fgo/cosmos in the lostbelt 黙示録の銀星 作:虚無の魔術師
解放軍の兵士や住民が騒ぎ立てている。沢山の人間が死んだ。家族が奪われ、重症を負いながらも必死に逃げている惨状、まさに地獄だった。
「……………………そ、ふぃあ」
瓦礫から起き上がった青年が体を起こす。全身が血で濡れている。彼のものではない、魔術師が連れてきた機械により殺戮の場にいたからだ。
「………………………………………………あ」
肘から先が消失した細い腕。自分の近くにいた少女の手がボトリと地面に落ちる。立夏たちに着いてきた青年 リントは、目の前で家族を失った。彼は、心の中でそう理解する。
────あぁ、また失ってしまった。
何もできなかった自分を嘲笑する。あるのは後悔、悔しさに悲しみ。
そして、それらを塗り潰すくらいに増幅した憎悪。ユラリと立ち上がる。
立夏たちに教えるべきだ、そう思った。少しだけだが、彼らと共に行動していた。この事を知れば、彼らはソフィーのことを思ってくれるだろう。
『俺を倒せ。そして奪えよ、この世界を、そこに生きる人々の命、未来、希望を。今まで、そうしてきたように!』
───クリプターと名乗った魔術師の捨て台詞ともとれる、その発言を聞かなければ
「───おかしいと思ってたんだよ、最初から」
相手に向けた銃を片手に、リントは立夏を見据えていた。いつでも引き金を引けるように掛けられた指は震えている。様々な感情が交差しているのだろうが、関係ないと言わんばかりに考えを振り払った。
そして、重い口を開く。
「異聞帯?汎人類史?クリプター?あぁ、よく分からなかったけど、少し理解できた。あの魔術師がこの世界を作って、そしてお前たちはこの世界を消す気なんだろ?俺たちごと」
「それは………!」
「そうだろ?あいつと同じことをする気だったんだろ、リツカ。いや藤丸立夏」
言葉を交わしていくだけで負の感情が増幅していく。そして、そのまま悪意に飲まれながら告げる。
「ソフィーは死んだよ、あの魔術師が連れてきた化け物にやられた」
「…………え?」
何を言われたのか分からないと立夏は言葉を失う。受け入れたくなかった筈の事をあっさりと認めた自分に反吐が出ると思いながら、「それだけじゃない」と言う。
「父さんと母さん、ここにいた人たち、この世界で生きてた人たち、全員が!
何で皆が死ななきゃいけなかったんだ?何で俺たちだけが、こんな目に合わなきゃいけなかったんだよ!!?」
悪魔たち四勢力に虐げられ、笑うことできず、ただひたすら怯えることしかできない世界。
これが世界の、神々の理なのか?逃れられない運命というものなのか?
「認めない、認めないぞ。そんなの…………認められる訳が、ないだろォ!!」
大声を張り上げ、立夏を睨む。咆哮と共に引き金に掛けた指を───
直後、ショットガンが暴発した。
いや、違う。
銃弾が放たれる直前に、銃そのものが真っ二つに切断されたのだ。
炸裂した銃弾は中で暴れ狂い、周囲に破片を散らせる。そして、飛び散った破片の一つが、勢いよくリントの左目に食い込んだ。
ザクッ! と
「アガッ!?グゴアアアアアアアアァァァァァぁぁぁぁぁぁああああああッッッ!!!」
片目を押さえながら地面に踞ったリントは絶叫する。ショットガンを持っていた手はボロボロになり、目を押さえていたもう片方の手からボタボタと鮮血が零れていた。
何がどうなっているのか戸惑っている立夏の前に人が入ってきた。先程の攻撃の下手人でもある人物が。
「ランサーさん!?何を………!」
「下がるんだ、立夏」
盲目のランサーは片手で立夏を制止し、長い槍を構えていた。その槍は踞っているリントに向けれている。
何故!?と困惑する立夏とマシュだが、それは仕方がない。
この異聞帯で共に戦うことになる彼らを無闇に殺させる訳にはいかない、それがランサーたちの考えだった。
「そういうことか……………テメェらもグルかよ。サーヴァントどもが」
音も立てずに起き上がったリントが血走った目を周りに向ける。それを目にした者たちがいつの間にか、気圧されていた。
格上であるはずのサーヴァントですら。
「そりゃそうだよな。自分たちの方が大事なんだよな、当然だよ。それに、俺も納得してたんだ。何せお前たちの世界は、
この世界よりも平和で幸せな世界、なんだろうからな」
話に聞いた時から、憧れていた。羨ましかった。
きっと彼ら、カルデアが生きた世界はこんな世界よりも素晴らしかったろう。
もし、もしもだが。その世界で自分たちが生きれていたら、とても幸せだったかもしれない。
ソフィーも父さんも母さんも、町の皆も、そしてこの世界で生きていた全ての人たちも、怯えることもなく生きてただろう。
自由に怒ったり、泣いたり、悲しんだり、喜んだり────笑ったりして、世界を謳歌することができただろう。
「だが、今はそんな幻想は抱かない。ここは俺の、俺たちの世界だ!どんな理由だろうと俺は妥協しない!する訳がないんだ!」
「…………俺は守るぞ。ちっぽけだろうが、何だろうが、俺たちが生きたこの世界を!」
そう宣言したリントは踵を返した。この場から、立ち去ろうと歩みを進めている。
そんな彼を止めることは、誰にも出来なかった。
リントがいなくなってから、すぐにランサーが謝罪をしてきた。立夏を守るためとはいえ、リントを傷つけてしまった事に償いをしたいと思っているらしい。
「………立夏くん。君たちに伝えたいことがある」
気分が沈んだ様子の彼らに、総長ジャックが声をかけてきた。
「実を言うが、先程ここから何十キロもある集落で悪魔の襲撃があったのだが────────通りすがりの剣士が悪魔たちを撃退したらしい」
「それって…………!」
「あぁ、サーヴァントに間違いはないだろう。その剣士はすぐに何処かへと向かったらしいが、そこの住人に自らの名を名乗っていた」
新たに仲間になってくれるかもしれないサーヴァントにカルデアの面々は活気がついていく中、ジャックは顔色を変えずその名を口にした。
「“シグルド”とな」
ニヤニヤと、笑う。
光る画面と卓上を見下ろし頬杖をつきながら、シュヴァリオンは静かに笑っていた。
『質問ですが、マスター。一体何をなされたんですか?』
「─────準備だ、カルデアを追い詰める為の」
コン、と。盤上の駒を的確に動かしていく。
「無駄に自分から追い詰める必要はない。俺は駒を動かし、瀕死の奴等に止めを差せばいい」
「その為の布石は用意した。後は
彼の目線の先にあるのは普通の駒。沢山あるものと変わらないもの。だが、シュヴァリオンにとっては違う。この駒が、
その駒の前に、杯を模様した駒が鎮座していた。
ボタボタと鮮血が手から零れる。てんてんと、赤の斑点を作っているが、彼、リントは止まらなかった。
「俺は、奴等を許さない…………必ず止めてやる!!」
片目と右腕を苛む激痛と心の奥深くから込み上げてくる負の感情に身をよじらせる。
「でも…………俺には力がない。四勢力を、サーヴァントを倒すことのできる力が」
決定的な事実に歯噛みするしかない。
リントは何度も目にしている、最悪な存在である大悪魔 ベルゼブブを退けたサーヴァントの力を。恐らくあれは本気であっても、全力ではない。
そんな奴等が何体もいる以上、自分一人で戦ったとしても戦力の差は激しいもの。
「……………………………………?」
ふと、何かを感じた。
横を見ると、遺跡のようなものが佇んでいた。だが、そんなに大きくない、一人だけ住めるような大きさだったのだが、不思議と彼はそちらに足を進めている。
入口を潜り抜け、奥へと歩いていく。
歩いて、
歩いて、
歩いて、
ようやく、『それ』を目にした。
「これは……………………杯?」
彼は知らない、黄金に光る『それ』を。だが、直感があった。抉れた目を押さえていた手を下ろし、ゆっくりと動かす。
浴びた血と自らの血で汚れているが、その手の甲にはナニかが浮かんでいた。赤色、血よりも濃い赤。痛みという激しい熱を帯びていたからこそ気づかなかったが、それはこの世界で二人の人間が所有している物だった。
一人は藤丸立夏
一人はシュヴァリオン
だが、そんな事を彼は知らない。知るつもりはない。重要なのは、目の前にある『それ』が自分に力を貸してくれる─────奇跡だと。
ニヒィッ と見る者が不気味に思うような凶笑と共にリントは地面を血で汚しながら、更に手を伸ばす。
───『それ』がどんな願いも叶えられる願望器、『聖杯』と呼ばれるものだと知らず、血で濡れた手で触れた。
アンケートの結果、普通にちゃんと進めていきます。皆様アンケートありがとうございます、結果通りにいくようにしていきますのでよろしくお願いします!
ついでなのですが、オマケです。CMみたいにやらせてもらいます。
……予定通り、
それは闇に支配された魔性の世界。
希望も祈りも存在しない、邪悪なる者たちの楽園。
だが、無意味ではない。願いと奇跡は一つとなり、神たる明星を堕とす
Fate/Grand Other -Cosmos in the Lostbelt -
『悪逆神理世界 バイブル』
という風です。
感想と評価よろしくお願いします!
番外編の内容
-
カルデアでの生存編(ストーリー)
-
↑上記と同じ(サーヴァントとの日常)
-
アポクリファ編
-
プリズマイリヤ編
-
何でもいい、作者の好きなのでいいよ。