騎士(キチ)王   作:ひつまぶし。

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 お待たせ! こんなものしか書けなかったけどいいかな?



 いつも感想を書いてくれる人、遅れましたが誤字報告をしてくれる人。本当にありがとう。励みになってます。
 正直にぶちまければ書きたいことを書く時はスラスラ進むけど、そこまでの繋ぎを書こうとすると果てしなくめんどくさい。わかる人、いるかな?





14 取り合い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……。

 

 

「ちちうえはおれのもの」

「何を言うか。我が王はお前のものではない。私のものだ」

 

 

 ……何度、これを見せられるのか。

 頭が痛くなるのを感じながら目の前に繰り広げられるなんとも片や微笑ましい、片や醜い争いをしている。

 モードレッドからすれば、父親を取られまいと抵抗する微笑ましい姿に見える。

 アルトリア卿からすれば、愛する男性を大人気もなく子供と奪い合う何とも醜く見える。

 

 アグラヴェイン卿が頭が痛そうにしている。

 それもそうだろう。何せ、ここはアーサー王の執務室なのだから。

 モードレッドならまだしも、アルトリア卿は何をしているのだ。仕事がまだ残っているのではないのか。

 

 奪われる対象であるアーサー王ははんこを押しながら争う二人を交互にあやしている。

 馬鹿な。あのアーサー王が一番大人に見えるだと? どちらかというと、アーサー王が一番の子供のように感じるはずなのに。

 

 

「モードレッド様、叔母上。王は仕事をしておられます。絡むのはせめて仕事の後にしてくださいませんか?」

「アグラヴェイン、邪魔をするならお前でもふっ飛ばすぞ」

「叔母上……」

 

 

 アグラヴェイン卿が更に頭が痛んでいるようだ。

 こっちも頭が痛い。なんで悪化しているのだ、この方は。

 

 

「モードレッド様」

「……」

「……何でもありません」

 

 

 子供はズルい。そんな感想が浮かぶ。

 アグラヴェイン卿がモードレッドにアーサー王の膝から降りるように言おうとすれば、泣きそうな顔になりながらアーサー王にしがみつく。

 流石のアグラヴェイン卿もそれには勝てないらしい。苦虫を嚙み潰したような顔をしながら下がった。

 

 大きな子供と小さな子供の争い。何度見たことか。

 ガレスとモルゴース様がキャメロットに来た時からだろうか。聞けば、モルゴース様が妹であるアルトリア卿を煽ったせいで暴走してしまったとのこと。

 何をしているのかわからないが、原因はモルゴース様で間違いないだろう。

 

 

「いいよアグルくん。俺は構わんからさっさと終わらせよう」

「王よ、しかし」

「大丈夫大丈夫。アルトリアは兎も角、モードレッドは子供だし、父親に会えて嬉しくて堪らんのだから少しは好きにさせてやってくれ」

「我が王、私が兎も角とはどういうことですか」

「お前は仕事をしろ」

「もう終わらせました」

「うっそだろお前。まだ昼過ぎたばっかだぞ」

 

 

 アーサー王が外を見れば、まだ太陽が完全に昇ったばかりだ。

 朝からしても、いくらなんでも割り当てられた仕事を全て終わらせるのは早すぎる。

 

 

「お前、仕事を終わらせるの最近また早くなってないか?」

「我が王への愛がそうさせたのです」

「それを言えば良いと思っているなお前。聞き飽きて心に響かんわ」

馬鹿なッ!?

 

 

 それはそうでしょう、アルトリア卿……。

 

 

「……ん? アグルくん、これ」

「はい。例の蛮族の調査報告です」

「お。でかした。頑張ってくれた奴には労いをしてやってくれ」

「既に手配を。長期間、密偵をしていたので休みとテルマエの使用を許可しました」

「優秀」

 

 

 グッと親指を立てながらアグラヴェイン卿に向け、顔だけはその報告に向けていた。

 その横を、アルトリア卿が覗き込む。無駄に優秀なアルトリア卿であれば、何が書いているかわかるから意味もわかるだろう。

 

 

「……これが、蛮族?」

「絵、上手いな。逆に上手すぎてキモさが際立ってるぞ」

「アグラヴェイン、これらが例の暴れている連中か?」

「ええ。わかっているだけでもブリテンの先住民であり、普通の騎士ではとても太刀打ちできないほどの力を持っているそうで。既にいくつかの小国が滅ぼされているようです」

 

 

 少し気になった。アーサー王の許可を得て私も見てみる。

 ……これを人と呼ぶのは抵抗がある。報告を見ても、普通の人間より背が高く、肌の色も普通ではない。なんだこれは。

 

 

「んー」

「? どうされました、王」

「なーんか見覚えがあるな。どっかで会ったっけ?」

 

 

 うーん、と何かを思い出そうと指で頭を刺激している。

 

 

「ヴォーティガーンの子飼いはちょっと違うしな。アレはサクソン人だっけ?」

「ええ。卑王ヴォーティガーンの手引きでブリテンに渡ってきた傭兵です」

「ってことは、ピクトの方か」

「ピクト? 王よ、この蛮族のことをご存知で?」

 

 

 アーサー王が言うピクト。聞いたこともないが、アーサー王はどこで知ったのだろうか。

 

 

「ベディくんも知って……ああ、記憶封印したんだっけ」

 

 

 ???

 

 

「無理に思い出さなくてもいいぞ。ベディくんは忘れていた方が良い。

 で、だ。ピクトってのはピクト人のことでな。元々、このブリテンにいた先住民って説があるらしい」

「先住民? この蛮族は我等よりも先にこのブリテンの地にいたのですか」

「みたいだよ。系統としてはケルトの系譜に近いっぽい。ルーン文字を体に刻んで戦力を上げて、多分だけどアイツ等エイリアンと繋がりがあるぞ」

「えいりあん?」

 

 

 えいりあん、とは何だろうか。

 それよりもアーサー王、無理に思い出さなくてもいいってあなたは何を知っているのですか。

 

 

「ま。エイリアンって言葉は頭の片隅にでも置いておきな。今じゃ、言葉を知っても意味はわかんねえだろうし」

 

 

 と、その報告の羊皮紙にはんこを押し付ける。アーサー王が議題と書かれた箱に入れると、次の羊皮紙に手を伸ばした。

 仕事はまだ残っている。アグラヴェイン卿と自分はまだしも、モードレッドとアルトリア卿は完全に邪魔者であるし、本音を言えば大人しく執務室から出て行って欲しいのだが。

 まあ、言えばアルトリア卿のパンチが飛んでくるんだろうなあ。

 

 

「――ハッ」

「ど、どうされました?」

 

 

 流れるように羊皮紙を読み、はんこを押していたアーサー王が何かに気付いたように声を出す。

 

 

「なんか俺、判子を使って仕事をして楽をしてるけど、楽をしてるだけで休んでなくね?」

「――ハッ!」

 

 

 喋っていても手だけは止まらないのは流石か、アーサー王は自分の思考とは別に手は動くらしい。

 というよりも待て。アーサー王、よく考えれば食事と寝る以外に休みを取ってないのでは? 普通に仕事をしているか視察をするしか見ていない気がする。

 これはま、まずいのでは? アーサー王は休みをほどほどに。と騎士たちにお触れを出している。なのにそれを出したアーサー王ができていないのは少々問題があるのでは。

 

 

「何で気付かなかったんだよ俺」

「ちちうえ、やすんでないの?」

「みたいだなー。読んで判子を押すだけの楽な仕事だから苦にもならんかったわ」

 

 

 切羽詰まったような表情が嘘だったかのようにアーサー王は執務を再開する。

 その傍ら、アグラヴェイン卿が珍しく目を見開いて驚いた顔をしている。アーサー王のスケジュールを管理しているアグラヴェイン卿がアーサー王が休んでいないことに気付かなかったのか?

 

 ――ああ。アーサー王の並外れた思考と身体能力で見誤ったのかもしれない。

 疲れるアーサー王など、あまり見ない。王になる前も誰よりも動き、誰よりも元気であったのを思い出した。

 

 

「あの、王。お休みを取りましょうか?」

「いいよいいよ。報告は毎日、山のように届くんだろう? 中には重大な決断が必要なのもあるんだから休むわけにもいかんだろ」

「……申し訳ございません。王に休みがないことに気付かずに」

「それを言ったらアグルくんもでしょ」

 

 

 ……今までアーサー王に対して愚痴を言っていたが、アーサー王は私よりも働いているではないか。

 自分はただ、部屋に立っているだけ。たまにアーサー王と会話する程度で時折、届け物をする程度の仕事しかしていない。

 なのに、王は毎日決断を迫られる仕事をしている。なのに私は――。

 

 

「終わりかね」

「ええ。王、少し時間をいただけますか。スケジュールの調整をケイ様としたいのですが」

「ついでにベディくんも連れて行きな。ベディくんも俺のスケジュールに合わせてるんだから必要じゃろ」

 

 

 アーサー王ははんこやら執務に必要な道具を片付けると、膝に乗っていたモードレッドを抱き上げる。

 

 

「モードレッド、あまり邪魔しないで偉かったぞ」

「おれ、えらい?」

「偉い偉い。ご褒美に父ちゃんと遊ぼうか」

 

 

 後はよろしく、とモードレッドと共に執務室から出るアーサー王。当たり前のようにアルトリア卿が追い掛けるが、止めようとしても殴られるんだろうなあ、と思ってそのままにした。

 アーサー病とはよく言ったものだ。ケイ様が胃が痛そうに言っていたそれは今のアルトリア卿にピッタリな言葉だった。

 アグラヴェイン卿と目を合わせ、揃って息を吐く。もう雰囲気が重い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わーはははは。やっぱエイリアン2最高やんけ」

 

 

 いや、アーサー王! ピクト人をこれと表現するのは如何だと思いますが!? いや、何となくわかるんですが!

 

 

「他にもプレデターとかあるぞ。寧ろ、プレデターがピクト人に似てる気がするぞ……ん? エイリアンは子供の時に見てトラウマ? マスターちゃんも可愛いとこあるなー。ほれ、抱き締めて安心させちゃる」

 

 

 ああ、またマスターを甘やかして。

 実の娘のモードレッドがまた嫉妬しますよ。アルトリア様もまた夜這いを仕掛けてきます。

 

 

「一週間くらいはマーリンの魔術で俺の部屋に入れんようにしてるから、暫くはマーリンのご機嫌取りだな」

 

 

 マーリンの機嫌が良かったのはそれですか……。

 

 

「ほれ、最近はキャスター勢の鯖が増えてるからアルトリア対策はバッチリだ――と言いたいが、アイツは数を重ねる度にぶち破るんだからおかしいよなあ」

 

 

 最近はセイバーの方のアーサー王が白目剥いてますよ。オルタの方は苦虫を食い潰したような顔がデフォルトになるくらいになってます。

 ランサーの方のお二方もアーサー王にアタックし始めているのはカルデアの噂になってますが。

 

 

「なんというか、謎のアルトリアXの言うアルトリア顔特攻(意味深)でも付いてるんじゃないかってレオナルドに言われたわ」

 

 

 そういえば、救世の聖女とそのオルタ、クラウディウスも妙にアタックしてますね……。

 

 

「ついでに沖田総司とかいう吐血っ子もだ」

 

 

 うわあ。なんというか呪いとか祝福でもあるんですかね。

 

 

「取り敢えずあのクソドラゴンをもう一回殺したくなった」

 

 

 正直、私も同様です。記憶が吹っ飛ぶ原因にもなった畜生以下のゴミ神は信仰に値しない存在です。

 

 

「父上! 俺もハグ!」

「はいはい。お前も大人になったという割には甘えるよなあ」

 

 

 犬っぽいですよねえ。モードレッド。

 今回、我等が集まったのはアーサー王が久しぶりにエイリアンを見たいとのことで、カルデアのマスターとどこからか飛んできたモードレッド、マシュ嬢、ロマニ殿で映画を見ることになったのが経緯。

 あんな気持ち悪いのが存在するとは思いたくないが、似たようなのはブリテンにいた。マスターがトラウマになるのもわかる。アレは幼子には恐怖でしかないだろう。

 

 私もちょっと怖い。

 

 

「んじゃ、次はプレデターでも見るか」

 

 

 アーサー王はDVDを入れ替える。パッケージの絵はどうしてもピクト人に見えてしょうがない。

 リモコンをアーサー王が持ち、マスターとモードレッドがピッタリとアーサー王にくっつく。そして再生ボタンを押して――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふざけるな! こんなの、まだプレデターの方がマシではないか! ピクト人はどれだけ頭がおかしい存在なんだ!

 

 

 

 

 





 モードレッドは可愛い。アルトリアも可愛い(白目)

 そして遂にブリテンにおいて最重要なファクターである蛮族さんの登場です。
 カエサルの強化クエストで初めて見た時はプレデターじゃねえか! ってツッコミを入れたので適当に決めました。
 肩キャノンとかアーマー付けたら緑プレデターになると思うよアレ。
 ルーツとかはアーサーくんは知っており、ベディくんも知ってるけど忘れてる。

 で、アーサーくんは実は休んでいなかった説。
 真面目に仕事をしていないだけで休んでいない感じで。アーサーくん自身は判子を押すだけの簡単な仕事と視察をするだけだから特に苦でもない模様。
 与えられた仕事だけはキッチリとこなす。仕事をする前は嫌がってたけどいざとなったらキッチリと働く性格にしております。

 ラストですが、未来の話です。
 こうしてちょいちょいと書くことでFGO編も書くようにと自分を鼓舞しています。ネタバレすんなカス、と思う方もいますがクソ作者にお付き合いくださいな。

 皆、ある程度の展開を予想できるから大丈夫だよね。



 ちなみにアルトリア種に好かれているのはどうでもいい理由を作ってあるのでお楽しみに。




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