勘違いしてなるものか 作:プータロー
授業。
それは学び舎の囚人である我々が受ける事を義務ずけられている刑である。永遠に子守唄を聞かされたり無駄に身体を動かしたり。
しかし世の中は学力や身体能力で我々囚人の価値を定めて常にふるいにかけられる。何とも息苦しい世の中だろうか。
と現実逃避もとい暗黒面ごっこは終わりにして。
ようは俺が何を言いたかったのかと言うと、授業って真面目に受けなかったらくっそ暇だよなって話。
こんな聞く耳持たない生徒相手に淡々と教科書読み上げる先生は気の毒だがやはり人間集中力には限界がある。1限目、2限目は何とか。しかし3限目からはどうしても集中力が続かない、そこに体育やら音楽とかの机に向き合わなくていいような授業ならまだしも国語 国語表現と続いて歴史ときたもんだ。こりゃ集中力だって切れるに決まっている。
故に俺は暇である。
魔が差した俺はチラッと横を見た。
そこには教科書と睨めっこした中野さんの姿が。おっ、今日は起きているのか珍しい。中野さんは勉強が得意でないのか良く眠っているのを見掛ける。しかし寝ている姿が起きている時と違って静かなもんで。
何処か淑女を思わせる可愛さがあって見ていて飽きない。これがギャップ萌えというものなのかもしれない。いつも明るく太陽みたいな奴が静かになって眠る姿は見惚れる程可愛らしい。
えっ?毎回中野さんの寝顔見てるのかって?
ば、ばばば、ばかいってんじゃねぇよ……いや確かに可愛いなーとか思って笑っちまう時もあるけどそんなまじまじと見てねぇし本当だし!
おいそこ、女の子の寝顔見てニヤつくとかやべぇやつとか言うな!これは……その……中野さんの策略に乗ってやってるだけだし!チョロくなんてないぞ!
こほんっ。
まぁそんな訳で中野さんが起きているのは珍しい。最近何だか起きている頻度が高くなって来ているのはテスト期間が近付いて来ているからだろうか。そう言えば中野さんの成績はいかほどなのだろう、小テストが返ってきた時はすげぇ顔が歪んでいたからきっと成績は芳しくないのだと思うのだがこうして勉強をしようとする意欲は素直に凄いと思う。
苦手分野というのは苦手で避けたり出来なかったりするからこそ苦手分野であってそれとしっかりと向き合っている中野さんは……なんというか凄くて、とても魅力的だ。
は?めっちゃ中野さんの事見てんじゃんって?ち、ちちちちちげぇしっ!たまたま目に入っただけだし!
いやほら中野さんって俺にめっちゃ絡んで来るしぃ?
※お前が見てるから
それに物落としたら直ぐに拾ってくれて優しいしぃ?
※そりゃ隣から落ちてきて目に入ったら拾います
いっつもめっちゃ笑顔で挨拶してくれるしぃ?
※社交辞令です
まぁなに?俺に気がある……とは思わないけどもしかしたらもしかするかもしれないしぃ?
※ないです
だから仕方がない。これは仕方がない事なんだ。まぁいつものお礼?的な?
よし、いけ俺!
「中野。お前なに教科書と睨めっこしてんだ?」
ちょっと声が上ずった死にたい。
「ふぇ?あ、えっとですね……ちょっと分からないところがあって……」
「……どれだ?ちょっと見せて見ろ」
「あ、はい。これですね」
ふむ……これぐらいなら俺にでも分かる。今日ほどしっかりと自習してて良かったと思った日はない。ありがとうおかん!
とりあえず覚えてしまいさえすれば良い場所なので理解するよりこういう場所は語呂合わせなり物事を丸ごと暗記して覚えてしまった方が楽だったりする。
興味が沸けば理解する為に読み返したりすれば理解は深まるだろうがそうでなければ苦痛なだけである。俺に中野さんがそれに興味を持てるようにするだけの教える能力があればいいのだが生憎と誰かにモノを教えるのは得意でない。
俺にはこれが精一杯だ。
「……まぁそんな感じだ。また時間がある時に歴史の内容に詳しい人に経緯とか聞いてみるのもいいかもな。案外こういう歴史の背景って面白いエピソードがあったりするからな」
「ほぇ〜、そうなんですねっ!何となくですけど私にも理解する事が出来ました。ありがとうございます、拓人くんっ!」
「まぁ……良かったよ」
「はいっ!」
!?!?!!!???
あのっ、手を掴まれてっ……はぇっ!?
「っ!?いつまで、てぇ握ってんだっ!?」
「はい?おわぁっと!?えへへ、すみません……つい」
うん、可愛いから許す。
じゃねぇよ。危うく窒息死する所だったぜ……
くぅ、絶対コイツ俺にアピールして来てんだろ。じゃなきゃこんなにボディタッチ多い訳がない。ボディタッチが多い女子はその男を狙っていると昔何処かで聞いた事がある。
いや……早まるのは良くない。昔を思い出すんだ。あの若かれし頃の苦い思い出を。俺はもう同じ過ちは繰り返さない。
だからお願いだ。
「拓人くん?なんで笑ってるんですか?」
「あ、いや……見んじゃねぇよ!」
「ふふっ、おかしな拓人くんですね」
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!
ニヤけてるの見られた死にたい、いや死のう。
「おいそこ、なにイチャついてやがる」
「いちゃ!?」
それから俺はずっと机に突っ伏したまま脳を動かすのをやめた。
如月 拓人
本作の主人公。物静かで無気力だが脳内は煩い。主に隣の席の人のせい。最近友達が語っていたギャップ萌えの素晴らしさを身に染みて思い知った、その友達とは親友になったらしい。なお顔の表情は死んでおり表情の表現は乏しい、しかし何故か隣の席の人は分かるらしい。最近家で自習をする時間が増えたそうな。
中野 四葉
本作のヒロイン。嬉しくなると抱き着いたり手とか触っちゃうフレンズ。なお無自覚の模様。隣の席の男の子と仲良くなれてご満悦、あれから良く隣の席の人に分からない所を聞くようになった。付き合ってんの?と噂され自分の家庭教師とは違う意味でも隣の彼を……おや?四葉の様子が。