どもRufusです
どうも『UTAU』の人たちのキャラが定まりません…
後話も進まなくて困ってます…
まぁそれが小説の醍醐味なんですけどね!
『おりゃー!』
豪快な背負い投げ。それを食らったバーチャルの敵は煙のように消える。
しかし安堵も束の間、次なる敵が彼女の背後から迫ってきた。
『ていやー!』
だが、驚く事にこれを後ろ蹴りで倒した。『敵』は地面に倒れる事無く消える。
態勢を整え、周囲の敵を警戒し始めた。そして一人が飛び出すと、彼女はそいつの顔を殴り、消す。背後からまた一人飛び出すと、華麗な裏拳を決め、消す。
「すごいなぁ…」
思わず感嘆の声が漏れた。リンちゃんは運動能力が良いと資料に書かれていたが、まさかこれほどまでとは…。ある意味、運動が出来るから彼女の性格もあんな感じなのかもしれない。
「ねぇ…あちら様は誰ですか…?」
「ミクにも分かりかねませんねぇ…」
「いやリンちゃんだって…」
お隣の二人は彼女の意外な才能に驚きを隠せないでいた。まぁ、ずっと『家』のなかでの生活だったし、知らなかったのも当然か…。
「ルカ姉…あんなの見せられたら俺、男としてのプライドが…」
「なら女として生きていけばいいじゃない」
「そういう問題じゃねぇよ!」
軽く雑談していると、いつの間にか戦闘訓練は終わっていた。見た感じ、かなりの上出来だった。彼女なら一人でもそこそこの敵なら倒せるかもしれない。
「はぁーい、んじゃぁ次はレンくんの出番ね」
「うぅ…どうか俺のメンタルが持ちますように…」
もはや神頼みのレンくん。少し憂鬱そうな雰囲気で、訓練部屋へと歩いていった。
彼の姿を見送ると、訓練終了を知らせるブザーが鳴り響いた。
♭♬♩
私は今、境地に立たされている。
「うぅ…何であの双子もどきはあんなに戦えるのぉ…」
今、私の眼下でレンくんが架空の敵を相手に肉弾戦を繰り広げている。
『くっ…うおらぁっ!』
これまた豪快な回し蹴り。そしてよろめいた敵の後頭部にかかと落としをお見舞いし、敵は跡形も無く消えた。
さっき隣で「リンに適う気がしない…」とか言ってたくせに、次々と敵を消していくその様は、とても男らしく見えた。…いやそう見えてしまった。
「「「ショタのくせに…」」」
『誰がショタだぁ!!』
そう叫びながら、彼は敵の顔面を殴り、消した。
動きは多少、リンちゃんより劣った。けど一つ一つの動きの力強さは彼の方が勝っていた。
そして、心なしか二人の動きが似ているようにも見えた。今更だが、本当に彼らは双子なんじゃないだろうか…。
それと同時に、私にはある感情が湧き上がってきた。これまで幾度となく感じた、この感情。
気付くと、私はルカ姉の腕に抱きついていた。
「…ルカ姉…。私怖い…」
「大丈夫。向こうはバーチャルだし、死ぬことは無いわよ」
「で、でも…」
「もし途中でやめたかったら、すぐやめさせるから」
そう言い、彼女は私に笑顔を見せた。それはあまりに無垢で、恐れを知らず、そして可愛かった。
どうしたら彼女のようになれるだろう。襲撃に遭ってから、そればかり考えていた。優しく強く、そして美しい彼女に、どうやったらなれるだろう。
…いやなれないかもしれない。こんな臆病な私に、果敢に敵に立ち向かうことなどできやしない。私には…何も…。
するとルカ姉が私の心理を読み取ったのか、こう言ってきた。
「貴方にしかできない事を…すればいいだけよ」
私にしか、できない事…?
突如、部屋中に騒音が鳴り響いた。訓練終了を知らせるブザーだ。
次は私の番。そう思った途端、恐ろしいほどの恐怖に襲われた。
「…ル…ルカ姉…」
「平気だって!そんな悲しい顔しないで…ね?」
すると、頭を撫でられた。そして彼女は笑顔だった。
安心した。何故か、心に余裕ができた。自然と私も笑顔になった。
私に安堵をくれる彼女。それはまるで―――
「ほい、んじゃいってらー」
そっと背中を押された。私はそのまま、部屋を後にした。
♬#♭
私は久々に「退屈」を味わった。
黙り込んで座る数人の男女(正確には女子だけ)。誰もが表情を固くし、悩んでいる…振りをしていた。
そして部屋の奥には、一つだけ空いている椅子があった。今日も…いないらしい。
「…いつになったら来るの…?」
「知らねえよそんなの!あいつの気まぐれだろぉ!?」
「にしても、今までこの会議に来ていないのはどうかと思いますけど…」
「なぁウタさぁ…唯一あいつとコンタクト取ってるんだから何か言ってくれねぇか?」
ウタと呼ばれた私は、ゆっくりと口を開けた。
「黙りなさい。『master』に対してそんな口を利かないでください」
「ちっ…あいっかわらず無愛想だよな、お前」
「余計なお世話です」
「とーもーかーくーぅ…これからどうするか決めよーよー…」
私とルコを止めに入ったツインドリル。確かに言ってる事は正しい。しかし、『master』がいなければ何も始まらないのだ。そうして、今までの会議は今日までに延期され続けてきたのだ。それに対し、私達はただ困惑するしかなかった。
今日の会議に出席しているのは以下の人達。
強撃隊隊長、ツインドリルこと重音テト。同じく副隊長、欲音ルコ。
前方支援隊隊長、波音リツ。同じく副隊長、『ミルキーウェイ』こと天音レイカ。
後方支援隊隊長、健音テイ。
そして暗殺隊隊長である私、唄音ウタ。
以上の面子が、円形のテーブルを囲うように座っている。
「…レイカ、お前さっきから何やってんの?」
「…………ハッキング」
「またですか…。好きですねぇ…それ…」
「そういうテイだって、毎晩ホラー映画見てるだろ?」
「…何ですかそれ。私が貞子だって言いたいんですか?」
「え、違うの?」
「私の名前は『貞子』って書いて『ていこ』って読むんです!何度言ったら分かるんですかぁ…」
いつものように雑談が始まった。いつもしゃべって終わってしまうこの会議。5ヶ月ぶりに行ったが、結局いつもと同じようだ。
…と思っていたが、今回は違っていた。
見かねたテトが椅子から立ち、手を叩いて二人を黙らせた。
「はい雑談終わり!レイカちゃんもパソコンしまって!会議始めるよ!」
今日は異常に彼女が張り切っていた。いつもならすぐさまテーブルに突っ伏して寝てるのに、今日だけは異様だった。その様子を見たルコがこう言った。
「…お前どうしたんだ?フランスパン食べ損ねたか…?」
「今日の朝ちゃんと食べましたぁー!」
「…何か悪いものでも食べたのか?」
「食ってたら腹痛でここにいないし!」
周りのテンションは冷め切っている中、彼女は完全にアウェイだった。それでも、彼女はもがく。
「んじゃ今日の議題!レイカちゃん言って!」
「…………始業式……?」
「そう!そん時誰が行くのか。これが今日の議題!さぁ!意見ある人は挙手!」
彼女がこれほどまでに張り切っている理由は二つ。一つは、久々の戦闘になる事。もう一つは部下が増えた事。
今から数年前の大規模な戦闘により、その数を減らしてしまった『UTAU』。『DIVA』をほぼ壊滅状態にしたのはよかったが、私達の人数を減らされるのは痛手だった。おまけにその時の唯一の生き残りとされる巡音ルカが、今となって強大な敵となっている。また『DIVA』上層部は数年ぶりに『DIVA』の数を増やした。今も増やそうと目論んでいるだろう。その為、『UTAU』でも人手の追加は急がれるものとなった。
そして人数が増えつつある今、今度は新人の育成に力を注ぐという方向に変わった。今度の始業式の襲撃も、新人を中心としたメンバーで構成するとの事。
で、今それを決めようとしているのだ。
数秒の沈黙の中、欲音が手を挙げる。
「はーい。俺は『悪夢』と『クッキー』でいいと思いまーす」
「あの二人ですか…?まだ弱くないですか?」
「…あいつら雑魚…」
『悪夢』と『クッキー』。当然、彼らも新人の内の二人である。
それぞれ所属する部隊は違うが、性格と能力その他諸々を考えた結果、この二人がペアを組むという事になった。先日、そこにいる重音テトの指示により、
恐らく欲音は、そういう報告を受けたのにも関わらず、今のような主張をしたのだろう。相変わらず、ドSな奴だ。
「その意見には賛成します」
そう言った私もドSなのだろうけど。
私が言葉を放った途端、次々に皆が黙り込んだ。先ほどの口論が嘘だったように。
私は、この組織の中だと発言力を持っている。唯一『master』と対談が許されているのもあるが、それ以前に私は、先ほど言った数年前の大規模な戦闘に参加した事があった。発言力があるのは、その為であった。
あの戦闘に参加しているのは、今の『UTAU』の中で重音テトと私だけである。だが重音テトが後輩からなめられてるのは、彼女の性格故かも知れない。
その様子をまじまじと見たテトは多数決を求めた。
「…いいと思います」
「…賛成…」
「……………賛成…………」
全員の口から賛成という言葉が出され、結果欲音の意見は採用された。
「んじゃ、当日は二人が行くって事でー。会議終わり!」
こうして今回の会議は、初めて「会議」して終わった。
その後、新人二人では心細いので天音と欲音を連れて行くと、テトから聞かされた。
♪♩♬
イメージがそのまま現実のものになる。
そんな夢の話が、今目の前で起こったらあなたはどうする?
私は…
「なんじゃこりゃ…」
小声で心底驚いた。
恐怖で震えていたこの戦闘演習。それが今終わった。
敵すべて倒して。
『ど…どういう事よ…。BSIPカード装備してないのに…具現化…?』
上にいる三人は、目を点にしてこちらを見ている。
『ど、どういう事よ!説明しなさい!』
ルカ姉が近くにいた研究員に怒鳴っている。そのせいで耳が少し痛くなった。
とりあえず戻ろ…。
どうやら先ほどの具現化はエラーなんかではなかったらしい。
研究チーム側の主張だと、彼女は身体能力が低く、武器というものに対して恐怖心を持っているため、『ヘッドホン』にある装備を加えた。
それは、何かをイメージしながら歌うと、それが現実になるというもの。
私はそれを知らないで、たまたまあそこでやって、たまたま演習をクリアした…というわけである。
しかし、この装備に対しルカ姉が猛反対。ルカ姉はその装備のせいで脳への負担が私達より大きくなっているし、万が一テレビ出演とかでそういう出来事があったらとんでもない事になる、と。
この装備は出力のONOFFはできるのだが、脳への負担が大きいのは事実だった。
通常、SIPカードやBSIPカードを使う場合、『ヘッドホン』から脳の各部位へ電磁波が送られる。そしてその電磁波で脳を刺激する事で、ダンスや歌唱を自動化…というか『ヘッドホン』が使用者の体を操っている、と言った方が正しい。
イメージを具現化する場合は、思考する部位、前頭葉と交信をする。これは脳から放たれる微弱な電磁波をキャッチしたり、逆に送ったりして成り立っている。だがそれ以上詳しい事は言えないらしい。
そしてこれらをする際、必ず脳への負担が伴う。それが積もると、何らかの障害を起こす。
で、その装備をしていると、通常より多く脳への負担がかかるので、それに対してルカ姉は怒っていたわけだ。
「説明聞くのだーるーいー…」
「初めてだな…リンと同じ意見を持つのは…」
「…疲れた…」
机に突っ伏す私達。さっきの演習の疲れが先ほどの呪文のような説明でどっと出た。挙句の果て、ホワイトボードの前では、未だに長々と説明を続けている研究員がいる。
「つまり…この装備はこういう意図で作りだされ…」
「もぉいいから!事情は分かったから!装備の機能をOFFにしときゃいいんでしょ!?」
「その通りだ。常日頃そうすれば、生涯『ヘッドホン』をしていても、脳に障害は出ない」
「分かり易くそう言いなさいよ…タクちゃん…」
「ちゃん付けはやめたまえ、巡音ルカ。私はあくまで男だ。名前にちゃんを付けるのは男としt…」
「あーはいもういいから黙ってて」
流石のルカ姉も完全に呆れかえっている様子。なんなの、この時原拓斗って人…。
目の前で堂々と立っているこの男。名前は時原拓斗といい、弱冠27歳で『DIVA』及びVOCALOIDの研究チームのリーダー。そんなのありえないと聞いた時には思ったが、彼の口調を知った時、普通に納得した。
同じく突っ伏したまま、ルカ姉がこう言う。
「で?この子達のデビューはいつにすんのさ?てか曲の具現化変換も進んでるんでしょーね?」
「大丈夫だ、問題ない」
「…本音で言ってるのかボケて言ってるのか分からないわね…」
確かに真顔で言われたら見分けがつかない…。
そしてそんな彼から驚愕の一言が。
「あぁ…一つ言い忘れていた…。明日、新しい子が来るから宜しくな」
「「「「……えぇ!?」」」」