騎士(キチ)王   作:ひつまぶし。

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 グッバイ、ニート。ハロー、社畜。
 遅れたのは仕事尽くしの毎日で投稿する元気がなかった故。慣れてきたのでちょっとでも書いて進めるように努力します。

 大奥イベントは完走したけどカーマちゃんは手に入れられませんでした。幕間石でキアラピックアップ回しても出なかったので誰かサーヴァントをイジメます(憤怒)





18 縁談

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アーサー王が心底、呆れた顔をしながら玉座に座っておられる。

 呆れるのもわかる。あれだけ罵倒され、泣かされたギネヴィア様が玉座に座るアーサー王に手を振っている。

 父であるレオデグランス王も付き添いで来ているが、苦笑いをしておられる。娘のギネヴィア様が泣かされてもなお、このキャメロット城に戻ったのだから。

 娘を泣かされた親としては、反応に困っているのだろう。

 

 

「……なんで来たんだコイツ」

 

 

 アーサー王の気持ちもわからなくもない。

 おそらくだが、この場にいる者全員が混乱の極みにいるだろう。

 

 今回はしっかりとこちらの都合も考えた上での訪問の約束を取り付けてきた。文を受け取った時のアーサー王、アグラヴェイン卿、ケイ様の表情はなんとも言えないような表情だった。

 その場にいる者、私も含めて皆が同じ顔をしていただろう。

 が、今回は約束をしたので何もしないわけにもいかず、もてなせるようにキャメロット城にいる面々でしっかりと準備を進める手筈になった。

 今まで以上にだらーんとするアーサー王を見ればそれでもやる気がないのは見てわかった。

 

 

「――つきましては、アーサー王には我が娘であるギネヴィアを嫁として――」

 

 

 玉座の肘掛けに肘を置き、握った拳の上に顎を置くアーサー王。時折、頷いてはいるがあれは適当に相槌打っているだけだな。

 気掛かりなのは、アルトリア卿だ。ギネヴィア様が来るとわかってからはほぼ幽閉に近い形で部屋に閉じ込めているが、いつ突撃してくるやら。

 幸いなのは、あの方が帰って来たことだろうか。今、アーサー王の隣で立っているあの方だ。

 

 合間合間に、アーサー王が指で合図をしながら耳打ちしている。客が来ているのに、その態度はいかがなものかと思いますアーサー王。

 前に見た時よりも、背が伸びてより美しくなっている。

 憂いの表情を浮かべるようになってからは、美しさが際立って儚い印象を感じさせるような雰囲気を醸し出している。

 

 

「――ところで、アーサー王」

「ん?」

「そちらのご婦人は?」

 

 

 レオデグランス王がその正体について聞いてくる。知らない者がいれば、聞きたくもなるだろう。

 それも、白い覆いで顔を隠しているとなれば。角度によっては顔は見えるが、レオデグランス王からは見えにくいのだと思われる。

 

 

「ああ、俺の相談役です。()()()()、紹介を」

 

 

 その名を聞いたレオデグランス王の体が強張るのを感じた。

 やはり、レオデグランス王ともなればその名前は聞いたことがあるらしい。ユーサー王と聞けば、この人ありとまで噂があったからだろう。

 

 アーサー王の一言で、マーリン様は玉座より少し前に足を踏み出す。その動作だけでどこからか花の香りが香ってきた。

 

 

「キャメリアードが王、レオデグランス。我が名はマーリン。ブリテンの王、アーサー王の家臣の魔術師でございます」

「おお、マーリン様。お初にお目にかかります」

 

 

 恭しく、一礼をマーリン様が。それを追うようにレオデグランス王が深々と頭を下げた。

 

 長らく、キャメロット城を留守にしていたマーリン様。ある日、いつものようにアーサー王の執務室に行けばいつの間にかマーリン様がいた。

 執務室の扉を開けば、そこにいたのは座るアーサー王と跨るマーリン様だった。思わず固まった。

 朝っぱらからナニをしているのだ。徐々に顔が赤くなるマーリン様を見れば、ナニをしていたかは明らかであった。

 ナニをしているのだ、お二方は。

 

 弱みを握った気もするが、弱みが多すぎて弱みにならない気がする。

 

 情事の片付けをマーリン様が魔術で行った後は、覆いで赤くなった顔を隠して面を合わせた。

 いない間、マーリン様がどこにいたかは知らない。アーサー王だけが行方を知っていたが、話してはくれないようだ。

 

 

「さて。話はここまでにしようか」

「そうですな。後は若い二人の時間を」

「……ん? わか、い?」

 

 

 アーサー王、それは流石に失礼過ぎです。

 

 ギネヴィア様を見て若いのか? と疑問を持つのは女性に対する対応としては最悪です。

 ほら。ギネヴィア様も笑ってはいますが、内心激怒してますよ。

 アーサー王の見た目が変わらないからってそれは言い過ぎです。アーサー王もそうですが、アルトリア卿も見た目が変わらなさ過ぎて怖いんですが。

 

 ――え? お前も人のこと言えるかって声が聞こえた。

 ど、どこから?

 

 

「ギネヴィアとも積もる話があるでしょう。不出来な娘ですが、よろしくお願いします。アーサー王」

「いや、まだ結婚をするとは……」

「よろしくお願いします(威圧)」

「お、おう……なんだこのオッサン」

 

 

 珍しくアルトリア卿以外で腰が引けているアーサー王。妙に威圧感を感じさせるレオデグランス王は必死の様子だ。

 ああ、ギネヴィア様も婚姻適齢を逃しそうだからか。アルトリア卿は完全に手遅れだが、アーサー王がいればなんでもいいから問題はなかろう。

 普通の王族や貴族、豪族の娘ともなると地位の高い人間の嫁に行かねばと焦るだろう。それだけが彼女たちの生きる意味なのだから。

 アーサー王ともなれば、注目の的だろう。ブリテンを統べる王、王を統べる王とも言えるような相手ならば誰でも妾でもいいからと押し掛ける。現に、お見合いの文がひっきりなしに届いている。

 

 ギネヴィア様は彼女たちよりも先にその立場を得たと言える。

 しかも、アーサー王側から申し出るような内容だ。アーサー王が選んだ、とも言える。

 

 

「ギネヴィア。頑張るんだぞ」

「はい。お父様」

 

 

 レオデグランス王がギネヴィア様を励ましている。親子の愛のように見えるが、実体はもっとドロドロしたようなものだろう。

 「なにがなんでもアーサー王の妃になれ」だろうなあ。

 

 

 

 所変わって、キャメロット城はずれの森の中。

 アーサー王の秘密の場所と私が勝手に呼んでいるそこには、私を含めて四人がいる。

 ボクトウを二本持つアーサー王、頑張って手を震えさせながら逆立ちをするモードレッド、そしてモードレッドに指示を出しながら指導をするのは帰って来たマーリン様。

 

 アルトリア卿の剣の師匠でもあるマーリン様。剣を教えるくらいならもう少し人柄を何とかして欲しかった。

 アーサー王とは別で、剣を扱えば右に並ぶ者なしと言える腕だ。

 だからこそ、アーサー王はモードレッドを鍛える役目をマーリン様に頼んだのだろう。モードレッドは嫌そうな顔をしていたが。

 

 

「ち、ち、う、え……!」

「頑張れモードレッド。マーリンは俺と違ってちゃんと教えられる奴だ。基本をしっかりと教えてもらえ」

「剣を振えるように体を作るからね。その後は我が王と実戦訓練をして経験を積んでもらうよ」

 

 

 タンタンタンとマーリン様は杖で地面を叩き、リズムを取っている。杖を叩き終えたら楽にしていいと指示を出してからはそうしている。

 

 アーサー王、随分とスパルタですが体は大丈夫でしょうか。

 

 

「まあ厳しすぎるが、モードレッドのためだ。俺たちの中に宿る力は使い方を間違えると世界を滅ぼす刃になるからってのもあるが、俺の跡を継ぐことも考えての計画だ」

 

 

 前から聞いてますが、アーサー王の力は何なのですか。

 聞いていると普通の力では想像できないようなパワーを秘めているように聞こえるんですが。

 

 

「俺は最後の幻想の王だ。幻想が現存するこのブリテンを統べるに相応しい力を()()()()()()()()()()

 

 

 世界に――?

 

 

「欠片とはいえ、モードレッドも俺の力の一部を受け継いでいる。いつ目覚めるかはわからんが、それまでには鍛えておきたい。その点、マーリンは得意分野だ」

 

 

 だからモードレッドを鍛える役目をマーリン様に。

 

 

「そのための対価はもう支払った。ほら……なあ?」

 

 

 ああ、あの情事ですか。

 正直、あんなものを見せられた私はどう反応すればいいのかわかりませんでしたよ。

 

 

「勃てばいいんじゃない?」

 

 

 たッ……!?

 

 

「ベディくんも男だから反応はするでしょ。ベディくんには付き合ってる女性とかいないの?」

 

 

 残念ながら。忙しすぎて付き合う余裕もありません。

 というよりも、アルトリア卿を見ていると女性が怖くてたまらないので付き合いたいとも思いませんよ。ええ。

 

 ……アーサー王に反応しないように頑張っているのは内緒だ。たまにエロく見えるんですが。あの人。

 

 

「ちちうえーてがいたいー」

「おっとと。おー、頑張ったな」

 

 

 泣きながら震える手をアーサー王に伸ばせば、応えるようにモードレッドを抱き上げる。

 震えている小さな手、腕を優しく撫でる。器用に片足で立ちながら上げた片足でボクトウ二本を支えるアーサー王。

 

 

「流石は我が王。片足立ちでも見事にバランスが取れている」

 

 

 マーリン様。お疲れ様です。

 

 

「やあ。朝以来だね、ベディヴィエールくん――あのことは忘れるんだ、いいね?」

 

 

 それならあんな場所で情事を交わさないでくださいマーリン様。

 

 

「あ、いや、でも……わ、我が王と久しぶりに会えたから嬉しくなって、つい」

 

 

 マーリン様、可愛い(断言)

 

 顔を真っ赤にして覆いで完全に顔を隠すマーリン様の可愛さが凄まじい。

 これだ。これなのだ。アルトリア卿の狂った恋よりも尊い、愛する者を純粋に愛する恋する女性とはまさにマーリン様を言うのだ。

 美しい愛の形。それを見るだけで心が洗われる。

 ぶっちゃけるとアルトリア卿よりマシな時点でなんでも良い気がする。あれと比べたら執務室で情事を交わすくらいは許容範囲である(錯乱)

 

 

「いたいー」

「痛いなー痛いよなー。じゃあ、モードレッドにはそんな痛みも吹き飛ぶような良いモノを見せてあげよう」

 

 

 ボクトウの一本を脚の力だけでマーリン様に渡す。もう一本をモードレッドを抱えていない方の手で掴む。

 艶やかな木の表面が木漏れ日を反射する。が、目を凝らして見ていると別の光がボクトウに集まっていた。

 

 

「モードレッド。この光を覚えておくんだ。いつか、お前だけの力も同じ光を放つようになるからな」

 

 

 徐々に、光の色が変わる。エクスカリバーが放つ黄金の光にも似た色よりも濃い、深い色だった。

 その輝きは私の心を捉えて離さない――。

 

 この光景は、ずっと私の心の中に残るだろう。それほど美しい光景だった。

 アーサー王の内に宿る真の力。力の結晶、形になったそれは世界で最も美しいものだった。

 世界の闇を払える、と言われても納得できる。

 最後の幻想の力と言われれば納得できる。

 

 

「これが俺とお前だけに宿る魂の剣。その名は――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うあ……」

 

 

 あ、アーサーさん!

 

 エクスカリバーと呼んだ一撃を放った後のアーサーさんは力尽きたように光が消える。

 背中から空気が抜けるように、英霊として構築されるパーツが抜けて行っているように感じた。死に掛けていると言われれば納得できちゃう危険な状態なのは私でもわかった。

 

 お、応急手当! 応急手当!

 

 

「陛下!」

「アーサー陛下!」

 

 

 サーヴァントを吹き飛ばしたことで動けなかったロマンも動け、膝を突いたアーサーさんに駆け寄る。

 戦いの余波から守ってくれていたマシュも大きな盾を持ちながらも駆け寄って流れるように座ってアーサーさんの頭を自分の膝に乗せる。

 

 いや、マシュ。普通にしているけどおかしくない?

 

 

「?」

 

 

 あ。なんでもありませんです、はい。

 

 心底不思議そうにするマシュ。アーサーさんと初めて会った時から妙に距離感が近い気がする。

 今回の召喚はダ・ヴィンチちゃんのサポートをしていたことでいなかっただけで、カルデアに帰ってからも冬木にいた時も私よりもアーサーさんといてた気がする。

 あ。そういえばアーサーさんはマシュに力を貸しているサーヴァントの正体を知っているんだっけ?

 

 咄嗟の礼装による回復はアーサーさんを消滅から救い出せたみたい。

 漏れ出している光は収まって薄くなっていた体も元に戻っている。表情も少し安らいでいるように見える。

 ああ、良かった。

 

 

「――でだよ」

 

 

 聞こえてきた声に、体が強張る。

 アーサーさんが吹き飛ばしたサーヴァントがいるところから聞こえてくる。

 

 

「なんでだよ。これが俺に対する罰なのかよ」

 

 

 ギギギギと軋むような音も聞こえる。

 そこに顔を向け、見てみればあのサーヴァントが仰向けになって倒れ、涙を流している。流れる涙がサーヴァントの顔の横に溜まっていたのも見えた。

 音の発生源はあのサーヴァント。振るっていた煌びやかな剣が離れた場所に刺さっていてそちらからも音が聞こえる。

 

 

「あ。やばい」

「うえっ、ちちうえぇぇぇぇ」

 

 

 え?

 

 アーサーさんの声が合図になったのか、今までとは比べ物にならない巨大な力が解き放たれた。

 真っ黒な靄がサーヴァントから飛び出して召喚ルームを満たす。黒すぎて何も見えない。

 音も聞こえなくなる。轟音が轟いていたはずなのに、痛いほどの静寂が支配している。匂いも感じない。肌に手が触れているはずなのに何も感じない。

 

 サーヴァント――アーサーさんの子、モードレッド。

 超一級の英雄だけど、ここまでだなんて知らなかった。ランスロットに次いで円卓最強と名高いアーサー王の継承者であり、アーサー王に選定の剣を託された騎士。

 アーサー王の死後、世界を旅していた形跡がある。閉ざされた大地、ブリテンから出てローマ軍を攻撃した逸話もある。モードレッドにはアーサー王の最後に付き添った大狼の子供もまた、付き添っていたとも言われている。

 そして、モードレッドの最後の足跡は()()()()()()()()()()ところで途絶えている。

 歴史学者の考察を惑わせるランスロットの殺害は円卓の騎士にまつわる大きな謎の一つとして数えられている。

 

 ――もしかしたら、理由はなかったのかもしれない。

 父と子。二人の道を分かつことになったのはそんなに難しい理由はなかったのではないだろうか。

 

 ……でも、もう考えても無駄だ。

 五感が消え、ゆっくりと思考が鈍るのがわかる。

 そして、何も考えられなくなってくる――。

 

 

 

 

 

 

 





 押し掛け女房ギネヴィア()

 円卓の呪いからは逃げられないアーサーくん、無事ギネヴィアにロックオンされる。
 そして満を持してマーリン帰還。普通にオフィスックスをベディくんに見られて赤面するマーリンたそ。

 モードレッド訓練の風景にマーリンが参加。
 アルトリアの剣の師である設定はモードレッドに使おうと準備しておりました。
 傍ら、ベディくんの性癖が段々と定まっております(ゲス顔)

 ちなみに、アーサーくんとモードレッドに宿る力の正体の名前は決めていない。



 カルデア編は弱体化しているせいでエクスカリバー一発でもガス欠になる雑魚っぷり。
 マシュの対応は今後登場するギャラハッドとアーサーくんとの関係がマシュに表れた感じです。
 モードレッドは自爆暴走。子供みたいに泣いて力を暴走させ、マスターちゃんは五感が麻痺してしまった感じ。

 さーて。そろそろブリテン編を終わらせますかねー。







 あと何話になるんだ(白目)





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