打ち付ける雨、充満する焦げ臭さ。
崩壊しきった建築物からは煙が立ち上っており、惨劇が起きてからあまり時間が経過していないことを表している。
およそ生物の活動を感じさせない、静まりきった空間。
そんな中、雨音だけがやけに際立っていた。
雨の中、一人の少年が佇んでいた。
彼の全身には裂傷、擦過傷がいくつも見られ、その表情は一見すると感情が抜け落ちているようだ。
茫然と彼が見つめる先にあるのは地に突き刺さる青い剣だった。その刀身は宝石のように美しく、目の前に立つ少年の顔をはっきりと映し出していた。
そして、そこに映った自分自身の顔を見て、彼は自嘲げに笑う。
少年の心中には次のような疑問が何度も浮かび上がっていた。
なぜこのような惨劇が起きたのか。
何か回避する方法はなかったのか。
どうして自分の身にこのようなことが降り掛かったのか。
彼はそれらの疑問に対して、本気で考えているわけではなかった。
ただこの世界の理不尽を嘆くために、行き場のない怒り・悲しみを叩きつける対象を作り出すために、過去を振り返っているのだ。
彼の頭の中にはこれからの展望などはどこにもない。
ただ過ぎ去った過去を後悔の一心で振り返っているだけなのだから。
表面上は静かに見える彼の心の中では、沸き立つような激情が渦巻いていた。自分の無力さに、彼は何よりも苛立ちを感じるのであった。
けれど、既に手遅れである。
今更自分が力を手にしたところで、既に守るべきものは失われているのだから。彼は今この瞬間、生きる目的を失っていた。
固く握り締めた拳、血が滴るほどに噛み締めた唇を見るに、彼の心は未だ死んではいないのだろう。
しかしこの瞬間だけは、彼は確かに立ち止まっていた。
それを責める者も、この場にはいない。
もし、ある人が唯一つの目的のために生きてきたとして、その目的が決して果たされなくなったとき、その人はその後どうやって生きていくのだろうか。
もっとも単純な答えは、新しい目的を策定することだろう。
しかし、挫折の記憶は決して消えることはないし、そのために費やしてきた時間は決して戻らない。
とりわけ、幼少期に掲げた目的は、その人間の人格形成の根源となりうる。彼らの人格は一つの目的のために形作られていき、新たな目的が生まれた後もかつての人格は残り続ける。
つまり、何が言いたいのか。
一度捨てた目的は、心とともにその人間の内奥に宿り続ける。その心は最早何の役にも立たないとしても。
人間はその亡霊に取り憑かれながらも生きていかなければならない。
――これから始まるのは、そんな彼らの物語である。