騎士(キチ)王   作:ひつまぶし。

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 今回で予約投稿は終了でございます。次回からは頑張って投稿する感じで。

 ヴォーティガーンを斃したあとのアーサーくんたちのほっこり日常回。




10 平穏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい次―」

 

 

 ペッタンペッタンと淀みのない動きで筒状の物を羊皮紙に押し続けるアーサー王。

 めんどくさいからと他の人間はやってないような事務作業をしておられる。

 私も儀仗兵として役職は与えられたが、仕事は儀仗兵には収まっていないような気がしてならない。

 

 おかしい。何でこんな仕事をしているのだ。

 普通なら執務室の前で警護をするだけなのに何で中にいるのだ。

 

 

「こりゃ楽でいいわ。ゴリ押しして正解だったなこれ」

 

 

 渋い顔をするのは軍師でもあられるアグラヴェイン卿。

 羽根ペンでサインを書くのは嫌だ、とアーサー王がごねられて頭を痛めておられましたが。

 今では格段に進む作業にアグラヴェイン卿は喜んでいいのやらと微妙な表情をされている。

 はんこ、と言うらしい。どうやってこんな発想を思い付くのかわからないが、奇抜な発想をアーサー王は時々思い付かれる。

 

 どうやって思い付いたのか。騎士の運用。

 特に戦がない時は手が空いている騎士を別の運用に回す。最初こそ騎士には反対されていたが、体を休めるのも大事だぞとアーサー王のいつの間にか言い包められる事態が起きた。

 自分も会話をしているといつの間にか言い包められることが何度あったことか。

 変に説得力がある気がする。アーサー王は。

 

 ぶっちゃけやめてもらいたい。

 

 

「王、こちらはしっかりと読んでください」

「はいはい、と」

 

 

 指で文字を追うように羊皮紙に指を滑らせる。

 ああ、そういえばアーサー王は執務室の作業が始まる前は文字が読めないんだった。簡単な文字はわかっていたが、長文になると吐きそうと顔を青くされていた。

 アグラヴェイン卿がいなかったら執務などできなかっただろう。今もわからない文字は何これと聞いているところも何度か見る。

 ペッタン、とはんこを押すアーサー王。読み終え、確認を終えて羊皮紙をアグラヴェイン卿に渡す。

 それらを纏め、時々丸めるアグラヴェイン卿。

 

 

「本日、届けられた報告書はこれで終了です」

「おーう。終わったかー」

 

 

 ぬああと疲れを解すように両手を高く上げて欠伸をするアーサー王。

 最近では戦うことも少なくなり、戦で用いる装束は着ていない。動きやすい装束はアーサー王としての威厳を見せるための装束に。

 青と白、黒が美しく組み合わさった装束はアーサー王にとてもお似合いだ。

 執務をする時は楽な格好、ずっしりとした上の装束は脱いで黒い肌に張り付くものを見せている。アーサー王はいんなー、と言っていた。

 割れた腹筋が薄っすらと浮かんでいることに、アルトニウス卿は鼻血をとめどなく流しながら親指を立てていたのは記憶に新しい。

 

 ……というか、どう見てもアルトニウス卿は男装している、のか? わからぬ。

 あの反応を見せておいて男だ、と言われるとアーサー王の趣味を疑う。

 

 

「ベディくん、なんか変なことを考えていない?」

 

 

 いえ。アーサー王は頑張っておられますね、と思っております(微笑)

 

 

「なんか憐れむような目で見ていた気がするんだが」

 

 

 いえいえ、気のせいです。

 

 

「……アグルくん、ベディくんから黒いもんが見えない?」

「ベディヴィエール卿も疲れているのでしょう」

 

 

 誰のせいだと思ってるのだ。

 心労で髪の毛が少し抜けているのは誰のせいだと思っているのだ。

 

 

「お、おう。そんな怖い顔をするなよ」

「少し休みを与えては? ベディヴィエール卿は私の知る限り、あまり休みがないようです」

「えええ? 交代制導入したけど休んでないのか?」

「王はベディヴィエール卿以外に王を御せる人材がいるとお思いで?」

「いねえわな。そりゃそうなるわ」

 

 

 ケラケラと笑うアーサー王に殺意が湧いてきた。

 楽しそうに私の肩を叩きながら脱いでいた装束を肩に引っ掛けるように持つ。いつも楽しそうなアーサー王を見て羨ましく感じる。

 この方は嫌なことはないのだろうか。

 

 

「というわけで」

 

 

 わっ。

 

 くるりと私の肩に置いた手で体を回されると、肩を組むように置かれる。

 アーサー王の温度を直に感じるような密着のし具合に少しドキリとした。

 いやいやいやいや。私は男色ではない。決して、ないのだ。

 

 

「ベディくんに命令します。今から俺と休むことを命ずる」

 

 

 はっ? いや、あのですね。

 

 

「王、遅くとも日が沈む前にお帰りください」

「あいよー」

 

 

 グイグイと無理矢理連れて行くようにアーサー王は執務室から連れ出す。

 

 ……なんかいい匂いがする。

 

 はっ!? 違う違う!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 我が王、私もお供に。

 

 

「お前、どこでも現れるよな」

「アルトニウス卿」

 

 

 む。ベディヴィエール卿。

 

 

「アルトリア、お前仕事は?」

 

 

 馬の世話、畑の手入れ、騎士の指導。全て終わりましたが何か?

 ええ、楽でしたよ。これも我が王への愛が為せるものです。

 

 

「無駄に優秀だよなあ、コイツ」

 

 

 褒めちゃる、と兜の上から頭を撫でてくださる我が王。ちゅき。

 ベディヴィエール卿が隣で難しそうな顔をしているが文句あるのかこの野郎。

 

 

「丁度良かった。俺とベディくんの馬を用意してくれ」

 

 

 ぴゅーい、と指笛を吹く。調教され、音を覚えた馬は私の合図を聞いて走ってくる。

 聞き分けの良いあの子達は、何があっても主人に従う。特にアーサー王の愛馬は主人の危険を感じ取るとすぐに飛んでくるほど懐いている。

 まあ、危険に陥ることはないから旅のお供程度だが。

 

 

「……アーサー王もそうですが、アルトニウス卿も大概おかしいですよね」

「誰に似たんだか」

「隣で笑っている方でしょうね」

 

 

 カッカッカと独特的な笑いで笑い飛ばす我が王。ベディヴィエール卿は涼しい顔をしつつも、腹の中では毒を吐いているようだ。私にはわかるぞ。

 

 ところで我が王。ドゥン・スタリオンとラムレイが来ましたが、どちらを?

 

 

「ドゥン・スタリオンはお前が使え。最近じゃ、お前の方に懐いている」

 

 

 ほーれほれほれとラムレイと呼ぶ馬を可愛がるように撫で、優しく叩く。ラムレイも心地良さそうに鳴いている。

 行方不明になっていた我が王がどこからか連れて来たが、ラムレイも中々の名馬だ。しっかりと言う事も聞いて大地をどこまでも駆け抜ける子だ。

 

 む。我が王、エクスカリバーはどうされたので?

 

 

「俺の部屋だ。ちょいと準備に必要だから暫くは使わんぞ」

 

 

 ああ。そういえば。

 ヴォーティガーンを討った後、我が王を迎えに行けば聖槍の力を纏う我が王がいた。

 隣には、見たことがないほど真っ青な顔をしたマーリンもいた。鬱陶しいほどのテンションが嘘のようにナリを潜めていたのは大いに驚いた。

 

 何かに縋りたいと訴えるような表情のマーリンは今、行方を晦ましている。

 ベディヴィエール卿が持っていたエクスカリバーを我が王が握れば、我が王の胸から出てきた光がエクスカリバーに移るのも見た。

 これで真の意味でエクスカリバーは完成された、と我が王が言ったのは濃く記憶に残っている。

 剣と鞘。エクスカリバーとそれを納めるアヴァロン。ヴォーティガーンを斃したことでアヴァロンは更なる力を宿すようになった、とも言われた。

 

 アヴァロンは妖精が住まう郷、理想が詰まった郷へ通じる扉に。

 聖槍の力を初めて使い、我が王がさらに強くなったことで合わせて強くなった、とも聞かされた。

 

 鞘はお持ちではないので?

 

 

「俺の中にある。まだ馴染んでないからもう少しだけ取り込んでおく」

「ところでアーサー王」

 

 

 む。どうしたのだベディヴィエール卿。

 

 

「あの、私の馬がドゥン・スタリオンとラムレイに怯えて逃げてしまったのですが」

「草生えた」

 

 

 こら、ドゥン・スタリオン、ラムレイ。お前達は群れのリーダーだ。

 群れの仲間を無暗に脅したりするんじゃないぞ。寧ろ、お前達があの子達を守るんだ。

 

 そう叱れば、我が王もそうだぞと二匹の首を撫でる。不貞腐れたように鳴けば、鼻先でぐいぐいと我が王と私を小突いてくる。

 ラムレイは特に我が王に、ドゥン・スタリオンは主に私に。

 ラムレイが雌、ドゥン・スタリオンが雄だから異性に懐いているだけなのかもしれないが。

 

 

「しゃあねえ。ベディくん、後ろに乗るか?」

「よろしいので? ――はっ、やはりお断りを」

 

 

 我が王、密着して後ろに乗りたいです。

 

 

「ステイ」

 

 

 わうーん。

 

 

「ラムレイ、追い払った馬を連れて来い。あ? お前が脅したんだからごめんなさいして来い。じゃないともう乗らんぞ」

 

 

 ひひーん、と抗議をするように嘶けば不貞腐れたのがよくわかる様子でベディヴィエール卿用に呼び、逃げてしまった馬を追って行く。

 

 うむ。ドゥン・スタリオン、お前も謝ってこい。

 嫌だと? ならばもうお前を掃除してやらんぞ。自分で水浴びさせるくらい放置するぞ。

 それが嫌なら行くんだ。

 

 言葉を理解したらしいドゥン・スタリオンはラムレイの後を追うように走る。

 ラムレイもドゥン・スタリオンも、普通の馬よりも力が強いからリーダーとは適切なのだが。もう少しリーダーとして自覚を持ってくれると嬉しい。

 

 

「困った奴等だ」

 

 

 と言いつつも、嬉しそうな顔をしている我が王。

 前に拾った狼たちも可愛がっているようだし、我が王は動物は好きなようだ。暇を見つけるとよく遠出をしていると聞いている。

 魔猪狩りをする時に狼たちを放ち、偶にカヴァスと名付けたリーダーの狼に跨って狩りをすることもある。

 王という息が詰まる仕事に対する息抜きと言うが、ケイが考えていたよりもしっかりと王の仕事をしている。

 与えられた仕事は嫌でもしないと、と語る我が王の輝きっぷりは思わず愛が溢れそうでした。

 

 主に鼻から。

 

 

「お。そうだそうだ。アルトリアにベディくんも。君等二人は信頼できるからオフレコの情報を言っとくわ」

 

 

 我が王がベディヴィエール卿と姿を消していた際に、ユーサー王の宝物庫から持ち出された剣であるシャスティフォル。その柄に手を当てながら我が王は我等に言う。

 

 

「何でしょう。アーサー王」

「ケイから言われたことだけどな」

 

 

 少し悩むように顎を手で撫でる我が王。よく見ると髭が少しまた伸びている。

 

 

「俺、結婚しそうだわ」

 

 

 よし。その相手を殺そう。

 

 

 

 

 

 





 仕事がめんどくさいアーサーくんは他にも楽にできるように工夫をしてますが書いてたらキリがないのでカットで。
 なろう系でよくあるNAISEIみたいなことはちょっとだけやってます。
 ちょっとだけなのはアーサーくんはそこまで知識は持ってないので。

 そして真っ黒に染まるベディくん。ベディくんオルタとか出てもいいのよ?
 アーサーくんに仕えて疲れて吹っ切れた結果がこれである。でも見捨てないベディくんはマジ天使。
 ちなみにホモではない。

 アルトリアは平常運転。
 しかしまあ、優秀なので特に問題はなし。王様をしてストレスは溜まらんから楽しくやれてるんだろうなあ、と楽しく書けた(ニッコリ)

 そして、ロンゴミニアドを使ったことで完全に覚醒を果たしたアーサーくんの影響でエクスカリバーも強化。
 湖の乙女からはエクスカリバーとエクスカリバーを納めるだけの鞘、アヴァロンを貰っていましたが実は未完成だった設定。
 ヴォーティガーン、ブリテンの守護者である彼を斃したことで妖精郷の道を開く鍵を手に入れ、アヴァロンが真の完成を果たした、という感じにしました。
 なお、アルトリアのアヴァロンとは少し性能が違うので別の機会に出します。

 え? アルトリアの物騒な発言?
 それはね。いつものことだよ


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