Vocaloid of voices   作:rufus

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Rufusです

前まで戦闘描写しか書いてなかったので言葉だけのコメディは久々です。
なので多分微妙な出来です。

…今に始まったことじゃないけど。

後、ようやく新キャラ出ました。


第二十二話 実態

人がごった返す廊下。そのほとんどが新しく入学してきた新一年生で、かつ音楽科の生徒だ。

何故そうだと分かるのは、ここ最上階が全て軽音部の部室だからだ。

 

「やっぱり人多いね…」

 

「そうですねぇ…」

 

そう言い合いながら、私達は人混みの後ろからその人の多さに唖然としていた。

まさか軽音部の人気がこれほどまでとは…。クラスメイトに聞いた話だと、この軽音部に入るために音楽を独学で勉強して音楽科に入った人もいるそう。残念ながらその人は入部試験に落ちたという。

そんな人も現れるというんだから、こんなに人気があって当然なのかもしれない。

けど、いくらフロア丸々部室だからってこんないっぺんに押し寄せなくても…。試験を受けたいのは山々だけど、この人の多さでは少し気が引けてしまう。まぁしばらくは仮入部や見学が自由だし、また明日にでも来ればいいかな…。

 

「…な、なんか今日は人がものすごく多いし…また明日にする?」

 

「そうですねぇ…その方がいいですねぇ…」

 

どうやらグミちゃんも同じ事を考えていたようだ。明日来ても、きっと試験は受け付けているだろう。

そう思い、来た道を戻ろうとした。

 

「ミクさんミクさん」

 

グミちゃんが突然私を引き止めた。何だろう…?

 

「…ん?どうかしたの?」

 

「あの人…私達を呼んでません?」

 

グミちゃんが指差した先には、私達の後ろの方にある人混みのない部屋。そこから、何やら顔を半分だけ出して手招きしている人がいる。本当に自分達が呼ばれているかと、私は自分に指差した。すると相手は小刻みに首を縦に振った。どうやらお呼びなのは私達だけなようだ。

 

「…行ってみよっか」

 

呼ばれているのなら行かない理由はない。人混みが消えるのを待つのも相当待たなくちゃならないので、私達は彼…か彼女の元へ歩み寄った。

 

***

 

衝撃的ではあった。

謎のマンションに閉じ込められ、そこで出会ったのはかつての旧友だった事が。

アイス、と名乗った少女は俺がかつてとある施設にいた時に出会った少女だった。出会った当時も今のように姉であるシリアの後ろによく隠れていた。極度の人見知りで、怖がり屋。まるでこの世のあらゆるモノに対して怯えているような、そんな眼をしていた。一方姉は打って変わってその真逆。天真爛漫で誰にでもよく喋る。俺を含めた当時の彼女の友達は、そんな太陽のような彼女の事を「ヒナタ」と呼び慕っていた。

対なる二人の姉妹。そんな二人と俺は、多分彼女がいなければ一生知り合う事もなかっただろう。

二人はルカと仲が良かった。人見知りのアイスでさえ、心を開いて話せる相手だったそうだ。

で、俺はルカにこの二人を紹介され、親友とまではいかないが、友達になった。今から十年近く前の話だ。

 

「いやーまさか君だとは思わなかったよー」

 

「普通顔見れば分からないか…?」

 

「すみません…姉は記憶力がないもので…」

 

「失敬な!今さっき食べた昼ご飯のメニューちゃんと覚えてるんだからな!」

 

「いや…それ普通…」

 

相変わらずな二人。しばらく会っていなかったが、いつも通りで安心した。

俺を匿ったのが不審な人物でない事が分かったところで、俺は二人に本題を切り出した。

 

「…なぁ、ここはどこだ?俺、行かなくちゃならんところがある…」

 

がその言葉をシリアは遮った。

 

「行かなくちゃいけないとこって…ルカさんのとこ?」

 

読まれていた。だが俺と二人の仲ならそれは必然的に分かることでもあった。

俺は何も言わず、ただシリアを見つめていた。しばらくして、シリアはテーブルに置いたコーヒーを一口すすった後、口を開いた。

 

「…行くんだとしたら…それは危険すぎる」

 

「そんなの、百も承知だ。覚悟はできている」

 

再び俺はシリアを見つめた。対してシリアは訝しげな目を俺に向けている。

彼女の言いたい事は分かっていた。けど俺はそれでも、彼女に会わなくてはならない。

会って聞かなくちゃならない。なんとしてでも。

またしばらく見つめ合い続けた。

そういえば、昔もしょうもない事でぶつかって、こうして見つめ合い…というか睨み合いをよくしていた。そういうところ、本当変わらないな…。

 

「…分かったわよ…」

 

先に諦めたのはシリア。仕方ないという顔をしながら、彼女は隣に黙然と座るアイスの頭を撫でた。

そして目線を妹に向けながら、こう言った。

 

「だったら、私達の組織に入ってみない?」

 

「…組織?」

 

♪♬♫

 

「もういなくなったかい?」

 

「うん、みんな不合格にしたにゃ」

 

「…こっちも、試験は終わった」

 

「こっちも終わったよー、リーちゃん」

 

「分かった…。待たせてすまなかったな、二人とも」

 

ぞろぞろと入ってくる人達を見てもなお、何が何だかさっぱりだった。

私達を手招きしていたのは、目の前にいる金髪の女の人。見た目からして最上級生のようだ。そしてこの部屋で待っているようにと言われ、用意された椅子に座り、言われた通り待った。

やがて、部屋の外から聞こえていた人の声も無くなり、この階がものの数分にして静寂に包まれた。そして何やらぞろぞろと人が入ってきた。見た限り、軽音部の人達だろう。

 

「あ、あの…これは一体…」

 

「あれ?リーちゃん、説明してないの?」

 

「ま、まぁ…。周りもうるさかったしな」

 

「ダメだよリーちゃん!こういうのはきちんと説明しないと!私達不審者みたいに扱われるじゃん!」

 

「す、すまん…立花…」

 

いや、言い争う前に説明してくれ。

 

「ごほん!さてお二人さんにはこれから、入部面接をしてもらいます!」

 

「に、入部面接?」

 

「そう!」

 

立花、と呼ばれた少女はそう意気込んで話しながら、私達の目の前にあるイスに腰掛ける。テーブルに紙の束を置き、さながら入社面接かのようだった。それにつられてか、他の人達も次々にイスに座る。

 

「あ、緊張しなくていいからね。何個か質問するだけだから!」

 

「はぁい!」

 

「は、はぁ…」

 

何故か隣に座るグミちゃんのテンションが異様に高いのは気にしないでおこう。

すると、立花さんは手持ちの資料をパラパラとめくり、再びこちらを見て、最初の質問をしてきた。

 

「んーじゃあ………。あ、ルカさん知ってる?」

 

「はい!」

 

「は、はい…」

 

「元気してるっ!?」

 

……え?

 

「はぁい!あの人はとっても元気ですよぉ」

 

いやいや待て待て待て、なんだこの質問の内容。明らかにプライベートな内容じゃないか。これのどこが入部面接なんだ。

 

「そっかー…、あの人最近テレビ出ないからさー、少し心配してたんだよねー」

 

「あの…ルカ姉とは面識あるんですか…?」

 

「うん!ルカさんはここに通ってた頃は、この部活にいたからねー」

 

へぇ…。でもあの才色兼備なルカ姉の事だから、ある意味この部が一番似合ってるかもしれない。

 

「あ、後さ、この学校に入ってきた後二人の『DIVA』って今どこいるか知ってる?」

 

おいおい何なんだよこれ。質問じゃなくて普通の会話じゃん。面識する気ゼロでしょ、立花さん。

 

「んー…わかんないですけど、多分部活見学に行ってるんじゃないんですかねぇ」

 

すると、何の疑いもなしに答えたグミちゃんの返答に、何故か面識官の顔が急に強張った。え、え、何事よ。

 

「まずいな…」

 

「ここに来させないとにゃ…」

 

「…ピコくん、行ってきて」

 

「え、俺?」

 

何やら面識中に会議し始めた四人。話の内容からするに「DIVA」全員を入部させたいようにも聞こえる。

 

「…どこにいるかもわかんねぇのに探しに行けって言うのかよ…」

 

「ほら早く行ってきて!他の部に取られる前に!」

 

「行ってこないと、反省文書かせるからな」

 

「私のペットの世話もしてもらうにゃ」

 

「あ、ついでにジュース買ってきてー」

 

「最悪だなお前ら!」

 

何やら色々と弄られているピコくん、という人は文句をぶつぶつと言いながらも、席を立って部屋を出た。毎回あんな感じなのかなあの人…。ドアを乱雑に閉めたその様は怒りを表すというより、むしろ哀れでならないのは心の中に閉まっておこう。

 

「…というか立花、もっとちゃんとした質問をしろよ…。少なからず、ミクの方は困惑してるだろ」

 

いや…初対面で呼び捨てですか…。

 

「分かったよ…。はい、じゃあ音楽に関して何が得意とかありますか?」

 

それを聞いた途端、私の頭の中には二つの単語が挙がった。

私がこの「DIVA」になれた理由でもある、歌。

そしてもう一つは、まだ誰にも話した事はない。恐らく、誰にも話すことはないだろう。

 

「歌ですぅ!」

 

「…歌、です」

 

「そっかー、二人とも歌かぁ…」

 

「合格だな」

 

 

「いや…あの…入部試験って…これだけですか…?」

 

歌が得意、と言っただけでまさかの合格発言。まぁ私達の事はテレビで見ていたんだろうけど、それにしてもあっさりしてるんじゃ…。

 

「え、だって今年は貴方達だけ入れようと思ってたし」

 

「えぇ!?」

 

とうとう声に出してしまった。何なんだこの部活。もっとなんかこう、すごくてしっかりしていてみんなのお手本みたいな部活だと思っていたが、全くの検討外れだったようだ。もはや呆れて反論も出す気がない。色々ツッコミどころもあったが口出すのもめんどくさくなってしまった。もう帰りたい…。

 

ガラガラ

 

途方に暮れていると、今度は外から誰かが部屋に入ってきた。また変なのが来たのか…?

と思いきやさっき部屋を出てった人と同じ、ピコという人だった。リンちゃんとレンくんを探しに行ってから数分も経ってないのに…。流石に見つからず諦めて帰って来たのだろうか?…まぁそうだとしても早いような気がするが。

が、部屋に入ってきたのは彼だけではなかった。

 

「あ、ミク姉にグミ姉じゃん!」

 

すごい事に入ってきたのは例の二人だった。私達の顔を見るなり、二人の顔は極端に明るくなった。恐らく何も言われずここに連れて来られて、心底動揺していたんだろう。

新たに用意された二つのイスにそれぞれ座った。どうやら、二人にも同様の質問をするようだ。

けど…

 

「あれー?ピコくん、ジュースはー?」

 

「買うわけねぇだろ!!」

 

「えーつれないなぁ」

 

「いいからさっさと面接をしろよ立花…」

 

「はぁーい」

 

この調子で大丈夫なのかな…?

 

***

 

とうとう見つけた。

目の前に広がるのは、大木から流れ落ちる桜の雨。この木が「千本桜」と呼ばれる所以は、この木の推定年齢が千年だというのもあるが、他にこんなものがある。

「桜の舞い散る花弁が、まるでその場に千本の桜があるように思わせるから」

これをネットで見た彼女は、目を宝石のようにキラキラと輝かせ、俺に「行ってみたい」とただをこねていた。けど今と過去は勿論状況が違うわけで、もしかしたら彼女はもう一足先にこれに出会ったのかもしれない。

彼らの情報だと、「DIVA」の医療施設がこの近辺にあるという。この間の戦闘では、この目で見た限り少なからず1人2人は傷を負っている。なので彼女はそこに入院しているか、あるいはそこへお見舞いに行っている可能性があるとの事。確かにそれだったら、ここに来て待ち焦がれた千年桜との邂逅も必然的かもしれない。

彼女は、雪やスイカといった、季節を感じさせるもの、要は季節の風物詩と呼ばれるものが好きだった。特に桜と紅葉には関心を持っていて、栃木県の日光いろは坂や、東京の明治神宮など、名所という名所はほとんど見てまわってきた。それほど好きならばこの千年桜に関心を持たないわけがなく、千年桜を知ったその日から毎日のように俺に行きたいとすがっていた。しかし、俺はそれに応えることはできなかった。

何故ならその頃は、千年桜は都市伝説の一つとして語られていたからだ。

この千年桜は元々ここにあったわけではなく、北海道のどこかにあった…と言われている。北海道の人々の、何の根拠もない噂にニュースが着目し、その結果千年桜という名だけが全国に知れ渡って都市伝説として定着した…とされている。あくまでこれも噂だが。

正直こんな巨木をどうやって北海道から東京まで運んだのか謎ではあるが、都市伝説の解答としては十分というのが世間一般の意見となった。

 

こんな神秘の塊みたいな大木、どうせだったら一緒に見てみたかった。

あの時、それを分かっていない彼女には、適当に嘘をついてしまった。

そのせいで彼女を少し傷付けてしまったのが、今でも心残りだった。

きっと安心しただろう。この桜を見て。

根拠はないが、不思議とそう思った。

 

きっと、また会おう。

 

この桜の木の下で。

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