私の日常は
本当に一瞬で終わりを告げた
そしてオークの苗床として
廃村になって久しい
“故郷ではらまされた”
何日?
何カ月?
何年?
もぅ、わからない
強制的に“何かの肉団子”を食べさせられ
毎日
毎日
毎日
犯された
そんな中でも
生きて
生きて
復讐してやる
復讐してやる
そう、心に決めていた
でも
遂にオークの子供を妊娠してしまった
いやだ・・・
このまま出産してしまえば
“死んでしまう”
嫌だ
死にたくない
死にたくない
▽
大分お腹が大きくなって来た
もう直ぐ
産まれてしまうだろう
そんな矢先
オーク達の絶叫が響き渡る
え?
こんな
こんなタイミングで助け?
決めた
このノロマな救助者も
殺そう
なんでこんなにも遅いのか
なんで?なんで?なんで?
▽
死にたくない
お腹の中が動き出している
死にたくない
もぞもぞうごいている
死にたくない
『シニタクナイ』
▽
『激痛に耐えても生きたいか?』
そう、聞かれた
答えは決まっている
復讐の為にっ!!
『死にたくないっ!!』
▽
『なら、“耐えろよ?”』
▽
その男は私の中に腕を突っ込み、
腹の中を動かしだした
勿論激痛
表現できない声で喚き散らした
枯れた筈の涙も
声も
ぐぃ
男の腕が私の口にかぶさる
『ここからが一番きつい、
“自身の歯を砕きたくなければ”
俺の腕を噛んでいろ、
“コイツを殺して
引きずり出すんだからな”』
その瞬間
ぽん
そして
身体をそのまま引き延ばすような
ねじ切るような
もぅ
痛み以外
感じ取れなくなった
▽
『レト、
高速治療の効果は?』
“正常に機能しました、
損傷部位ならび
妊娠によって変形した身体パーツは
全て
〔妊娠以前の処女〕に、
完全修復されました”
『・・・普通に、
完全修復だけでいいからな?』
“・・・情報、更新しました”
▽
ふと
目を開けた
『・・・。』
あの痛みは何だったのだろう?
おもむろにお腹へ視線を移す
『・・・え?
膨らんでない?』
理解できなかった
オークの出産に耐えられる生き物は
事実上あり得ないから
『ない・・・
膨らんでない・・・
痛くない・・・。』
立とうにも
『・・・だめ。』
足腰に力が入らない
逃げられない
なんで
こんな事に
オークさえ居なければ・・・
突如として
雷鳴が響き渡る
『っ!?』
その方角を見ると
『槍?』
一本の槍が地面に突き刺さっていた
『この臭いっ!?』
オークが焼け焦げる臭いだ
『この槍が?』
空には暗雲が漂い
また、雷鳴が響き渡る
『・・・まもって、
くれてるの?』
気を許した瞬間
涙が溢れ出した
『・・・っ、
い・・てる
わ・・・し、
いき、てる。』
『あぁ、
生きてる、
ほれ、薬草と、
ハーブスープだ、
レトに聞いて
お前さんが“エルフ”だとは
わかってるが、
先ずは、
なにか口にしろ。』
暖かいスープは
エルフの里で良く寒い時に
お母さんが作ってくれた
香辛料の効いた
ハーブスープだ
『・・・っぐ、
おがぁざん゛・・・
おがぁざん゛っ!!』
『辛いなら、
泣け、
泣いて、それから
次を考えろ、
今は、
生きてる事を噛み締めろ。』
こうして
私は
異世界人に助けられた
回りの惨状に“目もくれずに”
▽
『寝た、か。』
“周囲200km圏内に、
敵対生物の反応ありません”
『そうか、
俺もひと眠りするか。』
▽
そう言って
直ぐに眠ってしまった
私は
彼が寝ている以上
なにか出来る事は無い
万が一彼が襲われるような事が在れば
一時的に肉体を動かし
対処出来るだろう
でも
それは一番望まない
それは
“敵味方問わず皆殺しにしてしまうからだ”
▽
『・・・うぅん。』
どれだけ寝たのだろうか?
すぅ
すぅ
静かな寝息が聞こえる
『・・・コイツが。』
私を助け・・・ちがう
なんで?こんなに遅かったの?
『なんで?
なんでこんなに遅くなってから
助けに来たのよっ!?』
首を絞めようと手を伸ばした瞬間
『こんな美人に殺されるか
儚い人生だったな。』
起きていた
『・・・怒らないの?』
正直、身体は動かせても
魔法一つ撃てるほど魔力は回復していない
『いや、
推測だが、
俺を救助隊と
勘違いしてるんじゃないのかって。』
え?違うの?
『生憎、
俺はこの川の中流付近に
“落っこちて来たんだ”
行く当てが無いから、
川を下りつつ、
ギルド系統に
この
“部位を納品しに行く途中だったんだ”』
『ご、ごめんなさい。』
人間に謝るのは癪だけど、
エルフの掟にも反する事だわ
『って、
この川の中流?
エルフでも、
A級以上のギルドランカーじゃないと
帰って来れない、
“死の森”から?』
『え゛っ!?
やっぱヤバかったのかあの辺。』
『そりゃそうよ、
A級の初心者殺しの代名詞の森よ?
最低でも、
S級一人と、
A級複数人での
パーティーを組んで行く物なの、
よく生きてたわね?』
(おい、レト)
“・・・”
『ちっ、
都合のいい時だけだんまりか。』
『誰がよ?』
『あ?
あぁ、俺の左目は
補助を主目的の“妖精”が
住んでるんだよ、
レトって言ってな、
コイツのおかげで
生きているようなもんだ。』
『へぇ~
エルフでも妖精と会話なり、
協力関係なんて、
なかなか出来ないのに、
変わり者の妖精なのか、
あんたになにか
引き寄せる
なにかがあるようにも・・・
見えないんだけど?』
(あちゃぁ、
妖精もレア物だったか
まぁ、それで通して行くしかないか)
『それはそうと、
タオル一枚じゃ色々
眼福なんだけど、
“そこら辺の死体から”
衣服を拝借して
洗って来たから、
何か着てくれないか?』
『・・・変態。』
デスヨネー
▽
頬に綺麗な紅葉を咲かせつつ
『あ、
改めて状況が理解出来てきたわ。』
あちこちにこびりついた大量の血痕に
見た事が無い“木属性魔法”で
絞め殺されているオークやら
なにコレ?
ぎちぎちと、
ノコギリが二本動いてるんだけど?
『みんな、
殺しちゃったのね?』
『あぁ、
目に入った奴らは
片っ端からな。』
『そぅ、なんだ。』
それじゃぁ
私の覚悟って・・・
『ま、
そこに“生け捕りにしたオーク”が
一匹いるんだが、
必要ないんなら
今すぐ殺すけど?』
この人間
いま、なんていったの?
『必要か?』
僅かに回復した魔力じゃ
大した魔法は撃てないけど
『必要よ。』
私達のエルフの里で
一番最初に教わる魔法
『古より在りしわが友よ
(いにしえ)
その力を
今ここに具現し
かの者を
“刻みたまえ”』
『ウィンドスラッシャーっ!!』
拘束されていた
“何かの糸ごと”
オークを切り裂いた
『へ~
それが詠唱魔法なんだ。』
『・・・。』
そのまま倒れる彼女を抱きかかえる。
『無茶をするねぇ。』
『復讐してやるって、
決めてたから。』
『そか。』
▽
廃屋の中に
湯気が漂う
『あんたさ?』
『ん~?』
俺は外で薪をくべている
『これからどうするの?』
『いや、そっちこそ。』
『私?
私は~・・・。』
そうだ、
周辺のオークも
コイツが殺してしまっていた
そこらじゅうに
死体の山が
見える範囲に延々と
『あんたはどうなのよ?』
あれ?
なんで返事がないのよ?
『まだ、なんにも。』
『そ、そう、なんだ。』
この2、3日、
衣服は死体の物を洗って使っているけど
ゴハンを、毎食作ってくれている
『その部位、
納品したら?』
『したら~・・・
まぁ、飯かな?』
『ねぇ?』
『ん~?』
『一緒に行って良い?』
あ
まただ
『まぁ、
いいよ。』
『なによ?
私の裸見た癖に。』
『タオル越しの
スタイルだけな?』
そう、コイツ
本気で見ようとはしなかった
そんなに魅力が無いのだろうか?
いや、エルフの里1、2を争う程に
美しいともいわれたお母さんの娘だもん
そんな事、絶対ない
『ねぇ?』
『なんだ?
程々にしないと
のぼせるぞ~?』
そ、それは不味いわね
『ゴハン食べながら話しましょ?』
『へ~い。』
▽
まだ使える食器を洗って
すくうスープに
小麦粉のお団子
野草の湯通しサラダ
素揚げの野草
『・・・どうなってんのよ。』
わ、私が作るより美味しい
『んな事言ってもなぁ~。』
“そこまでエルフに合わせて
食べなくても”
『あ、ばか、言うなよ。』
『え?』
合わせてくれていた?
レトは、大事な事を、
結構簡単にポロっと言ってしまうそうだ
『無理してんの?』
『いんや、
お前さんが見てない所で、
焼肉を少し食べてるぐらいだよ。』
そう、コイツは人間
私はエルフ
そもそもの食生活が違うのに
『別にいいわよ、食べても。』
正直、そこまでされてて
レトが言うまで、
気づけなかった自分を恥じたい
『そか、
まぁ、それでも極力は
見えない所で食べるよ。』
そう言って、スープを飲み干す。
『人間でも、
スープは美味しいって思うの?』
『ん~?
さぁ?俺は好きな味だからなぁ、
気にならんのだが?』
『すっ!?』
『ん?スープの味だろ?』
『そっ!?そそそうよねっ!?』
ちょっ!?
なんでそんなに淡々と言えるのよっ!?
▽
食事も終え、
大きな墓標に向かって
コイツは、見た事が無い
“十字を切る”
『これか?
まぁ、
とある宗教の真似だよ、
せめて
“神様の保護の元
少しでも幸せな
来世があらん事を”ってな。』
『・・・私も?』
『真似だけなら
いいんじゃないか?
もう一つあるけど、
これは“やたら長い”から、
あんまやらんのよ。』
長い?
『この十字を切るのは、
“キリスト教”
手を合わせ
合掌しながら、
お経・真言などを言うのが、
大まかに言って“仏教”
詳しくは知らないから、
真似事だけな?』
『そ、
なら、こっちで。』
そう言って十字を切る
『・・・嫌に似合うな、それ。』
『どう言う意味よ?』
『いや、綺麗だなぁ~って。』
▽
つい、引っ叩いてしまう
『お~、いって~。』
『もう、ばか。』
一応の目的は決まった
一番近い町に行き、
部位を納品
少量の金銭を得よう
それで
また考えようって事になった。
小話
『・・・どうした?』
いや、止まんなくて
『てか、
また時間。』
わかってるって
『まったく。』