吉良と同僚の奇妙な冒険 インフィニット・ジャーニー   作:わたっふ

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第12話 不穏な気配

あれから食事を終え、満たされた腹を抱えながら冒険者ギルドを後にした同僚は、相変わらず無愛想な吉良を連れて他の冒険者仲間から聞いたという【武器屋】へと足を運んでいた。

 

「ここかー!案外ボロっちくて汚ぇな〜売れてねぇのか?」

 

剣と盾のオブジェクトが飾られてある建物の前に立った2人。

柱の塗装は黒ずんでおり、木でできた日除屋根もあちこちが剥がれているという酷い外見をしている。

 

「失礼なことを言うのはよしたまえ」

 

無礼極まりない同僚の発言に神経質な語調で遮るように言う。

そして気を取り直し扉に手をかけたその時、店内から吉良にとって聞き覚えのある声が聞こえてきた。

その声に促された吉良の後を追い、店内へ足を踏み入れた同僚の目に映り込んだのは、整った顔立ちの赤い髪を持った女性。

 

「あっ!ヨッシーじゃん」

 

「こんな所で会うとは奇遇だね」

 

するとこちらの存在に気づいたその女性が駆け寄って来た。

親友のような気軽さで話しかける女性に対し、素っ気無いながらも、どこか優しげのある口調で返答する吉良。

そんな2人の関係に不信感を抱いた同僚は、吉良に対して女性との関係を問いただす。

 

「彼女はフィラスさんだよ。昨晩、ギルドの食堂で出会ってね。紹介するよ、こいつは……同僚だ」

 

「ドウリョウ……?珍しい名前だねぇ〜よろしくね!」

 

「あぁ宜しく!それにしてもやるじゃあないか吉良!こんな可愛い子と仲良くなるなんて〜このこの〜!」

 

「このこのぉ!」

 

同僚に連れて一緒に吉良をいじるフィラス。

そんな似た者同士の2人に多少イラッとした吉良は、白髪の店主の変なものを見るかのような目に俯き加減に視線を逸らす。

 

「あっ、そうだった!聞いてよ〜この町の武器屋を全部回って来たって言うのに、どこにも武器を置いてないっていうのさ」

 

「で、ですから、買い占められてしまいまして……」

 

その言葉に2人があたりを見渡すと、まだチラホラと武器やら防具やらが残っている。

何を言っているんだと同僚が近づいて見てみるが、それらは全て本物によく似たレプリカだった。

 

「はぁ……まいったな…」

 

おそらく、このフィラスのように沢山の人々から何度も同じ質問をされていたのだろう。

疲れ果てている様子の店主は、眉をしかめて酷く憂鬱そうな顔でため息を吐いていた。

そして一体何があったのかと投げかける吉良に対し、店主は事の発端を話し始める。

 

「昨晩、店を閉めようとしていた矢先です。数人の見慣れない兵士さんが来店しましてねぇ……店にある全ての武器・防具を買い取りたいとのことでした。他のお客様に迷惑がかかると思い、わたくしも断ったんです。しかし、言うことを聞かないとただじゃ置かないと言われて……」

 

その時の状況を思い返しながら、店主は奥からベコベコに変形した無残な姿の剣を持ってくる。

おそらく、その者たちに見せしめと言わんばかりに破壊された商品なのだろう。

 

「随分と物騒だねぇ。まさかドレグシアの奴らなんじゃ…」

 

なんて酷いことをするんだと、怒りの感情を抱く同僚の言葉に重なるようにして放たれたフィラスの言葉。

その中には聞き慣れない地名と思わしき名が混ざっていた。

 

「ドレグシア?」

 

すると同僚が言い出すよりも早く、吉良が真剣な物言いで聞き返す。

その言葉に待ってましたと言わんばかりのフィラスは、咳払いに続いて《ドレグシア》という国について話出した。

 

「ここから海を渡って山をいくつか超えたところにある帝国だよ。他国を次々と手にかけて領土を広げているのさ」

 

「ひぇ〜怖いな。あんまり関わらないほうがいいんじゃあないか?すぐにまた仕入れてくれるんだろ?」

 

「それなんですが…」

 

同僚の言葉に申し訳なさそうに身を縮めた店主は、売上表を見つめながら小さく口を開く。

1つの武具を作るのにも、原材料を仕入れ、製造し、そして一般的に販売させるまでは短くとも半月はかかるらしい。

本来、店に出している武器やら鎧等が売れた分、倉庫のほうに保管しているものを並べるという流れではあったが、それも今は不可能な状況。

故に今後のことを考えると万全な状態で再会させるにはさらに数ヶ月先、または1年以上はかかるとのことだった。

 

「はぁ!?そんなに待てるわけねぇ……吉良、殴り込みに行くぜ!」

 

「君、情緒不安定すぎじゃあないか?」

 

「うーん……やめておいた方がいいと思うよ」

 

「え、どうしてだ?」

 

「さっきも言ったけど、他の国々とは違って兵力が桁外れなの。それに現国王はあの《精霊使い》らしいのさ」

 

「精霊……使い?」

 

またもや聞き慣れないその言葉に、吉良と同僚は互いに顔を見合わせる。

 

「……新手のスタンド使いの可能性があるな」

 

吉良の口から出た『スタンド使い』という言葉に少々頭を悩ませる同僚。

が、すぐにそれは自分たちのことを指していること、そして同時にスタンドというのは『マインドクローン』や吉良の『キラークイーン』を一括りにして表した言葉だということを理解した。

 

「それなら問題ねぇな。なんたって俺らも───」

 

少々自慢げに自分たちも精霊使い、もといスタンド使いであることを公表しようとする同僚。

だがそれを遮るように吉良が親指と人差し指で同僚の頬を押し寄せ、そのままフィラスに背を向けて壁際に寄せる。

 

「いいかい同僚。こうして君を生かしているのはわたしの保険の為だと言うことを忘れてもらっては困る。先ほどの冒険者加入の件だって許してはいない」

 

「アフェ……ワ、ワニヲフルンダヨ(何をするんだよ)」

 

「君を始末するのはいつでも出来るんだ。あまり目立つようなことはしないでもらいたい。これ以上面倒ごとに巻き込むのはやめてくれ」

 

不機嫌さを凝縮し、あまつさえ凄みを感じるほどの低音だった。

その鋭利で容赦のない視線に、背中を伝う冷や汗が這いずる虫のように下り落ちる。

自分の命運はこの吉良吉影が握っているのだと、そして自分は操り人形に過ぎないのだと言うことを改めて思い知る。

 

「どうしたの?」

 

「すまない、なんでもないんだ。それよりもフィラスさんはこれからどうするんだい?」

 

同僚の頬を摘んでいた手を下ろし、表情を和らげて振り返る吉良。

するとフィラスは「うーっ」と犬みたいな唸り声の後に、吹っ切れたような短い吐息を付いた。

 

「ぐだぐだ言ってもしょうがないからねぇ。あたしはこのままギルドに向かうよ。またね!」

 

小さく手を振ったフィラスは、店主にも軽く会釈をして足早に店を出て行った。

 

「よし、俺たちも行こうぜ!なんだかあの子といると面白いことが起きそうだ!」

 

「……どうせ嫌だと言っても突っ走るんだろ」

 

「へへっまぁな!邪魔したな親父さん」

 

フィラスに続き、特に何もする事のなかった2人もその背中を追う形で武器屋を後にした。

そして店先で待ってくれていたフィラスと共に、きちんとした自己紹介を交わしながら冒険者ギルドへと向かう。

 

「ねぇあれって……」

 

「あぁ、間違いない…」

 

武器屋を出てからしつこいほどに感じる、なんだか珍しいものでも見るかのような視線。

通り過ぎた人々が必ずと言って良いほどに振り返るのを見た同僚は、まるで有名人にでもなったようだなと2人に言う。

だがそんな同僚の発言に対して「もう慣れちゃったよ」と言うフィラスの顔には苦しい微笑が凝っていた──────

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの可憐な姿…間違いなくフィラスたそだ………この世界に来てやっとどストライクな推しさんに出会えた……さんきゅーな」

 

街角の暗闇の中、不気味な笑みを浮かべる男は───

 

「【サーチ・オブ・トゥルース】」

 

そう自身の背後に立つ存在に呼びかけた。




キャラクター紹介に新キャラの詳細少し載せておくんだか……
しばらくやれてなくて申し訳ない…
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