ノースティリスの冒険者が冒険するのは間違ってない 作:二つ名:火の宿命
「ベル君、いったいどうしたんだい!?」
ばんっ!と大きな音を立てながら、ギルドの中に一人の少女がギルドに入ってくる。
少女は幼いながらも、人が持つ美には到底、敵わない美貌を持ち合わせ、その身に纏う存在感は人とは決して思えない。
この世界にいる人間ならば一目見れば、分かるだろう。
彼女こそ、人を超えし存在、
「神様!すみません、わざわざギルドまで来てもらって……」
「別に気にしてなんかいないさ!それよりも……本当にどうしたんだい?お店の方にギルドの人が来たときは吃驚したけど……まさか!?ダンジョンで死にかけてギルドで治療してもらったらお金が足りなくて……とかかい?参ったなぁ、僕もそんなに手持ち、ないんだけど」
「いや、そういうわけではなくてですね……」
「ベル君、それ以上は私が話すわ。……神ヘスティア、わざわざご足労頂き、誠にありがとうございます。私はベル・クラネル氏の担当官を勤めさせていただいているエイナ・チュールと申します、以後お見知りおきを」
「ん、よろしくね。ベル君からよく話は聞いてるよ……で、いったいどうしたんだい?その様子だとお金に困ってる……って訳じゃ無さそうだけど」
実は……と、エイナは事情を話始めた。
ベルが上層階である筈の五階層でミノタウロスと出会い、死にかけたこと。
その際に一人の少女に出会い、命を助けられたこと。
そしてその少女は恩恵を受けた冒険者ではなく、一般人の可能性があること。
それを聞いたヘスティアは怪訝な顔を見せ、じいっと……二人を見つめ。
「……なぁ?僕の記憶違いなら申し訳ないけど、ダンジョンに出てくるモンスターを一般人が倒すのなんて、まず不可能だよね?」
「はい、不可能です。例え、どんなに強い人間でも、どんなに強い武器を持ってたとしても……神の恩恵無しではゴブリンを倒すのですら厳しい筈です」
「でも、その子は強そうな武器一本を持って、ベル君を襲ったミノタウロスを撃破した、と。んー……『ステイタス』の確認とかはしたかい?」
「勿論!ですが、『
「それに?」
エイナは随分と言いづらそうに、顔をしかめる。
いったい、何があるのだろうか?所詮は……と言うのは、ヘスティア的には好まない言い方だが、人の子の問題だ。
神であり、子供達の何万倍もの時間を生きている自分にとっては、些細な問題に過ぎない。
何を言い淀んでいるのだろうか?
「……彼女の言ってること、支離滅裂で困ってまして。良ければ神ヘスティアのお力を借りれれば、と思ってまして」
「……つまりはその子の言ってることが嘘かどうか、僕の権能を使って確かめればいいってことだね。いいよ、それくらい朝飯前さ」
地上に降りた神々は基本的には人々と同じような状態で制限された上で降臨している。
例えばだが、普通の神ならば馬車で引かれたくらいでは死なないが……地上に降りた神ならば、人間としての力と耐久力、そして命に限りがある為、死んでしまう。
最も、それは本当の死ではないのだが、それは置いておいて話を戻そう。
その力の殆どを制限された神であるが、その力の一部は制限されずに自由に振るうことも可能だ。
それこそ、人の子が吐く嘘を見破れる真偽眼の力である。
「ありがとうございますっ!勿論、報酬はある程度お支払いするので……よっと、どうぞお受け取りください」
「こ……こんなにくれるんですか!?神様、これって僕の一日に稼ぐ金額軽く超えてますよ!?」
「お……おぉぉっ。まさか、こんなに貰えるだなんて。やったね、ベル君!これで暫くはジャガ丸君だけ生活を送らなくて済むよ!」
「はいっ!」
これっぽっちの金額で、どれだけ喜んでいるのだろうか?
少しだけ、神ヘスティアとベルの食事情を愁いつつ、エイナは彼女が待っている控え室まで案内した。
・・・
ヘスティアが案内された個室は何処と無く、シックな雰囲気を感じさせる落ち着いた部屋だ。
その中心にはハーフエルフと思わしき少女が、自分の胴くらいはありそうな分厚い本をテーブルに起き、読んでいた。
本の中身を軽く見ると……何やら、ヘスティアが見たことのない言語で書かれていた。
真偽眼同様、権能の一つである瞳と耳に宿る自動翻訳機能を駆使して中身を確認してみると……どうやら、それは《四次元ポケット》と呼ばれる魔法について書かれた学術書のようだ。
一つの魔法について書かれている学術書等珍しい……と思いつつ、ヘスティアは小さく咳をしてから、扉を開けた。
「やぁ!待たせて悪かったね。君がイルミア君だね?僕はヘスティア、ベル君が所属するヘスティア・ファミリアの主神ってやつだけど……そんなに気を張らなくても結構だよ」
「?」
急に入ってきた神を自称する少女、正直頭の可笑しい子にしか感じられなかったが……見れば見るほど、それが神と表現するに相応しいと思えた。
何しろ、人間が纏うことのない神威と存在感の塊だ。こんな存在を人間と評する方が可笑しいだろう。
小さく、頭を下げて……自分が出来る範囲での、礼儀正しい振る舞いで、挨拶を返す。
「遭遇、光栄。神、会談、初回。……ん、んっ、よろしく、お願いします……神ヘスティア」
「んー……よろしくね」
……ヘスティアの真偽眼が正しければ、どうやら彼女は嘘を言っていないようだ。
このオラリオにおいて、神と出会うのも、会話するのも初めてと言うのは不可能に近い。
何故ならば、オラリオにとっては神という存在は、それほどまでにありふれた存在であるからだ。
であるのなら、考えられるのは一つ。彼女が外の人間である……と言うことだろう。
それでも外のファリミアに所属せず、神の恩恵無しに上位冒険者並の力を得れるのは不可能だと思うが……今は置いておこう。
「……えと、それじゃあ質問だけど君は何処から来たんだい?ハーフエルフ君」
「ハーフエルフ、相違。我、種族、エレア」
その言葉にも嘘はなし。どうやら彼女は本当にエレアという種族のようだ。
もしくは彼女の住む国だけで伝わるエルフの呼び方かもしれないが……少なくとも、彼女自身が自分のことをエレアだと認識しているのは確かだった。
「OK。それじゃあイルミア君、君は何処から来て、何の目的でオラリオに来たんだい?」
「オラリオ?此処、地名?」
「あぁ、そうだよ」
これにも嘘はない。
どうやら彼女は本当にオラリオについて知らず、何処か遠くの……それこそ、辺境も辺境にある国から、何らかの理由でオラリオのダンジョンに辿り着いてしまったのかもしれないとも、ヘスティアはかんがえる。
「私、ノースティリス、パルミア、冒険者。迷宮、探索、帰還、巻物、使用……突然、転位」
「成る程……つまり君は帰還の巻物とかいうマジックアイテムの誤作動でオラリオまで来てしまった、と」
こくりっ、と彼女は小さく頷いた。
……どの話にも嘘と呼べるものは存在しない。どうやら彼女は本当にノースティリスという大陸にあるパルミアという国から……ここ、オラリオまで来てしまったようだ。
しかも、そこにはオラリオにあるダンジョンと似たような物が豊富にあり、同じように怪物を産み出す特性を持っているようだ。
一瞬、ヘスティアは……彼女が自分が産み出した空想を、本当のことだと思い込んでいるのでは?と思ったが……それはない、と感じた。
理由は幾つか存在する。一つは彼女が身に纏う雰囲気は妄想を信じ混む狂人ではなく……極々、普通の少女の雰囲気と変わらなかったからだ。
もう一つは、ヘスティア自身が持つ知識によるものだ。この大陸の外、海の果てには……まだ、この大陸に住む子供達が知らない大陸がある。
そこでは、この大陸の人々と殆ど、違わない暮らしを送っており、神が降臨する必要がないほどに平和な日常を送っている。
故に、この子は、その大陸から流れ着いた……言うならば、『
「分かった!それじゃあ出来る限り、僕の方でも君が元の大陸に戻れるよう手を尽くそう!君にだって家族がいるだろうしね。いつまでも、オラリオにいちゃ不味いだろう」
「……家族、皆無」
「へっ?」
「我、クレイモア。妖魔、家族、全滅。……復讐、妖魔、血肉、合成。……それこそ、クレイモアという女」
……それは悲痛とも呼べる過去だった。
彼女は妖魔と呼ばれる怪物に、家族を皆殺しにされたらしい。
そして妖魔達に復讐する為に自ら、妖魔の血肉を受け入れ、その遺伝子を自分と合成したという。
人々を守り、妖魔を狩る存在でありながら、人とは決して違う妖魔の血を引く故に唾棄される嫌われ者、それがクレイモア。
「……ごめん、辛い過去を思い出させちゃったね」
「問題皆無。終了、過去、話。神ヘスティア、悪、相違」
「……そう言ってもらえて幸いだよ。……なぁ、イルミア君?良かったら……なんだけど、君が元の大陸に戻れるまでの間、僕のファミリアに来ないかい?」
「ファミリア?」
「ファリミアっていうのは……簡単に言えば、冒険者達が一つの神の下で集まった集団、かな?僕的にはそういう感じじゃなくて……そう」
「僕やベル君と君で、家族みたいに暮らせればいいかな?って思ってる……どうかな?」
その言葉を聞き……彼女は困惑した表情を見せた。
神ヘスティアの家族になるのが嫌なわけではない。寧ろ、神ヘスティアやベルのように自分のような、半人半妖のエレアを受け入れてくれる人達と同じ家に住めるなら、どれ程良いことか。
……だが、それ故に二人が優しいからこそ、自分のような嫌われ者を受け入れたことで、二人まで他の人々から排斥されるようなことがあったら……と考えてしまう。
それだけは、また家族を失うことは、決してあってはならない。
「……大丈夫だよ。ここオラリオは広いんだ!君みたいな子が一人いたところで、誰も気にしない!皆、君を受け入れてくれるさ。だからさ」
「一緒に、行かないかい?」
「ッ!」
そういうと、ヘスティアは優しく、彼女に手を差し伸べる。
払おうと思えば、簡単に払える手。
だが……彼女には、それを振り払う勇気はなかった。
クレイモアと化してから、ずっと与えられることがなかった愛情を、振り払えるほど……彼女の心は、妖魔になっていなかった。
「よろしく、お願い……しますっ」
「……うん、僕こそよろしくね。寂しくなったら、僕を頼れば良いさ。その時は、僕が……竈の女神が、君達のことを暖めてあげる」
幼い子供のように泣く彼女をあやしながら、ヘスティアは抱き寄せる。
この大きく見えて、とてもとても小さな火が消えないよう、己の持つ小さな竈で囲うのであった。
これはelonaとダンまちのクロスオーバーというより
クレイモアとダンまちのクロスオーバーと言った方が正しいのではないだろうか?(元ネタ的に)