後日。
正確には、格納庫内の掃除が一段落した時。
放課後。
格納庫。
いえ。
改め、部室にて。
「今日は…。」
ヒョウカが切り出す。
「って、これ何とかしないとだろう。」
耳の横を通す様に後ろ手に親指で指すリクノ。
「ヴァルキリーですか?」
カケルの質問。
「そっ…。」
腕組みし、
「飛べるようにしないとだろ…。」
遠回しに面倒だと言うリクノ。
「えっ!?」
驚くのは、
「直せるんですか?」
カケル。
「そりゃあ…。」
軽く首を巡らせヴァルキリーを一瞥、
「使えない部品を交換すれば…。」
意外と簡単に言ったリクノ。
「理論上はそうですが…。」
ヒョウカの言う事も最もである。
「もしかして…。」
今度はリクノが二人に視線を向け、
「修理の経験は無い?」
聞いた。
「そんな事したことない…。」
カケルの首を左右に振る速度は速かった。
「残念ながら…。」
ヒョウカは、目を瞑りお手上げのポーズ。
「やっぱりか…。」
解っていたかのように、
「俺はメカニック担当か…。」
リクノの言葉は諦めに聞こえた。
「できるんですか!?」
カケルの驚き。
「そのようですわね。」
ヒョウカは予想していたように。
「ま、まあな…。」
カケルの問に答え難そうなリクノ。
「凄ーい。」
羨望の眼差しを向け、
「どこで覚えたんですか?」
興味津々で聞くカケル。
「えっと…。」
何故か困るリクノ。
「まあまあ…。」
割り込み、
「そんな事はどうでもいいではありませんか。」
助け舟を出したヒョウカ。
しばし、沈黙。
「では。」
やはり仕切るのは、
「リクノさんを中心に修理作業を進めましょう。」
ヒョウカ。
「判りました。」
カケルが同意。
「解ったぜ。」
リクノも賛同。
「これを。」
そう言えば、今日は大き目な手提げ袋を持って来ていたヒョウカ。
中から取り出し、
「サイズは合うと思うのですが。」
二人に渡した。
「これは?」
カケルの質問。
ひと目で、
「作業服…。」
リクノは、
「それもツナギじゃないか…。」
そう、ヒョウカが用意していたのは、作業用のツナギ服。
「帽子もありますよ。」
用意万端のヒョウカであった。
「ヒョウカさん…。」
名前を呼ぶカケルは、
「凄い…。」
驚くばかりであった。
「流石…。」
リクノも驚くが、
「まあ。先日の手際から考えれば当然かもだな。」
ある程度の予想はあったようだ。
「後は…。」
今度は鞄から、
「これで…。」
タブレット端末を取り出し、
「資料集めておきました。」
笑顔のヒョウカ。
「んじゃ、着替えるか…。」
制服の上着に手をかけるリクノ。
驚く、
「えっ!?」
カケル。
「リクノさん。」
右手を上げ制し、
「外から見える場所での着替えは…。」
格納庫内を見回し、窓をたしかめたヒョウカ。
「俺は、構わないんだけど…。」
自分を見下すリクノ。
「だ、駄目ですよ!」
カケルが手を伸ばし、
「ほら。」
リクノの肩を掴み、
「あれですよ。」
止め、
「あれ。」
繰り返した。
「あれか?」
リクノも乗り、
「そうだな。」
賛同し、
「あれだよな。」
答えた。
「そこにロッカールームありましたから…。」
格納庫の一角に視線を送り、
「そこを使いましょう。」
促したヒョウカ。
「はーい。」
カケルが賛同。
「しゃあねえな。」
リクノも同意。
向かった三人の先頭のカケルが、ロッカールームの扉を開いた。
そして…。
着替え…。
終えた三人。
一番に出てきたのはカケル。その後をリクノ、ヒョウカの順番で続く。
そして、三人は、ヴァルキリーの元へ。
「工具は…。」
棚に目をやり、
「一通りあるな…。」
確認し、
「まあ。部活で使ってたみたいだから、あって当然か…。」
手に取るリクノ。
「そうですね。」
ヒョウカは、タブレット端末を用意。
「私は、何したら良いですか?」
カケルは二人を交互に見ながら聞く。
「俺の助手を頼むよ。」
リクノの右手を上げ軽く振りサインを出した。
「判りました。」
カケルも右手でサインを返した。
「じゃやるぞ。」
リクノが機体のチェックが始まった。
チェック中。
チェック中…。
チェック中……。
そして、お約束。
「そっち押さえててくれ。」
リクノの指示。
「はい。」
カケルが押さえる。
「いくぞ。」
リクノがボルトを緩め、
「あっ。」
思い出し、
「中身が、噴き出すかもだから注意な。」
「先に…。」
カケルの声が、
「言ってくださいよぉ…。」
濡れていた。
顔を上げたリクノの視線の先には、噴き出した液体で顔が黒くなったカケル。
「わりぃ。」
謝り、
「わりぃ。」
笑うリクノ。
「カケルさん。」
タオルを渡す、
「大丈夫ですか?」
ヒョウカも笑っていた。
「二人共。」
煽りながら、
「酷ーい。」
笑いだしたカケル。