Vocaloid of voices   作:rufus

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うわぁぁぁ!!ゴメンなさぃぃ!!

ども、遅れて投稿したRufusです

今回のように木曜に投稿できなかったら日曜にやろうと思います、はい


第十一話 白と黒

崩壊した天井。私は「星屑」を用い、天井に穴を開け体育館に侵入した。

足を地面につけると、ちょっと懐かしい感覚に襲われた。瓦礫で潰されたけど、綺麗に並ぶパイプ椅子の列とか、ステージとか、卒業後以来なので敵をそっちのけで少し感傷に浸ってしまった。

 

「ル、ルカ姉…?」

 

すぐそばからミクの声が聞こえた。空耳かと思うと、背後の瓦礫の中から変なスライム状の物体を隔ててミク、リン、レンなどお馴染みの面々が現れた。

あの物体は…「melt」か…。

 

数週間前、新人三人組のデビュー曲が決まった。

勿論、その曲達は具現化変換(その曲のBSIPカードを製造する事)されそれを用い実践演習も行われた。

今ミクの周りを取り巻いているのは「melt(メルト)」と呼ばれる物質で、この世のあらゆるモノを溶かす能力を持つ。コンクリートや金属はもちろん、土や生物をも溶かす。

これとミクのデビュー曲とどう関係しているのかというと、この融解物質は彼女のデビュー曲「メルト」のBSIPカードを装備している時でないと出現しない。俗にいう、アビリティである。

 

…戦う気満々だったってか…。

 

「…ミク、そのままでいて頂戴。こいつらは私が何とかする」

 

「な、何言ってるのルカ姉!?4人相手じゃ流石に無理じゃ…」

 

「黙ってそこで見てなさい!その『melt』から出るんじゃないわよ!」

 

今彼女達は「melt」のドームの中にいる。それのおかげで落ちてきた瓦礫で怪我は一つも負ってないようだ。

あれの中にいれば、絶対安全だ。私はそう判断した。

 

「ふざけんなよ!俺だってもう戦えるんだ!自分の命は自分で守れるって言って…」

 

「この戦い見てそんな強気な事言えるかしら?」

 

レンの叱咤など、何度も聞いている。もはや聞き飽きた。私はあえて冷徹に言葉を吐き、レンを黙らせた。

向こうからのただ一方的な訴えを聞き流している内に、天井の崩壊で舞い上がったほこりが落ち始め、次第に視界が晴れてきた。そこには私達を囲うように、四人の「UTAU」がいた。

この間家を急襲してきた二人と…欲音ルコに「ミルキーウェイ」か…。

ここでは詳しく話さないが、二人とも相当な実力者だ。それが向こうの作り出した「ヘッドホン」の力によるものだとしても、どの道いずれは強大な敵になりうるのは変わりない。

向こうも私の存在に気付いたのか、武器を構え始め今にも襲いかかってきそうな気迫だった。

 

「………なぜこいつがここにいる…」

 

「そんなの私が聞きたいですよ…」

 

何やら通信機のような物でぺちゃくちゃ話している。私が言えたことではないが、向こうもこういう状況なのによくも長々と会話ができるな…と思う。

通信機…という事はまだ数人控えで隠れている人がいるのだろうか。そうなると戦況は著しく悪化する。

今この状況でも若干危ういが、そこに幹部クラスが数人加わるとなれば流石の私でも…

 

いや、どんな状況であれ、やらなくてはならない。

 

何を不安に思っていたのだろう。これまでずっとそうだった。見た感じ無理そうな状況でも、やってみれば無事に何とかできた。いや、しなくちゃいけないからそうした。

私に選択肢など、ない。

 

「控えに誰かいるんでしょー?いっそそいつらも出てくればー?」

 

そう言うと、向こうの顔色が少し変わった。向こうが劣勢になった…という訳でもなく、どちらかというと迷っている、といった感じだった。

控えがいる事に気付かれた事に驚いたのかも知れないが、それが出てきたとしても向こうにとっては当然プラス。迷う必要も何もないと思うんだけど…。

四人が一斉に耳から通信機を離す。どうやら話は済んだようだ。

 

「もういいかなー?」

 

奴らは私の言葉には反応せず、ただこちらを睨みつけてくる。

すると私の視界が一瞬暗くなった。何か攻撃を受けたのかと思ったが、今のは影だった。

私の開けた天井の穴から、誰かが降ってきたのだ。どうやら私の予想は当たっていたようだ。

二つの影はそれぞれ散らばり、やがて地に足をつけた。

 

そして私は、わが目を疑った。

 

 

 

 

「…え?」

 

 

 

 

 

 

な、何で彼らがここに…?どうして?自宅謹慎だって言ってたのに…?

何が何だか分からなかった。どうしてあの二人がここにいるのか。そしてどうして奴らに背中を向け、こっちに武器を向けているのか。

上から降ってきた二人の影は、片方は季節外れのマフラーを身につけ、もう片方は相変わらずの赤い服を着ていた。

その二人は、私がよく知っている人物だった。向こうも私をよく知っている。

何故なら━━

 

 

 

 

 

「…言われた通りに出てきたぞ、ルカ」

 

「全く…相変わらず無謀なことを平気でやろうとするんだから…」

 

「………カイト?メイコ?ど、どうしてそっちにいるの…?」

 

訳が分からず、二人で聞いてみた。私の声はひどく震えていた。

 

「…まだ分からないの?ほんっと相変わらずね」

 

その声からは、強い嫌悪感しか感じられなかった。

そう言い放ったメイコは、手に持つ拳銃をこちらに向けた。

 

 

 

自分はこの時分かっていた。どういう状況に置かれているのか、を。

でも認めたくなかった。否定して欲しかった。しかし彼らはうんともすんとも言わず、ただ銃を向けただけ。察しろ、という事だろう。

嫌だった。ここで肯定したら、彼らのと思い出を否定する事になる。

そんなのは、嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…。

 

 

 

「ルカ姉っ!!」

 

その声で私は我に返った。

気付いたら私はその場で頭を抱えうずくまっていた。状況を理解し、再び立ち上がる。そして辺りを見回した。

敵は皆、一歩を動かなかった。だが彼らの目はさっきのような怒りとはまるで違い、私に対する哀れみを帯びていた。

ど、どうして?どうしてそんな目で見るの…?

嫌だ…見ないで…私を見ないで…。

呆れたと言わんばかりの顔で、メイコがこう言ってきた。

 

 

「ルカ、現実を見なさい」

 

 

私の中で、何かが崩れた音がした。

 

 

♬♩♩

 

彼女は常に理想を求めていた。

しかし、目まぐるしく廻る世界に翻弄され、彼女の理想は淡々と崩れ去っていった。

何故そう思わずにいられなかったのか。

理由はいくつかあるが、正直、これは生まれた時から決まっていた事なのである。そういう運命なのである。それは誰も変えることの出来ず、絶対的。

よくアニメとかで「運命を変えてやる!」とかいう決め台詞がある。有名な偉人も「自分の運命は変えられる」とか言う人もいる。確かにそれはやろうとすればできるのかもしれない。だが変えようとして変わった人なんて、俺は少なからず見たことがない。第一、人の運命など他人が分かるはずもない。どんな運命になろうかなんて本人ですら直感的にしか分からないのである。他人が分かるはずもないし、それでいて変えろなんて言う奴は無責任である。

 

故に彼女は変えようとしなかった。自分が頑張って変わるものでもないと本人が一番分かっていた。

でも、彼女に理想がないわけではなかった。だから彼女は理想に逃げ込んだ。俗にいう、現実逃避である。

彼女はいつかこう言った。

 

「私がアーティストをやっている理由の一つに…現実逃避したいってのがあるの…」

 

何故運命は彼女をこうしたのか。それは誰にも分からない。

悪いのは、彼女なのか。それとも運命なのか。

彼女はそれを知りたかった。けど諦めた。

それは彼女の理想をずたずたにするほど、残酷で悲惨なものだったから。

 

つまり、彼女には信じられるモノがなかったのだ。

唯一信じられたのは、友人達。

運命に縛られた彼女にも、友人は少なからずいた。

しかしその友人達も、彼女を裏切っていった。まるで彼女の運命に従うように。

 

 

その中に、二人の男女がいた。

始音カイトと、咲音メイコである。

二人は年齢はルカよりは上だが、実質彼女の後輩にあたる、元「DIVA」。

けど二人は彼女を妹のように接した。最初は見知らぬ人に怖がっていた彼女も、いつしか二人を信じ、兄弟同然のような関係になった。

 

しかし、二人は彼女と同等の扱いをされてこなかった。

コンサートではいつも彼女がメイン。TV出演も彼女の方が圧倒的に多く、同じ「DIVA」なのにその扱いの差は歴然だった。

彼女はそれを見て、何度も上層部に交渉した。しかし聞く耳を持ってはくれなかった。

実際、ルカの方が人気だった。世界各国の言葉を話せ、歌は二人より遙かに上手い。おまけに幼い頃から音楽界を陣取ってきたルカに、適うはずがなかったのだ。その結果、上層部は利益を優先する形を取り、二人と彼女の差は開いていった。

 

でもそんな事で、彼らの関係は崩れることは無かった。

彼女によると、二人はそれを理由に恨むのは間違っていると言っていたらしい。それだけ彼らの絆の強さが底知れないモノだった、ということだ。

 

しかし、そんな絆も容易く壊れてしまった。

 

ある日、二人は上層部に呼び出された。そして二人に伝えられたのは、アーティスト活動の停止命令。

それは余りに理不尽な話だった。彼らを呼びだして、いきなりアーティストになれと言ったのは上層部のくせに、次はそれをやめろと言う。

もはや彼らは駒でしかなかった。

だが、そうである事を拒んだ二人━━━

 

上層部の人間を殺した。

 

停止を聞かされた時、衝動的に剣を振るった。そしてそれぞれ一人を殺した。

当然そんな騒ぎを起こせば処罰はある。だがいきなりここから出てけと言ってしまうと、世間に騒がれる可能性がある。二人が警察に捕まるのも同様だ。上層部はそう考えた。

結果二人は自宅謹慎という、人を殺したには軽すぎる罰を与えられた。

そして彼女と二人はそれ以来会わなくなってしまった。

「壊れたんじゃない、壊されたんだ」。彼女はそう言っている。

 

しかしそれは自分の理想に過ぎず、今彼女が見てる光景は、現実であった。

理想を追うのは悪い事ではない。むしろいい事だ。自分の夢に向かって動くのはとても有意義だ。

けど最初にも言った通り、彼女は運命にねじ伏せられている。そんな事を思う事すら許されない。もし思ってしまったのなら、必ず制裁が入る。案の定、それは悲惨だった。

 

人は必ず夢を見る。しかしそれが断ち切られると、現実を見て健気に生きていく。でもそれが許されないなら、死ぬ。

 

だから俺は存在するんだ。ここに。この世界に。

あの失望する様は相変わらずだった。見てて怒りを覚えた。

奴は自分の置かれた状況を分かっていないのか。手伝う気も失せた。

 

俺は、白い翼を羽ばたかせてその場を立ち去った。

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