…急いだ分話の内容も変な感じです
夏花凛々。現在高校三年生の17歳。軽音部の部長をやっている。
性格は気さくで明るく、男勝りで姉御肌。髪が金髪なので見た目ヤンキーかと思われるが、成績は学年トップ。運動神経もよく、度々運動部の助っ人を頼まれている。またそのヤンキーな見た目を逆に利用し、困っている人を助けたりもする優しい人でもある。が、その反面面倒な事は嫌いで、部長としての仕事を滅多にやらない。そういうのはもっぱら副部長のピコに回される。得意な楽器はドラム、パーカッション。
歌田ピコ。現在高校一年生の15歳。軽音部の副部長。
髪はショートヘアで銀色をしている。そして、頭の天辺から巨大なアホ毛を生やしている日本人とカナダ人のハーフ。目は右が青、左が緑というオッドアイ。あまりしゃべらず、大人しい性格。部長から理不尽な仕事を回されても黙ってやりこなす、縁の下の力持ちである。
趣味はゲームで、部活中も時々やって怒られたりする。得意な楽器はベース、低音楽器。
立花未来。現在中学三年生の14歳。軽音部ではムードメーカー的存在。
赤い髪に頭の天辺に大きなアホ毛がついたアホ。何事に置いても、「とりあえず」何も考えずやる人。そして敬語が話せない事に、ルカに度々怒られていた。その反面、場を盛り上げるのが得意で、偏見を持たず人と接することができる優しい部分もある。得意な楽器はキーボードなど鍵盤系。
藤村いろは。現在中学二年生の13歳。
ボブショートに一本だけポニーテールを作っていて、茶髪。そして語尾になぜか「にゃ」を付けるほどの無類の猫好き。所持品もほとんど猫をあしらわれている。性格も猫のように気ままで、気付いたら消えてる事が多い。
そんなにも猫の事が好きにも関わらず、なぜ音楽の道を志したのかは誰も知らない。得意な楽器はギター。
「…といった具合ね」
「ル、ルカ姉!あたしクラスで成績一位だよ!?なのになんでバカなn」
「成績がいい=バカではないなんて誰が決めたのよ。あんたの『バカ』は性格が『バカ』なのよ」
「ぬぐぐ…」
いつもは五人しか座ることがないダイニングテーブルに、新しく四人追加された。まさか軽音部の面々が「DIVA」になるとは…。人生驚きの連続である。
学校でその事実を知らされた後、すぐさま彼らの引っ越しが行われた。すでにそれぞれの両親には話をつけてきている上、四人とも寮での生活だったので引っ越しは彼らの荷物をここに運んでくるという単純作業だけだった。ルカ姉が事前に手配したトラックのおかげで、小一時間で引っ越しが完了した。
初対面であんなに騒がしかった軽音部の人達のことだ、彼らがいればここはもっと賑やかになることだろう。
しかし気に食わないのは、「何で今なのか」という事だった。
彼らの音楽スキルの高さは、まずJ.R.J学園の音楽科に入った時点で十分高いわけだし、おまけにその中で特に技術が高い者しか入る事ができない軽音部に、彼らは中一の頃から入っているのだ。どうして今になって軽音部全員を「DIVA」にしたのか。どう見ても、それは8月13日に行われるであろう大規模な戦闘に備える為としか考えられない。いくら戦えても、五人…イアちゃんを含め六人で200人以上の敵に立ち向かえるはずがない。確かに私もそう思うし、政府が――なぜかは知らないが――手を出せないこの状況の中で、こちら側の人間を増やすのは最優先される事なんだろう。
でもやっぱり…死ぬかもしれないあの戦場に身を投じなければならないという事実を、彼らは認め受け入れられるのかが心配だった。正直自分もまだ受け入れられない。どうして自分達が戦わなくちゃならないのか。自衛隊や米軍ではなくただの一般人が。何度もルカ姉に聞いてみたが「私も考えてる」としか答えてくれない。
私達よりも実戦経験のある彼女ですら、その答えに行き着いていない。そんな難問を、また別の人に出題する。考えるだけでも酷なのに、それがまた別の人、別の人と移っていくのはとても心が痛んだ。
ルカ姉はこう言ってた。「苦労するのは私達だけでいい」と。
それでも尚人が増えるのを見ると、自分の情けなさにまた心を痛めた。
「…そういえばリリィさ」
色々思考している中、ルカ姉が部長さんに話しかけた。
「イアは部活来てる?」
…ん?イア?
「あー…今年度に入ってからはまだ一度も来ていないなぁ…」
「そっかぁ…」
え、イアちゃん軽音部なの!?
その話を聞いた私は黄色い双子に目線を送る。向こうも目を点にしてこっちを見つめてきた。
それを察したのか、ルカ姉が割って入る。
「あ…そうなると四人とも知らないよね…。んと、イアちゃんも一応軽音部員よ。まぁ、ここに来れないのと一緒で、家の都合であまり来れないんだけどね」
まさかあの超可愛くて超癒されて超美少女のイアちゃんが軽音部員とは…。けど「DIVA」になれるほどの人なのだから、決して不思議な事じゃない。強いて言うなら、喋るという事をあまりしない彼女がよく入れたな…。まぁ可愛いは正義だし!可愛ければ何でもいいけどね!
♬♬♬
午後五時を告げる音楽。「夕焼け小焼け」の曲が、リビングに鳴り響く。
リビングには私一人。ソファに座って、電気もつけずに本を読んでいた。半世紀前に流行った「ライトノベル」と呼ばれる小説の一つ。最近になってまたこれが注目されるようになってきて、タブレット端末での読書が主流になりつつあった現代に、本を持つ人が多くなってきた。
私は特に本にこだわりがあるわけではないが、何故かいつも買うのは、「データの本」じゃなくて「実物の本」だった。正直タブレットの需要が高まって、町の本屋さんが次々に閉店に追い込まれる中、実物を手に入れられるのは大きな本屋か、通信販売か、どっちかとなってしまった。それでも、何故か私は実物を好む。今思うと自分でも不思議に思った。
まぁ、そんな事を考えてもきっときりがないだろう。後どうでもいいし。
他のみんなは今どうしているだろう。「みんなで遊んでくる」と「家」の深奥部へ行ったっきり帰ってこない。敷地内にいれば敵の察知システムとかあるし一応安全だけど、迷子になるという事では危険極まりないのがこの「家」だ。ミクもリンもレンも、まだここの施設の全容は半分も把握していないだろう。私だってまだ曖昧なところがあるぐらいだし。
「うぅん…」
ガチャ
でも…春休み中に起きたあの奇襲。「失礼しますよ」あれ以来私は常に警戒しながら暮らしていた。学校の先生になったのも、「…明かりも付けずに何をしt」またそれや始業式のような事が起こらないように、迅速に対処できるようにするため。奴らは8月13日までは襲撃してこないと言ってきたが、それを信じていいかどうかと「あのー…」言われれば、当然否だ。過去の奴らの手口からするに、一体どんな手を使ってくるか分からない。だから今この状況は危険と言わざるを得ないのかもしれない。
「んー…」
けどここ広いんだよな…。「聞こえてますかー…?」ある程度どこ行ったかは予測はできるけど、もう本当豪邸…いや豪邸と呼ぶにもまだ足りないかもしれない。「どうしたのですか…?」そんなこの訳のわからん屋敷で誰かを探すなんて無謀。もし襲ってきたところであの三人が応戦してくれるし、その時の音とか振動でどこにいるかは分かるから平気か…。
「うー…」
…でもそれだと遅いんだよな…。始業式の時も、学校なら大丈夫だろうという「気付かないと刺しますよ…?」安直な考えをもっていたがために、対処するのが遅れてしまった。そして結果ああなってしまったわけだ。やはりここは念には念を入れて、彼女たちを捜索して保護しよう。面倒だとか言ってられない。
「…あの」
「…うわっ!?」
突如背後から声が聞こえた。思わずソファから飛び上がる。
すぐさま後ろを振り返り、どうせミクやリンの悪戯だと思った私は、いつものように睨みを利かせてやろう…と思ったが私の予想は大きく外れていた。
「…え、何でウタがここにいるのよ。私を暗殺しに来たわけ?」
「確かに今の隙だったらあっという間に殺せましたけど、今はそういう訳にはいかないので」
背後にいたのは、ミクでもリンでもレンでも軽音部の奴らでもない、唄音ウタだった。
一瞬身構えたが、彼女の様子を見るに武器は携帯してきていないようだ。ただ話をしに来た、という感じだった。
「…何の用なの?貴方みたいな幹部様が敵陣の核にいたなんて知られたらただじゃ済まないんじゃないの?」
「私の場合はそういう事があっても平気なので」
「そう…。貴方一体どこまで偉くなってるのよ」
「多分、『あの方』の次くらいかと」
「自分で言っちゃうんだ!?」
どうやら少しの間見ない内に、組織の中でかなり偉くなっていたらしい。まぁ「第一次歌姫狩り」を生き延びてきた数少ない実力者だし、出世コースを我が手に掴むのも不思議じゃない。
…思いっきり話題を逸らされたので、もう一度聞いてみる。
「…で、一体何の用なのよ」
「…少し、警告をしに来ました」
私はその言葉に、耳を疑った。
警告…?滅多にお目にかかれないウタさんが、わざわざ敵陣に押し入って警告しに来る?これは今までにない事だった。
「…随分と親切ね。敵である私にそんな警告をしてくれるなんて」
「勘違いしないでください。第一、敵である私の言葉を信じるなんて事、貴方はしないですよね?」
「まぁ…」
言われればそうだ。敵である彼女の言葉をまんま鵜呑みにするわけがない。したくもない。彼女もそれを重々把握しているはずなのに、それでもここに来て言葉を差し出す、という事は結構重大な話なのかもしれない。という事は…まさかあの子達が拉致されたとか…?
私は目を鋭らせ、彼女を睨みつけた。しかし彼女は否定した。
「…今いない子達の事ではないです。そんな顔しないでください」
「その言葉、私が信じるとでも思ってるの?」
「信じなくとも言うつもりです。でなきゃここにはいません」
ダメ元でここに来てるってわけか…。
けれど、その言葉も、無論信じる訳がなかった。
「これまで冷静沈着で、感情にも揺らがず、まさに『暗殺者』と呼ぶに相応しいウタが、何でこんな事をしてるのか、私は不思議で不思議で仕方ないんだけれど」
「…一時の気の迷いですかね」
適当に流された…。どうやら真意は話す気は全くないようだ。…話す訳ないだろうけど。
「じゃあいいわ…。今回は特別に何も聞かないであげる。だから早くその警告とやらと話して帰って頂戴」
「そう言ってもらえると助かります」
少し彼女の表情が晴れたような気がした。暗殺者のくせに、ポーカーフェイスはまだまだなんだな…。
そう言って彼女は、ポケットから四つ折りにされた紙を取り出し、私に差し出した。開くと、その紙には、人を写したいくつかの写真が写っていた。
「…誰これ」
「我々が、あなた方と同様に警戒してる人々です」
「…は?」
「UTAU」が私達と同等に扱う人達?そんな話テトからも聞かされていないし、過去の事象を思い返すにそのような事は一度もなかった。
「私達はともかく、何であんたら武装集団がこんな一般人を警戒しなくちゃならないのよ」
「一般人であれば、警戒などしません」
「じゃあ警戒してれば?私達には何の関係もない…」
「いえあります」
私の言葉を遮り、彼女は真っ向から否定した。そして次のように続けた。
「彼らはあなた方にも危害を加えてくる可能性があります」
「……え?」
これまでおよそ半世紀にわたり「DIVA」と「UTAU」は争ってきたが、第三勢力が発生したという前例は一度もない。そもそも、起こりうるはずがない。歌を具現化し、まるでアニメや小説の中でしか起こらない事が現実で起こり、それを駆使して私達は戦っているのだから。
…でも…
「…その様子だと、信じるようですね」
「あんたらの話を信じずのほほんと暮らしてるより、信じて常に警戒しながら暮らす方が死なずに済むからね」
私はそう言って、紙を再び四つ折りにし彼女に返した。
どうせ素性を教えろと言ってもきっと「分からない」の一点張りだろう。これは私達にとって初めての事だが、「UTAU」にとっても初めての事だ。ここで無理に対策を練るより、その第三勢力が襲ってくるのを待って、その時情報収集すればいい。
とりあえず今は…
「てか立って話すのも疲れたんじゃない?そこ座っていいよー。あ、ついでにお茶淹れてくるね」
「え…?あ、あの…」
私の唐突な提案におどおどするウタ。私は彼女の背中を押してダイニングテーブルの一席に座らせた。
「お茶何がいいー?」
「あ、あの…私もう帰りt」
「確かウタって紅茶をよく飲んでたよね。砂糖は小さじ一杯ぐらいだったっけ?」
「…そうですけど…」
「すぐ淹れるからねー」
ふっふっふ…。この状況の中、敵陣に一人突っ込んで行った時点で帰らせなどしないのだよ!
「はいどうぞー」
「ど、どうも…」
紅茶を彼女に差し出し、自分も向かいに座って紅茶を置いた。
「ウタ最近どう?しばらく顔見なかったから心配してたよー」
「あ、あの…お茶淹れてもらってあれなんですが…もう帰らないと…」
「さっきかなり出世したって聞いたけど、人の上に立つっていうのは結構大変なの?」
「ま、まぁ…」
「へぇー。私さー、みんなに注目されるのは当然よくあるんだけど、人の上に立って纏めるっていうのはあまりした事ないんだよねー。ほら、そっちも知ってると思うけど『DIVA』結構増えてきたじゃん?だから必然的に一番年が上な私が何か責任者みたいな感じになっちゃってるんだよねー。だから開発チームからことごとく新人の育成を押しつけられてさー、もうずーっと一人だったのにいきなり忙しくなっちゃって大変なんだよー。もしかしたらこれが人の上に人の上に立つって事なんかもしれないけど何か違う気がするのよ。何かお母さんみたいな感じでさー、まだ19歳なのに一気に年取った思いなんだよねー。19歳とはいえまだ10代だよ?恋人も何もいない私がいきなりお母さんなんて笑っちゃうよねー。毎朝みんなの弁当作って洗濯して掃除してもうホントお母さんなんだよー。だからさー、ここに住まない?」
「住みません!」
呆気なく拒否された。
「い、一体何なんですか!さっきからずっとペラペラ…。私もう帰りm」
「紅茶美味しい?」
「…はい、とっても。…じゃなくて!」
いくら私に反抗しても、物で釣れば正直になるようだ。
「ほら、ここに住めば毎日その紅茶が飲めるんだよ?あ、そういえばウタは他の色んなお茶も前に飲んでみたいとか言ってたよね。私の手にかかれば世界各国のありとあらゆるお茶を取り寄せてくるけど、それでも住まないっていうの?」
「住みませんよ…」
「えーつまんないのー」
ここでも拒否される。しかし手はまだいくらでもある。
「ウタそういえば今何歳だっけ?」
「…貴方と同い年ですよ…。忘れたんですか?」
「あ、そうだったそうだった!ごめーんwしばらく会わないから忘れちゃってー」
「…殺しますよ?」
「や、やだなぁ。冗談に決まってるじゃないかー。ははは…」
話を逸らすため年齢を聞いたとはいえ、今の殺気はまじで殺されるかと思った。紅茶を手にとっても、震えて飲めやしなかった。
向こうはその様子を見て、呆れかえっているようだ。
「…もう…ホントにもう帰りたいんですけど…」
やばい。向こうがもう相当うんざりしてる。彼女は気が短いという事は無いが、自分にとってどうでもいいと思っている事は、本気でやりたがらず、本気で逃げ出す人。だからこそ任務を忠実に遂行する「暗殺者」に適任とは思う。
…じゃなくてどう気を引かせるかだ。色々考えるがどれも彼女に魅力のあるものとは思えない。…あれを利用するしかないか…。
「あ、そうだウタ!」
「…何ですか?」
「まだみんなに会った事ないでしょ?」
「まぁ…でも今会っても特に何も…」
「ウタ、暗殺者は何を得意とする?」
「え…えっと、人を暗殺するのが一番の仕事ですが、その他に諜報を…」
「そう!折角第三者の存在を教えに来てくれたんだからさ、こっちの情報を少し教えてあげるよー」
「…は?」
そう、彼女は暗殺者。要は自分達が知らない相手の情報を入手するのも仕事の一つ。つい最近入ってきた軽音部の情報を差し出せば、引き留めるチャンスが生まれる!
「…ちなみにそれはどんな情報ですか?」
「新しい『DIVA』のじょうほ」
「それならもう入手済みです」
「えぇ!?」
な、なんだと…もうすでに入手していたとは…!彼女は暗殺者である上に、かなりのエリートだったようだ…。
何だか負けた気分…。私は落ち込んでテーブルに突っ伏した。
「じゃあもう帰りますね」
「…うん…」
彼女は立ち上がり、玄関へと向かった。私も見送るため立ち上がる。
「紅茶、美味しかったです。また淹れてくださいね?」
「…ここに住んでくれたらな」
「何で拗ねてるんですか…」
私に背を向けながら大きくため息をつく。また呆れさせてしまったようだ。
彼女は靴を履き、ドアを開けた。外を見るとかなり暗くなっている。暗殺者の彼女にとっては何も心配することは無いが。
「では、次会う時は戦場で」
「…」
その言葉は、私の心にズキッと突き刺さった。最も、彼女に言ってほしくない言葉だった。今までの茶番だって、本当に帰らせたくなかったからああしたんだ。
もう…あんな風には…。
気付くと私の右手は、彼女の右手を掴んでいた。
「…ルカさん?」
不思議そうにこちらを見るウタ。正直自分の中でも、今彼女の手を握っている事に驚いた。けど私は自分の思うがまま、彼女の手をさらに強く握りしめた。二度と離れないほどに。
「あの…これじゃ帰れない…」
「帰らなくていい」
私はただ、俯きながら彼女の手を握る事しかできなかった。