「アーサー王 武器」と調べたら色々あるけどあんまり使われていない感じなので適当にいくつか逸話に沿って出す予定です。
我らが王、アーサー王。
名前がないという選定の剣を抜いた男に私たちが名を与えた。
元々、アルトリアが王になる為に新しい名前として考えていたのがアーサー。それをそのまま我らが王に献上したのだ。
説得には骨が折れたが、基本的には好きに動いてもいい条件で王になる事を決意してもらった。
マーリンが言うには、王になる覚悟がなくても運命に抗えるだけの大きな力を秘めているからこそ選定の剣が抜けたのだというわけだが。
つまり、アーサー王は近い未来で大きなことを為す。王にならずとも、それはできる。
それでも王になってもらったのは我らのわがままだ。今の世、人々には希望の旗が必要だ。アーサー王にはそんな希望の象徴になっていただくのだ。
というわけでこれから王の即位式だ。
その前にあのクソ親父を王座から引き摺り下ろして掃除をせねば。
まずはマーリンの言い付け通り、各地を回ってアーサー王の宣伝をする。
マーリンがノリノリで口上を述べてくれ、魔術を使って人の心に付け入るように訴えかける。
そうやって扇動をし、人手を増やしてクーデターを引き起こす。
流石人間のクズのマーリン。嫌われるようなことを考えたり行動に移すことには長けている。
しかも折れた選定の剣は情報を操作して王座を譲らないユーサー王への怒りで折れたことにしている。
こう言えば、民衆はユーサー王に怒りを募らせる。さっさと王座を譲らないから王の象徴足る選定の剣が折れたのだと叫ぶのだ。
服装を新たに、我らは各地を回る。害獣を狩り、蛮族を狩り、賊を懲らしめる。
マーリンの魔術の力で枯れた土地に回復の力を与え、各地を癒す。
前に旅をしていた時はあれほどマーリンは魔術を使わなかったのにアーサー王がお願いしたら尻尾を振って喜んで魔術を使う。
何だこれは。マーリン死ねばいいのに。
アーサー王の一番の従者は私なのだぞ!
選定の剣が抜かれたことは噂になっている。民衆の中では知らぬ者はいないほど広がっている。
真の王たるアーサー王の旗の下に! と宣伝しているおかげか、我らが陣営に参加をしたいと騎士が集まる。
無論、騎士だけではなく民衆もだ。
本当であれば素早くクーデターを成功させてアーサー王を王座に納めたいが、焦りは禁物。
頭の良いマーリンはアーサー王の為に慣れない智略を張り巡らせる。
ユーサー王を失脚させるためにできることを行い、王の寵愛を得ようとしている変態野郎。
男色など流行らぬ。襲おうとすればマーリンのマーリン()を斬り飛ばしてやる。
ぐぬう。いくら女が騎士になることを認めない世とはいえ、こんな兜で顔を隠すのは些か抵抗がある。
視界は狭まるし、何よりも我が王のキメ顔がよく見れないではないか。
民衆に見せるエイギョウスマイル? とやらは素晴らしい。マーリン、そこだけは褒めてやる。
我が王は似合わないことをして鬱憤が溜まれば、害獣駆除や魔獣駆除に精を出す。
とても王とは思えない顔で暴れるのも素晴らしい。男らしい荒々しさがありながらも、凛々しさを混ぜたような混沌とした表情が良いのだ。
マーリンと同意見なのは腹が立つが。
しかし、悩みの種もある。
旅の途中、我が王が武器を駄目にするのだ。
我が王の力に耐えられず、砕ける剣や槍。選定の剣を使うも、実力を発揮できていないようだった。
本当であれば我が王が即位した時に献上する予定だったが、マーリンは計画を前倒しにするようだった。
王が持つべき人々の願いの結晶、選定の剣を超える約束された勝利をもたらす幻想の剣。
銘を、エクスカリバー。我が王に献上するに相応しい剣である。
「我が王、こちらを」
「おう、ありがとよ」
ゲシッと食事を跪いて渡すマーリンを蹴るアーサー王。
もうこの光景は見慣れた。我が王は気持ち悪いマーリンは見たくないとボヤいていた。
男に対してまるで雌のように盛る男。我が王も苦労をなさる。
「我が王、こちらをどうぞ」
「おう、ありがとよ」
反対に、私は労うように頭を軽くポンポンしてくれるのだ。
これだけで心が満たされる。ちょっとしたことをしても褒めてもらえるのだ。
我が王に仕える喜びはまさにそこにある。
マーリン以外は小さなことでも労う。王らしくない振る舞いは我が王にとっての優しさ、王の器とも言えるものだろう。
身近にある王だからこそ、民衆も支持する。恐らくはそういうことだと思う。
最初は四人の旅。我が王、私、ケイ、マーリン。
今では一つの騎士団だ。我が王に賛同し、身を捧げる覚悟の騎士が仲間に加わり、各地を回っているのだ。
中でも、ガウェインという騎士は特別な力を持っている。
日がある時は我が王に並ぶほどの力を発揮する。最近では専ら、我が王とガウェインがよく模擬戦闘をしている。
ガウェインはいい汗掻いたと汗にまみれた手で我が王と握手をする。我が王は回数を重ねる度に汗はあまり流さないようになる。
一戦を交える度に強くなっている、とガウェインは語る。ガウェインもまた、力に耐えられるだけの武器がないようで、よく騎士の剣を折っている。
あと、なんかこのパワー自慢ゴリラみたいなのは私の甥っ子らしい。
思わず目が点になった。ガウェインによれば、私の姉のモルガンの息子だと。
その割には年がおかしい気がする。
「叔母上。それは全てブリテンの環境のせいだ、と母上は仰っておられます」
なるほど。それは確かにそうだ。
こんな魔境だ。何が起きてもおかしくない。
代表的なのが我が王。天然の王の才能を秘めた類稀な人間が生まれるのだから。
つまり、ブリテンが悪いのだ。
「もう少ししたら我が弟のアグラヴェインもこちらに合流するそうです。頭の良い奴なのでアーサー王のお力になれるかと」
「つまりは軍師に向いていると」
これでマーリンの立場がどんどん無くなる。いいぞ、もっとやれ。
「もう一人の弟のガヘリスもアーサー王の付き人としてやれているようで安心ですよ」
「ああ、アイツは時々アーサーと暴走はするが基本的には止めてくれるから俺としては助かっている。気が付いたら暴走しているからな、アイツは」
頭が痛そうに抑えるケイ。
「王の才能には誰よりも恵まれているが、勤められるかと聞かれればそれはまた別問題だ。今は即位までの問題を片付けないとならんが、王になった後も色々考えにゃならんぞ」
後回しにしているが、我が王の王としての仕事をどうするべきかをケイは悩んでいる。
確かに、我が王は自由奔放だ。最初も王にはなりたくないと逃げ出したこともあったのだから。
食べ物で釣っても、権力で釣っても反応は良くなかった。女で釣れば悩みに悩んで最終的に断った経緯はあるが、それを知っているのは最初のメンバーだけだ。
我が王との秘密の隠し事。うふふ。そそるものがありますね。
「ガウェイン、お前さんにもとことん付き合ってもらうぞ」
「はい。我が身は既にアーサー王に捧げたもの。故に、王と共にあり続けんことを」
なんか耳触りの良い言葉を吐いているケイですが、私にはわかりますよ。
生贄ができたと思ってるはずです。胃痛を分け与えられる仲間ができたのだと喜んでいるのがよくわかります。
こうしてガウェイン、ケイ、たまにマーリンと語り合う時がありますがこんな時しか私は自分自身が女であることを晒すことができません。
女は騎士になるものではない。ましてや、王権など以ての外である。
最初は女であることを隠して男として振る舞い、王となれと言われていた。
そんなことを言い出したアホ二人は奇しくも、我が王に毛嫌いされています。マーリンとユーサー王も今思えば、ただの頭の良い馬鹿だったのでしょう。
自分が女であることを晒せるのはこの場と、我が王の閨のみ。
まだこの身は清いままだが、我が王は時々私を閨に連れ込んで鎧を脱ぎ捨て、朝まで寝ながら抱き締められる。
おかげで一人で寝る時は肌寂しくなってしまったではないか。
既に清き乙女を散らす覚悟はできているが、我が王は私を抱こうとしない。
むむむ。いっそ、こちらから誘ってみるのも一つの手段か?
悶々と悩んでいると、外が騒がしくなってくる。
天幕にいるケイたちは最低限の武装をし、外に出る。私もまた、兜を被って大きくなり始めた胸を隠す甲冑の位置を調整して後を追う。
外に出れば、我が王とガヘリスがいた。
その場にいる者が全員、目玉が飛び出るかというほど驚いていた。
我が王が狼に咥えられている。
取り敢えず、意識を飛ばすことにした。
徐々に忠犬みたいになり始めるアルトリア。選定の剣を抜いてないから成長するので最近は胸が大きくなってきて隠すのに頑張る子。
マーリンは悪だくみは得意でも、智略とか誰かのために動くことは苦手なイメージ。
頑張ってアーサー王くんに気に入られようと奮闘し、アルトリアと競い合っている模様。
ケイ兄貴は胃痛に悩んでそう。