ヒョウカの言葉通り、翌日から続くシミュレーターの特訓。
カケルとリクノは、ヘトヘトになる程にヒョウカにしごかれる。
しかし、カケルは辛さよりも懐かしさを感じていた。
そんな、ある日。
傍らに置かれた金属の箱へ、
「今日からは…。」
視線を落としながら二人に、
「これを…。」
指示を出すヒョウカ。
二人の視線も自然と金属の箱へと注がれる。
ちなみに、金属の箱は我々が知る旅行等で使う大きめのスーツケース程のサイズ。それが、三つ。
「これは?」
カケルのもっともな質問。
「…。」
リクノは、それが何なのか薄々判っているのか無言。
金属の箱の一つに手を伸ばし、
「これは…。」
開けると、
「パイロットスーツとヘルメットです。」
見せるヒョウカ。
「あっ。」
短く理解したカケル。
「やっぱり…。」
リクノに関しては答え合わせだった。
「ジャージでヴァルキリーに乗るわけにはいかないでしょう。」
ヒョウカの冗談。
「あっ。」
また短く理解し、視線を下げ今の自分の服装を見るカケル。
「サイズは以前申告して貰ったものに合わせてあります。」
ヒョウカの観察する鋭い視線がカケルに刺さる。
「そ、それなら、大丈夫です!」
危うく見栄を張るところだったと心の中で冷や汗が流れるカケル。
「では…。」
ヒョウカに促され、ロッカールームへと金属の箱を連れ向かう。
着替え。
見ると着るとでは大違い。
それがカケルの第一印象。
何だか、着難い。
それが、感想。
着替え終え、やはり気になり姿見の前へ。
「あっ!?」
驚き、
「これって…。」
気が付くカケル。
「はい。」
笑顔で答えたヒョウカ。
ヒョウカの笑顔の意味を、
「制服のデザインと同じ…。」
理解したカケル。
そうパイロットスーツに施された色合いが、学園の制服に合わせてあった。
全身を白ベースに、スカーフとスカートが薄い緑にデザインされていた。
左右に体を振り、
「これ…。」
角度を変え、
「可愛い…。」
率直な感想のカケル。
「確かに…。」
そう言った事には無頓着だと思っていたリクノも賛同した。
「そう言っていただけるとサプライズにした甲斐がありました。」
満面の笑みでヒョウカは嬉しそう。
暫く、姿見の前で角度を変えポーズをとる二人。
「そろそろ、行きますよ。」
ヒョウカがシミュレーターへ促した。
「はい。」
短くカケル。
「はーい。」
伸ばし面倒くさそうなリクノ。
三人はロッカールームを出てシミュレーターへ向かう。
違和感。
パイロットスーツを着る時に感じたものとは違う感覚に目線を落とし足元を見つめるカケル。
そんな表情を浮かべるカケルに、
「どうかしましたか?」
問うヒョウカ。
顔を上げ、
「何だか、歩き難いなって…。」
ヒョウカに向き答えるカケル。
「なるほど。」
表情に納得し、
「歩くようには作られてませんから。」
口角を上げ笑顔で答えるヒョウカ。
「えっ?」
答えに驚くカケル。
「パイロットスーツは…。」
ヒョウカは考え、
「ヴァルキリーのシートに座って操縦する体勢が一番楽に作られてます。」
「そういう事か…。」
側で同じように歩き難そうにしていたリクノも納得していた。
「へー。」
短い言葉で、驚きと納得をしたカケル。
しっくり。
先程のヒョウカの言葉通りだった。
シートに座るとパイロットスーツで引っ張られていた箇所が楽になった。
「本当だ。」
主語を飛ばし、思わず声に出したカケル。