Vocaloid of voices   作:rufus

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またしても遅れてすみませんでした…Rufusです

私は更新に1カ月かかる事実を重く受け止め

これから毎週木曜に更新してくいくことにします

…できなかったらごめんなさい


第九話 彼女

しばらくすると、俺は人を殺していた。

 

何故かは分かる。そいつらが俺を邪魔したからだ。

 

俺は変な所に幽閉されていた。なので俺は逃げ出そうと考えていた。

そして、あいつらの情報が正しければ、今ほとんどの人が留守らしい。今しかないと思った。

俺はこっそり部屋を出て、あいつらの指示通りに足を進めた。

で、そこに敵と出くわし、殺した。

初めて人を殺したが、恐ろしい事に何の感情も湧いてこなかった。

俺の心は、あれ以来壊れてしまったのだろうか。何も感じず、ただ一人を想い続けるこの心。人はこれを一途と呼ぶのか、それとも狂いと呼ぶのか。

でも俺はそれが狂いとなろうとも、その人を求め続けた。

けど、向こうはどうなのだろうか?向こうは俺が死んだと思っている。死人が目の前に現れて、どうするのだろうか。俺を認めてくれるのか、それとも殺すのか。

殺されたとしても、俺には悔いはない。認めてくれなくても、仕方ないと思っている。いや、認めるなんて事はしないだろう。

 

…やはり余計な詮索はよそう。無駄に頭を使っては、ただ疲れるだけだ。

とあるスクランブル交差点。俺の生まれる前から存在している。毎日行き交う人混みも、少し見上げると見える大きなモニターも。

 

そこには俺の求めている人が写っていた。

正確にはいるように見えた。流石に50年経つと全てが全く同じというわけではなく、大きなモニターは3Dになっていた。だからまるでそこで浮いてる、ように見える。

しばらく俺は立ち止まり、その人を見ていた。笑顔で何かを宣伝している。何か話してるようだが、あいにく周りの騒音が酷く、何を言っているのか分からない。

 

そして俺はその姿を見て、悲しんだ。

 

何故かというと、あの時の面影を全く感じさせないほど、彼女は明るかったからだ。

俺には分かった。彼女は無理をしていると。あの時より前から、ずっと俺は彼女をテレビで見ていた。けどそこに映っているのは、明るい「振り」をしているだけ。本当は大人しく、静かな性格だ。裏の顔を知っている俺にとって、テレビで彼女を見るのは幸せであり、苦痛だった。

最近は以前よりテレビに出る回数が減ったが、それでも彼女の「振り」は昔のままだった。

あれだけ無理をするなって言ったのに…。いや、死人に口無し…か。

 

そう思っても俺が彼女を求めるのは、理由があった。

 

俺には、どうしても彼女から聞かなくてはならない事があった。

 

だから俺は探す。「真実」を知る為に。

 

 

どこにいるんだ…ルカ…。

 

♪♩♫♬

 

世間一般のイメージだと、校長先生の話は毎度毎度長い。俺が前にいた学校も、一回の話に10分は掛かっていた。この学校の校長も話す時間が長く、おおよそ30分ぐらいは掛っていた。

話の内容も新年度に新しく抱負を考えろ、とか前年度成績の悪かった生徒は挽回するように、とか。至ってありきたりな話だった。

 

俺が気になったのはそんな話の長さとか、内容とかではない。校長先生その人が気になった。

彼の名前は「R」。ここの校長にして、J.R.J財閥の社長を務め、そして何故か本名を名乗らない謎の人物である。

「謎」、のくせにテレビにも度々出ている彼は、26歳という若さで財閥を統括する上、その甘いルックスから一部の人達でファンクラブが設立したほどだという。

何故「R」なのか。様々な記者が幾度と無くそれに対して質問したが、ノーコメントを貫き通してしる。

この学校は、そんな謎多き社長が経営するJ.R.J財閥によって開校、経営していてる。名前もまんま財閥の名前を使っているのに、この間見たパンフレットには財閥との関係性は一切書かれていない。調べてみるとこの学校のホームページにも書かれておらず、どうやら公表してはいないらしい。

名前をまんま使ってるのに関係性を黙秘してるとか訳が分からない。財閥の名前をパクるとか、まさに裁判沙汰になるのは必至なのに、そういう事が一度も行われていないのも、関係性を確実なものにしてるようにしか思えない。

財閥は良い意味でどうかしてるが、当の社長は悪い意味でどうかしてるようだ。

 

 

『…であるからして、この学校は開校され現在に至るわけです。そしてこのような学校に…』

 

長い。長すぎる。26歳のくせにして老いぼれみたいに説教みたいな話しやがって…。

周りを見渡すと、当然頭を下に向けて寝ている人がほとんど。先生達もこの状況に呆れ、生徒を起こす事もやめ、ぼーっとしてる人もいれば寝てる人もいた。こんなんで大丈夫なのかこの学校…。

 

 

話を戻そう。

J.R.J財閥というのは、世界で最も有名と言っても過言ではなく、世界中の経済の中枢を担っている財閥。

ルカ姉曰く「怪物」。

世界各国のありとあらゆる業界を牛耳り、もはや右に出るものはいない。世界で最も有名で、最も大きい財閥である。

そんな財閥を統括しているのが目の前で延々話している奴である。

 

そう言えば、ルカ姉はあいつと会った事があるとかどうとか言ってた。まぁ、ここの卒業生で世界的なアーティストなのだから一度は会って当然なのかもしれない。

ニュースでもどこどこのお偉い人とルカ姉が会談をしたとか、度々見かける。最近は何故かぱったり無くなったが、昔のルカ姉の放浪(?)癖はすごかったと聞く。と考えるとやはり色んな有名な人と仲が良かったりするのだろうか…。

 

でも…奴の事を話す時だけする、あの悲しそうな眼は何なんだろうか…。

 

それも気になるが、もし色んな人と仲が良いならもっと色んなとこに出かけてもいいはずなのに、ずーっと家にこもりっきり。その様子から仕事も減ったのだろうか…。

 

…ルカ姉の詮索になってしまった。今は目の前の校長兼社長について考えていたのに、気付いたらルカ姉について色々考え込んでしまっていた。俺の悪い癖だ。

 

他人の領域には踏み込んではいけない。特にルカ姉に対してはそう思った。

彼女は周りに対して色んなものを隠している。それも、他人には触れてはいけない、重大な秘密を。

ただそれはあくまで俺の推測で、事実かどうかは定かでなく、確証も何もない。ただ彼女と一緒に生活をして、彼女を観察して、彼女を「偉人」としてでなく「家族」として見た時、そうとにしか見えないのである。

俺にはそれが不思議に見えた。普通、「家族」には自分の秘密は隠すものではないだろうか?自分に近しい人だからこそ、自分の秘密は隠す。例として、いじめを受けている子とその親、みたいな感じだ。

彼女は…それに慣れていないようにも見えた。それは単に秘密を隠すとか、嘘をつくのが苦手とかではなく、「家族」という人に慣れていない、といった方がいいのだろうか。そんな感じに見えた。

「家族」に慣れていない。それは即ち「家族」との接点を失って育った事になる。

 

虐待。

 

不意に出てきたその単語を、俺は頭を横に振り、外へ追いやった。ルカ姉に限って、そんな事はない。

これはあくまで俺の見解だ。事実ではない。確証がない限りこれを口に出していう事は絶対にない。いやそんな事は許されない。そんな事、一番に分かってるのは俺自身じゃないか。

しかし、確証がない限り、それが事実であるかもしれない。親から虐待を受けていたかもしれない。「家族」から追放されたのかもされない。だがそうではないかもしれない。しかし…

 

…考えが何だか無限ループになってしまった。これも俺の悪い癖だ。

 

 

気付くと、長い長い校長の話はようやく終わりを告げた。時計をみるに、およそ45分間は話してただろう。

校長は自分の言いたい事を全部言い切って、見た感じ上機嫌そうだった。何とも自己中な校長だこと。おまけに足早とステージを降り、職員用の椅子には座らずそそくさとその場を立ち去ってしまった。

あんな上司をもって、ここの先生達はさぞかし大変だろう…。少し同情してしまう。

何気なく、俺はステージの脇に貼られているプログラムを見た。

 

この入学式は、次のプログラムで最後を迎えていた。

 

***

 

『そろそろだぞ。準備はいいな?』

 

トランシーバーからこの作戦の総指揮を務めるカイトの声が聞こえる。

…私やルコを差し置いて総指揮を務めるとは。どうやら「master」に相当気に入られたようだ。向こうのスパイなのかもしれないというのに、「master」は単純なお方だ。

校長が体育館から立ち去り、車で出て行くのが合図。カイトはそれを見て各員に指示をトランシーバー越しで出している。

今回の作戦は、二人組を3チーム形成し、内2チームは前線で「DIVA」を討ちに。もう1チームは前線には一切出ず、後方支援と指揮を担当する。で、その指揮をするのがカイトであり、後方支援はメイコが担当する。前線チームはルコと「悪夢」、私と「クッキー」という事になった。

 

今、私達は体育館玄関にいる。そして突入の合図を息をひそめて待っていた。私は、先端がフォークみたいになっているトライデント、と呼ばれる槍を眺めていた。そして、それは形を変え、ゲームとかでよく見かけるランスへと変わった。その変化を、私はただ眺めていた。暇だったので。

一方、隣で丁寧に拳銃を手入れする「クッキー」。その姿から、新人ながらも余裕が見えた。

 

「…………あんた、怖くないの?」

 

不思議に思った私は、彼にそう尋ねた。普段は自分から話しかける事はまずないというのに、だ。

彼は唐突に質問され、若干驚きながらも「んー…」と唸った後、こう言った。

 

「恐怖心はないですね、不思議と。でも不安はあります。殺されるかもしれないですからね」

 

「いやそれはないよ」

 

彼の言葉をすぐさま否定した。

 

「…我々は殺されない、というのですか?」

 

「………そう。殺されない。昔も今も、これからもね」

 

その答えに彼は完全に動揺していたが、恐らく今の彼がどんなにその答えの意味を考えようとしても、正解は出ないだろう。

しかし私の言った事は、半分は嘘である。

昔、といっても過去にあった大規模な衝突戦ではお互い多くの死者が出た。私のいう「昔」とは、巡音ルカがかつて「孤独の歌姫」と呼ばれていた頃からである。

その頃から、「UTAU」から戦闘での死者は一人も出ていない。

何故かは知らない。彼女が何を考えてそうしているのかなど、考えても検討がかないし、第一興味がない。彼女に対しては、私は何とも思わない。

 

 

私は最も憎いのは、初音ミク。

 

あの、無垢な瞳。華奢な体。透き通る声。

 

 

全てが憎い。

 

 

奴のすべてを壊したい。今の暮らしも、奴を取り巻く友情も、これからの希望も、その命も。

 

 

「…天音さん?」

 

「クッキー」の一言で我に返る。いけない、また憎悪に身を任せてしまっていたようだ。

次に、トランシーバーから総指揮の声が聞こえた。

 

『天音、お前大丈夫か?』

 

「………他人の心配をしてるなら、己の身を案じろ」

 

『まぁ確かにその通りだな。…警告しておく。取り乱すなよ。お前が本気を出したら俺達の命も危ういからな』

 

「…それくらい、いつも肝に銘じている。さっきも言ったが、己の身を案じろ」

 

『あぁ…分かっているよ。……突入するぞ』

 

ついにこの時が来た。突入まで総指揮がカウントダウンをとる。

 

『5…4…3…2…1……突入!』

 

 

そして長い長い戦いが、今幕を開けた。

 

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