今回は戦いばっかなので文章が少し薄いです。
文字で描写するのって難しいですね…
「え?『master』が私を呼んでる?」
「はい、お呼びです」
それはあまりに唐突で、ありえなかった。『master』が私を呼んでいるという。
フランスパンしか取り柄のない私に一体何の用だろう…?
ウタに連れられてやってきたとある部屋の前。この中に『master』がいるらしい。ここを通る時、いつもこの部屋何だろうと思ってたがまさか私達のボスの部屋だったとは…。間違って入っていたらとんでもない事になっていた。
「…どうぞ」
「ぇ?ウタも入るんじゃ…」
「『master』は貴方とのタイマンを望んでます」
「タ、タイマンって…戦うんじゃないんだから…」
目の前のドアノブを回す。そして意を決して、私は部屋へ入った。
♪♩♫♪
「うるせえなお前!この黄色いイガイガ頭!」
「何だと!?お前こそうるせえよ女のくせに男の口調しやがって!」
「好きでやってるわけじゃねえんだよ!お前こそショタじゃねえか!」
「ショタって言ったな!?お前ショタって言ったな!?あーもう許さねえ!絶対許さねえ!」
向こうの方で悪口を言いあってる二人。誰がどう見てもガキの口喧嘩にしか見えなかった。何故この「戦場」という場所であんな幼稚な事ができるのが不思議だ。むしろそんな事ができるほどの冷静さを、今の二人は持っていると言う事なのだろうか…。
それとは反対に、倒れたルカを囲む4人は今にも泣き出しそうな表情のまま、ただ目を閉じるルカを見ていた。
「…気絶にしては長くないー…?寝てるのー…」
「気絶といっても、どれも早くに意識が戻るということではありませんし…さっきの爆発を捨て身で受けたのなら意識が未だに戻らないのも、仕方ないのかも知れません…」
「そうだね…脈ははっきりしてるから、とりあえず安心していいと思うよ」
「………」
互いに身を寄せ合い、互いを安心させるかのように話す。しかし彼女達の言葉から、どれだけ不安なのかというのが丸分かりだった。それだけ、ルカはこの子達にとって大切な存在なようだ。
俺は少し距離を置いて彼女達を見つめていた。俺は今彼女達に助けの手を差し伸べられない。赤の他人だから、ということではない。この「家族」というコミュニティーに割って入る事ができないと思ったからだ。恐らくルカの事だから俺を一緒に住まわせようとするだろう。だが俺はそんな事望まない。いや、望んではならない。
理由は彼女が一番よく知っているはずだ。
「…あの…」
不意に青緑色の髪の少女━━初音ミクと言ったか━━に話しかけられた。
一体何を言われるのだろうか。多少後ろめたさがあったが、話しかけてみる事にした。
「…何だ?」
「…ルカ姉を助けてくれてありがとうございました」
それは意外な返答だった。
俺は生まれてこの方、感謝されるという事を体感した事がない。自分の行いが悪かったのか、どうすれば感謝されるのか、自分が感謝するに値しない人間だったのか、未だによく分からない。
ただ、今回で感謝されたのは二度目、いや二人目だった。
一人目は、そこで倒れている彼女、ルカだ。
いつの日か、俺の目の前に現れた彼女。最初は一々俺につっかかってきてうっとうしかったが、「友達になろう」と言われてそれをしぶしぶ承諾した時の彼女の笑顔は、一生忘れることはないだろう。
初音ミクはどこか彼女と似ているところがあるように思う。見た目、ではなく内面的な意味で似ている。雰囲気で何となくしか掴めないが、例えで言うなら…同じような悲しい過去を持っている…そんな感じだった。
「…あの…私の顔に何か付いてます…?」
気付くと俺は初音ミクの顔をまじまじと見ていた。慌てて目線を逸らす。
「あ…すまない…どことなくルカに似ているように見えてな…」
「そうですか…」
その発言に特に疑問を抱く様子もない彼女。自分でもそう思っているのだろうか…。
初音ミクは目線をルカから再び俺の方へ向け、何か思い出したようにこう聞いてきた。
「あの…お名前、教えてもらってもいいですか…?」
名前…か…。
「…名乗る者ではごさらん。そんな事よりまずは敵を倒さねばならないのだろう?」
体育館の後方から、人影が現れた。恐らく様子を伺って瓦礫にでも隠れていたのだろう。
あれは…先程自身の影から己の分身を出していた奴だな。
「…ルカが倒れたと思ったのに次から次へと何なんだよ…」
めんどくさそうな顔をして俺に刃を向ける。愚痴もぽろぽろとこぼれているが、俺の知った事ではない。そして厄介な事にその後ろからもう一人が現れた。
「全く持って予想外ですね…。まぁルカが来た時点で概に作戦は大幅に狂っていましたけどね」
ウエスタンハットを被る男。両手には、それぞれの手に二丁の銃が握られている。
四丁流…攻撃性ではこちらが圧倒的に劣っている。片方は影を使って足止め、その隙に銃で抹殺…そんなところか。金髪の少年は未だにルコの相手をしていて、助けを求めようにも無理だ。
ここはしんどいが、やるしかなさそ…
「どいて、私がやる」
背後から現れたのは、さっきまでルカの傍にいた金髪の少女。見た感じ、ルコと戦っているあの少年の兄弟のようだ。
しかし、威勢よくそう言ったものの、彼女は丸腰。いくら身体能力良くとも、分身と弾丸の雨をいっぺんに対処するのは不可能だ。すぐさま俺は彼女の前に立ち、阻む。
「…無理だ。君のような女の子が戦えるはずが…」
「いいからそこで見ててよ」
俺の体を手でどかし、改めて二人と正面で向かい合う少女。そこには不安などなく、むしろたくましく見えた。
ある程度敵に近づくと、彼女はポケットからあるモノを取り出しそれをヘッドホンに差し込んだ。
あれは…俺のと同じ物か?
そして彼女は突如、黄色い光に包まれた。数秒後、光の中から二本の刀が飛び出し光はそのまま二人に向かって動き始めた。やがて光は消え、そこから少女が衣装を変えて現れた。
「悪夢」に斬りかかろうとしたが、きっちり剣で受け止められる。直後「悪夢」の背後から分身が現れ、少女はすかさず下がった。
「…そんなんで我々に勝てるとでも思いましたか!?」
少女に向けられた拳銃は、そのまま標的を変えず弾を吐き出した。
その直後、彼女の持っていた刀が炎を纏い、飛んできた弾丸を斬った。というより溶かした。
「なっ…」
その光景に奴らは目を点にした。正直俺も驚いている。弾丸を溶かすとは…常人ができる真似ではない。そしてその炎を纏うあの刀もどうかしてる。俺は色々な刀を見てきたが、あんなの初めてだ。
と、関心している場合ではなく、こんな状況に置いても「悪夢」は少女に向かって突っ込んでいった。今度はちゃんと分身もついてきている。
「はぁぁぁっ!!」
奴らに目掛けて刀を横に思いっきり振る。刀に纏った炎は刀から離れ、周囲を焼き尽くしながら奴らに迫っていく。「悪夢」の本体は焼かれる寸前に、これまた常人じゃありえない高さまで跳んだ。しかし分身達は逃げ遅れ、迫ってきた炎をもろに受けた。そして悲鳴を上げながら消えていった。
パァン!
俺の事を忘れたのか、と言わんばかりに「クッキー」が少女に向けて発砲する。案の定刀の炎で溶かされた。
「だから無駄だって…。今の私に銃は効かないよ」
「なら剣はどうだぁぁ!!」
そう叫びながら「悪夢」は少女に向かって、空中から剣を振りかざした。きっちりとそれを二本の刀で受け止めるが、空中から襲ってきたのか剣が重く、少女の足元がどんどん窪んでいった。
何とか「悪夢」を振り払う。それに乗じ、「悪夢」は「クッキー」のところまで戻り距離を取った。
「…威勢はいいな。だが力が足りない。そんなようじゃ俺には勝てねえよ!」
刀の炎によって肥大化した影から、次々に分身が現れた。それはどんどん数を増し、「悪夢」の背後は分身で埋め尽くされた。はっきり言って、キモい。全身が黒で、まさに影が立体化しているような容姿でも、それがたくさんいたのなら恐ろしいほどにキモい。
そんなキモさたっぷりな分身達は、主人の命令で少女に向かって一斉に走り出した。どうやら主人とは性格も同じようで、走りながら「うぉぉぉぁああ!」とか「くたばれぇぇ!」とか、それぞれ思い思いに叫んでいる。血気盛んで何よりだ。
「威勢がいいのはどっちよ…」
少女の言う通りである。
そう言いながら軽く刀を横に振る。案の定刀から出された炎で分身が焼かれていく。
「…『悪夢』、これでは多勢に無勢です。逆に分身を出しすぎると敵を見失いますy…」
「うるせえ!お前はその見失いそうな敵を見てりゃいいんだよ!」
「貴方馬鹿ですか!?」
こんな時に味方同士で言い争っているとは何と滑稽な。連携が出来ていない証拠だ。
そんな様子を見ていた少女は、見計らって再び炎を繰り出した。
「え、ちょ来てますよ!」
「そんなん分かっとるわぁ!」
惜しくも当たる寸前でバレてしまいかわされた。が、少女はそれを読んでいた。
彼らに劣らないほどの跳躍で「悪夢」のもとへ跳んでいった。そしてそのままの勢いで、奴に斬りにかかる。
「うぉあ!?」
よほど反射神経がいいらしく、これまた寸前で剣で防がれた。しかし少女は防がれてもなお刀を振り切り、「悪夢」は地面へ落下した。
「き、貴様ぁ!」
それを見た「クッキー」は宙に浮いたまますかさず弾丸を放つ、がこれもまた刀の炎で焼き尽くされた。
直後刀は敵を目掛けて横に振られた。
♫♩♪
「くそ…時間がねぇ…」
そう、時間がない。「右肩の蝶」がもうじき終わってしまう。
これまで五分五分の戦い。お互い満身創痍だった。向こうはライフルの弾を使い果たし攻撃手段はライフルで殴る、という状態だっだ。一方俺は少しずつダメージを与えてきたものの、体力の消耗が激しい。これに加え「右肩の蝶」が使えなくなったら劣勢になってしまうかもしれない。なのでいい加減決着をつけたかった。
がしかし向こうは上手く瓦礫の陰に隠れ、攻撃しようにも反撃される可能性があるのでうかつに手が出せない。非常にヤバい。
「ちょこまか逃げ回ってんじゃねえよ男女ぁ!」
向こうも冷静になったのか、こちらの挑発に乗ってこない。相変わらず瓦礫の隙間から見える影を追うのに必死だった。早くしないと終わってしまうぅ…。
なら…こちらから攻撃するまで!
軽くジャンプし、地面に向けて右手をかざす。
「バタフライウェーブ!」
俺の右腕が紫に光り、俺の真下を中心に無数の紫色の蝶が波となって円形に広がっていった。
蝶達は周りの瓦礫を巻き込みながら広がってく。これなら逃げられまい!
「甘いんだよ」
そう聞こえた直後、後頭部から激しい痛み。そして俺は綺麗になった床に激突した。い、いつのまに背後に…!?
上を見上げるとそこにはルコが立っていた。
「全方位に一斉攻撃すれば当たると思ったかクソガキ。今のてめえの攻撃じゃ上がすっからかんじゃねえかよ」
「くっ…」
体を踏みつけられる。今の攻撃でもう動く体力すら無くなった。
よくよく思えば、瓦礫の隙間をあんなスピードで動ける事自体おかしかった。それならば、俺が攻撃を仕掛けようとした時には俺の背後に素早く回り込まれる事など、向こうからすれば容易いだろう。俺は完全に読まれてた。
「後ねぇ…実は弾一発だけ残ってるんだよねぇ…。無いと思って油断してただろ?まだまだ甘いな」
向こうの方が何枚も上手だった。BSIPカードを持ってしてもこれとは…。いや俺の未熟さ故の結果なのかもしれない。
ただ、今確実に分かる事は、殺されるということ。ルコは俺の死を味わうかのように、ゆっくりと懐から弾を一発、ライフルへ装填した。そして銃口が俺の頭に向けられる。
殺される。
俺ここで死ぬの?まだ14歳だよ?嫌だ。死にたくない。生きてたい。死にたくない。殺される。嫌だ。殺される。みんなといたい。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ…。
「…今すぐ殺しちゃいたいけど、何か言い残す事あるなら言ってもいいよ、クソガキ」
頭が朦朧としてきた。意識が持たない。目の前にある床ですら徐々にぼやけてきた。おまけに体が震えてきた。何故かは分かってる。怖いからだ。死が、彼女が。
遠くの方で赤いものが見える。あれはきっとリンだ。「いろは唄」を装備して暴れているみたいだ。
しばらくぼーっとしながら、最後の言葉を考えていたが、あいにく今の状態ではそんな事考えられる余裕は無かった。
「…ねえの?ちぇっ。つまんねえ奴だな…最後くらいなんか言えよな、クソガキ」
もはや彼女の声も聞き取れなかった。きっと何も言わないから腹を立てているのだろう。
BSIPカードを使用している時には、ヘッドホンからその曲が流れる。が周りの音が聞こえるように音はかなり小さい。BSIPカードは、ヘッドホンに挿して曲が終わるまでが使用時間になる。なのでヘッドホンから曲が聞こえなくなると、自動的にBSIPカードは使用解除される。
俺のヘッドホンからは今「右肩の蝶」が流れている。そして最後のサビの前に差し掛かった。
曲には盛り上がるところと、そうでないところがある。これはBSIPカードを使った戦闘でも同じ事が言える。
どういう事かというと、AメロやBメロよりもサビの時の方が、移動速度や火力、動体視力など、自身の能力が飛躍的に増加する。つまり攻撃力に波がある、という事だ。
そしてサビの中でも、当然ながら曲の最後のサビの方が盛り上がる。それと比例して攻撃力も増す。
なのでこれを使う時には、サビの間でどれだけ優勢に持っていけるかが重要になってくる。
「さぁ…死ねぇぇ!!」
彼女の人差し指がトリガーにかかる。
そして弾丸は放たれた。
と同時に、最後のサビが始まった。