騎士(キチ)王   作:ひつまぶし。

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 呼符でキングプロテア来なかったので怒りの投稿(憤怒)



 基本的にアルトリア視点、マーリン(三人称)視点でアーサー王伝説は進める感じです。

 選定の剣を抜かなかったアルトリアはこうなる妄想を形にしたので期待はしないでください。





01 抜いた男

 

 

 

 

 

 

 ――今日が遂に、その日だ。今までの日々はこの日の為に。

 目の前にあるのは選定の剣。人を王足らしめんとする王を選ぶ至高の剣。

 私は、王になる為に生まれてきた。付き人のマーリンもそう言い、ケイと共に私を鍛えてきた。

 騎士として、王として。旅をして世界を見た。

 何度、歯痒い思いをしただろう。助けられる命が消えるのを。助けた命が消えるのを。全ては王がいないことで生まれる災害をいくつ見てきたのだろう。

 

 もうそんな日はおしまいだ。

 今日でアルトリアは終わり。今日から私は民に求められる王として生まれ変わる。

 覚悟はできた。悩んだ時もあったが、全ては民を救うためだ。私がどうなろうとも関係ない。

 

 ――さあ、選定の剣よ。我に、力を――。

 

 

「おっとごめんよ」

 

 

 スポン、と。今まで王となれる人間でなければ抜けなかった選定の剣があっけなく抜けた。

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 えっ。

 

 

「えっ」

 

 

 思考が追い付かない。何が起きた。

 伸びてきた手の持ち主を見れば、男がいた。この辺ではあまり見掛けない黒い髪の毛をしている男だ。

 あっけなく抜かれた選定の剣を持つ彼は、しげしげと剣を目を細めて眺めている。

 そして、幼子が見れば泣き叫ぶような凶悪にいやらしいほどに顔を歪めて嗤う。

 

 彼は、背後を見る。私も釣られて見る。この場に集まっている民衆もその視線に釣られてある場所を皆で見ることになる。

 そこにはガラの悪い男共がいた。向けられた視線にたじろいでいるようだ。

 彼等に共通するのは、状態のよくない剣を持っていること。賊だと言われれば納得する出で立ちをしている。

 必死に剣を背中に隠しているが、体の小さい者は隠れていない。何か悪だくみをしている、と白状しているようなものだ。

 

 

「ふひっ」

 

 

 その声は誰からか。その場にいる者が声を発した者を見た。

 選定の剣を抜いた男だった。選定の剣を舐めんばかりの様子で気味の悪い笑い声を静かに出している。

 そして、飛び出した。普通の人間では出せないような飛び上がり。真っすぐに賊に向かって跳んだのだ。

 

 

「オラァ! さっきはよくも追い掛け回してくれたなオラァァァァン!↑」

 

 

 阿鼻叫喚。真っすぐに賊に向かった男は選定の剣を振るって賊を襲い始めた。

 賊の悲鳴が聞こえる。賊が逃げ惑い始める。その賊を追い掛ける男。

 反撃する賊もいたようだが、赤子の手をひねるように男は反撃をものともしない様子で賊を斬り捨て始めた。

 前触れはあったのだろうが、民衆からしたら堪ったものではないだろう。すぐにその場から逃げようと動き始めていた。

 

 すると、マーリンが悲痛な叫びを上げた。

 今度は何だ、と目まぐるしく変化する状況にまたも思考を奪われる。

 何かが、目に入った。太陽に照らされて空に何かが舞っているのが見えた。

 

 それは、折れた選定の剣だった。

 

 ……目の錯覚だろうか。目を擦ってみる。

 もう一度見てみる。

 

 折れた選定の剣だった。

 

 見間違いではなかったようだ。

 折れた剣先が地面に突き刺さるまでがとても時間の流れが遅く感じた。

 折った当の本人と言えば。残った柄だけを持って逆に賊に追い掛け回されている。

 何だこのカオス。

 

 

 

 

 

 

 

 魔術師マーリンは激怒していた。

 自分が新しい王を擁立させるためにしてきたことが水の泡にされたのだから。

 

 元々、選定の剣はアルトリアという少女しか抜けないように細工がされていた。

 出来レースもいいところだが、選定の剣を抜いた者は王となる噂を流せばそれだけ抜いたアルトリアが王として認められる。その算段もついていたのに。

 どこの馬の骨かもわからぬ雑草に全て台無しにされたことに怒りを覚えた。

 

 選定の剣を折られ、新しい王の誕生を邪魔したクソ野郎は死よりも惨い目に遭わせてやる。

 そう胸に秘めながら選定の剣を失って素手で賊を薙ぎ倒した男に近付く。

 

 ――さて、ここで魔術師マーリンが選定の剣に施した仕掛けを見てみよう。

 

 まずは王の証を掲げるに足らん者。これは何か大きなことを成し遂げた者の血筋をその身に宿していること。王族の血族であることが条件。

 

 次に、幻想の力を身に宿していること。アルトリアはウェールズの赤き竜の証、魔力を生み出す機関を宿していた。

 

 最後に、運命に抗えるだけの力、覚悟を持つこと。それを得るためにマーリンはアルトリアに旅をさせ、覚悟を決めさせた。

 

 つまり、である。八百長の選定の剣を抜いたということは抜いた男にもその資格を持つに値する者であることになる。

 その答えは、男の傍で王に仕える従者の如く跪いているマーリンの姿でおわかりであろう。

 

 マーリン、三歩で即落ちの瞬間である。

 

 魔術師マーリンは歓喜していた。

 新たな王になる定めだったアルトリアなんて目ではないほどの王になる才能を秘めた男に出会えたことを。

 従者として忠誠の証を見せて取り入ろうとする情けない真似をはしたなく行えるほど喜んでいた。

 それを見つめるアルトリア。亭主を寝取られた妻の如く少なからずのショックを受けた様子でマーリンを見つめていた。その瞳には、光は映っていなかった。

 

 だが、魔術師マーリンは気にしない。

 今は犬のように尻尾を振って新しい王になるべき男に仕える姿勢を見せるのだ。

 

 

「我が王よ。この魔術師マーリン、我が王に仕えさせていただきたく――」

 

 

 だが、現実はそんなに甘くない。

 恍惚とした表情のまま、顔を上げて男に言葉を投げ掛ければ、返答は言葉ではなく賊の血で汚れた靴底であった。

 特に何の対策もしていなかったクソ貧弱魔術師マーリンは顔面に蹴りをモロに食らう。

 魔術は最強でも、肉体面ではクソ雑魚のマーリンでは痛みに耐えられるだけの力はなかった。

 薄れる意識の中、マーリンは確かに聞いた。敬愛なる王の自分に初めて投げ掛けられる言葉を。

 

 

「エロ可愛い女の子が魔術師だろうが常識的に考えて」

 

 

 かしこまりました――と返答もできぬまま賊の血の海に沈むマーリンであった。

 痛いほど静かになったその場の空気。マーリンを蹴り倒した男は、折れた選定の剣の残った部分を紐で括り付け、腰にぶら下げる。

 そして、アルトリアと空気だったケイが見ている中、堂々と追い剥ぎを始めるのであった――。

 

 

 

 

 

 

 

 






 アルトリアが選定の剣を抜かなかったらXXみたいになるとかいう法則。



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