勘違いしてなるものか   作:プータロー

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幸せですってよ中野さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休日、そして放課後。

それは我々学生の唯一無二の憩いの時である。

 

部活?外出?

バカめ!休日や放課後は家で堕落した生活を送るに決まっているだろう。まぁずっとベッドから出ない、と言いたい所だがそんなことをしていたらウチのおかんの逆鱗に触れるので自習はそこそこにしなくてはならないし何より普段放課後は部活動もある。

だが今日は珍しく部活はない!かつてないスピードで帰宅してきたぜ。

自習も既にあらかた終わらせてある。故にもう今日は何もしなくていい。俺大勝利。

 

 

さて、何をしようか。

久しぶりに夜通しゲームに没頭するのも悪くないし本当に何もしないで気分をリフレッシュするのもいい。

 

これから送るであろう堕落した徹夜の過ごし方に柄にもなく少し胸踊らせているとベッドの上に放置していた俺のスマホが震えだした。

しかもこれは○ースベーダーの着信音……という事はおかんからか。不味い、すげぇ嫌な予感がする。

これから自らに降り掛かるであろう厄介事の気配に先程までの胸踊る気分から一気に地底の底まで紐なしバンジージャンプ。一気にどん底まで気分が下がる。

 

ため息を1つ吐きながらぶつくさと文句を垂れながらスマホのロックを解除。げ、リンス切れたから買ってこいだって。因みに家の近くに薬局なんてないから少し時間が掛かるがデパートに行かなくてはならない。死んでも御免こうむる内容だが俺に拒否権なんてないのは分かっている。ならば仕方がない、さっさと行って出来るだけ自由な時間を確保しよう。

気持ちと連動してベッドから全然動きたがらない身体に鞭打ってクローゼットを開け適当に服を引っ張り出し身支度を整える。ここで部屋着で外に出ないのはおかんに怒れるから、じゃなければスウェットのまま外に出ていただろう。

 

さらば、俺の愛しのベッド。ベッドに暫し別れを告げて必ず直ぐに帰ってくると1人悲しく誓い、無駄に死亡フラグを建てて家を出る。

 

 

 

 

 

 

学校よりも遠くない距離を歩いてデパートへと足を踏みいれる。もう夜遅いというのに人が多い、流石はデパート。

買う物は決まっているのでさくっと行こう。リンスを買ってそう言えば林間学校に持っていく分のシャンプー等は足りているだろうか、と思い立った俺は次いでに外泊用の物も購入。

ふむ、偶にはおかんの言う事も聞いてみるもんだ。意外な所でミスを回収しほんの少し報われた気持ちになる。

 

しかしゲームセンターやCDショップ等の何かと誘惑が多いデパート、また何かが視界に入ったりして物欲が沸く前に帰ろうとした時に見覚えがありまくる動くリボンが視界に入った。ドキッと心臓が跳ねる。咄嗟の事で歩いていた通路から外れて思わず柱で身を隠してしまう。何をやっているんだ俺は。本当にいつも隣の席のあの子はいつもいつも俺の心を掻き乱していく。別に何もやましい事なんてある筈がないのに何故俺はこんな事をしているんだ、普通に会っても軽く挨拶を交わすぐらいなんて事ないじゃないか。朝俺より遅くやってくる彼女にいつもそうやっているだろう。

いつも通り、自然にやればいいだけだ。何も難しくないし可笑しくもない。そう思っている筈なのに自分の身体は意思とは反して動いてくれない。

 

こ、恋する乙女じゃあるまいし何やってんだか。別に迂回して通れば見つかる事なんてないのだがそれはそれで何か勿体ない気がする。女々しい俺は取り敢えず顔だけ柱から出して向こうの様子を伺った。

 

 

見えるのは姉妹だろうか、そっくりな顔をした3人の女の子に隣の彼女。そして男が1人。仲が良いのかいつもの笑顔を振りまきながら男の服を選んでいる。

 

 

ズキッ

 

 

あれ、何だろう。物凄く胸が痛い。何処か見えている光景が信じられなくて瞬きを繰り返すけれど2人は消えてはくれない。いつもは心が暖かくなる彼女の笑顔も今日はばかりは見れば見るほど心臓が、胸が軋む。

 

どういう関係なんだろう。

いや、考えるまでもない。放課後にこんな所で仲慎ましく買い物だなんてデート以外に何かあるのだろうか、あるのなら是非教えて欲しい。頭が正確に今起こっている事を理解しているのとはうらはらに何処かまだこれは夢なんだと何かに縋る女々しい自分がいる。

見てられなくて柱の後ろに隠れてしまう。本当に何をやっているんだ、彼女が何をしていようが誰と一緒にいようが俺には関係の無い話ではないか。中野さんは人気がある、彼氏がいたってなんら不思議ではない。

 

さっさとここから帰ってしまおう。そう、それがいい。こんな事忘れてしまって堕落した生活を送るんだ。

そう自分に言い聞かせて重い身体を引き摺り歩き出す。忘れろ、忘れるんだ。そうだこれから何をするか考えよう。気分を入れ替えて新しいゲームを買って帰るのも良いかもしれない。あぁ、そう言えばいつもやっているシリーズの続編が出てたんだ。それを買って帰ろう。

どうやって進めようか、何からやろうか。それを考えるだけでも楽しい。楽しい筈なのに。

 

 

「なんでいっつも頭ん中にお前がいんだよっ、くそったれ!」

 

 

周りにいた人がビクッとなって注目している事なんて些細な事で、どうしても声に出さずにはいられなかった。遠巻きに何かを言われている、いつもはこうして目立つ事を最も嫌っている筈なのに今はそんなことはどうだって良かった。気が付けば俺は走り出していた。自分でも訳が分からない、何故俺はこんな所で全力疾走をしているのか。もう何もかも訳が分からない、けど。

 

 

「…………」

「へっ?拓人くん?」

 

 

無我夢中で彼女の手を取った。絶対に離しはしないという意思を込めてギュッと力強く握る。あんなにバスケが上手いのに握り締めた手はしっかりと女の子の手で肌白く、そして柔らかい。

 

驚いてるよな?意味が分からないよな?

いっつもそうだ。俺がこんな意味分からない行動をするのはいつもお前のせいだ。俺は何事もない日常が欲しいだけなのにそれをいつもいつもお前が掻き乱して。けどそれを悪くないって思っている自分がいるのも事実で。

 

「……コイツ貰っていきますから」

「お、おう。どうぞ?」

「ちょ、ちょっと待ってくだ……ひゃっ!?」

 

よし。了承は得た。

勢いよく走り出す。後ろから何か言われているが耳に入ってこない。ただ早く彼処から離れたくて、けどしっかりと手は握って離さない。

人混みを掻き分けてひたすら走る。走って走って走って。俺は一体何をしているのだろうか。ただ自分の中の持て余した感情や気持ちが抑えられなくなって、気が付けば俺は走り出していた。

こんな気持ち俺は知らない、だからどうすればいいのか分からなくてこんなことになってしまった。

 

 

デパートから抜け出してやってきたのは人気のない公園。流石に走りっぱなしだったからかお互いに息が切れていて肩で息をしながら呼吸を整える。

その間もしっかりと彼女を視界に捉えてどこかに行ってしまわないか不安になる自分。息を荒くして顔を赤くし乱れた髪の毛を整える彼女はいつもの活発で天真爛漫なイメージとは違って何処か色気があり違う意味で心臓が跳ねた。たまらず直視出来なくなってそっぽを向いてしまう。

けどさっきみたいに苦しいものじゃなくていつも感じているもので何だかどっと疲れが出てきた。最近こうして自分の感情がよく分からなくなる事がある、この持て余した感情への向き合い方が分からない俺はいつもいつも彼女に振り回される。だから俺がこうして彼女を振り回すのは許されるはずだ、多分。

 

 

「えっと……拓人くん。いきなりどうしたんですか?」

 

 

息を整え終えた四葉さんはびっくりしましたよー、と笑いながらそう聞いてきた。呑気なものだ、こっちの心は散々掻き乱されているというのに。けど憎めないのは彼女の人なり故だろう。

 

「…………」

「拓人くん?」

 

不思議そうにそう聞いてくる。

いきなりどうしたか、ねぇ。

 

「……分かんねぇよ」

「えっ?」

「だから分かんねぇんだよ、分かる奴がいるのなら教えて欲しいぐらいだ」

 

俺だって分からない。何故こんな所に連れ出してしまったのか、どうして彼処にいる彼女を見ていると胸が締め付けられたのか。もう色々とキャパオーバーな俺には何一つ分からない。

それを聞いて四葉さんはただ困ったように笑っていて、次第に何が可笑しいのか腹を抱えて笑いだした。

 

「……おい」

「ふふふっ、ごめんなさい。何だか可笑しくって」

「……悪かったな可笑しくて」

「もうっ、拗ねないで下さいよー」

 

ふん、今更ご機嫌取ろうたって遅いんだよ。不貞腐れるようにそっぽを向く俺。ちょんちょん、と服のはしを引かれるのを感じなんだかそれいいなって思ってしまう。何だかこれじゃどっちが悪者か分からないじゃないか。

 

「けどそうですね、何だか私も嬉しかったです」

「えっ?今なんて」

「にししっ、2度目はないですよっー!」

 

そう言って笑いながら逃げる彼女を追い掛ける俺。何だかそんな無駄な事でも今はとても楽しくて。やっと追い付いて彼女の肩を捕らえた、そこでお互いに向かい合い何やってんだろって笑い合う。

不思議と胸のつっかえのようなものは取れていた。

 

「えいっ」

「……っておい」

 

ベンチに座っていると不意に俺の懐に入り込んでタックルしてきた物体を受け止める。だけど当の本人は俺の胸の辺りで嬉しそうにしていてそれを咎める気にはなれなくて代わりに1つ溜め息を付いた。それを許しを得たと捉えたのか俺の上に座りこれまた嬉しそうに微笑む彼女にこれも悪くないかと俺は腕を回す。

暫くお互いにボーッとしていたが不意に四葉の方から話し掛けてきた。

 

「何だか暖かいですね」

「まぁそりゃここまでくっ付いてるからな」

「いえ、そうじゃなくてこう……ぽかぽかしませんか?」

「……あぁ、めっちゃぽかぽかするわ」

「ですよねですよねっ!」

 

ふと思った。

こういうのが

 

「こういうのが幸せっていうんでしょうね」

「…………あぁそうだな」

 

心臓が跳ねた。

まさか同じ事を思っていたなんて。ただこの時間がとても幸せでずっと続けばいいのに。俺はそう思った。

 

「四葉……」

「っ!?はいっ」

「幸せだな」

「そうですね!」

 

 

 

 

それから俺達は時間が許すかぎりゆっくりとお互いに身を預けながら空でも眺めていた。

 




如月 拓人
本作の主人公。自分の気持ちには疎いモンスター童貞。いっちょ前に嫉妬して隣の席の気になる子を拉致に成功、やったね!イチャラブ出来たよ!後にやったことを省みて1人悶絶した。

中野 四葉
本作のヒロイン。なんか拉致されてラブラブした。後に姉妹にどこいってたんだと聞かれてやっと、やってた事を省みて必死に誤魔化した。尚2人はまだ恋人ではなく友達の模様。

上杉 風太郎
原作の主人公。ちょっぴりセリフがあった。初の四葉以外の原作出演おめでとう。
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