Vocaloid of voices   作:rufus

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Rufusです、大変お待たせしました…

ようやく第一章に入ります

章の始めということなので今回は長いです


第一章:友と裏切りと復讐と
第八話 水瓶座:12位


4月1日。エイプリルフールであると同時に、新年度の始まりであるこの日。

私は新しい制服を身にまとっていた。

全身を白で統一された、少し高貴なイメージを持つこの制服。それから毎日のように着ていくものだ。

にしてはスカートが若干短いような…。まぁ衣装と比べたらまだましだが。

鏡の前でくるりとターンしてみる。…よし見えない。平気。

そして私はベットに置いた鞄を手に取り、部屋を出た。

 

 

先日、新たに二人の「DIVA」がやってきた。

それぞれ、中島恵美、百合里イアという。

恵美ちゃん、通称グミちゃんはとっても優しくて朗らかな性格。まるで天使。マジ天使。

若干天然なところもあるけど、それでも天使。マジ天使。

『ヘッドホン』を付けると、黒髪のショートヘアーは明るい緑色になる。…少し被った気はするけど、それでも可愛かった。天使。マジ天使。

一方イアちゃんは、銀髪で無口で可愛くって褒めると顔を赤くしてデレて、それはまるで二次元の萌えキャラみたいな感じだった。家の事情で寮には住めないけど、それでも週の大体は遊びに来てくれた。

そういえば、ルカ姉とイアちゃんは知り合いだって聞いたなぁ…。初めて彼女が来た日も、ルカ姉に「会いたかった」と言っていた。イアちゃんの家は世界的に有名な財閥だからなぁ…。どこかで会ったことがあったのかもしれない。

そんな二人も、当然春休み中に戦闘訓練を受けた。が、どちらも残念な結果となった。

グミちゃんは敵を見るなり逃げ回った。壁を背後に囲まれた時はとうとう諦めたのか、ボクシングのような構えを取り、敵に必死扱いて殴りかかり何人か倒した、という結果。ルカ姉曰わく、「普通ならあれくらいが妥当」と言っていた。

一方、イアちゃんは敵に囲まれた瞬間、地べたに座って大泣きし始めた。その行動に私達も戸惑ったし、バーチャルの敵でさえ戸惑った。数分泣いた結果、ルカ姉は訓練を強制終了させた。私より一つ下なのに、すごい子供っぽかったのを覚えている。

 

そんな二人も、そして私達も、今や人気沸騰中の新人アーティストとして世界中に名を知られるようになった。デビュー曲も覚えた。けど、これからそれを「使って」戦う事になるのは、何とも複雑な気分だった。

ルカ姉の「星屑ユートピア」だって、人を大量に殺せる殺人兵器なり果てるなんて…。

私は歌うのが好きだ。というか、それしか取り柄が無かった気がした。でも今となっては、何のために歌っているのか分からなくなってきた。人を感動させる為なのか、人を殺める為なのか…。

正直、あの訓練の日が少しトラウマになっている。バーチャルではあるが、私が歌を歌ったら人が死んだのだ。…そもそもあんなところで歌を歌う事自体おかしいが。

歌番組やコンサートで、曲を歌う度、人が死ぬのではないのか。毎度そんな恐怖が、必ず頭のどこかにあった。

でもやっぱり歌う事は楽しかった。そんな得体の知れない恐怖より、幼い頃から味わってきた喜びの方が心地良い。また、あまり負のイメージを感じないようにと、普段から心掛けていた。

そうして私は今までを過ごしてきたのだ。ずっとずっと前から…。

私はその事についてルカ姉に相談してみた。彼女はいつも通り、私の話を静かに聞き、こう言った。

 

『好きだったらそれでいいじゃない。もし貴方が人を殺めようとするならば、私がどうにかしてみせるから』

 

凄いと思った。他人から見れば無理難題のような事を、あんなに容易くできると言ってしまうのだ。言葉なら容易いが実行するのは難しい、とか世間は言っているが、彼女にはそれを覆せるような、そんな気迫を持っていた。実際、そうでもある。

あの奇襲以来、『UTAU』からの攻撃は無かったわけではなかった。しかし、それら全てをルカ姉一人で退けた。

リンちゃんやレンくんは、先日の訓練の功績から『UTAU』との交戦は許可されているが、ルカ姉はそれを許さなかった。上からの命令という事でしぶしぶ同意したが、彼女は未だに二人を戦わせた事は無い。

二人はルカ姉の力になりたいと、ルカ姉を説得していたが聞く耳を持ってはくれなかった。

それを見ていた私は、ルカ姉には、何か裏があるような気がした。これまでの言動だってまるで自分を犠牲にしてまで、私達を守っているかのよう。そこまで守る理由は考えられなくはないが、にしては過保護すぎる。だから私は裏があるの思ったのだ。これには他の四人も納得してくれた。いつもなら無視するくせに…。

 

私もそうだが、みんなは何か必ず人には隠している過去があると思う。けどそれについて誰も聞かないし、聞こうとも思わない。何せ、今が楽しいから。それを壊すような事をするなら、それは愚かだ。お互いの事を知り合ってより仲を深める、という考え方もあるが、みんなそうとは思わないみたい。

 

どれだけいつも通りの生活が幸せだって、知ってるから。

 

 

「ごちそうさまー」

 

空になった数枚の皿をキッチンまで運ぶ。その動作を見ていたリンちゃんが急に食べるスピードを速めた。

 

「ちょ…そんな焦らなくともまだ時間はあるぞ?」

 

「んんーんーんー!」

 

「食べ終わってから言えよ…」

 

口いっぱいにスクランブルエッグを詰め込み、ちょっと吐き出しそうになりながらも話そうとしたリンちゃん。当然彼女の言った言葉は伝わる事はない。

私はみんなが食べ終わるまで待つ事にした。

 

「そんなに焦らなくても私待ってるよ?」

 

「ごくん……んじゃぁあと30分待ってて!」

 

「いや絶対遅刻するぞそれ!」

 

相変わらずの冷静なツッコミ。今日のレンくんは、朝から頭冴えまくりのようだ。

そして、つい最近入ってきた「天使」も朝食を食べ終え、立ち上がった。

 

「ごちそうさまでしたぁ」

 

「ぬ!?グミちゃんも食べ終わるなんて…もぐもぐもぐもぐ……んー!んんー!!」

 

焦って食べた結果、喉に食べ物を詰まらせるお決まりの展開。慌てて隣にいたレンくんがリンちゃんの背中を叩く。

 

「ごくん…いったいなぁ!そんなに叩くことないでしょー!?」

 

「うるせぇ!詰まらせたのが悪いんだろ!むしろ有り難いと思え!」

 

「背中叩いてくれてありがとう!…なんて言う奴いるかー!何が有り難いと思えだ!こっちは結構痛かったんだからー!」

 

「んじゃあお前はあのまま窒息死した方がよかったっていうのかよ!」

 

「あんなんで窒息死するほど弱ってないわバーカ!」

 

何とも子供っぽい言い争いだ。そこにグミちゃんが割って入る。

 

「まぁまぁ落ち着いてください。というか早くしないと遅刻しますよぉ?」

 

「「そうだったぁ!!」」

 

自分達の置かれた状況をようやく理解した二人は、今まで見たこと無いスピードで朝ご飯をたいらげた。途中、喉に詰まらせてたけど。

一方、ゆっくりながらも黙々と朝ご飯を食べるルカ姉。その姿は少し寂しそうに見えた。

今日から始まる新しい学校生活。私達と一緒にいられなくなる事を寂しがっているのか、それとも━━━

 

「んじゃ行ってきまーす」

 

「ん、行ってらっしゃーい」

 

笑顔で手を振って、送ってくれた。今日は楽しい一日になりそうだ。

 

♯♭♪

 

これから毎日のように通う学校は、一般的な学校とは少し違う。

私立J.R.J学園。「JRJ」とは何かの頭文字を取ったらしいが、学校紹介のパンフレットにも載っていなかったので、詳細は知らない。

この学校は中高一貫校の為、中学2年生になる双子もどきと一緒の学校に通う事になった。

 

そして、この学校の最大の特徴というのが、中学部にも設けられている「音楽科」と呼ばれる専門学科だ。名前の通り、音楽について詳しく学ぶことができる学科なのだが、この学科への入学入試は行われていない。

この学科へは、学校からの招待という形で入学ができる。学校からの招待が無ければ入学は勿論できない。

では、誰もが招待される可能性があるのかというと、そういうではない。

この学科に招待されるのは、音楽に関して優秀な成績を収めた人だけだ。

今回「DIVA」の寮で住む事になった際、私達宛に招待状が送られた。なので、私達はこの学科への転校が認められたのだ。

私は知らなかったが、みんな音楽に関してはプロ顔負けの技術を持っている。リンちゃんはベースが上手いし、レンくんは作詞作曲の才能が凄いし、グミちゃんはギターが上手いし…。みんな謙遜しているが、実力は本物だった。私の歌などと比べればとてもすごかった。みんなはそれに対し、歌声がとても綺麗って言ってくれた。あの日々のように。

 

 

満員電車と格闘する事数十分、J.R.J学園前駅に到着した。スカートの短さが少し気になったが、運良く痴漢には会わなかった。今度からなるべく座ろう…。

駅の北口から出た後、徒歩5分で学校に着くという。私達は談笑しながら学校へ向かった。途中道に迷ったけど、ちゃんとパンフレットを持ってきたグミちゃんのおかげで何とか学校に着いた。

しかし、そこで私達はとんでもないものを見ることとなった。

 

「で、でけぇ…」

 

「パンフレットと実物でこんなに違いがあるんですね…」

 

J.R.J学園正門前。大人の背丈以上ある潔白の塀が囲み、校章の付いたアーチが空を描く。正面には六角柱の形をした校舎。他にも色々な施設が、パンフレットに掲載された写真より巨大な姿でそこにあった。

そして、そんな巨大な建造物をものともせず、正門をくぐる生徒の数々。学校だけでなく生徒の数も尋常ではなかった。

この学校には音楽科の他に、普通科がある。音楽科は各学年2クラスあるが、普通科は10クラス。それぞれ一クラスに基本40人いるので、単純計算で音楽科だけで480人、普通科2400人、合計2880人が、毎日この学校に押し寄せる事になる。その為、体育館などの施設が異様にでかいのだろう。

人混みが酷いので、正門の端に身を寄せる私達。目の前にいる人々は、有名人である私達には目もくれない。

…これから毎日ここに通うのかー…。憂鬱だなー…。

 

 

 

六角柱の形になっているこの校舎は、北棟、北西棟、北東棟、南東棟、南西棟、南棟の六つに分かれていて、それぞれ高3、高2、高1、中1、中2、中3と学年で異なる。またその棟だけで移動教室が楽にできるように、棟一つで一つの学校のような設備が整えられている。そのせいで全て8階建てと非常に高いし、棟一つでも非常に広いので、それが六つ揃うと…もはや言うまでもない。

 

私とグミちゃんは高1なので、今北東棟3階の教室…の前にいる。

音楽科は2クラスしかない為、普通科のように一年経つごとにクラス替えはしない。だから新年度早々転校生が来ると、どこかの漫画のように、先生が呼ぶと転校生が教室に入ってくるという展開になっている。

ルカ姉は一人だと不安だからと、私とグミちゃんを同じ音楽科の2組に入れてくれた。てかそんな事できるルカ姉の権限って一体…。ここの卒業生とはいえ、そんな事できるのが非常に不思議だ。

リンちゃんとレンくんも同様に同じクラスに入った。今頃、私達と同じ状況だろう。

私は今日知ったのだが、イアちゃんはというと元々ここの学校の生徒だったらしく、転校とかそういう事は勿論ない。今は中3のとこにいるはずだ。

 

「…緊張しますねぇ…」

 

「だね…こんなの初めてだよ…」

 

私は一度転校したことがある。だが今ほど緊張する事は無かった。多分、今緊張しているのは、私が有名人になってしまったからだろう。私達が教室が入った時の周りの反応を想像すると、自然と胸の鼓動が早くなった。

 

『入っていいぞー』

 

先生の呼ぶ声が聞こえた。恐る恐るドアを開ける。

私が入った瞬間、当然ながら周りがざわめき始めた。続いてグミちゃんが入ると、そのざわめきは最高潮に達し、もはや収拾がつかなくなっていた。

そんな中、先生が「静かに!」とお決まりの台詞を言い、生徒を黙らせた。

 

「んじゃ自己紹介お願いします」

 

先生から自己紹介を促される。グミちゃんとアイコンタクトを取った後、私から話始めた。

 

「えっと…佐々木未来です。こ、これから宜しくお願いします…」

 

礼儀正しくペコリと挨拶した。

名前に関しては、芸名か本名かどちらを使うかで抗議されたが、「別に本名でもいいだろ」という時原さんの一言で本名を名乗るということになった。

続いてグミちゃんが一歩前に出る。

 

「初めましてぇ、中島恵美と申します。以後お見知りおきをぉ」

 

彼女も私と同じように深々と頭を下げた。妙に緊張感のない声なのは、元々の気質のせい。丁寧な口調だが天然さも伺えるのが、彼女の言葉の特徴だ。しかし、目の前にいる生徒のざわめきは止むことを知らず、誰もが私達の方を見て何か喋っている。漫画の展開そのままじゃねえか…。

 

「んじゃ、二人はあそこの席な」

 

先生の指指す先には、列の後ろの方で空席になっている机が二つ、横に並んでいた。どうやらあそこが私達の席らしい。その周りにいる人達はそれを聞いて、益々盛り上がっていた。

私は二つある内、窓際の席を選んだ。

 

前の学校にいた時、私はいつも窓際だった。

何気なくノートを書いて、ただ窓の外を見る。春には桜が舞い、夏には緑が生い茂り、秋には木の葉が儚く墜ち、冬には静かに雪が降る。そんな窓からの景色は、私の心の傷を癒すような感じがした。

 

今回は外から中庭が見える為、少しは景色が楽しめそうだ。

この校舎の中心には、六つの棟に囲まれた中庭が存在する。定期的に掃除が行われているためか、そこそこ綺麗な場所だった。木々が何本か生え、芝生が生い茂る。見た感じ日向ぼっこには最適そうだったが、あいにく六つの建物に囲まれているため、日に当たるのはほんの短時間しか無いようだ。

 

 

『未来も寝てみなよ!日に当たって気持ちいいよー?』

 

 

不意に過去の情景が目の前を駆け巡った。

庭の芝生に寝っ転がって日に当たる男の子。その無邪気な笑顔からは、彼の幼さが伺えた。

今どうしてるのかな…。

 

私は咄嗟に頭を振った。

 

「むむ…何か雨が降りそうですねぇ…」

 

そうグミちゃんが呟く。ふと空を見上げた。

さっきまで青かった空は、黒い雲で覆われていた。

 

♪♩♬

 

私は占いというものを心底信じる人である。

 

何故そうなのか、どうして信じられるのか。そういう質問は今までされたことがないが、もしそう問われたとすると、私ははっきりとした答えは出せないだろう。

いつの日か私は占いを信じていた。理由は分からない。

朝のニュース番組の最後にやってる占いが面白かったのか。それか一度占いが当たってそれ以降信じるようになったのか。

今まで考えてきたが、結局答えは出ていない。

それでも、朝のニュース番組の占いを見る事は、私の日課であり続けている。

 

 

「うげ!?水瓶座最下位かよぉ…」

 

4月1日。今日の占いは最下位だった。

金運、恋愛運、友情運などその他諸々、評価は一番下。ダントツの最下位だった。

さっき言った通り、私は占いを心底信じる。一番良ければ1日中気分が良いし、最下位なら1日中落ち込んでる。

そしてこうすれば運気が上がる、いわゆるラッキー○○というモノも信じる身である。昼ラーメンを食えば運気が上がると言われれば、近くのラーメン屋に食べに行くし、赤い帽子を被れば…と言われれば被って仕事に出かけた。

効果はあると言われればあったし、ないと言われればなかった。正直、自分でもどうしてこんな曖昧なモノを今まで信じてきたのか不思議である。

 

でも昔の私は、そうしないと生きていけなかったのかもしれない。

 

誰もいなかった。家族も、友達も、恋人も。

何かにすがりたかった。何かを信じたかった。何かを紛らわしたかった。

そう。私は、誰よりも弱かった。みんなの方が、強い。だから一番弱い私が犠牲になるんだ。

弱肉強食とはこの事をいうのかな…。いや、私の場合は自ら「肉になります」と言っているようなものだ。

それだけ私は弱いのだ。周りから見れば、ただの死にたがりとか、他人の心を分かっていないとか、そう思うかもしれない。でも分かっているからこそ、そうしたいと思っている。私の二の舞にならないように。

そして、私は「死なない」。

 

あ、そういえばまだラッキーアイテム聞いてなかったや。

うなだれた頭を上げ、再びテレビの画面に注目する。

 

『今日の水瓶座のラッキーアイテムは……ありません!』

 

「なんですとぉー!?」

 

なんてこった!今までこの朝の占いは毎日見てきたけど、ラッキーアイテムがないなんて聞いた事無いよ!

それだけ今日の運勢悪いのかぁ…はぁ…。

ソファーに寝っ転がり、しばらく天井を見つめた。

今日は外出はやめておこう。運悪く車にはねられたーなんて事があったら洒落にならない。BSIPカードを使えれば車なんて木っ端微塵だが、戦闘以外は使用するのを禁止されている。…当たり前だけど。

今日は大人しく、家でのんびりしていよう。それがいい。

 

ピーンポーン

 

唐突にチャイムが鳴る。朝早くから誰か来たみたいだ。

 

「はーい」

 

返事をし、重たい体を起こす。そこら辺にあったサイズの合わないサンダルを履き、玄関のドアを開けにいった。

にしてもこんな時間に誰だろう…。研究チームから何かある時は、必ず事前に連絡がある。後宅配便とかが届く場合は、これまた研究チームを介して届けられる。昔、届けられたモノの中に時限爆弾があった事から以後のような態勢を取っている。連絡が無いという事は、今玄関先にいるのは部外者である。

 

嫌な予感がした。

 

私は咄嗟にテーブルの上にあった拳銃を取り、袖の中に隠した。

そしてサンダルを履き直し、恐る恐るドアを開けた。

 

そこにいたのは灰色の作業着を着、帽子を被った、人。深く被っていて顔も伺えず、性別は定かではない。

 

「…どちら様でしょうか?」

 

恐る恐る尋ねた。しかし私の言葉に何の動きも見せない。

そう思ってた時だった。

彼、か彼女か、はどこから出したのか右手に拳銃を握り、私の頭に向けて突き出してきた。

咄嗟に私も袖の中から拳銃を取り出し、同じく相手の頭に銃口を向けた。

お互い同じ体勢。一歩も引かなかった。僅か数秒の出来事だったが、すべてがスローモーションに見えた。

 

 

「……流石は巡音ルカ…といったところね」

 

女だった。まだ顔は見えないが、声の高さからして女だった。

それからどれだけの時間が流れただろうか。お互い何もしゃべらず、動かず、銃口をそれぞれの頭に向けてからかなりの時間が経った。周りから見ればものの数十秒だったかもしれない。

しかしこいつは一体誰なのよ…。思い当たる節はあるが誰だか予想できない。さっき聞いた声では、明らかに私の知っている人にはいなかった。ここの居場所を知ってるのは「DIVA」のみんなとテトとその部下。テトは強撃隊所属だからその部下も知ってる可能性がある。

けどこいつは…強撃隊じゃない。見て分かる。こいつは暗殺隊だ。やり方、変装、そして銃の種類。それらを見ただけで、こいつが暗殺隊だとすぐ分かった。でもどうして違う部隊がここの場所を…。

意を決して目の前にいる相手に問いかけてみる。

 

「…誰の差し金?」

 

しかし、彼女は答える素振りを全く見せない。答える気はないらしい。

と思っていたが、彼女はぼそっとこう答えた。

 

「……ウタ隊長からお前を暗殺しろとの命令が下った。だからこうして殺しに来た」

 

何とも従順な部下だこと。続いて次に気になっていた事を聞いてみる。

 

「どうしてこの場所を知ってるのかしら?」

 

「………」

 

口を閉ざしている。今度は答える気はないらしい。

と思っていたが、また彼女はこう答えた。

 

「何を言ってるの?この場所は『UTAU』の全員が知ってるわよ?」

 

「…え?」

 

一瞬思考が止まった。

「UTAU」の全員がこの場所を知っている…?って事はいつでも殺しに来れるって事…?

その瞬間、とてつもない恐怖感に襲われた。そして絶望した。

今まで私のやってきた事は一体何だったのか…。みんなを守るとか言ってて、結局みんな常に危険な状況に追いやられていたなんて…。

 

「…知らなかったようね。恐らく貴方の思ってる通り、私達はいつでも貴方達を殺せる。どこにいても。貴方達は生かされているのよ。よーく、覚えておきなさい」

 

すると、彼女は銃を下げ、何もせずに帰っていった。

テレビでやった通り、今日の運勢は最悪だ。何をしてもそれは変わらない。

私はその場で崩れるように座り、ただ石畳の地面を見つめていた。

今まで私がしてきた事を思い出す。冷静に考えれば、そうだった。分かるはずだった。

過去の事例からも、明らかにここの場所を知ってないと起こせない事件が多々あった。どうして今まで気づかなかったのだろうか…。罪悪感に苛まれる。

 

 

…いや待てよ?さっき彼女は…どこにいても私達を殺せるって…。

 

その途端私は走り出していた。道路に出て西に向かった。閑静としているここは、今の時間車など通りはしない。今の姿で私はただ西に向かった。

しばらくすると、海が見えてきた。どんどん近づいている。

そして…

 

私は海へと飛び込んだ。

 

背中に翼を持って。

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