吉良と同僚の奇妙な冒険 インフィニット・ジャーニー   作:わたっふ

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第7話 吉良吉影は静かに暮らせない(3)

 

「ふぅ……」

 

【キラークイーン】の拳を引き抜き、1歩2歩と後ずさる。

膝をついて力無く首を垂らす同僚を見下ろしながら、吉良は《自分を脅かす存在》であろう者をまた1人排除することが出来たことに、心からの安堵の息をもらした。

 

「わたしの『同僚』ということもあり、少々戸惑ってしまったが……最早君に対しての躊躇いは消えたよ」

 

【キラークイーン】の拳から滴り落ちる血の雫を払い退け、吉良は再び同僚の目の前に立つ。

亀友チェーン店に同期として入り、周りの人たちと違って積極的に話しかけてくれたこの男。

会社絡みの旅行は勿論のこと、プライベートで2人っきりの時間を過ごしたことも少なくはなかった。

故に吉良自身も始めのうちは無愛想に振舞ってはいたが、そのうち同僚に対する嫌悪感という物は次第に無くなっていった。

 

 

───しかし!

 

 

同僚がスタンド使いである事実と、自分にとって害である可能性がある事を知った吉良には、これまでの付き合いや関係などどうでも良かった。

自分自身の安心のために、築き上げてきた信頼を無に還す覚悟が吉良にはあったからだ。

 

「それじゃあ木っ端微塵に消し飛ばしてやるッ!!」

 

「…………っ」

 

「───ッ!?」

 

右手を振り上げた【キラークイーン】

するとその動きに反応するかの如く、俯く同僚の肩がピクリと動いたように見えた。

突然の事に動揺する吉良は、冷や汗をかきながらも最期の審判を下す。

 

「何だかわからんが───くらえッ!!」

 

「ぐっ……!!」

 

「な、何ッ!?」

 

だが次の瞬間、突如として同僚の背中から現れた【マインドクローン】が同僚を殺させまいと吉良に反撃を仕掛けてきた。

風を切って迫り来る【キラークイーン】の腕を両手で受け止め、がら空きとなった腹部へと渾身の連打蹴りを撃ち込んだ。

 

「はぐわァァァッ!!」

 

完全に勝ったと油断していた吉良は、その攻撃をまともに喰らってしまう。

ノーガードで受けたダメージは尋常ではなく、地面に叩きつけられた体は動かそうとするだけでも激痛が走る程だった。

 

「こ…こんな……こんなことが……ぁぁ…!」

 

口から溢れ出てくる血でスーツを真っ赤に染め上げた吉良は、髪を乱し、歯を食いしばりながら壁に手をつけて起き上がる。

 

「残念……だったな吉良。あいにく『マインドクローン』が……体の中でガードしてくれてな。腹は少し抉れちまったが……内臓までは届いてねぇぜ……!」

 

「ぐっ!」

 

「そして理解した……『マインドクローン』には……指を指した対象の動きを停止させる能力がある。自分の出血を止める事も容易いぜ……」

 

その言葉にふと同僚の腹部を見ると、それまで流れ出ていた血がいつの間にか止まっていた。

そんな吉良の視線に気づいたのか、同僚は荒い息を繰り返してそう告げる。

 

「なんで俺を攻撃するのかは分からないが、俺はお前を────」

 

そこまで言って、同僚は吉良から視線を外す。

目を見開いて口を開けた同僚は【マインドクローン】が殴り飛ばした大男を捉えていた。

頭から血を流し、ヨロヨロと起き上がった大男。

殺気立った顔つきで、腰につけてあった小さな2つの斧の刃先をこちらに向けた。

 

「mw…mwkpgd7……mwkpgdeaaa!!(こ…殺してやる……殺してやらァァア!!)」

 

斧を振りかざしてドスドスと迫り来る大男。

体を思うように動かせない吉良は、マズイと本能的に思った。

このままでは殺されてしまうと、何かが脳内で決定的な警報を発している。

それは同僚も同じようだ。

 

「くっ!吉良の痛みの感覚と出血を止めろォ!!『マインドクローン』ッ!!」

 

かつての同僚が殺されるかもしれないという危機感に、同僚は止む終えず吉良に【マインドクローン】の能力を使用する。

体を自由に動かせるようになった吉良は、視界に映り込む銀色に輝く凶器を目の当たりにして【キラークイーン】の攻撃対象を同僚から大男へと変更する。

 

「今は君を始末しないでおいてやるよ。いつでも殺す事は出来るからねッ!!」

 

顔面めがけて振り下ろされる斧を弾き飛ばし、仰け反り返った大男の体に【キラークイーン】の拳の連打を叩き込む。

認識できない強大な力の前に為すすべのない大男。

その手から滑り落ちる2つの斧の金属音が、悲痛な叫び声の響き渡る路地裏に反響する。

 

「こいつを爆破させたら、すぐに君も始末してやるからな」

 

「え───うぐッ!?」

 

横目で鋭い視線を飛ばす吉良。

 

──とその瞬間。

 

同僚の身に自分でも何が起きたのか分からない程の衝撃が走る。

蓄積したダメージが一気に押し寄せてくるような感覚を覚え、同僚は膝をついて口から血を吐き出した。

 

「こ、これは───」

 

同僚はすぐにその事態に察しがついた。

【マインドクローン】で停止した時間の中では、本来起きている筈の影響を『溜めておく』という性質があるのだろう。

となれば、次に起こる事にも予想がつく。

 

「吉良ッ!!気をつけろッ!!」

 

「何────グアッ!?」

 

恐怖に震える大男の頭部に【キラークイーン】の手刀を食らわせようとした瞬間だった。

同僚が感じたような激しい衝撃が、吉良の全身を駆け巡る。

一瞬の、しかも意識外からの不意の攻撃に、疲れ切っていた吉良は白目を剥いて気を失う。

 

「t…tmmm(ひ…ひぃぃぃ)!!」

 

地面に転がっている小斧には目もくれず、大男は何度も転びながらその場から逃げ出した。

そんな怯えた様子の背中を見送った同僚は、気を失った吉良の腕を自分の肩に回す。

そして力を振り絞って背中に担ぎ直し、震える足腰に鞭を打って立ち上がる。

 

「思い返せば……俺からぶつかったんだよな……素直に謝っておけば…よかった……かな…」

 

覚束ない足取りで、光が差し込む路地の出口へと向かう同僚。

ラヴァン爺の経営する薬屋まで辿り着ければ、荷車で見たあの治癒用の薬草で手当てをしてくれる筈だと。

 

「吉良……絶対に…お前を死なさない…からな……もう二度と…失うわけには……」

 

そう思っていた。

だが数歩ほど歩いた後、目の前の景色がグニャリと歪むように変形する。

頭が痛くなるような気持ち悪さと、体に溜まりに溜まった疲労感に、同僚は倒れ込むかのように再び地面に崩れ落ちた。

 

「お、おい大丈夫かい!?」

 

───とその時。

徐々に狭まっていく視界の片隅に、こちらへ向かって駆けてくる人影が映り込む。

意識が途切れる寸前に認識したその者は、焦った様子で同僚に手を差し伸べてきた。

 




1ヶ月以上も更新がなく、申し訳ないんだか……
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