Vocaloid of voices   作:rufus

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第二十八話 開戦

 あまりに突発的な急襲から一時間半経過しようとしている中、私達はようやく敵の正体を知る事となった。

 

「まさか…貴方達がいるとは思いませんでしたよ」

「えへへーそうでしょ?私達『レジスタンス』に入る事になったんだー!」

「まさか…こんなに早く…スコッティに会えるとは…思わなかった…」

 

 二人は元後方支援隊隊長と副隊長で、まだ「UATU」にいた頃は私の上司だった。

 他の隊長達とも仲が良かった。そして戦闘の時はとても頼りになって、隊員の危機を幾度となく救ってくれた。

 

 けれど、今や二人は私達の敵となってしまった。

 

「………戦うなら、容赦しない」

「ふふ、3対10でどうやって立ち向かおうとしてるのカナ?」

 

 現在、敵の数は減っておらず10人のまま。こちらの劣勢は今だ変わっていない。

 だが数人はある程度の傷は負っている。一方私達は二人…あれ?

 

「…今3って言いました?」

「………一人多い…」

「え?だってほら、あそこ」

 

 『シリア』の指差す先では、誰かと誰かが戦っている姿が見えた。煙ももう薄くなっており、さっきよりは鮮明に見えるようになった。

 一方は二人組で知らない顔。「レジスタンス」の人だろう。

 もう一方は…

 

「………『ミルキーウェイ』?」

「え、何で彼女がここのいるのです?」

 

 腰まである長い髪に、手には長い槍のような武器。どうして彼女がここにいるのか、健音も私も分からないが、この二点に当てはまるのは『ミルキーウェイ』しかいない。

 

「………管理室、聞こえる?」

『あ、はい、聞こえますよ』

「………何で、『ミルキーウェイ』が?」

『近くをうろついてたので』

 

 あ、そういえばさっきのレーザービームって彼女のか。

 上司の裏切りがあまりに印象強くて、援軍が来ているのをすっかり忘れていた。

 

「それ早く言ってくださいよ…」

『面白そうだったので』

「戦場でそういうのいらないですからね!?」

 

 クスクスと笑う唄音さん。随分と余裕だなぁ…。

 

 

ガキンッ!!

 

「ぐはぁっ!!」

「お、おい大丈、んぐっ…!!」

 

 敵八人に囲まれていながらも、確実に敵を倒していく『ミルキーウェイ』。すでに四人を倒している。

 

「あら…天ちゃん随分強くなったねぇ、あんなに血気盛んだったっけ?」

「随分…変わった…別人みたい…」

 

 『ミルキーウェイ』…天の川の名前を冠する彼女は戦闘時になると性格ががらりと変わる。

 

「おらおらおらぁ!!どうした!?そんなもんかぁ!?」

 

 普段は口数が少なく、感情もあまり表に出さない。常にパソコンを持ち歩き、暇を見つけるとひたすらタイピングをしている。何をしているのと聞いても「……………教える気はない」と小声で返事をする。何とも不思議な少女だ。

 何故パソコンばっかやっているインドア派の彼女が、あそこまで俊敏かつ的確な戦い方ができるのかと言われると謎である。それもこれも、きっと彼女のBSIPカード「StargazeR」のおかげだろう。

 

「があぁっ?!」

「くそ、がっ…!」

 

 『ミルキーウェイ』の猛攻撃は凄まじく、八人だった彼女の敵はたった一人となってしまった。

 しかし彼女は最後の一人と対面すると、戦う事をせず何故かこちらへ走ってきた。

 

「あれー?天ちゃんこっち来るよ?」

「何で…一人…残したのかな…」

 

 『シリア』と『アイス』の上を飛び越え、私の隣で着地した。

 

「ちょっと!いるなら連絡してくださいよ!」

「突然ウタさんから来いって言われたんだ!仕方ねぇだろ!」

 

 いるって分かってたならもっと楽にこの状況を打破できたのに…。

 しかし、今はそんな事で言い争っている場合ではない。ようやく頭数が揃ったんだ。ここからが本番といったところだろう。

 向こうは三人、こちらも三人。ようやく、戦況は五分五分と並んだ。

 ただ…気になるのは、向こうの三人目…先程『ミルキーウェイ』が戦う事を止めた相手だ。

 相手は全身を包む茶色いローブ姿で、フードを深く被った顔からは性別すら窺えない。170ある身長から男性かとは思うが、それだけで決めつけるのは安直過ぎる。

 その事について『ミルキーウェイ』に尋ねると意外な答えが返ってきた。

 

「…ローブの奴、この間逃げ出した『あいつ』だぞ」

「えっ!?それホント!?」

「………まさか…『レジスタンス』に…」

 

 先日『UTAU』から逃げ出したいざという時の「切り札」。そいつが、『ミルキーウェイ』によると今目の前にいる茶色いローブの奴で間違いないんだそう。

 先程戦わないで逃げたのはそのせいだと、『ミルキーウェイ』は言う。

 

「あれ。向こう君の存在に気付いてるみたいだよ?」

「だから…来るなと…言った…」

「どの道、彼らとは再び刀を交えるのだ。その機会が少し早まっただけ。何の問題は無かろうに」

「確かにそうだけどさぁ…」

 

 奴の声が聞こえた。確かに、あいつの声だった。私もりっちゃんも、あいつとは友達と言えるほどの仲だった。随分昔の話だけど。

 奴の剣技はとてつもない脅威だ。ついこの間の始業式での奇襲でも、奴が「DIVA」側に加戦し『ミルキーウェイ』を撃退したと報告がある。3人がかりなら何とか倒せるかもしれないが、生憎敵は私たちと同じ三人。普通なら一人に対し一人で対応しなければならない。

 他二人の実力も奴と引けを取らない。とても集中攻撃なんて無理だろう。

 一体…どうすれば…

 

「……私が奴を引き付ける」

 

 作戦を色々練っていると、『ミルキーウェイ』がそう申し出た。

 自分が『あいつ』を引き付けると言っているようだ。

 だがその言葉に私は疑惑を浮かべる。

 

「………できるの?」

「じゃあ他に誰がやるって言うんだよ。お前等二人なんて、機動力もくそもないだろ」

「う…それはそうですけど…」

 

 確かに、私達二人には機動力というものは皆無だ。どちらかというと複数人数の敵に対しての方が能力を十分に発揮できる。

 ここは『ミルキーウェイ』に『あいつ』を任せてしまおう。

 

「………じゃお願いする」

「危険と感じたらすぐに下がってくださいね?後方に衛生兵いますし」

「あぁ、分かった」

 

 役割は決まった。後は戦うだけ。

 

「どうやら…向こう…終わったみたい…」

「終わったー?もう待ちくたびれたよ…」

 

 退屈そうな敵二人。目をこすり、欠伸までして、もはや戦意も無いよう。

 しかし『あいつ』だけは違っていた。

 

「……早く消えろ」

 

 こっちに聞こえるか聞こえないかの声で呟くと、一気にこちらとの間合いを詰めてきた。

 一瞬にして『あいつ』は『ミルキーウェイ』に斬りにかかる。

 

 フードの中から見えた『あいつ』の目には、あの頃の輝きは無かった。

 

「くっ…!」

「…甘いな」

 

 見ててひやひやするが、向こうから『ミルキーウェイ』に戦いを挑んだのは好都合。

 私は私の仕事をしなくては。

 

「………貴方の相手は私よ、『シリア』」

 

 手の中に『波』を込めながら、私はかつての仲間に勝負を挑んだ。

 

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