ネタ扱いにされるなんとかタンとなんとかスロットは大体美味しい位置にいたりします。
「アグラヴェインです。お見知りおきを」
「おう。なんかガウェインの弟の割には老けてんなお前」
む。アグラヴェインが膝から崩れた。
兄であるガウェインが慌てて慰めに行ったが、叔母である私も行った方が良いのだろうか。
兼ねてから合流すると言われていた軍師候補のアグラヴェインが我等に合流した。
湖の乙女から授かった聖剣を得てから、ますます我が王の騎士団の名声は上がった。それに伴ってこちらに来る人員も増えたわけだが。
増えすぎて食い扶持が増えたり、あぶれる者も増える。
まあ、正直に言えば勝手に入って来て場所がないと文句を言う者が多いのは許さん。
それも我が王が聖剣を得てから入る者などそれに当て嵌まるのが多い。
聖剣を得る前から我が王に仕える者は文句もない。狼たちの件は敢えて目を瞑るとする。
お零れに預かろうとする不届き者が多くて敵わん。中にはユーサー王の間者も紛れているようだし、いっそのこと斬り捨てた方が楽だ。
ケイが働きに応じて食事を出す方法を取り始めたのもその影響。
まあ、我が王の寵愛を受けている私は余裕で食事はもらえますが。仕事はきっちりこなすのが王に仕える従者の役目ですから。
「アーサー王、こう見えてもアグラヴェインは見た目を気にしているので」
ガウェインがそう言えば、我が王はバツが悪そうになさる。
流石にこれは我が王が悪いので庇いはしません。
新たに得たエクスカリバーとそれを納める鞘。地面に突き立て、柄頭に手を添えるのは聖剣を得てからよく見る格好だ。
ケイによる指導でアーサー王の象徴であるエクスカリバーを見せる方法を取るようになったとも聞いた。
格好良いので私は一向に構いませんが(グッ)
「じゃあ早速だが、アグラヴェイン。お前には軍師としての役目を果たしてもらう。これは一応の試験でもあるから今回の出来次第でお前の待遇が変わることを頭に入れておけ」
「頑張れ」
最近はアーサー王の相談役にハマったケイが方針について語ることが多い。
直前までにケイが我が王と相談して方針を決めているらしいが、長く喋らせるとボロが出るとのことでケイが語る方法を取るようにした。
最終的に我が王の役目はあんな感じで柄頭に置いた手の片方で親指を立ててエールを送ることだ。
……おや。アグラヴェインが微妙な顔になってますね。
むむ。あの顔は思ってたアーサー王の人物像と違って戸惑っていると見ました。
大丈夫です。少しすればあなたも我が王の魅力に気付いてどっぷり漬かりますから。
そんなわけでアグラヴェインに対する試験はアーサー王に仇を為すゴミの駆除の作戦立案です。
ユーサー王の傘下にある豪族。かなりの騎士を抱えてここ一帯の支配者でもあるゴミカス騎士の討伐が今回の目的。
ですがまあ、ケイともガウェインとも相談して今回はちょっとした条件を加えましたが。
「今回の作戦はアーサー王は起用しない。これを前提に作戦を立てろ」
「!?」
王のポーズを崩して驚く我が王。
あの顔は暴れられないのか! って顔ですね。間違いない。
そして忘れてはならないのがそこで満足そうに頷いている脳筋の甥です。
「なお、ガウェインも不参加だ」
「!?」
ガタタッと腕を組んで頷いていたガウェインが立ち上がる。
ババッと私を見て顔の表情で訴えてきます。
あれは聞いていた話と違うんですが叔母上!? って顔ですね間違いない。
てなわけで今回はアグラヴェインの作戦と私の出陣だけで豪族を討伐するものに決まりました。
我が王に我が雄姿を見てもらうのだ!!
大手柄を得て我が王に褒めてもらう作戦が一気に失敗した。
何だあのクソ細目は。今回の手柄を掻っ攫われたぞ。
我が王に捧げる戦果をどこの骨ともわからないクソ細目に奪われた。取り敢えず殺したい。
「王よ。この者が此度の戦の功労者です」
戦えなかったことに対して不機嫌そうに顔を歪めながら王のポーズをする我が王。
我が王の前に跪くのは件のクソ細目。赤い長髪の男、体も細い騎士とは思えない体付きだ。
我が王のように、筋肉を凝縮させた体なのかもしれないが。
剣を持たず、弓で戦う。それで我が王の騎士を名乗るとは貧弱者めが。男であるなら、剣で戦うべきだろうに。
さっきからポロンポロンと煩い。
「名を名乗れ」
「タントリス、と申します」
む。これは。
我が王、我が王。こいつ嘘を吐いてます。
我が王のお傍に立つ私は耳打ちするように進言した。
私にはわかる。このクソ細目が嘘を吐いていると。ええ、わかりますとも。
グッと親指を立ててくれる我が王。よくやったと褒められたようで満足である。
鞘に納まったエクスカリバーの柄頭を持ち、持ち上げてから鞘の剣先で床を打ち鳴らす我が王。
腹にまで響くような重い音がすると、控えていたガウェインが飛び出す。
偽名を名乗った細目の傍に飛ぶと、ガウェインはエクスカリバー・ガラティーンを首に突き付ける。いつでも首を斬れるように構えた。
無論、私も動きました。いつでも心の臓を抜けるように槍を構えましたとも。
「貴様、それは偽名だな。何を思って偽りの名を名乗ったかは知らんが、嘘を吐かれたのは腹立つから本当のことを言え」
すると、どこからかえええと叫ぶような声が聞こえないはずなのに聞こえてくる。
アグラヴェインも微妙な顔をしているし、クソ細目も色々と感情が混ざったような顔をしているではないか。
何だ貴様等。我が王のお言葉だぞ。喜べ。
「おいアーサー。頼むから建前を使えとあれほど」
「暴れられなかったから虫の居所が悪いだけだ」
「そういうのは八つ当たりと言うんだ」
ケイと我が王がコソコソと会話をしている。
王には建前が必要だと前々から言っているのに、我が王は本音でぶっちゃける事が多い御方です。
逆に嘘はあまり言わないからケイもそこだけは好感を持っているし、ガウェインもガヘリスも仕えたいと思わせたのもこの部分でしょう。
しかし、民衆を導くのであれば思ってもないことを言わねばならない時もあります。
練習はさせているのに、未だに成果がないことにケイは頭を痛めている模様。ただでさえ、相談役に給仕役まとめに軍師とか兼任しているせいで心労が凄まじいことになっている。
最初に我が王を王にする際の契約である程度の自由はしてもいいと言ったせいで自分で自分の首を絞めている気もしますが。
だからこそ人材集めにあれほど精を出しているのですが。ガヘリスの働きを見てむせび泣くケイなんて見たくありませんでしたよ。
「アーサー王。この者はどうなさいますか」
「うん。ムカつくから殺せ」
「待て待て待て」
ケイは必死に止め、こうも言う。
ぶっちゃけるとどの騎士も突撃脳しかいないから、少しは遠距離で攻撃できる優秀な騎士が欲しいと。
弓使いで私よりも戦果が出せるのなら実力は間違いないとのこと。
そしてまとめるようにケイはボソボソと我が王に耳打ちする。
ふむふむと頷く我が王。段々と顔が輝いている気がする。
ズドン、と再びエクスカリバーで床を大きく打ち鳴らすと、立ち上がってクソ細目を指差す。
「採用!!!!!!!」
しかし、細目は嬉しくなさそうな顔をする。アグラヴェインも苦虫を嚙み潰したような顔に。
グダグダに終わったが、細目は我等騎士団に合流することに決まった。
ちなみに本名はトリスタン。弓みたいな琴をポロンポロン鳴らす変な奴です。
で、戦の後は奪った土地を自分達のものにする。元々人望もないような豪族だったのでアーサー王が治めると聞けば喜ぶ民衆であった。
増えすぎた騎士団の一部をこの地に留まらせ、生活基盤を築き上げる。ケイもアグラヴェインも同じ意見のようで、我が王の一声で新しい我が家になった。
というか我が王。率先して家を建てる材料を運ばないでください。部下が面食らっているではありませんか。
我が王だけで20軒ほどの家が建っているのですがそれは。
参考にするんだと言われても普通の騎士ではまずそれは無理です。
……え? この家は我が王と私が住む家?
ふむ? ふむ……ふむ。
わがおう、いっぱいちゅき
トリスタン「何この王」
アグラヴェイン「何この王」
トリスタンをwikiで調べたら物語の主人公みたいで草生えた。なので覚えていたらトリスタンは活躍させるようにしたい。
アルトリアは褒め称えているけどやってることは蛮族みたいなんだよなあ、と思いました(小並感)
本当なら攻めて民衆に嫌われるのを書いて暴れさせようとしたけどアーサー王くんは民衆が望んだ王様だからやめました(憤怒)
この小説のアルトリアは大体こんな感じです流石我が王しか言わない子。
まるでなろうみたいだあ