では、どうぞ
昔、と言っても、俺が中学生の頃、俺はとある夢を見た。
いや、夢と言うには些か語弊があるかもしれない。
それは、暗い暗い地下の部屋。
広くもないその部屋には、1人の少女がいた。
美しい金髪をサイドテールでまとめ、不思議な帽子を被り、背中にはまるで木の枝に数々の宝石がぶら下がっているような、独特の羽を生やした少女がいた。
彼女の名はフランドール・スカーレット。
495年間、この地下の部屋に幽閉されている、一人ぼっちの少女だ。
「あなたは誰?」
「僕は八幡。比企谷八幡」
初めの方は、互いに会話が膨らまず、ただただ黙っていた。
会話が上手く続くようになってきたのは、この夢を見始めてから数日経った頃だった。
「あなたも、1人なの?」
「……うん」
「そっか……なら、私と一緒だね。良かったら……私と友達にならない?」
初めて出来た友達は、夢の中の少女という。
今思えば、夢の中に友達がいるなんて言えば馬鹿にされるだろうが、当時の俺は何よりも嬉しかった。
「ねぇ八幡。今日は何して遊ぶ?」
「う〜ん、今日はトランプで遊びたいかな」
「あ、そうだ。負けたら勝った人の言うことをひとつ聞くってのはどう?」
「いいけど、この前の様なズルはダメだよ?」
「てへ♪」
いつからか、呼び方はあなたから八幡へと変わった。
「お兄様!今日はこの本を読んで!」
「はいはい、ったくフランは甘えん坊だな」
「も〜、また子供扱いして〜」プクー
「ほら、早くこっち来いよ。ちゃんと読んでやるから」
「わーい、お兄様大好き〜!」
俺が高校に上がる頃、名前呼びがかわりお兄様と呼ばれるようになった。
長年一緒にいて、俺にとってフランは可愛い妹のような存在となっていった。
「ねぇお兄様」
「なんだフラン?」
「これからもずっとずっとずーっと一緒に遊ぼうね♪」
これから先も、変わらずこの夢を見続けると思ってた。
けど、そんなことは無くて、この夢を最後に、俺が彼女に会うことはなかった。
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「ッキー、ねぇヒッキーってば!!」
「へ?」
隣から聞こえてくる大声に、意識を呼び起こされる。
どうやら、いつの間にか考え事に没頭していたようだ。
「もうちゃんと聞いてるのヒッキー!」
同じ部員である由比ヶ浜結衣は、プクーっと頬を膨らまして、いかにも怒ってますアピールをしていた。
「はぁ、その男には何を言っても無駄よ、由比ヶ浜さん。なぜなら彼の耳は腐りきっているもの」
そして、部長である雪ノ下雪乃は、パタンと読んでいた本を閉じ、こちらに目を向ける。
「おい、さりげなく俺を罵倒するな。俺は目が腐っているだけだ」ドヤッ
「なぜ自慢げなのかしら」ヤレヤレ
雪ノ下は手を頭に置き、ヤレヤレと頭を降っていた。
美人がやると様になるな。
「で、なんの話しをしてたんだよ」
「あ、えっと、ゆきのんが、今日はもう終わりにするって言うからまだ時間あるからみんなで買い物にでも行きたいな〜って」
「私は別に行くなんて言ってないのだけれど……」
「え〜行こうよゆきの〜ん」
「はぁ、俺は行かないから、お前ら2人で行ってこいよ」
じゃれ合う2人にそう提案し、俺は帰る支度を済ませる。
「ヒッキーは一緒に来ないの?」
「あぁ今日は用事があってな」
「あら、あなたに用事なんてあるの?」
「ばっかお前俺にも色々あるっての。小町とか戸塚とか戸塚とか小町とか」
「ほとんど小町さんと戸塚くんじゃない」
「ほんとヒッキーって小町ちゃんとさいちゃん好きすぎだよね」
俺の答えに由比ヶ浜と雪ノ下は呆れた顔をする。
小町や戸塚の為なら俺はなんでも出来る気がする。
2人は天使だから仕方ないよね!
「てか、早く行かないと時間なくなるぞ」
「そうだね。じゃあそろそろ行こうよゆきのん」
「少し待ってちょうだい。平塚先生に鍵を返してくるから」
「いや、鍵なら俺が返してくるから、早く行ってこい」
「そう、それならお願いできるかしら」
「おう任せとけ」
「じゃーね〜ヒッキー!」
「さようなら、比企谷くん」
「またな、雪ノ下、由比ヶ浜」
2人の姿が段々見えなくなっていく。
俺はさっさと部屋に鍵を閉めて、平塚先生に鍵を返しに行った。
鍵を返し終え廊下を歩いているとき、先程奉仕部にいた時のことを思い出す。
昔見ていた懐かしい夢。
いつからか見なくなってしまった夢。
なぜ見なくなってしまったのだろうか。
考えても考えても、結局答えは分からない。
いつの間にか昇降口に着いた。
「まぁ、別にいいか」
あの夢を見なくなってから随分と経つし、今更考えても仕方ないと割り切ることにした。
「今日はいつもより早いし、早く帰ってごろごろするかな」
俺は靴をはきかえ、外に出る。
瞬間、周りに見えるのはたくさんの木々。
「……は?」
いつもの風景では無い。
辺りを見ても、誰もいない。
先程までグランドにいた部活動に励む生徒も、帰ろうとしていた生徒も、人っ子一人もいない。
まるで、自分だけが別の場所に迷い込んだ様な、そんな感覚。
頬をつねる。
痛覚は…………ある。夢じゃない。
「どこだよ……ここ……」
その呟きには、誰も反応しない。
こうして、比企谷八幡は幻想郷へと迷い込んだ。
次回から、東方Projectのキャラを出していきたいと思います。