同刻。
同艦。
宇宙港。
ここは、他の船団とのフォールド航行による移動の拠点である。
ロビー。
そう呼ばれる人で混雑する場所。
振動。
呼び出しの合図。
黒いスーツの男性の懐が震えると共に呼び出し音が鳴る。
振動と音の出処である携帯端末を取り出す。それは我々の持つスマホのサイズである。
そこに表示されていたのは、『Sound Only(音声通話)』の文字。
タッチパネルを通話にスライドさせると、空いている左手で隣の少女に【待て】と指示を出す。
待てと指示され、立ち尽くす少女は混雑するロビーの行き交う人を見ていた。
そう、『いた』のである。
「…。」
不意に天井を見上げた少女。
『キョロキョロ。』
その行為が音を出した。
見付けた登りのエスカレーターへ歩き出す。
現在、男性は通話に夢中。
エスカレーターが少女を運んだ先は、待合いのフロアー。
そして、また…、
『キョロキョロ。』
そんな音を出す行為。
今度、見付けたのは【テラス】へ出る透明の扉。
扉を潜り、建物の半外となるテラスへ出た少女。
見上げる。
そこは、艦内に作られた疑似の空。
青く作られた空に、注がれる視線。
開いた口は、
「飛んでる…。」
小さく声にし、ゆっくりと目を閉じた少女。
暫時。
そして、開かれた目と口。
目から放たれる視線は空に向けられた。
喉を震わせ口から発せられ音は空へと投げられた。
不意。
ヴァルキリーを通し、
「歌?」
ヘルメットを通じ感じるままを小さく口にしたカケル。
聞き取れず、
「カケルさん。」
聞き返す、
「何ですか?」
ヒョウカ。
双眼鏡で、
「どうした?」
機体を追いながら、
「何かあったのか?」
聞くリクノ。
インカムに意識を集中させながら、
「何か言ったみたいなのですが…。」
聞き取ろうとする、
「聞き取れなくて…。」
ヒョウカ。
『フッフ…。』
鼻が、
『フッフ…。』
リズムを刻む。
耳から…。
いや…。
ヴァルキリーを通し、パイロットスーツを通し、流れ込んで来る歌に合わせ全身が震えさせるカケル。
それは、自分を拡げた。
操縦桿を握る手が翼に、ペダルを踏む足がエンジンノズルに同化し、ヴァルキリーと一体となる感覚。
(私が飛んでる…。)
『私は』では無く『私が』。
そう、カケルが空を翔ける。
違和感。
双眼鏡を通しヴァルキリーを見ていた、
「あん?」
リクノの上げた声が物語った。
今度は、
「どうかしましたか?」
ヒョウカが聞いた。
リクノは、
「ヴァルキリーが…。」
双眼鏡から目を離さず答えた。
直ぐに側の双眼鏡を取り、覗き込むヒョウカ。
帰郷。
そう、ここは故郷。
帰って来た自由な空へ。
その感覚は高揚。
気持ちの高ぶりが抑えられなくなるカケル。
二人の双眼鏡が追うヴァルキリー。
「子供だな…。」
見たままを口にするリクノ。
「はしゃいでる…。」
思ったままを口にするヒョウカ。
嬉しくて、上がる口角。
ヘルメットの中の表情が見せたのは笑顔。
『グィ!』
同時に行われた手足の共演。
リクノの、
「おぉ…。」
見開かれた目は驚き。
ヒョウカの、
「あれは…。」
開かれた口も驚き。
自由。
そんな言葉を体現するヴァルキリーの軌道。
それが、二人を驚かせた。
目はヴァルキリーから離さず、
「困難度の技だろ…。」
同意を求めたリクノ。
同じく、目はヴァルキリーに釘付けのまま、
「そうです…。」
答えたヒョウカ。
『グィ!』
また、行われた手足の共演はヴァルキリーを宙で踊らせる。
「ま、まただ…。」
リクノの驚きは、驚愕へ。
「ほ、本当…。」
ヒョウカの驚きと、驚愕へ。
宇宙港。
肺の空気は喉を鳴らせ、口から発せられたものを空へと響かせる。
人は、それを歌と呼ぶ。
黒い服の男が、
「居ない!?」
連絡を終え焦る。
『キョロキョロ。』
焦りが、男の出す音の速度を上げていた。
思い出したかのように、手にしていた端末を操作し、
「こっちか…。」
情報を読み取った。
男は、エスカレーターを登り安堵し、テラスへと出る。
「こんな所に居たのか…。」
後ろから掛けられた声に驚きもしない少女。
少女はゆっくりと目を閉じ、余韻に浸る。同時に閉じられた口は歌を止めた。
小さく、
「飛んでる…。」
少女の開く目が遠くの空に注がれる。
少女の視線を追い、
「私には見えないが…、」
一瞬、空へ視線を送るが、
「行くぞ。」
直ぐに少女へと向き直り、
「迎えが来ている。」
促した男。
無言で頷き、返答とした少女。
歩き出す男を追いかけた。
驚きを込め、
「あっ!」
素っ頓狂な、
「わ、私…。」
声を上げるカケル。
慌て、
「どうしました?」
インカムを通し、
「機体の不調ですか?」
聞くヒョウカ。
反応。
直ぐ様、双眼鏡から目を離し、
「オールグリーンだ。」
機体の状態をモニターしていた端末を読むリクノ。
頬に当るヘルメットの、
「今のは…。」
感触が戻り、
「何だったんだろう…。」
現実に引き戻されるカケル。
今日。
この時。
三人の少女の【飛行機道】が、始まった。
格納庫の奥に眠っていた古いヴァルキリーが目覚め、大空へと誘われた少女達の青春の物語。
そして…。
個性豊かな他の船団のヴァルキリー部員達との空中戦。
統合参謀本部がヴァルキリー部設立の裏で暗躍する。
そう、これは始まりのなのだ。
『超時空要塞マクロス ガールズ&ヴァルキリー』
ここに開幕。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
思いっきりネタなストーリーな上に、毎度の事ながらの開幕だけです。
書き上げて…。
ここままで必要無かったかと、思いましまが…、手が滑ってしまうのも毎度の事で…。
色々と突っ込みどころも満載になったかと(笑)
まだ、ネタな他の小説が色々とあるので、書き出し作業中です。
よろしければ、また読んでやってください。