薄暗い曇り空の下。
汚染地帯を抜けた先の廃墟となった街を一台の多脚戦車が行く。
いつかどこかの世界でタチコマと呼ばれたそれは、胴体に備えられた三つの観測機器を忙しなく動かしながら誰一人としていない道路を進んでいた。
『ビルのドアの大きさ、打ち捨てられた義体の姿形からしておおよそ私の知る人類の文明のようだけど……。
21世紀に生きていた時代よりも技術は同じぐらいか、ちょっと下ぐらいかしら?』
タチコマに乗せた電脳の中に居る人(仮)は、飛ばしたドローンやタチコマの観測機器から送られてくる情報を処理しながらも思考を重ねる。
『うーん、滅んで、生まれて、また滅んで、生まれて。まるでループね』
しかしループ、ループかあ、と呟けば、イメージに過ぎないはずの背筋に悪寒が走った。
『あー、やめやめ、これ、考え過ぎたら多分やばい奴』
ぶるりと体を震わせ、頭を振り思考を切り替える。
使えそうなジャンクをドローンで見つけ、タチコマで漁る事を繰り返す。
『機械系の装甲は鋳つぶして使えば、まーなんとかなるでしょ。
ならなかったら、なるようにウチのロボットを再設計かなあ。とりあえずデータだけ送って分析してもらいましょ。
生きてるAIなんかがあればいいんだけど――AI関連がかなりイってたのよねえ』
ひょい、と三指のマニピュレータを器用に使い、頭部の無い義体をコンテナへ入れていく。
『弾薬はまだ使えそう……うわっ、ビニールパックどころか缶詰も膨らんでる。
時計は生きてるわね……うへぇ、分かってたけど賞味期限切れてるぅ。
成分調査のために持って帰りたいけど、帰りに重量物を搭載した状態での機動テストする事を考えたら今度にした方が良さそう』
コンテナ内で荷物がぶつかり合い中身をぶちまける可能性を考えると、洗浄するとしても流石に嫌だろう。
膨らんだ糧食を脇にどけ、弾薬と鉄屑等を分別する。
『周囲に散乱している義体の性能からして技術力はヴルタウムの方が圧倒的に上。
でも、生体部品に関してはかなり進んでる――女性型が多いなあ。
そう言えば、私もタチコマに乗ってると女性寄りに変わりつつある気がするけど……やはり女だったのだろうか?』
たまに記憶っぽいのがチラつくけど思い出せないんだよなー、等とぼやきながら探索を続ける女性(仮)。
『お、頭部の無事な義体だ。でも、AI保全用の電源も死んでるから無線はダメかー。
なら有線でっと……大体頭部の近い所にコネクタが――お、あったあった』
首筋の後ろに薄っすらとではあるが継ぎ目がある。
タチコマの左腕からプラグを出し、義体の継ぎ目に上手く引っ掛けて接続端子を露わにする。
しかし、ここで問題が発生した。
『規格が合わない、だと……!』
なんてこったい、と人間が肩を落とすように、がっくりとタチコマの足を曲げて落胆を表す。
それでも貴重な頭部のある義体である、空のコンテナに大事にしまい込み、再び探索を開始する。
『んー、コネクタの規格がどれも合わないのも含めて考えると……やっぱり新しく文明が生まれたのかなあ』
しっかし使えそうな部品を片っ端から入れていく様は、まるでハクスラやサンドボックス型のゲームのようだなあ、等と思考しながら進んだ先に、ドローンが僅かながらも動体反応を検知した。
『おっと、光学迷彩起動……』
熱光学迷彩を起動し、タチコマを物音のした方へとゆっくりと近づけていく。
ドローンの画面には、崩れ落ちたビルの瓦礫が散乱しており、その瓦礫の下敷きになったのだろう少女型の義体の上半身が見える。
武装も半壊した銃器のみで、右腕に持ってはいるが武器として使う事は不可能だろう。
『戦闘力無し。私からしてみればラッキーではあるけどね』
彼女からしてみればアンラッキーだろうけど、と呟きながら近づけば、その義体の悲惨さが露になった。
綺麗だっただろう金の髪と顔は砂ぼこりで汚れている。
その上、顔の左側の肌が消失しており、押しつぶされた腹部からは内部の機械がいくらか露出していた。
タチコマの光学迷彩を切り、あえて足音を立てながら半壊した義体へと近づく。
足音に気付いた義体がタチコマへとゆっくりと視線を向ける。
「鉄血の……新兵器……!?」
苦悶に歪んでいた義体の右目が吊り上がり、強い敵意を孕んだ視線へと変わった。
機能不全で震える右腕で銃を向けるも、その動作に意味がない事は両者ともに分かり切っていた。
タチコマは構えられた銃器を無視し両手を上げ、のっしのっしとどこかコミカルに歩きながら、外部スピーカーを起動した。
「やっほー。大分手酷くやられてるみたいだけどちょっとお話しいいかなー?」
「は、え?」
あんまりにも能天気な声で声をかけられたもんだから、義体の思考にいくらかの空白が生まれる。
タチコマを操る人工知能に知る由もないが、義体が敵対している組織は多脚戦車を用いている。
そう、彼女はぶっちゃけ敵と思われていたのだ。
「大分きつそうじゃない。助けは必要かしら?」
「助けッて……私ニ……とどめデも、刺す気?」
義体が怪訝そうな声を上げる。
その音声も所々ノイズが走っている。
発声器官もイカレているのだろう。
「やーねー、そう言う助けじゃないよ。もっとシンプルに、生きたいかって話よ」
「……貴方ノ……所属は?」
『分かっちゃいたけど勢力は二つ以上。で、この子は戦闘用かな。受け答え次第では機密保持のために自殺しそうねえ……』
「あー……民間、と言うかフリーになるのかしらね? まあ、ただのジャンク漁りよ。少なくともちゃんとした組織に所属しているわけじゃないわ」
「ソう…………」
義体が僅かに考え込む素振りを見せるが、状態がかなり悪いのを人工知能は見抜いていた。
「思考するのもきついって感じね。記憶がトんじゃう前に勝手に吸い上げさせてもらうから、その後に生きるか死ぬか決めてね」
「なにヲすルつもり……!?」
「ダイジョブダイジョブ。びしょうじょのわたしにすべてまかせなさーい」
びしょうじょのわたし、とはなんだったのか覚えていないが、いつかどこかで、そうしたお茶目をやったような気がした。
「マさか、ヤダ……死んジャう……ヤメッ!?」
義体が言い終わる前にハッキングを開始。
機密保持のためのプロテクトが走るよりも早く無効化。
『コアっぽいのと連動してなんか抑制してるのとかも取っ払っちゃえー、ぽいー』
そうして残ったデータ全てを吸い上げ、素早く仮想空間に再構築してみせた。
『あれ? あれ? ……私、生きて、痛くない……手足がある? 顔も……それに、ここ、どこ?』
仮想空間に漂う金髪の少女。
状況が一瞬で激変したのもあって、自分の体や周囲を落ち着きなく見渡している。
混乱している金髪の少女の前に、その下手人が姿を現した。
『やっほー。手短に言うけど貴女の記憶と体を仮想空間で再現したわ。
ああ、後、絶対服従とか思考の制御とか、受け答えに不具合が出そうなのは誤魔化してるから大丈夫』
『そんな事したら、私……!』
『ああ、元の組織に戻る時はその辺弄った記憶もちゃんと処理するし、破ったプロテクトもバレないようにちゃんと復元するわ』
そうすればちゃんと帰れるでしょ? と言って下手人は笑った。
どこか優し気な目で見られるのが落ち着かないのか、金髪の少女は視線をしばらく彷徨わせた後顔を伏せた。
『……もう帰る場所なんてないよ』
『組織が壊滅したの?』
『壊滅したのは所属していた基地。あたし達のバックアップも全部消滅してる』
『それなら合流すれば――』
その言葉に少女は弱々しく首を振った。
『基地を守れなかった人形なんかに食い扶持を与える余裕なんてないよ。もっと高性能な人形ならともかくね。
運が良ければコアや戦闘用の部品を回収分解されて民生品に戻るか、悪ければ盾として最前線で使い潰される』
『それは――』
『民生品に戻れたってこのご時世だよ、指揮官が就職先を世話してくれるんならともかく、まともな就職先なんてないし
運が悪ければタチの悪いのに目を付けられればバラされてお終い。
野良として生きていくとしても戦闘能力がなければあなたみたいに戦場で死体漁りして生きていくのも難しい。
所属してた基地を守れなかった時点であたしは詰んでるんだ』
諦めを滲ませた表情で小さく首を振る少女。
どう声をかけたものかと悩むが、少女の肩に手をかけ、身を屈ませて視線を合わせた。
『単刀直入に言うけれど、こちらとしては人手が欲しいのよね』
『それは……あなたの所に来いと?』
『そうそう、使い捨てたりとかしないから。ああ、私の現状とか知らないと判断材料無いわよね。
言語化すると長くなるし面倒だからイメージを流すわよ』
『ちょっ!? づぅ!!』
一度に大量の情報を流された少女は表情を歪め、頭を押さえ、呻く様につぶやいた。
『……ちょっと、これが現実だったらオーバーフローで私の頭が焼き切れてたよ!』
『あっちゃ、ごめん、まだ慣れてなくて』
『はぁーーー……流石は遺跡産のAIと言った所よね。うっわ、これ情報処理に時間かかる奴だ……』
『ふうん、そちらじゃ私みたいなのが一応認識されているんだ?』
『そりゃあね、今の世界の惨状も遺跡が原因だし……って、あなた、私の記憶の全てを見たわけじゃないの?』
こういう事が出来るんだからさあ、と呟き小さく首を傾げる金の少女に下手人は軽く笑いかけた。
『その辺は話し合える状況になってからと思ってね。そのまんま丸っとコピっただけ見てないわ』
『はあ……強引な癖に変な所で律儀なのね、あなた』
金の少女は呆れたようにため息を吐き、半目で言う。
『ところで』
『なにか?』
『びしょうじょって言ってたけど少女って感じが全然しないし、あなたって男なの、女なの?』
目の前に人物は中性的で背の高い美人ではあるが、それがまた性別の判別を難しくしている。
その質問に対して下手人は軽く肩をすくめて見せた。
『さあてね、どちらに見える?』
そう言ってニヤリと笑って見せた。
『うーん、女性かなあ?』
『そうかそうか、ではそう振舞うとしましょうか』
『なによそれ』
『実の所、私にもわかっていないのよ』
不敵な笑みは苦笑いに変わり、どこか困ったような声音でされた返答に、金髪の少女は言葉を詰まらせた。
『それより一旦帰還するわよ。修理するにしろなんにしろ、ここじゃあ無理だからね』
『分かった。とりあえずまだ死にたくないし、そっちに従うよ。
あ、ところで名前何て言うの? 私はスコーピオンって言うんだ。好きに呼んでよ』
そこで困ったのがこの女(仮)。ほんの数俊だけ考える素振りを見せる
『悪いわね、実は名前も思い出せないのよ。とりあえず、そうね――』
未だに名前も記憶もないのだが、当座の呼び名が必要だろうと言う結論に行きついた。
『船長、とでも呼んでちょうだい』
『うん、よろしくね、船長』
『よろしく、スコーピオン。さあ、それじゃあ出発よ』
仮想空間をタチコマの視点へと切り替え、寸断されたスコーピオンの上半身をコンテナの中に入れ、タチコマの足をタイヤ状に変形させる。
「ちょっと、私の体もっと丁寧に扱ってよーって鉄血の人形と一緒に放り込まれるとかヤだぁ……。
あ、銃も回収してー」
「はいはい。と言っても、もう新しく作った方が早いわよ。それより試運転がてらに飛ばすから」
警戒しながら動いてたから全力運転してないのよねー、と楽しそうに笑う船長。
その表情に思わず不安そうな顔になるスコーピオン。
「嫌な予感しかしないんだけど」
「コンクリートにぶつけたぐらいじゃ壊れないから」
「ぶつかる前提なんだ……」
「シミュレーターでは市街地戦を散々やったからいけると思うのよね」
「本当に嫌な予感しかしない」
楽しそうにけらけら笑う船長とは対照的に、スコーピオンはげんなりとした表情で肩を落とすのだった。
「さあて、それじゃあいってみましょうか!」
タチコマのポッドより粘着ワイヤーをビルの壁面へと射出。
ピンと張られたワイヤーがタチコマの体を一気に引き上げる。
「うひょぉ!?」
タチコマの脚部が壁面へ張り付くと同時に隣のビルへと液体ワイヤーを射出し次々と高度を上げていく。
あっという間にビルの屋上へと駆け上り、屋上を高速で走行。
「うっはぁ、速い速い! 凄いねぇ!」
「次のビルへ飛び移るわよ!」
「手前のビル崩れててかなり距離があるけどぉ!?」
「四脚で跳ねるから大丈夫よ。それぇ!」
勢いそのままに跳躍。
車では不可能な距離でもタチコマなら楽に飛び移る事が出来る。
ローラー走行で更に加速、四肢を使いし跳び、ワイヤーで移動する様は、まるで飛行しているかのように見える。
更に屋上から屋上へ跳び、時折、壁面にワイヤーをひっかけ空中を高速でカーブしていく。
タチコマの観測機器がビルの壁にぶつかりかねないほどぎりぎりを責める移動に、スコーピオンが悲鳴を上げる。
「ちょちょちょ、今の壁ギリギリぃ!」
「安心しなさい。伸縮性とかもちゃんと考えて十分余裕をもたせてるわ」
ワイヤーが伸び切る前に切断し、勢いを増してかっ飛んでいくタチコマ。
ジェットコースターのように乱高下させては加速していく。
「ちょっと楽しいけどやっぱり怖いぃぃぃ!」
街外れの最後のビルの屋上へと到達するも、船長は速度を落とすことなく駆け抜ける。
「その先にビル無いんだけどぉ!?」
「大丈夫大丈夫! 性能的にはいけるはずだから!」
「いけるってそのまま着地すんのぉ!?」
一瞬タチコマの体が沈む、次に全力で跳躍。
自由落下するタチコマの電脳の中で、泡を食ったスコーピオンが思わず船長へと抱き着いた。
「怖い怖い怖い本当に大丈夫なの!?」
「代替手段あるから大丈夫よ」
「代替ってどうすんの!?」
「私たちのデータだけドローンに運んでもらうわ」
「落下死する恐怖に変わりはないよ!?」
あっはっは、と笑いながらスコーピオンの頭をガシガシとなでる船長。
重心に気を付けながら広げた脚でタチコマを滑空させ、脚部を上手く地面に接地させてみせた。
四つの脚が衝撃を吸収しようと関節を曲げ、タチコマの胴体が地面すれすれを掠め、火花を散らす。
凄まじい土埃で見えにくくなった後方にそびえ立つビルを見上げながらスコーピオンは呟いた。
「うっわぁ……本当に無事に降りちゃったよ」
「中々楽しかったでしょう」
にやりと笑う船長をスコーピオンは半目で睨む。
「気分転換させてくれたのはなんとなく分かる……って言うか、感情漏れてるよ」
「ありゃ……こう言うのはあんまり慣れてない……うん、慣れてない、はず?」
「いいけどさ……悪い気はしないし」
ごめんね、と拝む船長にスコーピオンはため息一つでさらりと許した。
実の所、悪い気はしないどころかかなりの上機嫌である。
使い捨てにされるだけだった筈の生。
そこに寄り添うような優しさを直に感じられるやり取りはこの上ない安堵感をもたらした。
気恥ずかしささえ感じ始めたスコーピオンは、与えられた情報を処理し始める。
「しかし、ふわふわしてちょっと落ち着かないなあ」
「ああ、そうよね。少し待ちなさい」
宇宙空間のように浮く感覚に座りの悪さを感じている様子のスコーピオンを見て、船長は椅子とテーブルを出現させて座らせた。
ようやく落ち着けたスコーピオンは、叩き込まれた情報を咀嚼しながら周囲の様子をうかがう。
「それで、こっち側って汚染地帯で――ああ、そう、人間はおろか鉄血さえ居ない所が本拠なのね」
「そうそう、ある意味ラッキーだったわーっと」
「汚染地帯の先の山の空洞? ほーん、鉱山……涸れてるのにE.L.I.D感染者がなぜ? ……撤収中だったのかな?
うん? 除染装置!? 食料品培養!? 宇宙工学に他惑星に植民する宇宙船……ちょっと待ってよこれ、どう考えても存在がバレたらやばい奴だよこれぇ……」
「うーん、やっぱり?」
苦笑いする船長に、頭を抱えながらじっとりとした目線を寄越すスコーピオン。
「もう、面倒だからあたしの記憶覗いてよ」
「あら、いいの?」
全部いいよ、というスコーピオン。
それじゃ遠慮なく、と船長。
全てを委ねるにも等しい行為だが、スコーピオンはもう色々と諦めた。
思考や記憶を覗かれるのは人形として日常茶飯事でもあったし、船長がその気になれば抵抗は無意味だという事もある。
何より、船長を信じても良いかと思う程度には絆されていた。
「……なるほど。この情勢だと垂涎ものの技術だったわけかー」
「それだけで戦争吹っ掛ける理由になるレベルだよぉ……」
「ところで、人工知能とかに人権みたいなのが――」
「人と同じように適用されると思う? 権利の全てが無いとは言わないけど基本的に奴隷みたいなもんだよ」
ぐでーっとテーブルに突っ伏し、顔だけこちらに向けるスコーピオンを見ながら船長は考える。
(私みたいなのも人工知能のくくりにされる事を踏まえると、なるべくバレないように開発を進める必要があるわね。
手を出しにくくなる程度まで戦力を整えて――どうする?)
とんっとテーブルを指で叩き思考を加速させる。
(――よし、最終的には宇宙に逃げよう。地球の資源を巡って全面戦争するのも面倒だし、それなら宇宙開発の方が良いわ。
それに、なんだかその内人類自爆して地球を汚染し尽くしそうなのよね。
一時避難先に軌道居住区を作って――ああ、その前に宇宙港と拠点防衛用の衛星が先ね。行く行くは新しい惑星をテラフォームしてそこに入植)
船長はある程度思考を纏めると、スコーピオンに意識を向けた。
(うーん、出来ればこの子に来て欲しいわね。
育ったAIが欲しいのもあるけど、この子良い子っぽいしどうにか説得できない物かしら)
同情もある、打算もあるし、好意もある。
うんうんと悩む船長であったが、その思考の大体が隣のスコーピオンに漏れていた。
好意的な感情による褒め殺しにも似た状況に、羞恥を感じながらも、喜びもまたあったのだ。
「いいよ」
「ん?」
首を傾げる船長に、スコーピオンは顔を赤らめながら苦笑した
「うん、だからね、あなたと一緒に行くよ、船長」
「ほんと!?」
うん、と小さく頷くスコーピオン。
喜色を滲ませて抱き着いてくる船長を抱きしめ返しながら、スコーピオンもまた顔を緩ませた。
「また感情漏れてるよ」
「うーん、今はいいかなって。今度直すよ」
「あー、うん、別にあたしも嬉しいから良いけどさ」
なんとなく、本当になんとなくではあるが、これから先の未来は明るいのではないか。
そう考えたスコーピオンは抱き着いてきた船長にそっと頬を寄せるのだった。