青年はお世辞にも恵まれた家庭に生まれたとは言えなかった。しかしそれは成人して就職してから気づいた事であり、それまでは平均以上の良い家庭に生まれたと自負できた。
青年が自身を恵まれていないことに気づいたのは自衛隊に属した時だった。平均以上に恵まれた才を生かし、何とかある程度の機密には触れられるようになった時に青年は特殊な力を持つ人間達で編成された特殊部隊を知ってしまった…
いかに人として良い才能や力を持っていても、彼らに比べたら自分は他の人間と変わりない。青年はそう痛感した。
しかし神は彼に大きなチャンスを与えた。
それは彼が東京に現れた裂け目を遠隔カメラで管理している最中に居眠りしてしまった事から始まった。
青年はとても綺麗で自然豊かな場所に寝っ転がっていた。周りを見ると人工物は無く、あるのは木々と東京にあった裂け目だった。
そして青年は悟った。
ここはあの裂け目の向こう側の世界であると…実はと言うと、あの裂け目は未だに誰一人通れなかった、理由は入ろうとすると皆弾かれてしまうからだ。
だが、自分はこちら側にいる。あの特殊部隊にも出来なかった事を成し遂げた。
「ここから俺の異世界生活が始まるのか…!」
青年は立ち上がると、最強の異世界である幻想郷での異世界生活の第一歩を踏み出した……
「治療の時間だ」
が、その一歩を踏み出す前に青年の若い人生は謎の黒い男に触れられる事で終わりを告げたのだった。
「こちら側にも悪疫を持つ哀れな患者がいるとは…いや、こいつはこちらの世界の人間では無いのかもしれん…」
青年を触れる事で殺した黒い男…正確には黒一色の服装をしており、顔に当たる部分にはペストマスクをしている高身長の大男は周りに誰も居ないのにもかかわらず、ペラペラと一人で喋っていた。
そのままペストマスクの男は体の何処からか、バックを取り出すとそこからメスや薬品瓶を取り出した。
そう、彼は医者だ。ただの医者では無い14世紀頃に黒死病を治療する医師として誕生したペスト医師である。
といっても彼はただのペスト医師ですら無いが…
「周りに人は……」
「ニャ~ン」
「なんだ、猫だけか…」
このペスト医師は
だが、幸いにも今回は周りに猫一匹しか居ない。不幸な犠牲者が無駄に出る事は無かった。
「早くこちら側の世界に居る患者も治したいものだな~」
誤った方法で誤った手術を行い、生物として誤った生命体を作る彼は素早い手付きで青年に誤った手術を施すのだった…
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~そして数十分後……悲劇は起きてしまった。
最初は人里では見たことも無い服装をした青年が人里の近くを変な動きでうろうろしており、それを見た人里の男性はすぐに「ああ、また別世界の人間か」と理解し、青年を人里に案内しようとした。
「おい、あんた。こんな所で何してんだ?ここは危ないから、ついてこい……おい?どうしたんだ?」
だが、近づくと青年の様子はだんだんおかしくなってくる。
そして男性が「大丈夫か?」と肩に手をかけた瞬間…
男性は青年に喉元を食いちぎられた
もはやこの青年には理性や生前の記憶などは無い。あのペスト医師に手術をされた時点でただ人間を殺すゾンビとなってしまうのだから。
親切に話しかけてきた男性を殺したゾンビは死んだ男性を貪ろうと思わずに死体を無視して人里の方向へと向かった。
「これがこちら側の人間か…大してあちらと変わらないように見えるな」
足元に転がる死体を見て、ペスト医師がまたひとりでに喋り始める。
とりあえずペスト医師はこちら側の世界の人間の記念すべき初めての手術として、それ以外の深い意味も無く男性を手術し始めた。無論、彼もまた人を殺すゾンビへと…
ペスト医師が人里に着いた頃にはかなり人里はパニックになっていた。普段ならたかが、ゾンビの一体や二体では警備隊で処理できるのだがペスト医師が道中にゾンビの被害に遭った死体をゾンビに作り替えて数を増やしたり、軽症者や重傷者に「私は医者だ」と言い聞かせて油断した所を再び自身の能力で皆殺しにしてゾンビにしていった。
さらにそれだけでは無く。ゾンビ化した者はアニメや映画の様に原形を留めない程腐敗するわけでもなく、生前の姿で襲ってくるために「妖怪に対抗するために皆で協力する」人里では同じ里の者を殺すのはとても躊躇される。
この人妖も例外ではない。
「いきなりどうしたんだ!目を覚ませ!」
他の家と比べて何倍も大きい屋敷の前で女性の大きな声が響き渡る。結構離れている場所に居るペスト医師にも聞こえるほどだ。
大きな声をあげた女性は上下一体の青い服を着て、カクカクした帽子を被る青のメッシュが入った綺麗な銀髪をした。とてもとても美しい女性だった。
表情が険しいが、全然美しい。
だが、その反面に死すら恐れないゾンビの攻撃をかわすか、死なない程度のカウンターを与えてノックアウトさせるなどの美しい容姿からは考えられない程の戦闘能力を持っていた。
ペスト医師はゾンビはたくさん引き連れながらその様子を見て「う~む」と低く唸る。
「こちらの人間はこんな凄いのも居るのか…だが、向こうにも似たような人種が居たし…やはり大きな差は無いのか…」
ゾンビが増えた事でその美しい女性の周りの…屋敷の使用人らしき人物達が次々に殺されてゆく。
だが、女性は傷一つ付かずに大きな屋敷を守ろうとしていた。
この屋敷はあの「稗田家」の屋敷であり、博麗神社に逃げれなかった。足腰が弱くて遠くまで逃げられないお年寄りなどがここに避難していた。
ここが破られれば犠牲者は大量。銀髪の女性、上白沢慧音はそれを恐れながらもなんとかしてこのゾンビになってしまった住民を助けたいと相手を殺さない程度に本気で防衛していた。
だが、ペスト医師の介入によって変わってしまう。
ペスト医師はゾンビをかき分けながら慧音に近づいてゆくと、慧音が説得しているゾンビの陰に隠れて慧音に手を伸ばした。
手を伸ばした理由は簡単、「殺して、特殊な人間を手術して、医学の進歩として知識が欲しかったから」である。
彼の能力は人間をゾンビにする事だけではなく「彼に物理的接触をした者を『即死』させるというもの。
たとえ人妖の慧音でも触れられれば、アウトだ。
だが、間一髪で不審者の伸びてくる手に気づいた慧音は、死を避けようとする生物の本能で手から全力で避けた。
「誰だ…!お前は!」
屋根の上に跳んだ慧音がペスト医師を睨みつけて叫ぶ。
だがペスト医師は避けられた事を気にしていないのか、焦る様子も見せずに礼をしてから自己紹介を始めた。しかもご丁寧にゾンビ達の動きを止めて。
「初めまして、私は海外から来ました……申し訳ない。名前は無いので『SCP-049』もしくは『ペスト医師』と呼んでいただければ結構だよ。それであなたは?」
「(海外…?外の世界か!)…私は上白沢慧音。ペスト医師、お前がこの異変の…みんなをこんなのにした主犯か!」
ペスト医師は嬉しそうにうなずく
「ああ、そうだよ。こんなの…とは少し心外だけども…」
屋根から見下ろす慧音は今すぐにでもペスト医師に頭突きを食らわせようとしたが、なぜか身体が言う事を聞かない。
(さきほど触れられそうになった時に、身体はなぜかカウンターではなく避けてしまった…奴に触れるとまずいのか…)
「ペスト医師、お前の目的は何だ!人里の支配か!」
「支配?とんでもない!私は医者だ、人々のために悪疫を根絶する!それだけでいい!」
「これが人々のためか!!!」
慧音の怒声にペスト医師が耳を塞ぐ。
「ああ、まぁ、これらは完璧な治療ではない…だが完璧な治療は時が来れば実現できる!彼らはそのための……ああ~なんて言うんだ?…そうだ、実験マウスだ」
興奮したり、悩んだりと安定しない情緒でペスト医師は話す。だが、その言葉で慧音は我慢の限界だった。
もし触れてしまって殺されようが、関係ない。こいつは一度…よく生徒達にやる頭突きなどではない。敵としてぶん殴る。
慧音は屋根からそのまままっすぐ、ペスト医師に近づいた。ペスト医師も気づいたが防御もかわすこともできない。
(もし死んだらどうするか…私もゾンビになって皆を殺してしまうのか…それくらいだったら妹紅…お前の手で私を……!!)
しかし慧音の拳はペスト医師には届かなかった。届く直前に慧音が思いっきり後ろに引っ張られたのだ。
引っ張ったのはゾンビでもないし、屋敷の者でもない。
背中から歯茎や目玉などの気色悪い部位が生えている異形な植物の様な生命体を展開しているペスト医師とほぼ同身長の顔が真っ白の明らかな人外だった。
「おお、シュテン。来てくれたか!」
「慧音、あれには近づくな。お前はゾンビを任せる」
シュテンは屋根の上に慧音を降ろすと空中に大きく飛んで、背中の『狂気』を鋭い槍状にして何十本もペスト医師に突き刺した。
余った狂気はゾンビの拘束に使い…本来なら殺したいが、人里では人間を殺すことはルール違反で、慧音にぶち殺されそうなので我慢する。
「さて、勢い余って殺してしまったな。情報を抜きださないとだめだったのに……おっ」
シュテンが狂気がかき消されると、あり得ない事にペスト医師は身体の汚れを払いながら起き上がった
『How wonderful!Amazing life`s power!』
起き上がったペストマスクはとてもとても興奮した様子で拍手をしながら英語でシュテンの攻撃を褒めていた。
狂気がかき消された事と唐突の英語に戸惑ったが、シュテンは冷静に英語で対処をする。
『Well…Mr.…speak in Japanese,we`re in Japan(幻想郷)』
「おっと、これは失礼。興奮のあまり英語になってしまった。日本語はあまり使い慣れないから優先度が低いんだ」
相変わらずペラペラと喋り始めるペスト医師に対し、シュテンはそれほどでもないが警戒していた。だがそれでも、ペスト医師から視線を外さずに後ろでゾンビを捕縛している狂気を強めて不殺の無力化を図っていられる程には余裕が合った。
「ああ、彼らは元に戻らないよ。あちらの世界で財団が色んな手を尽くしてたけど射殺しかなかったから」
「あちらの世界…やっぱ、外の世界の人間……では無いな。お前なんだ?人間じゃないだろ?」
「人間じゃないとは失礼…と言いたいが、事実。私は人間ではない。あちらの世界ではSCPと呼ばれている存在だ、大概は私と違って人間に危害を加えるが…」
「お前も加えてるじゃん」
「私のは治療だよ。しかも将来のための医学の勉強にもなる。役に立つ友好的な者さ」
「でも元に戻らない程にまずい事になってるぞ」
「ああ、まぁ、これらは完璧な治療ではない…だが、この犠牲が未来の希望となる!」
「人間を犠牲にして何かの役に立てる…か…その考えは良いな。共感できる」
シュテンのその言葉に後ろの慧音が驚いた様子で再び怒鳴り声を出す。しかしシュテンは完全に無視していた。
一方ペスト医師は自分の意見に共感してくれる人がいて嬉しいのか上機嫌になる。
「おお!分かってくれる人を見たのは何年振りか!では…私の意志のためにそこをどいてくれないか?」
「ああ~、そうだな~」
ペスト医師は思いっきり吹っ飛ばされた。
「
なぜ狂気か彼に触れるとかき消されるかシュテンはよく分かってないが、かき消されるならその倍の狂気で押し切ればいい。
ごり押し戦法でシュテンはペスト医師を屋敷から大きく離した。しかしダメージはほぼ無い様子。
(SCPってなんだ?まぁ、殺せばなんでも一緒だな)
「コピー、スナイパー!」
お得意の本家の能力、コピー能力でシュテンは弓矢を構えると未だに空中を飛ばされてるペスト医師に高速の矢を放つ。だが、ペスト医師は空中に飛んでいるにも関わらず空中に見えない壁があるかの様に何もない所を蹴って矢をかわす。
さらに追撃で飛んできた狂気を触れる事で全てかき消して見せた。
「思ったより強いな」
「戦闘は専門外だけどもね」
次にシュテンは狂気ではなく、別の能力。ある日を境に現れた無数の棘々しい触手をペスト医師に仕向けた。
これは流石に触れて消す事が出来ないのか、ペスト医師はルナシューターレベルのグレイズ避けを行い、距離を詰めてきた。
「触れられたらやばそうだな」
狂気がかき消されたり、慧音に触れさせたら不味いという直感でシュテンは得意分野の近接戦はなるべく避けていた。このまま時間を稼いで霊夢が来るのを待つのも良いかもしれないが後々に「あんな雑魚なんで倒せないのよ?ほんと、弱いわねあんた」と言われそうなので自分で倒したい。
近接で来るならお望み通り。
「コピー、メタル!」
身体を鋼鉄以上の硬さにし、あの星熊勇儀の攻撃を一発だけなら耐える事が出来る最強のコピーの一角のメタル。動きが鈍くなるのが難点だが、攻撃、防御共に格段に上がるので悪い事ばかりではない。
そもそもシュテンは
いい意味で…悪い意味で…
そしてシュテンはペスト医師に触れてしまった…
「君は理解者になると思ってたが…残念だ」
ペスト医師は少し変形した顔を押さえながら何も出来ぬただの死体となったシュテンに話しかける。
「私の能力は物理的に触れたものを即死させてしまうんだ…君のあの気持ち悪いのは恐らく生命力の塊だったのだろう?ならば私に触れれば死んでかき消せる…相性が悪かったな」
手術しようとしたが、敬意をこめて彼は完全な治療が出来るようになった時に蘇らせようと決心して、再び稗田の家の屋敷に行こうとした。
だがその瞬間、災害とも言える規模の炎がペスト医師を襲った。
もろに食らったが、ペスト医師は致命傷を負わなかった。
「挨拶にしては品が無く野蛮だな」
「不必要でしょ…お前には」
炎を放った者はこれまたとても美しい少女だった。腰まで伸びた白髪に赤いリボンをたくさん着けて、何故か服装は白いシャツに赤いもんぺだった。
彼女は藤原妹紅、慧音とシュテンの親友である不老不死の蓬莱人だ。
彼女の目は憎しみをペスト医師に向けていた。
理由は至極簡単、数少ない理解者で親友であるシュテンを殺されたからだ。先に慧音の所に寄ってから来たため遅れてしまったがまさかそのせいで同じ不死の存在である友を失うとは…
そう、同じ不死の存在である…
瞬間、ペスト医師の背後から無数の棘々しい触手がペスト医師の首を絞めに掛かる。
背後にはもちろん、死んだはずのシャテン・シュテン。
「不死ってのはなぁ、辛いんだな…だが俺はこの力が気に入っている。だってよ……相手が死ぬまでコンテニューし放題だぜ?」
「不死…!?馬鹿な……!!」
「お前はさっき言ったな?犠牲が未来の希望となるって…俺はある能力を手に入れたから賛成だ…お前はスピリットとして役に立て!!!「化身『キーラ』」」
シュテンが纏っていた狂気が突如として七色に煌めく翼に変わり、光を集め始めた。集まっている場所にはブラックホールが…
『
一本の綺麗な光の柱がペスト医師に降り注ぐ、その際の轟音と衝撃で周りの地形に被害が出てるが妹紅が綺麗なものを見るような目で柱を見ているので良しとしよう。
ペスト医師の叫びは光の轟音に敗れているので、何も聞こえない。
そして残ったのは人魂の様な思念体…スピリットとなったペスト医師だ。だが、早々にそれは回収されてしまう。
「あら、ずいぶん面白そうね」
回収したのは誰もが知ってる胡散臭い妖怪、八雲紫。隣にはプロトと藍も居る
本来なら思念体を破壊しようとしたが、紫の手に渡ったのならシュテンはもう破壊できない。
「おい、紫。阿求の屋敷で捕まえたゾンビは狂気を植えた。一度殺せば再び人間として蘇るから…それといつも通り慧音に歴史を隠してもらえ、これは流石に悪影響だ。」
慧音の能力は「歴史を隠す程度の能力」、人里、幻想郷に不都合な事は慧音がいつも阿求や紫と相談の元に消している。この事件も歴史から消えるだろう。
「シュテン、何処に行く気だ」
「用事を思い出した」
プロトが引き留めようとするが、紫がそのプロトを止めて、シュテンは「用事」に向かう。
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シュテンが青年、最初の犠牲者の居た…シュテンは青年の事など知らないがその付近の裂け目のある場所に来た。
「出てこい、あのペストマスクの時から見てただろ…「キーラ」が見つけたんだ。見間違いではないだろう」
そして物音も無く、猫がシュテンの背後に立つ。ペスト医師が幻想入りした時に居た猫だ…しかし…
「ニャ~ン」
とても可愛らしい鳴き声と共に灰色の猫はシュテンを見つめる。何処からどう見ても可愛らしい猫だ…
だが…
「なんだこいつ……あり得ないくらいキモイな…」
「ニャ~ン」
シュテンを強いと思った、そこの貴方!安心してください、彼はサニーミルクより弱いです!
そして最後の猫はオリジナルキャラです。ねこではありません、よろしくおねg(
特別管理者プロト(特別収容プロトコルとかけてるつもり)
アイテム:SCP-049(今回のSCPはこちらのSCP-049に基づきます http://ja.scp-wiki.net/scp-049)
危険度(まだオブジェクトクラスが分かってない):高
このペストマスクはペスト医師と自信を呼んでいるのでペスト医師で行きます。
シュテンから思念体を預かった後にペルソナに適当に体を作らせて、そこに憑依させました。ペスト医師は非常に有効的な印象ですが、話の内容がシュテンとはまた別のベクトルでおかしいです。
彼は物理的に触れた、触れてきたものを問答無用で殺すらしいですが、シュテンが蘇ったという事は妖精や蓬莱人などの不死には効かないと思われます。ですが危険には変わりありません。
殺したものをゾンビにするという癖は、あの青髪の邪仙と一緒に何かしでかす可能性が高いです。
紫様に処分するかの判断を任せます。
プロトへ
保留でお願い
八雲紫より