勘違いしてなるものか   作:プータロー

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「すき」だってよ中野さん

 

 

 

 

 

 

 

学校において皆の心休まる場所とはどこだろう?

間違いなく教室だなんて答える奴はいないだろうがやはり様々な人がいる。自分の所属している部室がいつも触れている練習器具やユニホームがあって何となく落ち着くって言う人もいるし、図書室や中庭といった人が比較的少なく静かな場所や風や自然を感じれる場所が単純に落ち着く人だっている。

 

食堂だって中庭だって、あるいはトイレだって落ち着くって言う人がいるかも知れない。

 

因みに俺はと言うとだな。

 

 

 

「あぁ……詰まった空気が入れ替わっていく」

 

 

 

雲一つない澄み渡った青い空。肌に感じる風にひんやりとした床。ここは人っ子1人いない屋上。俺にとって学校で心休まる場所はここだ。

喧騒に包まれた教室はやはり俺にとって息苦しく決してクラスメイトが嫌いってわけじゃないが椅子に座って何時間も授業を受けた後更にクラスメイトがウザ絡みをしてくる。

悪い奴らではない、こんな俺なんかに喋り掛けてくれていつも俺の周りを騒がしくしていって、そんな空気も悪くないって思っている自分がいる。

 

だがやっぱりそれでも1人落ち着いて何も考えないでぼーっとする時間が俺には欲しい。

好きな音楽を聴いてリフレッシュする人がいるように俺のリフレッシュ方法は今みたいに静かな場所で寝転がってぼーっとして寝たりと様々だがこの場所は間違いなく学校の中で最も俺が落ち着ける場所だろう。

俺みたいな半端者は集団生活をするだけで精神を浪費する、求めているのはただ何も移り変わりない平和な毎日だっていうのに俺の日常はいつも騒がしい。

一体どうしてこうなってしまったのか。

 

はぁ。にしてもここは落ち着くな。

いっつも騒がしい男共や俺の心を掻き乱す中野さんもいないし。今日だって夢と現実をさ迷うようにゆさゆさと首を……けしからんおっぱい揺らしやがって。一瞬で目を引き付けられて凝視してしまったが直ぐに我に返った俺は椅子を蹴って中野さんを叩き起した。

 

そうやって精神を揺さぶろうだなんてそうはいかないぜ(さっきまでめっちゃ揺れ動いてた)

 

べ、別に他の男共に見せられないから起こしたとかそういう訳じゃないんだからな!

 

 

くっ。ここに本人がいないのにここまで揺さぶりを掛けてくるだなんて中野さんなんて侮れない相手なんだ。

よし。取り敢えず時間いっぱい寝よう。今日は天気もいいしたまには良いもんだ。

目を閉じて全身に床のひんやりとした何処か心地よい冷たさを感じながら訪れる眠気に身を任せて……

 

 

意識が落ちかけた時突然影が差した。あれ、さっきまで雲一つなかったのに。

おかしいと思った俺は目を開けた。

 

 

「あ、起きました」

 

 

起きました、じゃねぇよ。気持ちよさそうに寝てましたねーってそうだよ。お前が来る前まで気持ちよさそうにしてたんだよ。そのピコーんって擬音語付きそうな感じになんかピンって伸びてるリボン引っこ抜くぞ。

目を開けるとそこにいたのは何が面白いのか笑って俺を見下ろしている中野さん。

いやなんでいんの?てか

 

 

「あ、なんで顔を背けるんですか!」

「…………いやお前、スカート……」

「へ?」

 

 

俺が身体ごと顔を背けた理由を察したのかぺたん、と女の子座りをしてスカートを抑える中野さん。うわぁ、顔真っ赤だ。ちょっと可愛い。

うるうると目を滲ませてちょっと上目遣い気味に睨めつけないでください。キュンってしちゃいます。ちょっとじゃなくてめちゃ可愛いです。

そんな目で見詰められるとゾクゾク……じゃなくてちゃんと顔を逸らして自己申告した俺を褒めて欲しい。

 

「で、拓人くんはどうしてここに?」

 

あ。コイツ露骨に話逸らしやがったな。

ここで話を掘り返すのは簡単だが俺は紳士だからな。そんな自分から地雷を踏みに行くような事はしない。

 

「……特に理由は。ただここが好きなだけだ」

 

別にちゃんとした理由は言わなくてもいいだろう。それに言ったことも嘘ではなくて事実だ。実際俺はこの場所を気に入っているし何も無い休日であれば1日ここでぼーっとしているのも苦ではないと俺は思っている。

そうなんですね、とそれだけ言って俺の真横に寝転がる中野さん。

っていやいやいやいや。何やってんの?なんでここに寝転がるん?嫌がらせかな?

 

「……いや帰れよ」

「なんでですか?」

 

帰って欲しいからです(真顔)

 

「いいから帰れよ」

「むぅ。私がここにいたら何か都合が悪い事があるんですか?」

 

めっちゃあるよ(キレ)

女子は煩いし男子にはいつか後ろから刺されそうだから。何より俺が落ち着けないから。

 

「……勝手にしろ」

「はいっ!ありがとうございます!」

 

そう言っていつもの100%スマイルを浮かべる中野さんを直視出来ず顔を逸らす。だから嫌だったんだ。そもそもこんな可愛い女の子が俺に笑顔向けてる時点で詐欺か何かか疑うのが普通だから。けど中野さん、バカだからこれガチなんだろうなぁ。

っといかんいかん。こんな事で一々真に受けるからいつも心を乱されるんだ。

2人で寝転がりぼーっと空を見詰める。雲一つない空しか見えないがさっき見た中野さんの笑顔も雲一つなくてどうしても脳裏に中野さんがチラつく。

やはり女の子が横にいて何も考えないとか無理だわ。そんなん思春期の男の子には無理ゲーだから。俺の事好きなの?とか思っちゃうから。

 

「……あのさ。なんで中野さんはここに来たんだ?」

「知りたいですか?」

 

え。何なんその切り返し。

ちょっぴりドキッとしたわ。小悪魔チックにいつもと違う笑顔を浮かべる中野さんを思い浮かべて内心焦る。いや実際にみた訳じゃないけど絶対そんな顔してるわ。

 

「……まぁそれなりに」

「んー。じゃあですね……私の事、名前で呼んでくれたら教えてあげますよ」

 

名前。名前ね。

………………。いやいやいやいやいやいやいやいや。無理だわそれ。ばっかじゃねぇの!ばっかじゃねぇの!そんなん出来るわけないじゃんばーか!ばーか!

と内心バカを連打していると中野さんは続けて。

 

「私だけ名前呼びってのも可笑しいですし。何より5つ子なので中野さんって言われ慣れてなくて」

「……お前最初から俺の事名前呼びだったろ」

「そうでしたっけ?」

 

そうでしたよ。なんの躊躇いもなく名前呼びだったよ。

 

「あー、そうでした!無視されるかなぁって思ってたけどちゃんも名前を教えてくれたのが嬉しくてつい呼んじゃって」

 

えへへー。じゃねぇよ。

可愛いじゃねぇか許す。

 

「……えっと、だな」

「わくわく」

 

くっそ。言えば良いんだろ!言えば!

 

「……四葉」

「はいっ!」

 

………………。

なんで首傾げてこっち見よん?

 

「……いや名前呼べって言ったから」

「あっ、そうでしたね」

 

あーもー!そういう所だからな!そういう所が俺達思春期男子の心を揺さぶりまくるんだぞ。

チラッと横を見る。本当に分かってなかったようで当の本人は頭を掻きながら笑っていてそんな姿を見ていると何だか憎めないなって思う。いつも笑顔な彼女にはこうやって自分らしく常にいて欲しいから。

 

「で、なんでここに来たんだ?」

「そうですねー」

 

そうやって一旦言葉を区切った中野さんは身軽な動きで立ち上がり数歩離れる。俺はそんな中野さんから目が話せず寝転がっていた俺も立ち上がりはしないが上体を起こして中野さんを見失わないようにしっかりと見詰めて。

心地よい風が俺と中野さんの間を駆け抜けていく。風に靡く髪を抑えながら振り返り

 

「私、気が付いたらここにいました。理由はちょっと分からないです」

 

けど、と中野さんは続ける。

 

「拓人くんがここが好きだって聞いてから私もここが好きになれたらなって思って。傍にいたら私もここが好きになれる、そう思って」

 

ちょっぴり赤くなった顔をしながら中野さんは言う。

 

「そして好きになっちゃいました」

 

 

今までで1番強い風が吹く。

色々考えていた事なんかも全部何もかも吹き飛ばしていって。

 

ただそれを言った時の中野さんの顔が脳裏から離れなくて。逃げるように早足でかけていった中野さんの背中を見詰めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……好きって…………紛らわしいんだよ」

 

 

 

俺の顔は中野さん、四葉さんより多分赤かったんじゃないかなって思う。

 

 

 

 




如月 拓人
本作の主人公。なのだが最近もっぱらヒロインのよう。
心を落ち着かせる場所で佇む俺カッコイイと思ってる。最近隣の席の人によって心を掻き乱されまくっているので落ち着く為に割と頻繁に屋上を利用していた。何だか最近は隣の席の人とワンセットとして見られる事が多く表面上嫌ってるように見せてるが内心満更でもない。

中野 四葉
本作のヒロイン。主人公を見付けると頭に着けた特徴的なリボンがピンって伸びる。そして近くにいるとピコピコ動く。最近隣の席の人が良くどっかに行ってるので気になって後をつけた。相手の好きなものを自分も好きになれたらなって思ってる。
最近なんだか誰かさんを目で勝手に追っていて嬉しそうに後ろをつけて行くのを頻繁に目撃されている。
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