数日後。
そろそろ、機体チェックが終わりを迎える。
「ところで。」
切り出しはヒョウカ。
「なんですか?」
無意識に構えるカケル。
「何だ?」
気軽なリクノ。
「お二人はヴァルキリーの操縦は出来ます?」
ヒョウカの根本的な質問。
「えっ!」
驚きで答え、
「出来ませんよ。」
両手と首の振りで否定したカケル。
「えっと…。」
答えでは無く、
「知識では知っている…。」
頭を掻くリクノ。
「お二人共に[出来無い]で良いですね。」
纏めたヒョウカ。
無言で頷く二人。
ふと、
「ヒョウカさんは?」
カケルが疑問を口にした。
「一通りは…。」
答え、
「【ジッセン】は未経験ですが…。」
付け加えたヒョウカ。
「【ジッセン】って…。」
リクノが引っかかった。
「戦う方の【実戦】です。」
さらりと答えたヒョウカ。
「ま、この平和な時代に戦闘は…。」
引く付く表情のリクノ。
うんうんと大きく頭(かぶり)を振るカケル。
偶然。
劇的。
人為的。
そんなタイミング。
聞こえるのは音。
感じるのは振動。
「来ましたね。」
その正体を知っているヒョウカ。
「何ですか?」
リクノを見るカケル。
「何だろうな。」
カケルを見返すリクノ。
二人がヒョウカへと視線を移すと…。
『スタスタ』
そんな音を出しながら、大扉へ向かっていたヒョウカ。
期待外れ。
大扉は思いの外、静かに開く。掃除の後に手入れされていた。
「中へ。」
声と共に右手で合図を送り、呼び入れるヒョウカ。
音と振動を伴い入って来たのはトレーラー。それも大型。
だが、格納庫なのでいとも簡単に中まで入って来た。
「取り敢えず、その辺りで止まってください。」
ヒョウカの指示は運転手へ。
そのトレーラーの荷台には大きな箱が三つ積まれていた。
「これ、なんですか?」
最もな質問のカケル。
「これは…。」
正体が、
「シミュレーターだ。」
解ったリクノ。
「流石。リクノさん。」
褒め、
「その通りです。」
笑顔を見せたヒョウカ。
「シミュレーターって…。」
今一つ、
「なんです?」
理解出来ないカケル。
「うーんとだな…。」
考え、
「ヴァルキリーのテレビゲーム…。」
悩み、
「かな?」
答えにしたリクノ。
「テレビゲームは、ちょっと乱暴かもですが…。」
軽い否定、
「大曲(おおまか)には間違ってはないですね。」
賛同したヒョウカ。
「テレビゲーム…。」
トレーラーに積まれたシミュレーターを見上げるカケル。
「テレビゲームって言っても実際のヴァルキリーのコックピット使ってるから…。」
説明し、
「実機と変わらない。」
解説するリクノ。
格納庫に雪崩込んで来た、
「何処に設置しますか?」
同じデザインの作業ツナギを着た一団の先頭が聞いた。
指さしながながら、
「そちらの隅にお願いします。」
場所は決めてヒョウカ。
その指示で設置作業が始まった。
「こっちは、機体のチェック終わらせよう。」
リクノが二人を促す。
その指示でチェック作業が始まった。
夕刻。
「設置と動作確認終わりました。」
最初に声を掛けてきた作業ツナギの男性が、
「終了確認お願いします。」
タブレット端末を差し出した。
内容を目で読み、
「はい。」
確認し、
「問題ないです。」
サインしたヒョウカ。
「では、これで。」
確認を終えた作業ツナギの男性が一礼すると、残りの作業ツナギ達が一斉に続いた。
「明日からは、シミュレーター使えますね。」
ヒョウカが二人に微笑む。
「まっ、交換部品来るまではヴァルキリー直せないしな…。」
ヴァルキリーを一瞥するリクノ。
「私、出来ますかね?」
不安混じりのカケル。
「大丈夫です。」
返事と共に笑顔で、
「出来る様にします。」
返したヒョウカ。
『ゾクリ』
返されたヒョウカの笑顔に対するカケルの体の反応。
それは、恐怖以外の何物でも無かった。