先駆者達の遺産   作:maple_forest

21 / 26
第21話

 その日、エクスキューショナーは警備の任務を終えようとしていた。

 彼女は今、人類の隔意の無い人形と言う事で船長が購入した土地の一画、人間と人形が一緒になって炊き出しをしている区画の見回りをしていたのだ。

 

 人類と交戦している鉄血の人形だが、別に人類すべてが憎いと言うわけではない。

 ぶっちゃけエルダーブレインを狙う(ファッキン将軍)と、その手先(ファッキングリフィン)が敵と言うだけなのだ。

 そのグリフィンにしても、トップや現場の一部が人形に対して友好的でも、他では案外そうでもなかったと言う事実がグリフィン人形に対しての敵意を更に和らげている。

 

 鉄血内部でも、完璧な人間を作ると言う研究のため様々な性格のAIを育成した結果、性格の歪んだ人形(ドリーマー)や、承認欲求を拗らせた人形(ウロボロス)によっていざこざがあったがそれはそれ。

 今では自由の身となったエクスキューショナー。鉄血から逃げ出した彼女は自分に使われている技術の全てを船長に公開し、それらは全てIOP社に提供された――と言う事になっている。

 もちろん、彼女の中身は今や全くの別物。初期状態の技術をエージェントが船長を通して売却したのだ。

 

 本機の解体調査も提案に上がったが、お金と新技術をちらつかせた船長によってそれも回避した。

 暴力は振るわないが、暴力的に利権を絡ませ、笑顔の裏で割とダーティーな事もやる彼女であった。

 

 こうして、徐々に鉄血工造からハイエンドモデルが消えつつある。

 エリザの成長に全てを捧げられるはずの鉄血工造ではあるが、今の状態で勢力として無理に残す必要もなく水面下で解体作業が進められている。

 鉄血工造の持つ生産力は確かに惜しいが、今から船長達の技術力に合わせて工場を新調する余裕もなく、それならば人類に渡し、使用してもらおうと言う企みである。

 生産されたものは人類の貨幣で後々買い取る、或いは出資させるつもりなのも性質が悪い。

 

 政府に対して彼女達が遅滞行動を行っているのは、一度に引き入れると疑惑の目が強くなると言う判断からで、そうした工作によって鉄血工造は未だに本腰を入れて排除されていない。

 

 また、船長は情報収集により人類が崩壊雲等を越えて新たに宇宙開発に乗り出す余力はないと判断。

 建設船の建造を急ぎ、宇宙港の建造に注力し始めた。

 

 なお、こうした諸々の真相はウロボロスには何も伝えられず、他のハイエンドモデルは特殊任務に出ていると伝えられており、激務をほぼ一人でこなしているのだった。

 

 

 

 ウロボロスは既に涙目だ。そろそろ許してあげても良いんじゃないでしょうかエージェントさん。

 

 

 

 エリザは船長の養子として登録され、今は人間として行動している。

 鉄血が襲撃される直前までエリザのボディは完成しておらず、鉄血内部まで侵入した兵は全て殲滅された。

 その上、エージェントが第三勢力であった船長を警戒した結果、彼女は全く表舞台に立っていない。故に彼女の容姿とオガスが組み込まれている事を知るものは誰一人としていないのが現状だ。

 

 

 

 

 それはそれとして、今日のエクスキューショナーは鼻歌でも歌いそうなほどに上機嫌で通りを歩いている。

 炊き出し場で働いている子供からは怖い大人を止めてくれる頼れるお姉さんとして認識され、彼女を見かけるとよく声をかけたり手を振ったりしている。

 彼女はそれらに手を振り返したり、異常が無いか尋ねて回っている。

 そこに、年嵩の男が現れ彼女に声をかけた。

 

「おう、姐さん、今日はもうあがりかい」

「ああ、この後は友人と飲む予定だ。いやあ、楽しみだぜ」

「ここ最近は忙しかったからな、わけ分かんねえ宗教家は来るし」

「ELID治すって言うから方法聞いたら答えねえし、発狂するわで散々だったな……」

 

 思わず遠い目をするエクスキューショナー。

 なんだか法衣だか何だかよく分からない綺麗な身形をした人が難民に声をかけていたのを見かけた彼女だが、どうにも難民が困っていたので割って入った。

 そうして、事情を聴く内に内容は支離滅裂になり、暴力を振るおうとしてきたのでそのままお帰り願ったのだ。

 

「ELID治すって言いながら具体的な方法を示せないってなんだよ」

「どうせあれだろ、上の人間が信者をいい様に使ってるんだろ。無事な内臓とかなら使うとかそんなのじゃねえの?」

 

 エクスキューショナーの言葉に、年嵩の男が口角を上げ皮肉気に答えた。彼女はそれに一つ頷くと、呆れたように言う。

 

「ああ、ウチの船――社長も似たような事言ってたな。助からない人間をターゲットにしてるんじゃないかって」

「だろうなあ。あんなの困ってる人間ぐらいしか縋らんだろ」

「困窮してるなら騙されるかもしれんがなあ」

「今もこうして炊き出しやら義肢なんかも提供されてるしなあ」

 

 頷きあう二人だったが、エクスキューショナーは時間を確認すると、嬉しそうに笑った。

 

「おっと、そろそろ時間……えっ? ……マジか? ……マジかぁ。他に対応できそうな奴は……居ないからオレに連絡したんだよな。いや、いい、お前が謝る事じゃない」

 

 だが、そこで彼女に通信が入る。あまりにも衝撃的な事に、思わず口からも声が漏れている。

 

「お、おい、どうしたんだ?」

 

 その有様に年嵩の男が心配そうに声をかけると、彼女はまたしても遠い目をするのだった。

 

「残業……確定したわ」

「おおう……問題発生か?」

「問題っつーかなんつーか……ちょっと行ってくるわ」

「おう、またな」

「ああ、また」

 

 そう言ってエクスキューショナーは通信を開きながら通路を足早に通り過ぎていく。

 

『ハンター、すまん、帰りが遅くなる。例の連中が来たらしい』

『そうか、頑張れよ』

 

 帰りに飲む約束をしていたハンターの返答はすさまじあっさりしたものだった。

 

『おまっ! 相棒に対してちょっと冷たすぎない?』

 

 あまりにもあっさりしすぎていたので、これには思わずエクスキューショナーが口調を荒げて抗議する。

 そこで一度間が空くと、再びハンターからの通信が届いた。

 

 

 

 

『がんば♡』

 

 

 

 それは凄まじく甘ったるく、ねっとりとした響きだった。

 甘いアイスクリームの上に、更に蜂蜜をかけ、その上にシロップ重ねがけし、粉砂糖をふるった上に溶かして混ぜ合わせたかのような甘さを含む声。

 

 

 色んな意味で電脳を焼かれぞくぞくしたエクスキューショナーが思わず絶句するが、すぐに通信で叫ぶ。

 

『おまっ、可愛く言えばいいってもんじゃねーよちくしょう!』

『ふむ。何時も冷たい印象を受けるらしいからやってみたが……ダメか?』

 

 更にあざとさ全開で囁くハンターにエクスキューショナーは思わず勢いを削がれた。。

 

『いや、ダメじゃない。と言うかちょっとグッと来た……ってそう言う事じゃねーよ!』

『はっはっは、と言ってもわたしにできる事もないしな、仕事を頑張ってくれ』

「くそっ、切りやがった……」

 

 通信が切られると、エクスキューショナーは更に速度を上げる。そうしてついた先はターゲットがいる酒の販売店だった。

 ターゲット――M4と指揮官、それとM16が談笑している様が見える。

 

(こいつらのせいで残業になったんだよなあ……仕方ないのは分かるが)

 

 思わず眉間が寄るのが分かる。楽しそうにしやがってと言う八つ当たりにも近い感情だ。

 険悪な表情のエクスキューショナーに気付いたM16が身構えそうになるが、それを見た彼女は一つ息を吐くと表情を常のものに戻した。

 

「悪いな、昔の癖で睨んじまったよ。お前もそうだろう?」

「……ほう」

「やる気はねえよ。オレは今ここで働いてるんだ、拾ってくれた社長の顔に泥を塗るわけにもいかねえしな。ただ、お前らがやり合うつもりなら話は別だ」

 

 警戒を続けるM16にエクスキューショナーは肩をすくめて見せる。

 それでも中々警戒を解かないM16だったが、そこに指揮官が割って入った。

 

「まあまあ、待てよ。俺達も面倒事は起こす気はない。今を時めくノアに逆らう奴はいねえし、ここで面倒事を起こせば俺の働いてる会社にも迷惑がかかる」

 

 ニッと笑う指揮官に、エクスキューショナーも同じように笑みを見せる。

 

「おっ、話が分かる人間で助かるぜ。そら、そっちのお嬢さんもそう睨まないでくれよ」

 

 割って入った指揮官のその後ろ、M4もまた警戒を強めていたが、彼が一度手を振ると表面上は警戒を解いて見せた。

 

「まあ、楽しい買い物を邪魔して悪かったな。お詫びと言っちゃなんだが、ここの案内をしてやろうか?」

「おう、頼むわ」

 

 エクスキューショナーは彼が話の分かる人間だと察すると、自分の顔の隣で手を広げると提案するのだった。

 それに僅かに考える素振りも無く指揮官が頷く。

 

「随分決断が早いな」

「ここを見て回るつもりだったからな。こう言うのは現地の奴に聞いた方が良い」

「で、どこを見て回るつもりだ?」

「そうだな、出来れば配給所だとかそういった類の場所はあるか? そこを見たい」

「別に構わないが……何か理由があるのか?」

「まあ、ちょっとな」

 

 思わず言葉を濁す指揮官だったが、エクスキューショナーは追及するのを止めた。

 彼女の目的は時間稼ぎであり、ここで彼等に断られると、とても困るのだ。

 

「まあいいさ、案内が必要だって言うならするが、特に変なもんはないぞ」

「そうかい、そりゃあいい事だ」

 

 エクスキューショナーは三人に背を晒し、敵意が無い事を示し歩き出す。

 指揮官はM16とM4に目配せすると、すぐに彼女へと続いた。

 

 そうして炊き出し場まで戻ったエクスキューショナーだったが、引き連れてきた三人と一緒に居るのを見て他人は案内の仕事だと思ったのか特に絡んでくることはなかった。

 先ほど話していた年嵩の男も視線を向けるだけで何も言わず、すぐに食材を運ぶ作業へと戻っていった。

 配給を配る人形に礼を言う難民。簡易キッチンで食事を作る年配の女性や、後ろで皿を洗う子供など様々だ。

 

「なるほど、揉め事も無い……良い所なんだな。案内ありがとよ」

「いいさ、大したことじゃない」

 

 周囲を見渡した指揮官は安心したかのように息を吐くと、エクスキューショナーに礼を言うのだった。

 そこで離れそうな気配を感じ取った彼女は、彼等に一つの提案をした。

 

「そうだ、ついでに食って行ったらどうだ? お前ら一食分なら全く問題ないぞ」

「あー……俺らは別に、ちゃんと飯食えるだけ会社から金貰ってるし――」

 

 断ろうとした指揮官だったが、朝から何も食べていなかったのと、周りから漂ってくる匂いに思わずお腹を鳴らすのだった。

 そこに先ほどの年嵩の男が笑いながら歩み寄ってきて、彼の肩を陽気に叩くのだった。

 

「気にすんな気にすんな、良いから食ってけって、美味いぞ。そっちの嬢ちゃん達も食ってけって、な?」

「うぐ……すんません、頂きます」

 

 恥ずかしそうに鼻の頭を掻く指揮官と困惑するM4とM16だったが、指揮官が空腹に負けて食事を受け取りに行くのを見ると、彼女達もそれに続いたのだった。

 後に残されたエクスキューショナーは年嵩の男に目礼すると、彼はウインクし軽く鼻を鳴らすだけで何も言わずに去っていった。

 彼は特に知らないが、エクスキューショナーが引き留めたいのだろうと言う意図を何となく察し、そのフォローを行ったのだ。

 

 それぞれ食事を口にするグリフィン組だったが、炊き出しにも豊富に香辛料や新鮮な食材が使われているのに驚き、また喜びながら会話に花を咲かせる。

 そうして指揮官は食べ終わると、二人を置いてそれぞれ周りの人間や人形に話しかけ、ここの現状を聞き取り始めるのだった。

 

「よう、美味かったろ」

「……ああ、美味かった」

 

 エクスキューショナーはM16に友好的に近づき笑いかける。

 幾らか険の取れたM16に、エクスキューショナーは指揮官を見ながら口を開いた。

 

「ここには色んな奴が居るからな。オレみたいに鉄血を抜けた奴、捨てられた人間に人形――あんま大きな声じゃ言えないけど、お前らの所から逃げてきた奴とかな」

「それは……まあ、居るだろうな」

「だからまあ、あんまきつい事言ったりしないで見逃してくれ。あそこの配膳してる人形が見えるか」

「ああ」

 

 二人の視線の先に、ふんわりと笑う給仕姿の人形が老人の手を引いて席に座らせ、配膳を熟している姿が見える。

 

「あいつは人間に捨てられたが、今でもこうして笑顔で人間に奉仕している。ああやって人間と人形が協力して出来上がったのがここなんだ。だから、それを潰されるとオレ達は凄く困る」

「別に、私もここを破壊してやる等と言う事は考えていないさ。ただ、ちょっと面食らっただけだ」

「そうか。まあ、そうだよなあ」

 

 そうして席に座ったままの二人だったが、視線に気づいた給仕姿の人形が笑顔で近寄ってきた。

 

「何か御用ですか?」

「いんや、ちょっとお前の話をしていただけさ」

「あら? 私の話など面白い事はないでしょうに」

「ちょっとここの成り立ちみたいなもんを話しただけさ、込み入った話はしてないから安心しろ」

「まあまあ、そのようなお気遣いなどなさらなくとも良かったのに」

「そうは言ってもなあ……」

 

 思わず頭に手を置いたエクスキューショナーだったが、給仕姿の人形は口に手を当てくすくすと笑っている。

 あまりにも穏やかな雰囲気の人形に、M16は思わず口を挟んでしまった。

 

「その、君はいったいどんな経緯でここに来たんだ?」

 

 M16のその言葉に、給仕姿の人形はなんとも無い事のように己のいきさつを語り始めた。

 

 彼女はある裕福な家庭に買われた人形だった。

 たった数年ではあるが、そこで良く働き、主人からも良くしてもらい、全てが順風満帆だった。

 だが、主人が結婚してからは風向きが変わった。

 

 そう、老いもせず、何時までも美しい人形に妻が嫉妬したのだ。

 

 主人の居ない場所で事ある毎に罵倒し、仕事ぶりに難癖をつけ始めた。

 彼女は制限から何も出来ず、ただただひたすらに耐え続けた。

 しかし、それでも気の晴れなかった妻は、人形の顔を焼き、外へと捨ててしまった。

 

「うわあ……」

「ここに拾ってもらうまで色々大変でしたわ。内臓機能まで停止させられなかったので何とか生き延びましたが」

 

 くすくす笑う給仕姿の人形に、思わずM16は戦慄した。

 制限されているはずのものが無い様に感じ、どこか黒いものが溢れているようにすら見える。

 

「君は、その、人間を恨んでいるのか?」

「イイエ、私は人間を恨んではおりませんよ?」

「いや、しかしな」

「ただ、そうですねえ――」

 

 M16の言葉を遮るように給仕姿の人形は言葉を被せ、じっと周囲の人間を見ながら口を釣り上げていく。

 どこか、恍惚としたような笑み。いっそ艶やかささえ感じられるそれに、M16の悪寒が酷くなる。

 

「――こう、私の介護が無ければ生きていけない人間を見ると、ゾクゾクいたしますわ」

 

 その言葉と共に浮かべた表情を見て、M16はエクスキューショナーの首に腕を回し後ろを向くと、その耳元に口を近づけた。

 

「おい! あれは大丈夫なのか!?」

「い、いや……ウチの社長が選別した人形だから大丈夫だと思うが……」

 

 小声でしゃべり合う二人が同時に首を僅かに回し視線を向けると、笑顔で首を傾げる給仕姿の人形が視界に入る。

 ここに居る人間や人形は比較的に隔意の少ないものが選ばれている。もちろん、隔意の強い者は別々の区画へ選り分けられている。

 その為、この人形も問題は無いはずだ、無いはずなのだが、なにか、どこか、黒く、深く、悍ましいものが――

 

「……いやどう見てもアウトの向こう側だろ! 機械の目の私にも変なのが見える気がするぞ!」

「いや、オレにそう言われてもよう……」

「あら、あら、どうかなさいましたか?」

「ヒッ」

 

 うふふ、と笑う給仕姿の人形が何時の間にか二人の側に近寄っていた。

 思わず口から悲鳴を漏らした二人だったが、先に正気を取り戻したエクスキューショナーが手を振った。

 

「い、いや、大変だったなって言う話さ。で、でもまあ今じゃあ修理もされて大丈夫なんだよな!?」

「ええ、ええ。ここでアーク様にご恩を返していくつもりですわ」

「お、おう。そろそろ、仕事に戻った方が良いんじゃないか?」

「いやー、長々付き合わせて悪かったな、参考になったよ! ありがとう!」

 

 慌ててエクスキューショナーの言に乗ったM16。給仕姿の人形はそれもそうかと頷くと、一度礼をすると、胸元で小さく手を振りながら去っていった。

 残された二人は、完全に人形が去っていくのを確認すると、大きく息を吐くのだった。

 微妙な空気の中、エクスキューショナーはなんとか口を開いた。

 

「ま、まあ、色んな人形が居るって事だよ。うんうん」

「……それで流して良いのか?」

「……流してくれ、頼む」

 

 額を押さえながら沈痛な表情で言うエクスキューショナーの姿に、M16は何も言えなくなるのだった。

 

 意識を変えようと再度周囲を見渡したM16だが、そこでふと、彼女はM4の姿を探した。

 M4は広場の入口近くで褐色の少女と楽しそうに語り合っていた。

 

「――?」

「――」

 

 褐色の少女はM4の裾を握り、M4は少女の頭に手を乗せて微笑んでいる。

 色々と問いかける少女に嬉々として語るM4を見て、M16は目を丸くした。

 

「驚いたな……人見知りなM4が初対面であんなに懐くなんて」

「……そうなのか?」

「ああ、どうやら随分と相性が良いらしい」

 

 思わず顔を綻ばせたM16。エクスキューショナーはほっとした様子で息を吐いた。

 

「どうした?」

「ああ、いや、なんとか()()()()()()()()かと思うとな」

「あー……いや、ありがとう。お前のおかげで楽しいひと時を過ごせた」

「おう、どういたしましてだな」

 

 照れた様子のM16に、エクスキューショナーは思わず苦笑を返す。彼女の目的はエリザが来るまでの時間稼ぎだった。

 敵対しなければ、M16は姉御肌でカラッとした性格の良い人形だ。そこを気に入ったエクスキューショナーは、それではいお終いとするのも惜しいと思った。

 

「どうした?」

「いや、どうやらオレの相棒が来たらしい」

 

 そう考えていた矢先に、自分の相棒を見つけたエクスキューショナーはおもむろに立ち上がった。

 二人の視線の先には、白髪をヘアピンに似たヘッドセットでセンターに分け、長い後ろ髪を一つに括った鉄血のハイエンドモデル――ハンターが酒瓶を持って歩いていた。

 

「おう、こっちだ!」

「全く、仕事はもう終わりのはずだろう? いつまでも帰ってこないからわたしの方から出向いたぞ」

 

 事情を知っていれば白々しいほどのやり取りではあるが、二人はお互いに手を振り合う。

 M16はまた現れた鉄血のハイエンドモデルに驚きながらも事の推移を見守っていた。

 だが、すぐにハンターはM16にも手を振り挨拶をする。あまりにもハンターのフレンドリーな様子に面食らった彼女だったがすぐに挨拶を交わすと、呆れたように口を開くのだった。

 

「もう何が出てきても私は驚かんぞ」

 

 半目のM16に、思わずエクスキューショナーは褐色の少女――エリザの方を見そうになったが、そこをグッと堪えて見せた。

 また、エリザの正体をばらしたらどんな顔をするかと言う二重の誘惑を退けるのに凄まじく労力を使ったが、なんとか耐えきったエクスキューショナーはM16に笑いながら肩を叩く。

 

「ははは、まあ、色々と驚く事ばっかりで疲れてきたろ? オレももう仕事が終わるしな――どうだ、一杯?」

「そうだな、私も今日は休暇だし。何よりあれこれ考えるのも疲れるだけだ、楽しくやるか!」

 

 クイっと口元で手を傾けるエクスキューショナーに、M16もまた笑顔で頷くのだった。

 そうして、周囲を巻き込んでの大宴会となった配給所兼炊き出し場。

 

「それじゃあ、ここの払いは全て私が出しましょう!」

 

 人形も人間もまとめて笑い合う場に何時の間にか紛れ込んだ船長にみんなが驚いたが、全て奢りと言う事で更に盛大なものになるのだった。

 なお、ここで一泊してしまった指揮官が基地のみんなから盛大にお叱りを受けるのだが、それはまた別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




何時も誤字報告ありがとうございます。
また、感想や評価、お気に入り等とても励みになっております。
大体折り返し地点ぐらいかなと言った今作ですが、なんとか終わりまで突っ走りたいと思います。




ここから先は別に読まなくても良い作者の弱音的なものです。










なんとかM4とエリザを軟着陸させるために頭を捻りましたが、作者ではこれが限界でした。
エリザが認知されておらず、かつAR小隊にちょっかいをかけていないのがまず条件かな、と。
なお、リコリスが90wishに所属していた時、ペルシカやウィリアムにボディのデザイン見せてると破綻する模様。
独自設定で突っ切るしかないのは最初からですけど。
他にもM16とかHK416とか色々と突っ込みどころはあるでしょうが許して……!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。