騎士(キチ)王   作:ひつまぶし。

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 アーサーくんの本気。

 ようやくキャメロット建造の準備ができたので次から王になる才能はあっても王を務められないとケイに言われたアーサーくんの苦難の日々が始まります。




09 槍の光

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぬんっ!!!」

 

 

 星の光が瞬き、光の奔流が雪崩れ込む。

 我が王が放ったエクスカリバーの一撃は誰も耐えられないほどの輝きを放ち、敵対する者を飲み込んだ。

 

 

「あ。駄目だこれ」

 

 

 が、相手はピンピンしている。エクスカリバーの一撃でも、かの敵は滅ぼせないようだ。

 カチン、とエクスカリバーを鞘に納めながら飛び上がる我が王がいた場所は、爪の一撃で抉れる。

 羽のように軽やかに。音も立てずに私の隣に降り立つ我が王の顔は浮かばない。

 いつものように、鞘に入ったエクスカリバーを地面に突き立てながら考えるように顎を撫でる。

 

 

「流石はブリテンの化身。聖剣でも殺し切れんか」

「かと言って、普通の剣では刃が耐えられない。どうするんだ」

「ガウェインのガラティーンも同様。ランスロットのアロンダイトも傷を付ける程度かー」

 

 

 めんどいなーと呟く。こうしている間も、騎士たちは絶え間ない攻撃を続けている。

 

 

「復活せずに寝てろよな。迷惑な野郎だわ」

 

 

 無駄にカッコいい名乗りをしやがって腹立つわ、と我が王は言う。

 

 誰が言ったか、卑王。しかもユーサーの兄だという。

 つまり、私の伯父でもあることになるのだが。

 最初こそはガウェインのエクスカリバー・ガラティーンの効果も薄かったものの、ダメージはあった。我が王のエクスカリバーも裂傷を与えられるほどには通用した。

 だが、時間が経てば経つほどヴォーティガーンは血を流し、闇に変えて大きくなる。

 今は人だった姿の名残はない。白き竜の血を飲んだ影響か、巨大な竜へと姿を変えた。黒き竜、魔竜の名に恥じない力を見せ付けてくる。

 

 我等の中で最も力のある我が王のエクスカリバーでさえも通用しなくなってきた。

 エクスカリバーに並ぶ聖剣であるガラティーン、ランスロットの持つアロンダイトでは寧ろ剣の力を奪われるほどだ。

 そんな敵を相手に、なんとか持ちこたえているのも、我が王の騎士の旗(ラウンズ・オーダー)による恩恵を得ているからこそ。

 我が王が旗を振るい、ガヘリスが支える。魔法の力が込められた旗は王が振るうことで効力を発揮する。

 即ち、アーサー王に仕える騎士たちが力を得る。それ故、陣形が奇跡的に保たれているのだ。

 

 

「アーサー、お前が持ち帰った物の中に使えるものはないのか?」

「有用なのはあの旗だけ」

 

 

 うむぅ。アグラヴェイン卿、何か作戦はないのか?

 

 

「正直、今の状況を保つのが精一杯です」

 

 

 今回、ヴォーティガーンの討伐のためにアーサー王の騎士団は駐屯兵すらも動員して臨んでいる。

 闇に沈み始めるブリテン島を救うには、エクスカリバーの光を照らすだけでは不十分だと判断して可能な限りの準備を行って来た。

 やはり、それでも準備は足らない。ここという決め手が足りない。

 

 

「厄介だよなあ。聖剣は無効。光が強いほどアレは強くなるし、何よりも竜の鱗のせいでダメージが通らねえ。チートも大概にしろ」

 

 

 頑張れ頑張れトリスタンとやる気のない応援をし始める。意外にも、ダメージが通っているのはトリスタンの弓だか琴だかわからない武器だ。

 ポロロン。ポポ、ポロロロンと戦場に似つかわしくない音が響き渡っているのはトリスタンが頑張っているからだろう。

 

 

「一応、アレは守護者の名目だから俺の力は使えんしなあ」

「マーリンは?」

「あれ」

 

 

 トリスタンの琴の音が響く中、我が王が指し示す場所には黒い球体に捉われたマーリンがいる。

 ヴォーティガーンと接敵した瞬間に真っ先にやられて閉じ込められた。マーリンを抑えられるほどの力が最初からあったことに驚きだった。

 一縷の望みに賭けて、マーリンが動けることを期待していたが駄目らしい。

 

 もう私も戦線離脱寸前だ。マーリンが持って来た聖槍も十分な力を発揮できず、無駄に魔力だけが吸い取られる。

 

 

「しょうがねえ。アグラヴェイン、一旦撤退だ」

「総員退却ううう!」

 

 

 苦渋の決断だった。このままではいつまでもヴォーティガーンを倒すどころか、力が増えて一気に形勢をひっくり返される。

 軍師であるアグラヴェイン卿が撤退命令を出せば、戦線を維持していたガウェインとランスロットが部下の騎士を守りながら後ろに下がり始める。

 トリスタンは二人の撤退を手伝うように攻撃を更に加える。

 

 

「あ。ベディくん」

 

 

 ちょいちょいと儀仗兵としての役目を与えられたベディヴィエール卿を呼び出す。

 急に失神したベディヴィエール卿は意識を取り戻すと、一部の記憶が消えていた。知ってはいけないことを知ってしまい、それから己を守る為に自分で記憶を消したのだと思うと我が王は言った。

 何を知ればあんなことになるのだ……? 小さな声であまり聞こえなかったが。

 

 

「悪いけどこれ頼むわ。完全に光を奪われて使い物にならんくなったから」

 

 

 シャリン、とエクスカリバーを少しだけ抜けば、美しい刃が嘘のように真っ黒に染まっている。

 流石にそれには、我等も絶句する。星が鍛えたという聖剣がこうなるとは誰が予想しただろうか。

 

 

「アルトリア」

 

 

 ベディヴィエール卿にエクスカリバーを渡す我が王は私に手を差し出してくる。何かを渡せとクイクイと動かしている。

 

 我が王……?

 

 

「今、使えるのはお前の槍だけだ。で、あの黒蜥蜴とやり合うには俺かガウェイン、ランスロットくらいだがあの二人には撤退を手伝わせる」

「アーサー、お前は殿をする気か!?」

「少しでも生き残らせようとするならそれしかねえだろ」

 

 

 いや、だが……。

 あのヴォーティガーンを相手に一人で戦えるのか? いくら我が王が強くとも、魔竜を相手にするのは無謀ではないのか?

 

 

「大丈夫だ。いざとなっても()()()()()()

 

 

 聖槍を渡すのを渋る私に痺れを切らしたのか、ひったくるように我が王が槍を取る。

 途端、私ではそこまで輝かせられなかった槍が嘘のように輝き始める。その輝きは、世界のどこまでにも届きそうな強い光を放っていた。

 聖槍を肩に担いだ我が王はいつも腰にぶら下げている王冠を紐を引き千切るように、強引に取った。

 

 

「どっちにしても、この力を使おうとすると辺り一帯ふっ飛ばしかねんからな。俺は構わんがお前らは死にたくないだろ?」

「よし。アグラヴェイン、撤退を急げ」

 

 

 すると慌てるようにアグラヴェイン卿とケイは撤退と叫ぶように下がる騎士を急かす。

 対して、我が王は王冠を器用に回転させながら自分の頭に乗せた。

 

 ――そういえば、我が王があの王冠を被るのは初めて見る――。

 長い間、共にいたケイですらも王冠を被るのを見るのは初めてではないだろうか。私でも磨くのは見ても、被るのは見たことがない。

 

 

「さて――」

 

 

 ゾワリ、と我が王の纏う雰囲気が一気に変わるのを感じた。

 変わったのは雰囲気だけではない。聖槍が放つ光が、我が王の体に宿るように輝き始めていた。

 何よりも目を引いたのは王冠。我が王の頭にちょこんと乗るだけだった王冠が王冠の形をした光の輪になっている。

 それは、人ならざる存在に変わったようだった。

 

 

『――やるか』

 

 

 気が付けば、我が王は消えていた。音もなく静かに騎士の撤退を支援していたガウェインとランスロットよりも前に急に現れ、槍を突き出していた。

 今まで強くなり続け、ダメージが通らなかったヴォーティガーンが苦痛の悲鳴を上げる。奴の翼に穴が開いていた。

 

 

『――初めて使うが、これは凄まじいな……あ。お前らは下がってろ。死にたくなきゃ、できるだけ遠くに離れてな」

 

 

 まるで天上の存在が語るような重々しい口調で話し始める我が王だったが、すぐにいつもの口調に戻ってガウェインとランスロットに向かって手を振る。

 シッシッと追い払うような仕草に呆気に取られていたガウェインが反論しようとするも、すぐに封殺される。

 

 翼を穿たれたヴォーティガーンが反撃をした。竜の手で薙ぎ払うように我が王を殺そうとする。

 宛ら軽い羽根を手で掴み取ろうとしてすり抜けるように、我が王はヴォーティガーンの一撃をひらりと躱す。

 ヴォーティガーンの手に乗り、我が王が再び槍を突き出せば。

 

 世界が槍で貫かれたようだった。

 

 その余波か、真っ先に動けなくなったマーリンが黒い球体から飛び出してくる。

 幼子の少女の見た目をしているマーリンはふわふわと我が王の傍に浮かぶ。歓喜の表情を顔いっぱいに浮かべ、杖を持ったまま手を大きく広げて声高らかに叫ぶ。

 

 

さあ祝え!

  世界に現存する神秘が生んだ幻想の王!

   それこそがキング・アーサー!

    聖なる槍、最果てにて輝く槍の真の力に選ばれた王である!

 

 

 ――奇しくも、そのセリフは各地に回って我が王の宣伝をしていた時の口上に似ていた。

 

 

「おう、気は済んだかマーリン」

「勿論ですとも、我が王よ!」

 

 

 我が王はヴォーティガーンの腕の上に立っていた――()()()()()()()()()()()()()()

 そこで、マーリンは興奮したように我が王と会話を交わしていた。

 槍を肩に置く我が王、新調したらしい白の木の杖を振り回すマーリン。

 

 うらやまけしからん。

 私も我が王の隣で戦いたい。

 

 

「めんどくせえからこのままヴォーティガーン消すからお前の魔術で全員を安全な場所まで飛ばせ」

「承りました我が王」

 

 

 ふむ。ならば私はここで我が王の雄姿を見届けて――――――――。

 

 おのれマーリン計ったな!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔術師マーリンは凄まじいほどの歓喜を身に宿していた。

 彼――彼女が調達した聖なる槍、最果てにて輝くと評される槍を使うアーサー王に体が歓喜の震えで止まらない。

 

 もう既にこの地、ブリテン島あるいはブリタニアに満ちる神秘は薄れている。

 故に、滅びの運命を辿っていることはマーリンも知っている。

 直に滅びるであろうこの地は最後に幻想を統べるに相応しい存在、王を生み出した。

 

 選定の剣に選ばれ、エクスカリバーを振るう資格を得て、聖槍の真の力を発揮できるだけの力も見せ付ける。

 まさに最後の幻想の王に相応しい選ばれし者。

 世界に愛されていると言っても過言ではないアーサー王に比べれば、ブリテン島という狭い場所に愛されているヴォーティガーンごときでは勝ち目は初めからなかった。

 エクスカリバーを使えなくさせたのは予想外だが、逆に聖槍を握るきっかけになったことは褒めるべき一点であった。

 

 既に、ヴォーティガーンは虫の息。魔竜形態は解かれ、ユーサー王にどこか似た雰囲気を漂わせる人間の姿に戻っていた。

 反対に、ヴォーティガーンを圧倒したアーサー王は無傷。エクスカリバーが敵わなかったことが嘘のようにヴォーティガーンを一方的に追い詰める力を見せ付けた。

 神秘の塊とも言えるエクスカリバーではなく、聖槍を操るその姿は最早人間とは思えない神秘に満ちた姿をしていた。

 

 そう、名付けるのであれば。

 

 

戦神・ロンゴミニアド

 

 

 最果てにて輝く槍(ロンゴミニアド)の力の影響を受け、元々アーサー王が持つ王の才と凄まじい反応を見せたことで生まれる神に近い存在。

 人間の王を育てるマーリンとしては、至高の王を生み出せたことにむせび泣く。

 この力であれば、滅びに向かうブリテン島を救うことができる。そんな確信を持てた。

 これで最も美しきハッピーエンドが見られる。アーサー王との出会いに、心から感謝をすることができることにマーリンは感動していた。

 

 ――だが。死に向かうヴォーティガーンとアーサー王の間に交わされた会話には無視できない言葉が含まれていた。

 

 

「我が王……今、何と?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何れ、俺はこのブリテン島を滅ぼす。そう言ったんだマーリン」

 

 

 

 

 

 

 

 





マーリン「ン我が王!!」
 からの
マーリン「我が王……?」
  のコンボ。

 アーサー王の物語に欠かせないヴォーティガーンもバッサリカット。もう少し戦ってたけどマーリンは全部見てたからよしとすることにした(?)
 ヴォーティガーン戦はアーサーくんが持っている王冠の秘密、アルトリアの使う聖槍であるロンゴミニアドの力を振るう点がキーです。
 ネットで調べると、アルトリアがロンゴミニアドを使えたのは神代と幻想の最後に立った「王」であるとあったので格好良いじゃん! とアーサーくんの設定に組み込みました。
 一応、アルトリアがロンゴミニアドを使っているのは王となれるだけの力はあるので真名開放はできなくてもある程度の力を使える設定にしてます。

 今回でアーサー王の華やかな活躍は終わりの予定。魔猪とかはまだ未定。
 あとはドロドロのドラマがキャメロット内で行われる予定だけど、ギネヴィアは嫁に来ないだろうなーとポチポチと執筆中。

 次はアーサーくん、アルトリア、モルガン、モードレッドに関するお話です。
 マーリンはしばらくあまり活躍はしないと思います。

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