騎士(キチ)王   作:ひつまぶし。

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 精霊とかは即堕ちするなろう法則。




04 湖の誤算

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 犬拾った、と我が王は言う。

 おそらく、その場にいる者全員がこう言うだろう。“どう見ても狼じゃないか”と。

 

 ガヘリスによれば、いつものように魔猪狩りをしていたらあの狼たちが乱入してきたらしい。

 何か通じ合うものがあったのか、我が王と一際大きな狼は見詰め合ったらしい。

 気付いたら意気投合して狼たちと魔猪を追い回してイジメていたらしい。我が王は楽しそうに狼に乗って魔猪を後ろから槍で突きまくっていたとも。

 

 どういうことなの……?

 

 ちなみに狼に咥えられたのは誤って狼の毛をたくさん抜いてしまい、怒って顔を甘噛みされて運ばれたのだそう。

 完全に我が王が食べられたと思いましたよ、ええ。

 

 

「めっちゃ可愛いから飼いたい」

 

 

 我が王の目がこれまでになくキラキラしている。可愛い。

 が。騎士たちは反対する。

 それもそうだろう。こんなにも大きな狼が傍にいると落ち着かないだろう。ふとした拍子に食われてしまうかもしれないのだから。

 

 そんな騎士たちの訴えは予想していたのだろう。

 我が王はパンパンと手を叩いて何かの合図らしきものを出した。

 後ろに控えていた少し小さな――普通の狼と比べると大きいですが、彼等が何かを地面に転がす。

 それは木の枝であったり、魔猪であったり。

 地面に転がした狼たちは行儀よく並んでおすわりをしている。

 

 

「こんな感じで頼んだら薪とか食料を見つけて運んできてくれるぞ」

 

 

 ですが、と騎士はなおも反対する。

 そして我が王が再び手を叩いた。

 何匹かの狼が音もなく消え、少し離れた場所から魔猪の悲鳴が聞こえてくる。

 消えた狼が再び姿を現すと、彼等の口には魔猪が咥えられていた。

 

 

「こんな感じで頼んだら近付いてくる敵を見つけて殺してくれるぞ」

 

 

 で、ですがと少ない騎士が反対しようとすると。

 我が王は三度、手を鳴らした。

 小さな狼が前に出ると、我が王はそのまま狼に飛びついた。

 モフゥ、と柔らかな音が辺りに響き渡る。

 騎士が慌てたように止めようとするが、白い毛に埋もれた我が王が顔だけ出して満足そうに言う。

 

 

「こんな感じで頼んだらフカフカのベッド代わりになってくれるぞ」

 

 

 それには反対していた騎士もどう反応すればよいのかと近くの者と顔を合わせて戸惑う。

 それよりもだ。我が王が可愛すぎて辛い。

 

 

「アーサー、そいつらはお前の言うことを聞くのか?」

「基本的に、嫌がることをしなかったら人懐っこいぞこいつら。しっかりお世話するから飼っていいよね、ケイパパ」

「誰がパパだ殺すぞ」

 

 

 ふむ。ところで我が王。

 私もモフモフしてもよろしいでしょうか。

 

 

「飼うの許可してくれたら好きにしていいぞ」

 

 

 ケイ、よろしいですね?

 

 

「アル! お前のはお願いじゃなくて脅しだ! 俺の首に剣を突き付けるな!」

 

 

 結果、ケイが折れて狼たちを飼うことになった。

 我が王がご満悦そうで私も何よりだ。

 今日の夜は騎士たちが珍しく全員、休める時間になったが休まる時間でもなかったのは言うまでもない。

 

 私は我が王に抱き締められながら寝ましたが(ムフー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔術師マーリンは激怒した。

 性転換できないことに。彼が望む性転換を行えないことに。

 妖精たちに力を借りても、望む結果を得られない。弟子である湖の乙女との共同の魔術行使でも無理であった。

 本当であればアーサー王の新たな剣を頼むのが最優先なのだが、湖の乙女を訪ねた理由が性転換になるほど新しい剣はついでになっていた。

 

 そんな様子のマーリンに湖の乙女は白目を剥いていた。

 仮にも大魔法使いと目される魔術師マーリンだ。人間性はクソでも、実力は確か。

 なのに今は言葉にできないほど気持ち悪くなっている。

 我が王、我が王と選定の剣を抜いたアーサー王をことある毎に褒める彼の様子にアーサー王のことを気にするな、というのが無理な話である。

 

 逆光源氏計画で育てたランスロット。かのアーサー王に負けない剣技を持つ息子の彼ならば、と湖の乙女は考える。

 今、アーサー王の騎士団は各地を回っている。その次の目的地は湖の乙女がいる場所の近くを通る。

 そこを、ランスロットを向かわせて実力を確かめる。そんな計画を考えている。

 湖の乙女の最高の傑作であるエクスカリバーの二振り。それを与えるのにふさわしい人物なのかと。

 

 もしも、お目に叶うのならば。

 湖の乙女は舌なめずりしながらまだ見ぬアーサー王を想う。

 お目に叶うのであれば誘拐して色仕掛けをすれば良い。肉食系の精霊は自慢げにアーサー王について語るマーリンを見ながら思う。

 ニコニコと笑う心の内では邪悪に笑う悪女のような顔が秘められていた。

 

 そして来たその時。

 近くに来たアーサー王の騎士団に息子であるランスロットに剣を持たせて向かわせる。

 おそらく、彼女はどんなに強くともランスロットならばアーサー王に勝てると考えていたのだろう。

 遠見の魔術を使い、マーリンと共に騎士団とぶつかったランスロットを見る。

 姿を隠す魔術を使い、アーサー王騎士団を襲うランスロット。

 

 しかし、である。

 遠見の魔術を使ってもわかる、ランスロットの動揺。湖の乙女も動揺していた。

 ガウガウと狼が唸りながらランスロットを取り囲む。思いもしなかった状況にランスロットも戸惑うように見回している。

 

 

ひとーつ、敵を見たら容赦をするな

 

 

 狼の大群が従うように道を開ける。

 開けた先からは、黒髪の男が現れる。折れた剣を手に、防寒用のマントを脱ぎ捨てながらランスロットに向かって歩いてくる。

 マントを脱げば、その下から白と青で彩られた服が現れる。彼の腰には、銀色の王冠が紐で括り付けられてぶら下がっている。

 

 

ふたーつ、命乞いを聞いたら笑いながらぶっ殺せ

 

 

 !? と湖の乙女はマーリンを見る。思ってた人物像とは違うアーサー王に面食らった様子。

 

 

みーいっつ、兎にも角にも死んでしまえ

 

 

 ガクガクと湖の乙女はマーリンを掴んで揺さぶる。何だあれは、と。

 

 アーサー王が歩き、ランスロットの近くに来るとニタリと笑いながら折れた剣を振り抜く。

 斬り上げるように振り抜けば、大地が裂ける。振り抜いた剣の斬撃が延長するように、ランスロットを襲う。

 が、ランスロットも達人。悪寒を感じて飛び退けば、ランスロットが立っていた場所で地割れが起きていた。

 

 ありえない。湖の乙女は目の前の現象が受け入れられなかった。

 自慢の息子であるランスロットもあれほどの技を放てるだろうか。否、いくらなんでも普通の剣ではあそこまではできない。

 

 

『今日は機嫌が良いから優しく一瞬でぶっ殺してやる』

『!?』

 

 

 何だあれは。ふざけるな。王は王でも騎士の王などではなく蛮族の王ではないか!

 あんなものを生み出した元凶でもあるマーリンを睨む。が、湖の乙女はすぐに目を逸らした。

 滝のように涙を流しながら歓喜しているマーリンがいた。宛ら、狂信者が喜び狂っているようで、目を逸らしたくもなろう。

 

 剣を振るうだけで地割れが起きる。何の冗談か。

 対峙しているランスロットからすれば堪ったものではない。隙を見て逃げ出そうにも、飛距離もずば抜けているせいで逃走は難しい。

 

 そんな光景を見た湖の乙女は慌ててランスロットを逃がそうと魔術を行使する。

 煙を巻き、姿を見えなくして逃走の手助けになればと使う。ランスロットも意図を理解し、逃走だけに力を入れる。

 ランスロットが逃げることに成功すると同時に、広範囲に渡って掛けられた魔術が一瞬で両断される。

 ただ、斬られる。湖の乙女にとっても悪夢でしかなかった。

 

 そんな湖の乙女にマーリンは優しく語り掛ける。

 

 

聖剣を渡さないと我が王を嗾けるよ

 

 

 マーリンは変態になっても外道であった。

 

 後日、旅をするアーサー王一団に聖剣が贈られる。それを渡した絶世の美女はアーサー王に手渡しする時に必死に泣くのを堪えていた。

 アーサー王が首を傾げながら聖剣を受け取る珍妙な光景がそこにあったのであった。

 

 渡された聖剣の二振り。エクスカリバーはアーサー王の象徴となり、エクスカリバー・ガラティーンはアーサー王お気に入りのガウェインに渡される事になった。

 近い将来、兵器とも言える聖剣を手にした二人が大地を破壊しながら戦う事になり、ケイが倒れる原因にもなるのは定まった未来であろう。

 

 

 

 

 

 





 この中のどれかがカヴァス一世です(適当)

 このアーサーくんの服装はプロトアーサーの配色で上着を腰に巻いてる感じのちょい悪スタイル。
 マントはアルトリアの最終再臨のアレ。寒くないようにアルトリアが用意した模様。

 ちなみに折れた剣は選定の剣だったり。折れても頑丈なので斬撃を飛ばすのに使ってる設定。

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