問 弦楽器であるバイオリンの音をより低い音にしたい。どのような手段を取ればいいか。2つ答えよ。
常森 道夫の答え
「弦を太くする、弦を緩める」
先生のコメント
「正解です、音に関する問題は基礎を覚えれば簡単なので落とさないようにしましょう」
永井 雄作の答え
「練習する、上手い人に引いてもらう」
先生のコメント
「復習するか先生に教えてもらいましょう」
相澤 鈴の答え
「ヴィオラにする、チェロにする」
先生のコメント
「チューニングを狂わせてしまってごめんなさい」
翌日、加賀は朝のホームルーム直後にEクラスに宣戦布告に行った。長月高校では試召戦争を起こしやすくするために、典型的なタイプでの試召戦争は拒否できず、事前の補充試験の時間も認められないことが校則に明記されている。今回挑んだのは現代文、古文、数学I IIⅢ、数学ABC、英語表現、コミュニケーション英語、地歴、公民、理科2科目の計10科目での戦争だ。受験を意識して、なおかつ志望校や文理で格差が出にくいタイプの科目選択であり、典型試召戦争として認められている。これに加えて10科目の合計点数を用いた総合科目も利用できる。
無論Eクラスは試召戦争の準備などはしていない。突如現れた学年トップクラスの人物の宣戦布告にEクラスは一時恐慌状態に陥った。その後Fクラスの宣戦布告である事に気付くと騒ぎは収まったものの更なる混乱と警戒を招いた。
加賀は昼休みに皆を集めブリーフィングを開いた。
「今回は純Fクラスの奴に経験を積ませるための戦争だ。召喚獣の操作に慣れることと、生き延びることを重視してくれ」
純Fクラスの永井が質問する。
「作戦はどんな感じなんだ?何をすればいい?」
その質問に対し、加賀が待ってましたと言わんばかりに答える。
「無い、山内が引きこもってお前らが適当に戦っているところに強い奴が得意科目で潰しにかかる、それだけ。負けないように調整するから頑張って操作に慣れてくれ」
皆の肩の力が抜けたようだ。というか拍子抜けしているようにも見える。実際なんてことのない力押しなのだから。
「DクラスCクラスまでは力押しでいけるだろうが、それ以上はお前らが戦線を支えないとどうしようもない。格上相手に時間稼ぎできるようになってくれ」
責任を持たせる事も忘れない。
「ちなみに教室交換はEクラスの次はAクラスだ。その間教室交換は無し、Aクラスに速攻を挑まれると間違いなく負けるからな」
試召戦争は手が空いてる教員が召喚フィールドを展開、教員に応じた科目で召喚獣を召喚し、一科目でも召喚獣の点数がダメージにより0点になった場合、戦死としてその戦争に復帰できず、戦争中休みなく補修をし続ける、ということになっている。これにより徐々に守りが薄くなり、やがてクラス代表が戦わざるを得なくなるわけだ。そして今回の試召戦争は教室が廊下を挟んで向かい合っている。召喚フィールドの仕様上、逃げづらく、科目を変えにくいことになるので今回はかなり早く決着がつくだろう。
「Fクラス永井が、Eクラス遠峯に現代文で勝負を挑む!」
現代文 Fクラス 永井 雄作 47点
現代文 Fクラス 梶原 樹 60点
現代文 Fクラス 笹原 幸一 51点
現代文 Fクラス 秋道 守 78点
現代文 Fクラス 柏 倫太郎 58点
現代文 Fクラス 空白 VS
現代文 Eクラス 遠峯 秋連 73点
現代文 Eクラス 佐々木 凛 98点
現代文 Eクラス 進藤 優一 65点
現代文 Eクラス 坂中 春 111点
召喚フィールド内の人口密度が高いため、それぞれの戦いが同一扱いされ、合戦状態になっている。
「確かにこの状態でAクラスと戦うのは嫌だな。一度崩れたら立て直せない」
人が殆どいない教室で常森が納得したように口にする。
「Eクラスくらいなら崩れても力押しでいけるでしょうけどね」
中峰が他人事のように言う。する事がなくて暇そうにしている。
昨日補充試験を受けたのは6人だけで、2科目以上受けたのは加賀、常森、中峰だけだ。他の0点組は補充試験を今受けている。手が空いている常森と中峰は現在、山内の護衛についていて動けない。
よって、この銀の弾丸的な作戦は人手が足りずに失敗...したわけではなかった。
加賀、常森、中峰が3人で計20科目受けており、交代で遊撃するだけでも十分に戦線を維持できること。加賀を警戒してEクラスが戦力を小出しにしていること、昨日補充試験を受けた酒井と神原の得意科目の地歴がFクラスに食い込むように召喚フィールドとして展開されていること。これらが相まってEクラスと十分渡り合えている。
「流石に6科目受けると疲れる、今日休んでてもいい?」
後ろで堂々と寝ている山内の方を向いて呟くように言った。
「いいんじゃないか、多分神原だけで勝てると思う」
Fクラス前では神原が奇声を上げながら戦っている。
「Fクラス神原がぁ!そこにいるEクラス全員に地歴で挑むぅ!」
地歴 Fクラス 神原 貴一 452点
地歴 Fクラス 酒井 礼央 620点
地歴 Fクラス 空白VS
地歴 Eクラス 立川 要 64点
地歴 Eクラス 布施 蓮一 83点
地歴 Eクラス 羽田 翔 109点
地歴 Eクラス 月村 加奈子 88点
地歴 Eクラス 西川 淳 49点
「あああぁぁああああぁぁ!!!」
神原の召喚獣は持っているハルバードでEクラスの召喚獣達を一瞬で蹴散らした。
「足りんんんん!!!」
Fクラスの教室からそれを見ていた常森がつぶやく。
「あいつAクラス中位くらいの学力あるんだよな、戦いたいから誘いに乗っただけで。」
神原は実際世界史以外の科目でも十分な学力を有していて、10科目全部で200点越えが出来ている。日本史以外Eクラス下位並みの酒井とは大きく違う。ただし酒井は地歴で学年トップではあるが。今回はとにかく戦いたい神原を前に出して、酒井は抜かれないよう防衛に勤めている。
「あいつ戦うことならなんでも好きってことは除けば優等生なんだろうがな」
「その点は俺みたいなもんさ」
遊撃から戻ってきた加賀が答えるように言う。
「Eクラス代表は教室の奥で総合科目で待ち構えてる。純Fクラスの奴が減って来たし、そろそろ終わらせに行くぞ、露払い頼む」
「一応了解」
加賀と常森が戦場へと赴く。現在展開されている地歴も現代文も補充済みであるし、7教科受けているので守りに使われている総合科目でも十分に戦える。相手が一瞬逡巡した隙に戦いの隙間をするりと抜ける事で戦闘なしにEクラスまでたどり着いた。加賀は名乗りをあげる。
「Fクラス、加賀恭介!葉隠先生、総合科目のフィールドの展開お願いします!」
学年主任の葉隠先生がフィールドを展開する。総合科目は召喚獣の身体能力は最高点を取った科目の点数を参照し、耐久は合計点を参照している。よって時間稼ぎには有用だろう。耐久が10倍相当で戦えるのだから。同じ程度の実力ならば、と前提が着くが。加賀の数学ABC588点に対し、たかだか1100点程度の耐久は脆すぎる。急所を突けば一撃で点数を削り切れ、1教科で戦っているのと変わりない。15名ほどいようが混乱状態では訓練用の的と何も変わらない。そして数分の内にEクラス代表の護衛は無傷で全て取り除かれた。どうやら露払いはいらなかったようだ。
「Fクラス加賀恭介が、Eクラス代表柿崎司に総合科目で勝負を挑みます!」
総合科目 Fクラス 加賀 恭介 2024点
総合科目 Fクラス 空白VS
総合科目 Eクラス 柿崎 司 1189点
柿崎の召喚獣は召喚されてすぐに臨戦態勢を取ったが、反応する前に加賀の召喚獣のブロードソードが柿崎の召喚獣の首に吸い込まれるように落とされ、そのまま戦死が告げられる。15体程度の的は加賀の訓練にしかならなかったようだ。倫理コードが無ければ首が落ちていただろう。
「さて、補充試験のスケジュールを組まないとな」
戦後の会談に無関心そうに加賀はそう呟いた。