で前はまったく見えないが、スモークを焚かないで済む分非常に楽だ。

 

「動いた」

「方角は?」

「こっちに向かってる」

「上等!」

 

 予測線なしの1射目が外れたことで逃げに徹するかと思いきや、こちらに合わせてくれるようだ。

 キリトが盾を下げて視界を確保すると、ザザがビルの縁を足場に降りてきているのが見えた。

 狙撃銃であるL115A3はアイテムストレージに収納されてすでにない。

 代わりにあるのは針のような細身の刃。

 鈍い輝きを放つエストックと、紫色に発光するフォトンソードが十字路で交わろうとしたその時。

 

「――チッ!」

 

 キリトが横に弾き跳んだ。

 

「さあ、始めよう」

 

 ザザはキリトに見向きもせず俺に襲いかかった。

 腰から抜いたコンバットナイフがエストックの刀身を受けて火花を散らす。

 速い。それに重い。

 反撃は考えず、俺は立て直すことに注力する。

 

「狙撃だ」

 

 ガードが間に合ったようでキリトは無事だ。

 ザザから離れると、彼は追撃を仕掛けてこない。

 隣に退避したキリト。

 乱入者の攻撃がないことから、十字路が射程範囲であることがわかる。

 ならばザザは射程に立っていることになるが、それにしては警戒する様子がない。

 

「黒猫と、組んだか」

「そっちはスナイパーチームってわけか」

 

 受け答えをするキリト。

 

「察しが、良いな」

 

 なるほど。俺が仲間を呼んだから、ザザも仲間を用意したわけか。

 BoBはソロの大会だったはずだが、いつの間にかチーム戦になったようだ。

 

「俺が戻るまで時間を稼げるか?」

 

 ここは退くという手もあるが……。

 スナイパー2人から逃げ隠れするのはキツイ。

 かといってザザを片付けるには狙撃が邪魔だ。

 銃で撃ち合いをしてもザザが退けば狙撃の射程に入らなければならなくなる。

 

「当たり前だろ。俺だって剣士だぜ」

「死ぬなよ」

 

 盾を捨てたキリトが十字路に跳び込み、重たい銃声が轟く。

 だが予測線ありの射撃。当たることはない。

 ザザは追わずに十字路から出て、俺と斬り結ぶ。

 策にハメられ、折角準備したエースは早々俺の手から離れていった。

 

「らしくないじゃん」

「お前も、そうだろう」

 

 あるいは、らしい形に戻ったというべきか。

 

「短いね。使い難いでしょ、それ」

「ああ。だが、決着を着けるには、十分だ」

 

 ザザのエストックはせいぜい80センチ。

 SAOで彼が使っていたのは130センチもある長身かつ重量級の物だっただけに差は激しい。

 リーチは長ければ長いほど有利だ。

 懐に入り込めば短い方が有利というのは幻想に過ぎない。なにせその懐に入り込めないのだ。

 だからこそ短剣は弱いと言われていた。

 

 ザザが失ったリーチは実に50センチ。

 これだけ武器性能の差は縮まった。

 しかし現実は無情だ。

 俺の持つコンバットナイフはたった30センチしかない。さらには実力でもザザが勝る。

 これでは防御に徹するだけでも厳しい。

 

 怯えるな……。前に出ろ……。

 PoHに教わったことを思い出す。

 リーチの差は絶対的なものじゃない。

 ザザは強いが、PoHはそれよりも強かった。

 そのPoHに俺は戦い方を教わったんだ。

 

「ほう……」

 

 一歩前へ。

 いいや。フェイントだ。

 ザザの刺突が虚像を貫く隙に間合いを離す。

 リーチの差はエストックとコンバットナイフに限った話でしかない。

 左手でナイフを投擲の代わりにファイブセブンを抜き撃ちする。

 これはエリにゃんの教え。

 足りないなら別のもので補えばいい。

 

 果たして。

 銃弾は――ザザに届かない。

 

 外したわけではなかった。

 射撃下手でもこの距離ならそこそこ当たる。

 かろうじて目が捉えたのはエストックの軌跡。

 ザザはあろうことか、飛来する凶弾を斬り捨てて見せたのだ。

 

「面白い」

「ありかよ……!?」

 

 ザザが走り寄って、間合いは再び近接へ。

 動揺がコンバットナイフに伝わり反応が遅れた。

 肩には鈍い感触。HPはクリティカル部位でもないのに3割も減少する。

 ガンゲイル・オンラインでは近接武器の攻撃力は非常に高く設定されている。どんな物でも首か心臓を攻撃すれば即死するほどだ。

 ガードの上から削られたのもあって、HPはすでに残り半分のイエローゾーン。

 ザザはというと9割以上も残っている。

 これが俺とザザを隔てる実力の差だ。

 

 ダメージ交換にカウンター。

 しかし見え梳いた手が通用する相手ではない。

 ザザは上半身だけでコンバットナイフを躱すと、揺り戻しでエストックが閃いた。

 引き足。

 ステップ。

 牽制。

 ガード。

 場所を移しつつ時間を稼ぐも、俺は徐々に追い詰められていく。

 AGIでは上回っているはずなのに、剣速が足りない。いっそ振り切って仕切り直しを。いや駄目だ。背を見せれば狙撃銃を取り出して鴨打にされる。

 

「ここまでか……」

 

 言ったのは俺ではなくザザ。

 彼が突然動きを止めたことで、ようやくエストックの間合いから出られた。

 俺にとっては願ってもないチャンスだが、不可解な行動は嵐の前の静けさのようだった。

 

「あるいはと、思ったが……。やはり、お前では、力不足か……」

「そんなことくらい知ってるさ」

 

 だからといって諦めるつもりはない。

 ファイブセブンをホルスターに戻しつつ、俺は後ろ手に救急キットを使用する。

 配布アイテムのこれは180秒で3割しか回復しない代物だが、使わないよりはマシだ。

 グレネードは役に立たない。

 距離が近すぎるし、銃弾を斬れるのだから打ち返すくらい簡単だろう。

 

「黒猫が、戻る前に、終わらせよう」

 

 ザザが抜いたのは1丁のハンドガン。

 54式拳銃、黒星(ヘイシン)

 ヘッドショットでもされない限り、致命傷にはならないはずだが……。

 尋常じゃない殺気を彼から感じる。

 弾道予測線は頭部ではなく命中率の高い胴体に向けられていた。

 俺は動きながら銃で応戦。

 黒星はファイブセブンの半分以下しか装弾数がない。射撃の腕で劣ろうとも、まだこちらの方が勝負になるだろう。

 

 ヘッドショットを躱しつつ、狙いを定めるザザ。

 俺も当てるために胴体へと狙いを変える。

 嫌な感覚が拭えない。

 それとは裏腹にザザのHPがついに減った。

 

「さらばだ……。ジョニー・ブラック」

 

 当てたのではない。

 彼はあえて避けなかったのだ。

 HPの差分を利用してダメージ交換をするのが目的なのか、俺の太股には弾痕のエフェクトが血のように咲いていた。

 

「………………」

 

 すぐに瓦礫を盾にする。

 ザザは無駄弾を嫌ってか撃ってこない。

 

「………………」

 

 銃声は止み、荒い呼吸だけが聞こえていた。

 

「………………」

 

 ファイブセブンの弾倉を交換する。

 スキャンは1分前に行われた後だった。

 ザザから意識を逸らさずに端末を確認すると、キリトが例のスナイパーを倒したことがわかった。ただし距離は相当離されている。ここまで来るのに数分はかかりそうだ。

 

「…………なに?」

「どうしたんだよ」

「馬鹿な。なぜ、死んでいない」

「さてね」

 

 どういう意味かはわからないが、ザザの策を知らぬ間に破ったようだ。

 

「まあいい……。ならば剣で、倒すだけだ」

「そうかよ。けど時間をかけ過ぎだぜ」

「黒猫は、間に合わん」

 

 瓦礫から出て、俺はザザと向かい合う。

 距離10メートル。

 彼は低く重心を傾け、突進の構えを取っている。

 対して俺はコンバットナイフではなく、ファイブセブンを突きつける。

 弾道予測円は拡大と縮小を繰り返していた。

 緊張で鼓動が速い。

 トリガーに指をかけ、そして――。

 

「イッツショータイム」

 

 マズルフラッシュは通りの()()から。

 AK74の小口径高速弾がザザを十字砲火した。

 

「貴様ら、まさか――!?」

 

 ザザは驚愕に声を漏らす。

 

「我々の隊長に牙剥いたこと、後悔するといい」

 

 ジョーカーはこの手の中に。


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