騎士(キチ)王   作:ひつまぶし。

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 ユーサーくん終了のお知らせ。




06 クーデター

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遂に来た。遂に来ましたこの日が。

 あのにっくきクソ親父に引導を渡す時が。

 我が王が真に王になる最終段階が。

 

 クーデターの成功率を最大限に引き上げる準備もアグラヴェインが加入したことで一気に進んだ。

 ガウェインを始め、ガヘリス、トリスタン、湖の乙女からの援軍である湖のランスロ。

 それぞれ名のある、武功を上げた騎士が騎士を率いて部隊を分ける。これによって一気に戦術の幅が広がり、アグラヴェインが一発で軍師であると認められた手腕を発揮することでクーデターを最終段階に進めることができた。

 最終段階、即ち我が父であるユーサー王の退位を求める抗議。物騒な抗議ですが私が王になれなかったからと言って王座にしがみついている老害はもういらないのだ。

 個人的には出生の秘密を知ったせいで自分の手で殺したい気持ちでいっぱいだ。

 

 

「ガウェイン、頼んだ」

「ハッ」

 

 

 現在、膨れ上がった騎士団を率いて憎いあん畜生が籠っている王城を取り囲んでいる。

 我が王、アーサー王が先頭に立ち、聖剣エクスカリバーをいつものポーズで持ちながら前を見据えている。

 その少し後ろを私を含めてケイ、ガウェイン、ガヘリス、トリスタン、ランスロが控える。その後ろには多くのアーサー王に賛同する騎士が並ぶ。

 

 この時のために見ぬマーリンも最大限に動いていた。

 どこからか持ってきた聖剣に並ぶほどの聖なる槍、船に変わるという魔法の盾。流石にこの時は我が王がマーリンを誉めちぎっていた。

 あと、普通にしてればいいからと我が王が言えば今は必死に自分を押さえつけるように魔術師マーリンの名に相応しい振る舞いをしている。

 そうすれば我が王は褒める褒める。マーリンも我慢しながら喜ぶ喜ぶ。初めからこうしていればよかったのだ。

 

 我が王が指名したガウェイン。あの子にはユーサー王に対する降伏勧告と私の母の解放を高らかに宣言する。

 これに従わない場合は武力を行使する、と締め括る。

 

 

「ご苦労、ガウェイン」

「もったいなきお言葉で」

 

 

 あの畜生は我が母であるイグレインを人質にしている。

 一目で惚れたからと言って、略奪するようなクズだ。王座と母上を手放そうとはせずに、城に籠っているのが現状。

 母上を助けるのはマーリンの償い。どうやらあの畜生はこれまでにした過ちの鎖が性転換の魔術の行使を阻害しているのだそう。

 故に、償いのために母上を助けて性転換を成功させようと言うのだ。

 改心しようとしているのにクズっぷりを見せつけるのはどうなんだ……。

 というわけでこうして我等がここにいることを囮にしてマーリンは城に潜入し、母上を助ける任務を担っているわけである。

 

 まあ、多分母上を助けたら問答無用で我が王がエクスカリバーをブッパするでしょうけど。

 

 母上を巻き添えにしてしまえば、コーンウォール公の領地の民が怒ってブリタニアを統一することが遠のいてしまう。

 本当であればユーサー王がキレてコーンウォール公諸共、母上を殺すはずだったのですが、マーリンが念のためのスペアとして次の子を産ませるために思い留まらせた。

 喋れば喋るだけ人間のクズっぷりが滲み出ていますが、死んでいないのはある意味マーリンのおかげ。

 

 鉄の棒の尻叩き百発で許しました。

 

 

「マーリンからの知らせは?」

「まだだ」

「そうか。時間は?」

 

 

 マーリンが用意した砂時計を見ても、まだ期限の時間は訪れていない。

 城にいるユーサー王たちが見えるように大きな砂時計にしているが、大きさの割には砂の量が少ない気がするのですが。

 えっ? 我が王が早く暴れたいからわざと少なくした? なるほど。納得です。

 

 ――むっ!

 

 ふと、嫌な予感がした。弾かれるように顔を城に向ける。

 気付いたのは私だけではない。ガウェイン達も何かが起きていることに気付いたようだ。

 

 これは――!

 

 

「矢だ! 敵の攻撃!」

「全員、構えろ!」

 

 

 素早くガウェインとケイが指示を飛ばす。

 一気に緊迫するその場も何のその。我が王だけはいつも通りの足取りで数歩、前に出る。

 あまりにも自然なので反応が遅れる。ガウェインは急いで庇うように前に出ようとすると――。

 

 

「俺がやろう――」

 

 

 キンッ――と澄んだ音が響く。

 我が王がエクスカリバーを鞘から抜きながら飛び出そうとしたガウェインを止める。

 鞘を片手に、少しだけエクスカリバーを振りかぶる。ゆらりとエクスカリバーから星の光が漏れるのは誰もがわかっただろう。

 我が王が飛んでくる矢の大群に向かって目標を定めると。

 

 

「フンッ!!!」

 

 

 目でとらえきれないほどの速さで剣を振り抜くと、エクスカリバーの光が波を生み出す。

 光の波はあっという間に矢の大群を飲み込むと、存在していなかったように消え去る。

 あまりにも幻想的な光景に誰もが目を奪われる。暫し、エクスカリバーの力を使っていなかったために初めて聖剣の輝きを目にする者もいただろう。

 

 ――そして、大きな音が遅れて聞こえてくる。矢を消し飛ばした音が遅れて聞こえるなど、異常としか言えない。

 それを生み出した我が王は。エクスカリバーを鞘に納めると、地面に剣先を叩きつけて打ち鳴らす。

 

 

「――騎士達よ。奴等は約束を違えたようだ。故に、我等に非はない」

 

 

 我が王の言葉に合わせ、ガヘリスが大きな旗を広げる。

 アーサー王の象徴。ウェールズの赤き竜がアーサー王には付いていると言わんばかりに、赤い竜の刻印が大きく描かれた旗だった。

 

 

「さあ、いつまでも王座にしがみつく愚か者を排除する時だ――」

「総員、構えええええええ!!」

 

 

 ガウェインが叫ぶ。叫びに合わせ、訓練された騎士たちがブーツを打ち鳴らすように大地を踏みしめる。

 

 

「戦え。貴様等にはこのアーサー王が付いている」

「抜剣!!」

 

 

 皆が揃い、剣を抜く。槍を持つ者は槍を、弓を持つ者は矢を番える。

 ガウェインはエクスカリバー・ガラティーンを輝かせながら掲げる。

 ガヘリスは旗を支え、叫ぶ。

 トリスタンは弓の調子を確かめるように弦を鳴らす。

 湖のランスロは剣を抜き、天に剣先を向けながら構える。

 

 そして私は、聖なる槍を構えながら新たな相棒となった馬にまたがる。

 さあ、行こう。ドゥン・スタリオン。

 

 

「行け。イグレイン殿を救出せよ」

「突撃いいいいいいい!!」

 

 

 うおおおおお、と騎士たちが駆け出す。先駆けをするように、ガウェインとランスロが先行して矢の如く大地を駆ける。

 私も追うように駆け出そうと……ふと、ケイと我が王が言い争っているのが聞こえる。

 

 

「アホか! このまま突撃させてイグレイン様が死んだらどうするんだ!」

「ついカッコよく決めたいと思った。後悔している」

「このボケが!」

 

 

 ――――。

 駆けよドゥン・スタリオン! 母上を助けるのだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帰ったらマーリンのウザいどや顔が待っていた。思わずドゥン・スタリオンで轢いた。

 

 近くには我が王、ケイ、ガヘリス。そして懐かしいと思わせる女性がいる。

 あの女性が私の母上、なのか。顔は似ている気もするが。

 

 

「お疲れさん。マーリンが連れて来たぞ」

 

 

 城のあらゆる場所を探しても見つからなかったのはあのクズが先に見つけていたからか。

 ふっ飛ばさない方が良かったか。

 

 

「アル、イグレイン様は開戦前に救助は終えていてマーリンがタイミングを見計らって連れて来たんだ。点数稼ぎかわからんが」

 

 

 ドゥン・スタリオン、そのクズを踏み鳴らしなさい。

 

 にあああああとよくわからない悲鳴を上げるマーリン。おのれ、改心してもクズはクズか。

 おっと、いかんいかん。報告をせねば。

 

 我が王、ユーサー王以下城にいる者たちは制圧しました。抵抗が激しい者はやむを得ず殺しましたが、生きた者は捕縛して城の牢屋に入れてあります。

 現在、ガウェインと湖のランスロが騎士を率いて城の中を掃除しております。トリスタンは援軍を警戒して見張り台で監視を。

 

 

「ご苦労。後で城にいる連中も労っておこう。それよりもお前の母と積もる話もあるだろう」

「後始末は俺たちでやるからイグレイン様と話せ」

 

 

 旗を丸め、仕舞うガヘリス。制圧した城へ歩き出した我が王とケイを追い掛け、この場に残るのは私と母にドゥン・スタリオンとマーリン。

 

 

「任せなさい。人払いの魔術くらいお手の物さ。城に入れば解けるようにしておくからね」

 

 

 お礼は言いませんよ、マーリン。後でまたしばきます。

 

 怖いなあ、と笑いながら空気に溶けるように姿を消すマーリン。

 これで正真正銘、母と二人だけ。

 ……何から話せばいいんだろうか。教えてくれ、ドゥン・スタリオン。

 

 

「アルトリア」

 

 

 は、はい。母上。

 

 

「顔を、見せてくれる?」

 

 

 母上にそう言われ、戦の間ずっと隠してきた顔を見せるために兜を脱ぐ。

 綺麗な髪と我が王に褒めてもらえた金糸のような髪の毛が兜から零れる。それは、母上と同じ髪の毛の色だった。

 時が流れる度にもう男であると偽っても騙せないほど女らしくなってしまった私の容姿。水辺に映る自分の顔のように、母上にそっくりだ。

 

 

「嗚呼……」

 

 

 泣きそうな母上はその震える手で私の頬に触れてくる。包み込むように、両手で顔を包んでくる。

 手から伝わる、温かい何か。それが母の愛なのだと、初めて知った。

 離れていても、母はずっと私を想っていてくれた。そう感じる。

 

 

「こんなに大きくなって」

 

 

 ……母上。

 

 

「なぁに、アルトリア」

 

 

 母上も、お元気そうで何よりです。

 

 どちらからかはわからない。でも、お互いが築けなかった時間を埋めるように抱き締め合うことになった。

 ぎゅっと抱き締められたが、ふと自分が固い鎧を着ていることを思い出した。

 思わず離れれば、至近距離で顔を合わせることになる。

 それがおかしくて、母上と一緒に笑い合うことになった。

 

 それからは、日が沈むまで母上と語らう。ドゥン・スタリオンは私たちを守るように辺りを警戒してくれていた。

 

 

 

 

 

 

 





 デデーン マーリン アウト―
マーリン「ほあああああああ!?」

 ついノリでやっちゃう系の王様。何だかんだでカリスマあるからガウェインも釣られて叫び、城に攻め入って少しだけ後悔したのは彼だけの秘密。
 そしてさりげなくいるなんとかスロットさん。偽名使ってるけどバレバレな件。

 イグレイン、アルトリアの母親は生存。マーリンならこうするだろうとジオウ見ながら考えた。
 名前もウォズ=マーリンにでもしようかなとジオウサイキョウの文字を見ながら考えたけど、久しぶりのマーベラス船長見てやめた。



 もうちょっとでアーサー王伝説名物の修羅場じゃい。
 モルガンとモードレッドの立ち位置は決めてあるのでお楽しみに。



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