減速。
それが、目的地が近いと知らせた。
『ガコン!』
リフトが止まる音は、毎回違うのだが字面は同じ。
『ウィーン』
リフトが上に向かう音は、全く違う。
見上げた三人は、四角く切り取られた光の先が目的地だと知った、
光。
潜った先。
そこは白に塗り潰された場所。
目を、
「眩しい。」
瞑るカケル。
固く、
「ひゃあ、眩しい。」
閉じた目のリクノ。
左手で、
「本当。」
目を覆うヒョウカ。
暫時。
目が光量に慣れてきた三人。
そこは開けた平らな場所に、真っ直ぐな道が伸びている。
首を左右に振り、
「ここは…。」
辺りを見回すカケル。
タブレット端末を取り出し、
「飛行場です。」
操作しながら説明するヒョウカ。
目的地を探す様に、
「どっちだ?」
ゆっくりの首を振るリクノ。
タブレット端末の表示を、
「あっちですね。」
確認し指差すヒョウカ。
それを目で追い、
「よっしゃ。」
牽引車をスタートさせるリクノ。
牽引車に合わせ、ヴァルキリーがゆっくりと動き出す。
辺りの風景に視線を送り、
「こんな所があったんだ。」
疑問を口にしたカケル。
その答えを探す様に、
「普段はライトプレーンが使っている滑走路だそうです。」
タブレット端末の表示を読むヒョウカ。
納得し、
「あっ。」
思い出す、
「前の船団の中でも飛んでました。」
カケル。
その言葉に、
「戦いでは無く趣味で飛ばせる飛行機…。」
目を閉じ、
「平和の証ですね。」
そっと微笑むヒョウカ。
その表情に深い思いを感じるカケルは頷く。
そして、頬を撫でる風に、
(気持いい。)
そっと耳を傾ける。
停止。
同時に、
「着いたぜ。」
告げるリクノ。
向き直り、
「カケルさんは乗る準備をしてください。」
指示、
「リクノさんは…。」
牽引車を外しに動いているのを確認し、
「言うまでも無いですね。」
小さくヒョウカ。
搭乗。
簡易タラップを取り付け、
「緊張します。」
登るカケル。
見上げ、
「大丈夫ですよ。」
声援を送る、
「シミュレーターの通りにやれば。」
ヒョウカ。
機体の下へ入り、
「そうそう。」
チェックしながら、
「整備もバッチリだしな。」
指差し確認するリクノ。
同じ。
コックピットに納まり、ヘルメットを被る。
いつものシミュレーターと同じだった。
儀式。
ヴァルキリーを目覚めさせる最初のソレ。
「入れます。」
スイッチを入れるカケル。
パネルに光が点り準備は整った。
「機動。」
同時に押されたスイッチは、眠っていたヴァルキリーを目覚めさせる。
微振動。
エンジンに火が入り、機体を微かに震わせる。
操縦桿から伝わってくる感覚。
それは…。
懐旧。
追憶。
懐かしさ。
脳裏に鮮やかに甦る。
その感覚は次第に全身に広がる。
そして、カケルの心を体という楔(くさび)から解き放つ。
『ふわり。』
そんな音を出しながら心が抜け出した。
見下ろす。
そこには、ヒョウカとリクノ…、そして、コックピットに座る自分が見えた。
開放。
それは不思議な光景だった。
しかし、抜け出した心は解き放たれた自由に歓喜し興味を失う。
見上げる。
そこは、自由な空で、不自由な空。
宇宙船という有限の空である。
でも、駆け出したい衝動に突き動かされる。
「…。」
「…さん。」
「カケルさん。」
スピーカーから何度も時分を呼ぶ声に、
「はい。」
解き放たれた心が体へ、
「ごめんなさい。」
戻ったカケル。
心配する、
「トラブルでは無いですね。」
ヒョウカ。
「大丈夫。」
今の出来事を思い出し、
「緊張してました。」
無理矢理に自分を納得させたカケル。
「リラックスですよ。」
声をかけ、リクノの送るサムズアップに頷き、
「離れます。」
今度はオッケーサインを返すヒョウカ。
そして、ヴァルキリーから離れるヒョウカとリクノ。
手を振る二人を確認し、
「カケル。」
操縦桿を握り直し、
「行きます!」
スロットルレバーを押し込む。
G。
それも強烈なG。
ヴァルキリーの加速の反動がカケルの全身に伸し掛かる。
パネルの表示を目線で読み取り、
「離陸。」
操縦桿を引いた。
『フワリ。』
車輪が音を出し、機体を空中へと投げ出す。
ヴァルキリーは、ヒョウカとリクノの歓喜の声を背に受け大空へと舞い立った。