吉良と同僚の奇妙な冒険 インフィニット・ジャーニー   作:わたっふ

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今回は少し、ほんの少しだけ長めです。
キャラクター紹介欄に、同僚とスタンドの先行詳細を載せておきました。


〜旅立ちの町バルティアン編〜
第3話 新たなスタンド【マインドクローン】


「俺の拳よッ!聖なる力で敵を打ち倒せッ!」

 

自分で言ってて恥ずかしいレベルの発言だったが、今の同僚にはそんな恥じらいの気持ちを打ち消す程の心の高ぶりがあった。

何せ夢にまで見た異世界で、自身に宿った不思議な力を使ってモンスターと戦っているのだから。

 

「今だッ!喰らえッ!!」

 

敵との距離を見極め、攻撃の届く範囲内に対象が入った瞬間、同僚は力強く握りしめた拳を叩き込む。

右ストレートが謎の生物の顔面に直撃するや否や、自分の腕に重なるように半透明な腕が現れた。

何事かと驚いていると、謎の生物は体をくねらせて悲痛な鳴き声を発しながら地へと落ちて動かなくなった。

 

「な……なんだこ───あれ?」

 

撃破されて絶命した謎の生物を横目に、同僚は視線を落として両腕を確認する。

だがそこにはもう、あの不気味な腕は存在していなかった。

更にそれと連動するかのように、いつの間にか周りに漂っていたオレンジ色のオーラも消えている。

 

「………なるほど」

 

自分の身に起こった様々な異変を振り返った同僚は、とある1つの結論に至った。

それはこの力が自分自身のものではなく、先程の不気味な腕の持ち主の力であったというものだった。

異世界へと転移した衝撃で、魂を持つ何者かに取り憑かれてしまったのだろう。

ただでさえ何が起こるか分からない転生や転移だ。

こういった事例もありうるのだろう。

 

「こうか……?ふんっ」

 

再度両腕に力を込め、側にいる見えない何者かを呼び起そうとする。

すると同僚の思いに答えるかのように、周囲にオレンジ色の波打つオーラが現れた。

そして体から魂が抜けていくような感覚に襲われた直後、両腕のすぐ傍に例の不気味な腕が出現する。

それは同僚の動作に連動して、同時に同じ箇所の指を動かしている。

 

「これは凄い……試してみるか」

 

秘めたる可能性を感じた同僚は、その腕に向けて脳内で指示を出してみる。

するとその腕は同僚の指示に従い、激しい動作から繊細な動作まで難なくこなして見せた。

 

「攻撃や防御も出来る……なんだか守護霊みたいだな!」

 

自身がパワーアップした訳ではないが《不思議な力を持った》という事実が同僚を喜ばせた。

十数秒ほど見つめていると、オレンジ色のオーラは徐々に空中へと消えて行き、その腕は同僚の腕にゆっくりと吸い込まれる。

どうやら取り憑いている者が体から現れ、この世界で行動出来る時間は限られているようだ。

 

「心で通じ合う……心の分身……マインド……クローン……」

 

顎に手を当てて空を見上げる。

 

「マインドクローン!よし、お前の名前はマインドクローンだ!宜しくな!」

 

自分の腕を叩いて、これから先の生活を共に歩んでいく《相棒》とも言える存在に名前をつけた同僚。

まだ片手しか見てないが、いつかはその素顔を見せてくれるのだろうか?

そんなことも一種の楽しみとして心に抱き、同僚は気持ちを新たに歩き出そうとする。

 

「gtwp4ps!」

 

「ん?」

 

と、その時、ふいに背後から聞いたことのない声が聞こえてくる。

振り向くとそこには、1匹の大きなトカゲを引いた荷車が止まっていた。

 

「aqt4t7?」

 

「え?」

 

「…………」

 

荷車の上に胡座をかいて座っている白髪のお爺さんが、無言のまま手招きをしている。

その不気味さに少々警戒つつも、同僚は初めて出会った人間にゆっくりと近づいて行く。

 

「mpk8ai65!dpq19s8m3?」

 

目の前に来るや否や、お爺さんが興奮気味な声で同僚に問いかけてきた。

何を喋っているのかは分からないが、どうやら生き絶えた謎の生物たちの姿に対してビックリしているようだ。

 

「あ、アイドンノー、ドント スピーク イングリッシュ〜」

 

アニメや漫画等の異世界では大抵日本語が使われることが多かったが、どうやらこの世界はそうではないらしい。

ならばと思い、同僚は片言の英語でお爺さんに会話は不可能であることを告げる。

するとそれを聞いたお爺さんは、腕を組んでしばらく考え込んだ末、ポケットの中から一粒の飴を取り出して同僚に投げ渡してきた。

口の中に放り込むような仕草をするお爺さんを見て、同僚は戸惑いながらもその飴を口に含む。

 

「(ん……何ともなんないぞ……?)」

 

特にこれといった事が起こらないことに疑問を感じた同僚。

再度お爺さんの方を見てみると、何やら飲み込むような仕草をしていた。

その指示に従って同僚が飴を飲み込むと、お爺さんが何度か咳払いして話し始める。

 

「儂の言葉がわかるかの?どうじゃ?」

 

「あ……」

 

同僚の驚いた表情を見たお爺さんは、胸をなでおろして満足そうに微笑んだ。

 

「ふむ。どうやら効いておるようじゃな。ハァ……共言の飴は安くないんじゃからの」

 

「あ……ありがとう…ございます」

 

《共言の飴》と言われた飴は、どうやら飲み込むとあらゆる言語が母国語に翻訳されて聞こえるようだ。

 

「お前さんがあのグランモたちを倒したのかい? 見たところ、武器無しで戦ったように見られるが」

 

「えぇ。まぁ、そうですね (グランモというのか……あの気味の悪い生物は)」

 

20代のころに吉良と一緒に遊んでいた、とあるRPGのゲームで授かった知識を活かして会話を進める。

大抵こういう序盤の会話の流れは掴めている。

まず初めに周りの状況を判断し、次に誰でもいいから人に会い、そしてその流れで街へ向かう。

この3つが大前提であり、揺るがぬ王道なのだ。

 

「あの、お尋ねしますが……ここから一番近い街は何処にあります?」

 

「ああ、街ならここを真っ直ぐ行った所にあるぞい。今から儂もそこに行こうとしていた所なんじゃが、乗っていくかい?」

 

チュートリアルのようにすらすらと進む物語に、同僚はクスリと笑ってお爺さんの手を取る。

車輪に足をかけて荷車に乗り込むと、所狭しと積まれている薬草のようなものを見つけた。

 

「お爺さん、この草は…」

 

「ああ、儂は薬屋をやっておってなぁ。それは治癒薬用の薬草じゃ」

 

見たことのない虹色に輝くその薬草に、同僚の目は釘付けにされる。

 

「そういえばお前さん、名は?」

 

「あ、同僚です。吉良の同僚って言います」

 

「キラノ ドウリョウ? 不思議な名前じゃの……あぁ、儂のことはラヴァンとでも呼んでくれ」

 

同僚と軽く自己紹介を交わしたラヴァン爺さんは、同僚の頭の上から靴のつま先までをまじまじと見つめる。

やはりこの服装は異世界では珍しいもののようだ。

いざとなったらこの服をマニアか何かに高値で売って儲けようと、同僚は下心丸出しで不気味に笑う。

 

「さ、そろそろ出発するぞい。しっかり捕まっておれ。落ちても知らぬぞ!」

 

「あ、ちょっ!まだ体勢がぁ〜〜!!」

 

そう言い放ったお爺さんは、トカゲに鞭を打って再び荷車を走らせる。

野太い叫び声が響き渡る草原には、爽やかな風が吹いていた────

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