色々ばたばたしてしまったので投稿がかなり遅れてしまいました…
まぁ遅れるのは今回に限ったことではないですが
「…本当にいいのですか?このままやらせて」
私は彼に問う。
「まぁあいつが指示したのだから、何か思惑があるんだろう…。好きにやらせとけ」
彼は真っ暗の部屋の中、そう答えた。
彼は彼女に甘い。確かに、私達の中で一番実戦経験がある。そして一番彼らの事を知っている。それ故に彼が彼女に多大な期待を持つのは必然的かもしれない。
ただ、決戦となる始業式を前に新人を実戦投下させるのは私には理解できなかった。
「…納得していないみたいだな」
不満が顔に出ていたのか、彼にそう言われた。最も、この暗い部屋で私の顔などどうやって見ているのかは、私が知る由もない。
「……彼らはまだ『カード』を上手く使いこなせていません。それなのに今巡音ルカに会わせるなど、持っても他だと思います。それに、彼らは『DIVA』がどういう者がを知りません。彼らはまだ未熟過ぎます」
「確かにそうだが…。指示したのがテトでなかったら、とっくに止めさせているよ」
♬♩♯
「貴方が初音ミクですね?」
目の前が怖くなった。今見ている景色が、私の常識の範疇を越えていた。
私は、玄関のドアを開けた途端、頭に銃を突きつけられた。この時、私は初めて死ぬと思った。恐ろしく怖かった。逃げようにも逃げられなかった。
顔に冷や汗が伝う。一瞬、恐怖のあまり涙を流したのかと思ったが、目の前には白いウエスタンハットを被った男がくっきりと見えたので、それは違うと認識した。
そして、銃か構えたカウボーイみたいな男は、私の額に銃を強く突きつけた。
「…所詮この程度なのですね、『DIVA』って」
冷たく言い放つ目の前の彼。その顔からは、私達に対する憎悪しか感じられなかった。
彼が引き金に指をかける。
その時だった。
「…………あれ?」
それは余りにも突然過ぎて、ついあっけらかんとしてしまった。
目の前にいた彼が消えたのだ。
「ぐはぁっ!!」
次に起きたのは痛々しい叫び声。それは私の足下から聞こえた。ついでに例のカウボーイが私の視界に転がってきた。顔には赤く腫れた痣を持って。
「もぉ…あんまり手間かけさせないでよねー…」
横からぬっと現れた澄まし顔のルカね……え?
今まで家の中に居た人が、ものの数秒で突如私の横に現れた。訳が分からなかった。
私の思考回路は完全にショートし、横にいるルカ姉をただ眺めている事しかできなかった。相当足が速いのか、それともこうなる事を予感して私の後ろをついていったのか。理由は定かでは無いが、間違いなく今私の左にいるのはルカ姉。幻覚でもなんでもない。
どうこう考えていると、地面に転がったカウボーイが起き上がってきた。
「…まさかこの私が落とし穴などという古典的な罠に引っかかるとは…」
…落とし穴?
「いやぁーこっちもまさか敵が引っかかるとは思わなかったよ。カウボーイさん?」
「カウボーイではないです!私には『クッキー』という二つ名があるんです!」
「…それもそれでどうかと思うけど…」
私はふと足下を見た。するとそこには落とし穴…と呼べるかどうか分からないくらい小さな穴があった。え?これに躓いたの?ダッサw
「…さり気なく笑うのやめてもらえます?」
「いやだって…ねぇ?ルカ姉」
「そうねぇ…しょうもないとしか言いようが…」
ルカ姉が言い終わらない内に、カウボーイは失意のあまり植木の茂みに体育座りしてしまった。その様子から、辺りにずーんという効果音が響き渡るのが見て取れた。
…後ろから「ミク姉みたい…」って聞こえたけど無視しとこ。
しかし、戦いは終わってなどいなかった。
「うぉらぁぁあああ!!」
頭上から聞こえる勇ましい声。どこかで聞き覚えがあった。そして何かの影に埋まる私の体。
私とルカ姉は、当然上を見上げた。するとその声の主はすぐそこにいた。
「うおぁ!?」
上から落下してきた何かを間一髪でかわす。一方ルカ姉は冷静にさっとかわした。こうして見てみると、ルカ姉ってホントに運動神経いいんだなぁ…と感心する。朝での出来事でも、あんなに瞬時に敵の懐に潜り込み、背負い投げができる人とは思わなかった。いや、それ以前に彼女の行動一つ一つに仰天させられた。銃声にもビビらずに平気な顔してるし、襲われかけた私たちをいかにも朝飯前と言わんばかりの雰囲気で敵を倒したし…。そう思えない訳がなかった。
兎にも角にも、私は上から降ってきた何かに目を向けた。何か…もとい彼は、今の衝動で地面に刺さった剣を抜き、ゆっくりと顔を上げた。
「…何ででしゃばってきたんですか?隠れて待機していろと…」
「落とし穴にはまったお前が言える事か?それ」
どこかで聞いた事のある声だった。服装もどこかで見たことがあった。懸命に思い出そうとする中、ルカ姉が先に答えを言った。
「あんたが本体ね?」
「お、よく分かってるじゃねぇか。流石巡音ルカ…と言ったところか…」
ほ…本体?ドユコトデスカ?
「ミ…ミク姉…」
その声に私は一瞬体をビクッとさせた。若干怖かったが、その声の主がリンちゃんだと分かると、私は心の中で胸を撫で下ろした。
「…い、今どうなってるの?」
今まで家の中で籠っていたリンちゃん。当然、カウボーイが落とし穴にはまったり、空から人が降ってきたりなんてことは知る由もない。
けれど正直な話…
「私だって聞きたいよ…」
あのカウボーイの事も、空から降ってきた奴の事も、私には当然分からない訳で、無論彼らがなぜここに現れたのか、なぜ銃や剣を私たちに向けるのか、分かる訳がない。
ただ、このままだと殺される。それだけは分かっていた。
今までの人生の中で、自分の生命の危機しか分からない状況に追いやられた事なんてない私には、とてつもない恐怖感があった。しかし、なぜかその中に安堵感があった。ルカ姉やリンちゃん、レンくんがいるからなのか、理由はよく分からない。けど私は気づいたら隣にいるリンちゃんの手を握っていた。
一方、私が握りしめたその手は、震えていた。
怯えた表情のリンちゃん。その顔は、普段の天真爛漫な彼女からは想像できないような表情だった。
振り返ると、レンくんも同様に怯えていた。いつも冷静なのに、今回…いや今日だけは冷静さのかけらも無かった。
「だ、大丈夫だよ!!ルカ姉が何とかして…くれる…よ…」
私も怯えた顔をしていたのか、リンちゃんが私に声をかけてくれたが、その声は今目の前にある恐怖で押しつぶされてしまった。
今の私達には、絶望の二文字しかなかった。
目の前で勇敢に立つルカ姉を除いては。
「…なんだぁ?やる気かぁ?」
「早くここから立ち去りなさい。さもなくば、貴方達の命が危うくなるわよ?」
ただ冷静に敵を挑発する。空から降ってきた方は、口調からして生意気で調子に乗りやすい性格らしい。
そしてその予想はあながち外れておらず
「…寝言は死んでから言いやがれぇ!!」
彼は剣を片手にルカ姉に斬りかかってきた。一方、それを見ても尚動じないルカ姉。
そしてルカ姉の頭上からまっすぐ振り下ろされた。私は見ていられず、その瞬間目を閉じた。
そして、辺りは白い光に包まれた。