Vocaloid of voices   作:rufus

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あー遅れてしまった…Rufusです

また一ヶ月かかってしまった…もっと早く書かなきゃなぁ


第二十四話 茶番

「はーい。新しく軽音部の顧問になりました、巡音ルカでーす。これからよろしくね!」

 

予定通り家で一眠りしてギャルゲーのラスボスの攻略に挑戦し、難なくクリア。そして夕食を食べ、双子とゲームをして、風呂に入って、夜更かしした後寝た。みんなが入院する前の、いつも通りの生活に戻っていた。翌日、朝起きて、寝癖整えて、ご飯食べて、着替えて、ルカ姉に見送られ、電車に乗り、通学路を辿り、学校に着いて、今に至る。

いつものように…まだ学校開始二日目だが…何事もなく放課後になって部活適当にやって帰れる…と思っていた。

しかし、教室に現れたのは、見慣れたピンク色の髪、優しい青色の目、柔く白い肌。

もう家で見慣れ過ぎて「おー」とか「やったー」とかより

 

「…はぁ…」

 

溜息が漏れ出した。

何故彼女がここにいるのか、それは約一時間前に遡る。

 

♯♪♭

 

昨日と同じように校門をくぐって正面にある校舎へ歩いていた。

校舎はともかく、学校の敷地内はかなり広いせいなのかどこにどの建物があるか一目で分かる。校舎は勿論まだ修理中の体育館や、何の用途があるのか分からないキリスト教の教会。まだ入ったことのない音楽科用校舎等々、少し歩けばすぐ分かっちゃうという方向音痴には神のような学校なのだ。

当然ながら、転校してきたばかりの私はこの学校を全部が全部把握しきれていない。そのせいかこの校門をくぐると少しわくわくする。今日は一体どこに行くのか。まるで小さい子供のような考え方だ。これをみんなに話したらきっと笑われるに違いない。だからこの気持ちは、心の中で閉まっておこう。

 

途中で鏡音兄弟と別れ、グミちゃんと一緒に教室を目指す。

まだ二日目なのもあるのか、道行く人々は私達とすれ違うたび「キャー!」とか「すげぇ!」とか黄色い声が送られる。ほんっと私、有名人になっちゃったんだなぁ…。私はこれのせいで友達がいなくなるという事が怖かった。アイドルだからあまり声をかけにくいとか、別格だとか、そういう風に思われるのが嫌だった。だがかく言う私も、いざ有名人に会ったら多分あんな感じになっちゃうだろう。ルカ姉と生活し始めた当初はそうだったし。

けど不思議に思うのは、有名人とはいえ私はテレビに2、3回しか出てないし、曲だってカップリング含め4曲しかこの世に出してない。某アイドル事務所だって、デビューしていきなり万人に知られるようになったーなんて話あるわけがない。いくらニュース番組で取り上げられようと、バラエティでトークのネタにされようと、こんなにキャーキャー言われるのはどうも気に食わないというか、不自然というか、何かおかしい気がする。原因ははっきりしているが。

 

昨日はめちゃくちゃ緊張したが、今日はリラックスして教室のドアを開けた。ドアの開く音に気づき、部屋中にいたクラスメイトが一斉に目線をこちらに向ける。リラックスしていたのに、あっという間に背中から冷や汗が噴き出てきた。一目散に逃げてしまいたかったが、ここは堪えて私はみんなに向けて挨拶をする。

 

「お、おはよー」

 

ほんの一瞬、ワイワイしてたクラスが一斉に白ける。が、次の途端わっとクラス中がどよめき出した。

 

「おっはよー‼」

 

「ミクちゃんおはよー‼」

 

あまりの大音量に体をビクつかせてしまった。毎日これを聞いてここに入るのか…。考えるだけで憂鬱になる。少し気を落としながらも自分の席に着く。が、私の席の周りはもとい、隣のグミちゃんの席にまでクラスメイト全員が集まってきた。さらには教室の外から他のクラスの人達が集まってこっちをガン見してる。今にも教室に入ってきそうな雰囲気だ。お、落ちつかねぇ…。

みんなはニコニコしながらこちらを見ている。私に一体何を求めてるんだか…。

 

「ねぇねぇミクちゃん!」

 

目の前の女の子が私に声をかけてきた。名前は…佐藤さんとか言ってたっけ。

 

「な、何です?」

 

「昨日の晩御飯何食べた!?」

 

…え?

いやいやいやいやなんだそれ。周りの子とこそこそ話しながら、めちゃくちゃ目を輝かせて、みんなが私に話したがっている中で開口一番が昨日の晩飯?一体どういう事なんだか…。

人の考えは他人には分からないのが人間なので、思考するのは止めてとりあえず質問に答えてみる。

 

「え、えっと…ハンバーグを…」

 

「「「ハ、ハンバーグ!?」」」

 

突如周りにいた全員が一斉に驚く。あまりの出来事に、またしても体が飛び跳ねる。別に普通なんだけどな…。ただ作ったのがルカ姉なので、味に関してはそこらへんのレストランと比べ物にならないほど美味しかったが。けど同居してる事は機密事項なので口には出さない。

 

「に、肉は何使ったの!?」

 

今度は別の人が私に質問してきた。何の肉を使ったか?知らないよ…僕作ってないし…。けどゴミ箱の中にパックが入ってたのを見たので、きっとスーパーの安い肉でも使ったんだろう。

 

「いや…スーパーに売られてる普通のやつを…」

 

「「「「まじで!?」」」」

 

だから何でそんなに驚くのぉ…。

困惑しきってる私を置いて、何やらこそこそと話し出すクラスメイト達。一体何を話しているのやら…。

 

「HR始めっぞー」

 

わいわいしている雰囲気の中、唐突に教室のドアが開け放たれた。そこには、クラスの名簿を持った担任の姿。それを見たクラスメイトは、足早と自分の席へと戻っていった。た、助かったぁ…。

担任は教壇の上からクラス全員の出席を確認し、早口で今日の予定をペラペラと話し始めた。

 

「んでもって今日も講堂の方行くってわけで――――」

 

どうやら今日も全校生徒が集まる集会を行うらしい。昨日は、襲撃のせいでできなかった始業式を、講堂と呼ばれるこれまたアホみたいに大きい集会場のような場所で仕切り直しとしてやっていた。それを見た時は、まるでハリーポッターで出てくる縦にずらっーと並んでみんなで夕食を食べてるあの部屋を思い出した。いや、むしろそれを意識して作られたといっても過言ではない。

どうやら今日も、講堂において集会があるらしい。

 

「今日は新任式だから、制服整えて行けよー」

 

新任式。それは新しく転勤してきた先生達を迎えるための式だ。私が前いた学校でもやっていた。

周りはどんな先生が来るか今か今かと待ちわびているようだが、私は転校してきて間もない身なので、正直どうでもよかった。今日壇上に上がる先生たちと私は、同じような処遇だし。

そしてまた今日もお昼には学校が終わるので、新任式は寝ることにしよう。

 

 

縦に長い大きなホール。そこに縦二列横三列、計六つのこれまた縦に長いテーブルが置かれている。何度見てもハリーポッターにしか見えない。前方には新任の先生用に椅子が何個か並べられている。見た限り、新任の先生は十人とかそのくらいだろう。

背後にある大きな扉からぞろぞろと人が押し寄せてくる。

中高一貫校だけあって、入ってくる人達の数が尋常ではない。それを見込んで出入り口を大きく、そして3つも設けたのだろうが、案の定渋滞している。正直新任式よりこっちの方が面白く感じた。

 

「どんな先生が来るんでしょうねぇ…」

 

隣で座るグミちゃんは、私と同じ転校してきた身だというのに新任の先生には興味津々のようだ。

 

「…興味あるの?」

 

「はいぃ。だってわくわくするじゃないですかぁ」

 

「そういうもんなのかな…」

 

「ミクさんは興味ないのですか?」

 

「私には、在任の先生も新任の先生も、みんな初対面だから同じように見えるんだよね…」

 

「確かにそうですねぇ…。でも、何かいい予感がするんですよぉ」

 

「いい予感?」

 

「はいぃ」

 

まぁ考え方は人それぞれだし、特に気にする事はないか…。

グミちゃんと少し話した後、講堂に全校生徒が揃ったらしく、スピーカーで名前も知らない先生が生徒に静かにするよう呼びかけた。その先生は見た目怖いので怒るともっと怖くなるのであろう、生徒全員が一瞬にして黙った。

そして、校長先生が新任の先生達を連れてきて、椅子に座らせ、新任式が始まった。

当然ながら、どの人も見たことがない。先生が演台に立っていくらしゃべろうと、新任の先生の情報が載ったディスプレイが浮かんでいようと、ちっとも興味が湧いてこない。隣を見るとにこにこしながら新任の先生の話に聴き入っている。何が彼女をあそこまで笑顔にさせるんだろうか…。

襲撃があった日にはかなり長い時間喋っていた(寝ていたのでよく分からない)校長先生も今日は手短にちゃちゃっと済ましてまたどこかに行ってしまった。財閥を取り締まるというのも、大変な仕事なんだなぁとしみじみ思う。

しかし今この場に彼を慕い、尊敬する人は数少ないだろう。

 

 

これは襲撃の後聞いた話だが、校長先生こと「R」は襲撃が起きた時、アメリカへ商談をしに行くとかどうとかで羽田空港にいたらしい。便が着くのを待っていたところに学校が襲撃された、と話を聞いたようだ。

だがそれを聞いた彼は「放っておけ」と、付き添いの警備員に言い放ったという。

彼の真意は分からないが、端から見たら生徒や教職員を事を死に追いやるような言動だ。この事は襲撃事件と同様ニュースで報道されていて、事件から少し経った今でも彼はノーコメントを貫いている。そのせいで学校には何十人ものマスコミが本館の方に集まっているようだ。

「向こうには優秀な人材がいるから安心だ」

「どうせしょうもない組織だから、特別対処しなくとも平気だろう」

「あの学校がどうなろうと、財閥が無事でいればそれでいい」

その言動の理由として想像つくのはこの三つぐらいだが、いかなる理由であってもあのような発言は、己の立場をわきまえていないとしか言いようがない。けれど、彼のこういった発言は今回だけに限らず、度々公の場で様々な問題発言を発している。マスコミやネット上では「毒舌社長」なんて言われて

いる。

 

 

『皆さんこんにちは!』

 

そんな世間知らずな校長が去り、新任の先生方の自己紹介が始まった。見た感じ若そうな先生もいればいかにもベテランという感じの先生もいる。まぁ、こんなのはどこの学校でもよくある光景だ。

一人、また一人と自己紹介を終えていく。あまりに暇なので唐突の眠気が襲ってくる。私は先生の話そっちのけで机に突っ伏し寝ることにした。隣から「寝ちゃだめですよぉ」と可愛い声が聞こえてくるが今は無視して寝る。正直昨日夜更かしして朝からずっと眠かった。今日も早く家に帰って、溜まりに溜まったギャルゲーをどんどん攻略しなければ…。

そんなことを思いつつ私は睡魔に導かれるまま眠りについた。

 

ふと目を覚ます。前方を見ると丁度最後の先生のようだ。これが終われば教室に戻って今日の学校は終わり。これほどまでに幸せなことはない。

 

「やっと起きましたかぁ…もぉ、寝てちゃだめですよぉ?」

 

「んぅ…だって眠かったんだし…」

 

「夜更かししてるからですよぉ。そんなんじゃ、テレビの仕事が来た時にだめだって言われちゃいますよぉ?」

 

「当分こないからいいじゃんかー…」

 

グミちゃんは私にしかめっ面を向けながらも、「仕方ないなぁ」と溜息をついてまた先生の方を向いた。最後の先生はどっからどう見ても、中年の男らしい男性教師、そして熱血漢というに相応しい人で、いつから話が始まったかは知らないが周りの様子を見るに相当長い時間話しているように思える。

やっと新任式が終わると思ったのに、最後の最後でこんな長い自己紹介になるとは…。まぁ、どの道帰れるからいいんだけど。

 

『これから宜しくお願いします』

 

お、ようやく終わったようだ。これで家に帰れるぅ…。

しかし、司会の先生は突然こんな連絡を言ってきた。

 

『…どうやらもう一人新任予定の教師の方がお見えになったようです』

 

えー…まだ終わらないのー…。

周りの生徒達もまだ終わらない事にがっくり。少しどよめいている。

まぁ一人増えたくらいでそんな時間は伸びないからいいけど…。むしろ新任式という大切な行事で遅刻するという失礼極まりない行為をする先生に少し興味が湧いた。どんな先生なんだろう…。

すると突如、後方にあるドアの一つが開け放たれた。2000人以上の生徒が一斉に振り返る。

 

そこで僕は驚愕した。

またしても、あの人だ。

 

やってきた先生は周りに目もくれず、ただ前方の方へ歩いて行った。途中で私達に気付き、こちらに向かってウィンクしてきた。どうやら相当上機嫌なようだ。

周りはもう大騒ぎ。私達とは比べ物にならないほどの歓声が上がっている。

自慢の桃色の髪をなびかせ、スーツ姿という普段あまり見かけない服装をしている。

彼女は演台に立ち、マイクに向かって言った。

 

『今日から音楽科臨時教師を勤めます、巡音ルカと申します。これからみんなよろしくね!』

 

…ルカ姉、あなたまだ、19歳だよね…?

 

♪♩♬

 

「あ、姐さん!お久しぶりです!」

 

「お…お久しぶりです」

 

「みんな元気そうだねー。リリィが部長になってからちょっと心配だったけど、大丈夫そうだね」

 

軽音部の一部の面々はルカ姉と面識がある。2年前ルカ姉がここを卒業していって以来の再会のようだ。

…再会とは言ったものの、何か様子がおかしい。リリ先輩は「姐さん」と呼ぶし、挨拶など滅多にしないピコくんもきちんと挨拶している。今は教師としてルカ姉はここにいるので、いつも――昨日が初対面だが――とは打って変わってとても礼儀正しくしているのも納得するが…

 

「…リリィ、学年主席はちゃんと維持してる?」

 

「は、はい!先輩に言われた通り、任務を遂行しております!」

 

…何なんだこれ。

見た感じ、ルカ姉を慕っているというより怖がってるように見える。でなきゃあんな適当過ぎる部長が実に良い姿勢で敬礼などするはずがない。

 

「ミキちゃんも、成績大丈夫?」

 

「は、はい!巡音教官の師事のおかげで常に学年上位を維持しています!」

 

ミキちゃんでさえあんな風に…。

昨日の軽音部の態度に呆れかえっていたのも束の間、今度はルカ姉にペコペコ…。何とも調子のいい奴らだ。

 

「…まぁ冗談はさて置いて、本当に久しぶりだな!姐さん!」

 

冗談かよ!

 

「そうだねぇ…。卒業して以来かな?また会えて嬉しいよー」

 

ずっと軽音部に親しくしているルカ姉に嫉妬した私は、本題について聞いてみる事にした。

 

「ねぇルカ姉!こんな話聞いてないよ!?」

 

春休み中も、襲撃後も、今日の朝も、ルカ姉の口から「学校の教師になる」なんて話一度も聞いていない。それに関して私の周りにいるグミちゃんと双子も賛同して頷いている。

後これも聞きたい。

 

「てかルカ姉まだ19歳でしょ!?何で教員免許持ってんの!?」

 

「えへへーすごいでしょー。私16歳で免許取ったんだよ」

 

「「「「16!?」」」」

 

ありえない。そんな話聞いた事がない。

というか16にして免許を取ったという事は、高校生にして生徒に授業を展開できるという事。私と同じ年齢の時には、高校生の範疇を遥かに超えていたというのか…。もう才色兼備とかじゃない、神だ。これはもう神でしかないな、うん。

 

「あ、後さ、みんなに重要なお知らせがあるんだけどー…」

 

がやがやしていた部室が静まり返る。つ、次は一体何を言ってくるんだろう…。実は神様でしたーとか言わないよね…。

 

そしてルカ姉は一つ息を吸い、こう言った。

 

「…軽音部全員、『DIVA』になる事になったから」

 

 

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