ラブライブ!サンシャイン!!IF:黒澤家の兄がいた物語 作:高月 弾
地獄のような社会をなんとか生き抜いています。
仕事を始めて時間がなくなって、趣味が消えていくいまの状況に恐怖を覚えて意地で作りました。
なんとか続くようにがんばっていきます。
「スーーーッ…フゥーーーッ。」
大きく深呼吸をし、息を止める。
全身の力をぬき、リラックスした状態である一点のみを見つめる。
右手に持つ力を緩めて縛っていたものを解き放つ。
するとそれはまっすぐに目の前の一点を目指して突き進んで行く。
数秒もしないうちにそれは、清々しいほどに綺麗な音を立てて的を射貫く。
的の真ん中に深々と矢が突き刺さるそれを琥珀は感情的にはならず静かに見据える。
的から視線をはずし、道場の方へと向き直り見惚れるほど綺麗な佇まいでその場に正座する。
その世界はまるで琥珀以外が消え去ってしまったかのごとく静かな、そして落ち着いた場所であった。
琥珀は再び立ち上がると先程と全く同じことを繰り返す。
足を整え、的を見据え、弓と矢を掲げ、静かにゆっくりとそれを引き絞る。
しかしそこに力みなどはなく、驚くほどに自然なその解に見ているものは目を奪われる。
そして静かな世界に響く矢が的を射貫く乾いた音。
しかし、その音はあまりにも心地よかった。
そして再び正座をする。
大きく深呼吸をしてから立ち上がると、琥珀は弓を片付け始める。
弓をしまっている途中で琥珀は入り口に誰かがいることに気がつく。
「ルビィか。見てたのかい?」
覗きがばれてしまったルビィは小さな悲鳴を上げるがすぐに扉を開けて道場の中へと入ってくる。
「うん。お兄ちゃんが弓道場に居るって言ってたから、見たくなっちゃって。」
そう言いながら、ルビィは目をキラキラと光らせる。
まるで初めておもちゃをもらった子供のようだ。
「それなら弓道場まで入ってくればよかったのに。」
「う、うゆ。でも、お兄ちゃんの邪魔をしたくなかったんだよ。」
琥珀がそう言うとルビィは先程のようすから一転し、おどおどと答える。
ルビィは恥ずかしがり屋であり、男性恐怖症を持っている。
そのため普段から積極的に話すことができないのである。
男性恐怖症は恥ずかしがり屋も相まって、男性とは父親と琥珀以外とはほとんど会話することすらできない。
琥珀はそんなルビィの様子を見て小さく息をつく。
そしてルビィのもとまで歩いていくと、安心させるように優しく頭を撫でる。
「ありがとう。ルビィ。」
ルビィは一瞬ビクッとするもすぐに柔らかい笑みを見せると満足そうに小さくうなずいた。
「どうする?もう少し弓を続けようか?」
「ううん、大丈夫だよ。もう十分見れたから。」
「そうか。」
短く会話を交わすと、弓道着を着たまま自分の部屋へと戻っていった。
ルビィは琥珀が部屋に戻ったあとも少しだけ弓道場の方を見つめていた。
そして小さなため息をつくと、夜風に消えてしまいそうなほど小さな声で呟く。
「…かっこよかったなぁ…。」
その後、琥珀は自室で着替えをすませるとキッチンへと向かっていった。
「ただいまですわ。」
ダイヤが帰ってくる。
するとすぐに「お帰り。お姉ちゃん!」と元気な声が返ってくる。
ダイヤはその声の主をすぐに理解して笑みをこぼす。
「ただいまですわ、ルビィ。」
そう言いながらルビィのそばへと歩いていく。
ルビィはダイヤのところへと駆け寄るとすぐに今日あったことを嬉しそうにダイヤに話し始める。
ダイヤはそれをずっと頷きながら聞き入っていた。
そんな時間が流れていき、気づけば10分はたっていた。
そろそろ着替え等をすませたいと、ダイヤはルビィに一言断ってから自室へと向かっていく。
自室で鞄を机においた瞬間ダイヤの口からは大きなため息がこぼれ落ちる。
「…高海さんは諦めてくれたかしら?いいえ、あの様子だ当分は諦めなさそうですわね…。」
そう言いながらそばの壁に張られてあるポスターに目を向ける。
そこにはダイヤが尊敬してやまないスクールアイドル【μ's】の姿があった。
そして、そのとなりには小さな写真がひとつだけ添えられていた。
三人の女性が色鮮やかな衣装を身にまとっている姿だった。
その三人の姿は彼女がよくしっている姿だった。
(マリさん…果南さん…。)
そう心の中で呟くもすぐさま顔を左右に降り、邪念を振り払うかのように振る舞う。
一度目を閉じて、再び開いたその瞳には迷いなど微塵も感じられなかった。
着替えをすませるとダイヤはリビングへと降りていく。
そろそろ食事の時間だ。
黒澤一家は本日の当番である琥珀の料理を家族一団で食べた。
「前回も中華ではありませんでしたか?お兄様。」
「あれ?あぁ、確かにそういえばそうだったかもしれない…ごめんなさい。」
「うゆ!?ルビィは中華も好きだから全然大丈夫だよ!」
「味が濃い上に何度も同じようなものは飽きる。気を付けろ琥珀。」
「…ごめんなさい。」
「いいじゃないたまには♪」
そんな会話を交わしながら食事は進んでいく。
何気ない会話が続いていき、やがて終わりを向かえる。
みんなが食器を片付けているとき、一人だけまだ調理場に立っていた。
「お兄様?何をなされているのですか?」
声をかけられた琥珀は一瞬だけ振り替えるもすぐに手元へと視線を戻す。
「お菓子を久しぶりに作ってるんだ。今度手伝いにいくついでに差し入れにでもと思って。」
「いい考えですわね。何を作ってらっしゃるいますの?」
「シュークリーム。初めて作るからうまくいくかはわからないけど。」
「それは楽しみですわね。期待しておきますわ。」
さらっと自分の分も約束に取り付けるダイヤ。
意外とこういうところはちゃっかりしているのだ。
「まぁはじめからそのつもりだよ。姉さん。でも失敗しても文句は受け付けないよ。」
「ふふっ、そのときは抹茶のお菓子をいただきますわよ。」
「容赦は?」
そんな琥珀の嘆きもむなしく、ダイヤは不自然なほど優しい笑みを浮かべながら自分の部屋へと戻っていった。
そんなダイヤの様子にため息をつきながらもどこか心地よいような笑みを浮かべながら自分の手元に集中し始めた。
そんなこんなで1日が終わっていき、数日が立ち、やがて日曜日へと変わっていった。
「か~なんちゃ~ん!!!」
声に張りのある元気な叫びがダイビングショップに向けて放たれる。
その声に気がついて果南は思わず苦笑いを浮かべる。
「ちょっと、千歌~?もう少しボリューム下げなよ。他のお客さんもいるんだからさぁ。」
「え?いるの?」
千歌からの恐ろしく鋭い切り返し、しかし今日はその切り返しに負けじと鋭いカウンターを仕掛ける。
「いるから言ってるんだよ!ほら、今日はグループで来てくださってるから、あんまり邪魔にならないようにね。」
そう言いながら視線を奥に向ける。
すると奥では1グループに対して誰かがダイビングの説明を行っているのが見えた。
「あれ?果南ちゃん、バイトでも雇ったの?」
店の奥にいる見慣れない人物に曜が思わず疑問口に出す。
「あれ?そういえば2人とも会うのは初めてだっけ?あの人は時々手伝いに来てくれてるボランティアの人だよ。」
そう言いながら説明している人を指差す。
そしてそのまま果南は視線をある人物に向ける。
「そういえば初めてって言葉で思い出したんだけど、君も初めてだよね?」
そう言われた綺麗な長髪の女の子が慌てて自己紹介をする。
「わ、私!桜内梨子といいます!今日はよろしくお願いします!」
と深々とお辞儀をする。
そんな様子を見た果南は軽く笑いながら話しかける。
「そんなにかしこまらなくて大丈夫だよ。せっかくダイビングするなら緊張してじゃなくて楽しんでいきなよ。」
そう言いながら千歌たちに「少し待っててね」といいながら説明をされている集団の方へと歩いていった。
「はやく来すぎちゃったね。」
「そうみたいね。」
「じゃあゲームでもやろうよ!」
「さんせ~い!!」
はやく来すぎてしまった時間を潰すために千歌たちは適当なゲームを始める。
スマホの操作が得意なわけでもない三人は割りばしや、指スマなどで遊んでいた。
しかし、それもネタがつきて飽き始めていたころ、どこからか声をかけられる。
「お待たせして申し訳ありませんでした、お客様方。」
3人は突然のことにその声の聞こえてきた方向へと振り返る。
するとそこには先ほどグループに説明を行っていた人物が立っていた。
声からも分かることであったが目で見て改めてその人物が男性であることを確認する。
「あぁ~、私たちはその…予約とかしてる訳じゃないんですけど…。」
千歌はなんとも曖昧な返答を行う。
事実千歌達のダイビングは予約を行っているわけではなく、友人である果南の好意で例外的にダイビングを行おうとしているためそれを説明していいのかを躊躇う。
「…あぁ、貴女達が松浦さんのご友人方ですね。話しは伺っていますよ。」
それを見た琥珀は事情を察したようですぐに確認をとる。
それは合っていたようで千歌達はすぐ安心したようなリアクションをとる。
すると琥珀は3人はの元を一度はなれ、数十秒後にはお盆と紙コップを持ってきて3人の前に配る。
「事情は聞いていますので大丈夫ですよ。ただのお水ですがよろしければどうぞ。」
「「「ありがとうございます!」」」
3人はそのコップを受けると中に入っている水を早速飲む。
その後琥珀の顔を見ながら千歌はこんなことを呟く。
「う~ん、貴方のことを最近どこかで見たような気がする。」
「?そんなことはないと思いますが?」
突拍子もない話しに琥珀は少し困惑しながら返答をする。
琥珀は
それは千歌は何度も果南のことを訪ねているからである。
知っているとはいえ、間近で見たわけではなく遠くから見た様子しか把握はしていない。
ましてや話したことすらない彼女と面識があるわけがなかった。
千歌を除く二人の様子を確認しても…いや、どうやら銀髪の少女の方はどこか違和感でも感じているのか千歌の言葉を聞いてから琥珀の顔を探るように確認する。
しかし、長髪の少女はあたまにはてなを浮かべた状態でそんな様子の二人を見つめる。
琥珀はそんな様子に苦笑いを浮かべるがそんな琥珀の耳元で耳障りな音が聞こえる。
かなり小さな無視が風切り音を当てながら少女に狙いを定めてその針を突き刺そうとする。
琥珀はすぐさま少女のすぐそばにいるその虫を片手でとらえる。
渡辺はいきなりすぐそばに拳を突き立てられて思わず飛び退く。
二人の少女も思わず目を見開く。
「申し訳ありませんでした。近くに蚊がいたものですから。」
そう言いながら握りしめた手を緩めて手の中を確認すると、黒いなにかを確認することができたため琥珀はティッシュペーパーを取り出して拭き取る。
その様子を見ていた千歌がいきなり声をあげる。
「あぁ~~~~~~!!!そうだよ!やっと分かった!!」
いきなりのことにその場にいる3人は驚いて千歌を見つめる。
そして千歌は琥珀を指差しながらこう言った。
「貴方!スッゴく【生徒会長】に似てるんだよ!!」
「生徒…会長?」
突然の台詞に琥珀は疑問を浮かべるが曜は納得がいったような声を漏らす。
「そうだよ!生徒会長の怖い顔の時といまそっくりだったもん!」
そう言い終わってからはっとして恐る恐る琥珀の顔へと視線を移す。
琥珀自身は彼女達の制服と千歌の口走った生徒会長と言う言葉で彼女達がいったい何者なのかをある程度把握する。
まさか、と思いながら琥珀は彼女達に話しかける。
「私は【黒澤琥珀】です。気づいてはいると思いますが、【浦の星女学園】の生徒会長【黒澤ダイヤ】の弟ですよ。」
ネームプレートを見せ、軽くお辞儀をする。
すると3人も慌ててお辞儀をする。
「生徒会長の弟ってことは、琥珀さんってもしかいて同い年!?」
「いいえ、私とダイヤお姉様は双子ですので私は3年生です。」
双子と話したことに3人の興味は一気に引き付けられる。
双子の珍しさに食いつく。
会話というよりも千歌達からの質問タイムへとなっていた。
(すごい子達だな…。)
千歌達の勢いに押されながらも質問にはしっかりと解答していく。
そんな時間は思いの外長く続いていった。
「でも、琥珀さんとダイヤさん。本当にそっくりですよね。」
梨子が学校の資料に写るダイヤと目の前の琥珀の様子を交互に見ながらそう言った。
綺麗でサラサラな黒髪、エメラルドのような深みのある碧の瞳。
そしてその言葉遣いや纏う雰囲気もダイヤに酷似していた。
どうやら琥珀曰く二人は二卵性の双子ではなく、一卵性の双子らしく、小さい頃から瓜二つだといわれて育ってきたそうだ。
そんな会話をしていたが千歌が少しだけ機嫌を悪そうに話し始める。
「あ~あ。浦の星の生徒会長がダイヤさんじゃなくて琥珀さんだったらこんなことにはならなかっただろうにな~。」
「どうして?」
千歌の言葉に思わず口調を変えてしまう。
荒くなったわけではないが普段の丁寧使いではなくなってしまう。
だが、そんな些細な違いは千歌達に気づかれることはなかった。
琥珀もその理由をわかっていたはずなのに
「だって、スクールアイドル部を作るって言ったらどんどん理由つけて作らせてくれないんだよ?あんなにキラキラしてるのになんで作らせてくれないんだよう。」
そう言いながらブーブーと文句を言い始めた。
よくもまぁ生徒会長の家族である琥珀を目の前にこれだけのことを言えるものだ。
梨子も琥珀の方を何度も見ながら千歌をなんとかなだめようとする。
そんな様子に心の中で大きなため息をつく。
ここでこの3人をしかりつければことは済むのかもしれない。
だがそれでは関係はよくならない。
少なくとも千歌達は悪気があるわけではないのがわかるからこそ琥珀は少しだけ思考を巡らせる。
そして千歌達のと接し方を決めた。
「なにもお姉さまは意地をはって貴女達の活動をし否定しているわけではないですよ。」
今まで話をダイヤに関する聞いていただけだった琥珀が突然話し始めて千歌達は視線を向ける。
「まぁ、部員の人数やらは当たり前として…それでも貴女達に強く出るのはきっと、スクールアイドルがとても簡単に出来ることじゃないとわかっているからだと思いますよ。」
「簡単に、出来ることじゃない?」
その言葉に千歌達は首をかしげる。
「スクールアイドルにはいったいどんなものが必要だと思う?」
琥珀の問いかけに3人は考え始める。
「まずは曲でしょ?歌詞でしょ?衣装でしょ?ステージでしょ?」
「あとは…練習場所とか?」
「楽器を使うなら楽器も必要かしら?それはPCでどうにかなるのだろうけれど、詳しくないからよくは分からないけれど…。」
3人は思い思いに自分の考えをあげる。
3人がある程度考えを述べた時点で琥珀も話を再開する。
「歌、ステージ、衣装、音響、装飾、練習時間、歌いながら踊るための体力、告知をするならその広告、曲の数、他にも素人では思い付かないような問題や課題、必要なものが出てくると思いますよ。」
琥珀は多くのものをあげた。
しかし、それでも琥珀の素人の目線で見た必要なものでしかない。実際はもっと多くのものが必要になる可能性も十分に考えられる。
曲ひとつに関しても作詞作曲編曲と様な様な行程がありその一つひとつに専門的な知識を必要とする。
「それだけ多くのものが必要となる世界に、どれだけの知識や常識をもって挑むつもりですか?」
「そ、それは…。」
この言葉に千歌は言いよどむ。
普通の女の子だと思っていた人たちの影の努力とその仕事量に明らかに動揺する。
それを見てもなお琥珀は話を続ける。
「スクールアイドルだけじゃない、どんなことも生半可な覚悟や思いじゃ続かないですよ。」
「思い…。」
動揺してなにも反論できないでいた千歌が少しだけ反応を見せる。
琥珀はそれに気づかずに話を続けようとするがそれを遮って大きな声が響き渡る。
「スクールアイドルが好きだって気持ちはきっとだれにも負けないよ!!」
琥珀は突然の声に目を見開いて千歌の方へと視線を送る。
その視線の先には怖くなるほどまっすぐに琥珀を見つめて視線で言葉を伝える千歌の姿があった。
【スクールアイドルが好き】
その意思がはっきりと琥珀にも伝わってくる。
怖いほどはっきりと。
その目を見た琥珀のなかでなにかが変わる。
琥珀は少し考えてから次自分の語る言葉を変えた。
「それなら、お姉さまに示してみればいいのではないですか?」
「生徒会長に?」
「示す?」
琥珀の言葉に3人は?を浮かべる。
「あぁ、確かに5人以下では部活として認められないのかもしれません。でもスクールアイドルとして曲を、ステージの上で、歌って踊れたらそれをスクールアイドルではないとお姉さまも否定できないかもしれませんよ。」
琥珀がそう言うと千歌の顔色が一気に変わる。
千歌は隣の曜と梨子と目を合わせるとすぐに琥珀の方へと向き直り元気に「やるよ!」と答えた。
琥珀はその様子を見て少しだけ微笑むがすぐにもとの引き締まった表情へと戻す。
「容易ではないですよ、曲ひとつを仕上げるのも。」
「もちろんです!」
琥珀の言葉にもう気圧されることはない。
千歌のなかでは既に自分達のやるべきことは決まっていた。
何をいってももう決意は変わらないであろうことを悟ると琥珀は優しい顔で小さなため息をつく。
そして話を切り替える。
「そういえば、皆さんはどうしてダイビングに?」
「あぁ、それは…」
と千歌は梨子のことを踏まえてここに来た理由を話し始めたが、危うく梨子の話してほしくないところまで話しそうになったり、それを防ごうとする梨子の妨害などとゴタゴタな状態で話しは進んでいった。
が、なんとかその理由を理解する。
「海の音?」
「は、はい。それを聞ければなにか変わるかなって…。」
琥珀はそれを聞いて改めて考えるが、彼女の言う【海の音】というのがなんなのか全く分からなかった。
いや、分からないと言うのは語弊がある。
正確には、【彼女の求める海の音】がなんなのかが全く分からなかった。
彼の知る海の音は恐らく彼女の求める海の音でないことは容易に想像できた。
だがそれでも、わずかな可能性に掛けて言葉を選ぶ。
「海の音…僕はこの内浦で生ま育ちましたが、僕にとっての海の音はこれですよ。」
「これ?」
梨子は琥珀の答えに疑問を浮かべて答えを聞き直す。
すると琥珀は耳に手を当てながら静かに答えた。
「静かに耳を澄ませば色々聞こえてきますよ。」
そう言われた3人は耳に手を当てて耳を澄ませる。
すると梨子の耳に入ってきたのは様々な聞きなれない音の数々だった。
波の音、風の音、水しぶきの音、水鳥の声、様々な音が梨子の耳を刺激する。
梨子はその【新たな音】に耳をすませさらに聞き入ろうとする。
「ねぇ曜ちゃんなにか聞こえる?」
「ううん、波の音くらいしか聞こえないよ。」
現実は非情であった。
普段となにも変わらないその【音】千歌と曜は分からないと疑問を声にあげ始めた。
集中しようとしていた梨子の意識はそこで現実に引き戻される。
それを琥珀も理解していたようで2人の様子を見て小さくため息をはく。
梨子が冷めた目線を千歌と曜に送るが2人が気づくようすは全くなかった。
梨子が大きなため息をつくとようやく2人が梨子の様子を確認するが時は既に遅かった。
「なにかヒントにはなりましたか?」
琥珀が梨子に問いかけたが、梨子から返ってきた言葉は残念ながら予想していたものだった。
琥珀は梨子の返答が予想通りだったことを確認すると時計を確認して3人にあることを伝える。
「それではお客様。準備が整いましたので、こちらへどうぞ。」
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「お待たせ。千歌、曜、桜内さん。」
「はい、よろしくお願いします!」
琥珀に案内されると3人は早速スーツに着替えてダイビングの準備を行う。
梨子はダイビングの経験があり道具の使い方に関しては一通りの知識を備えていた。
「琥珀は本当に来なくてもいいの?」
果南が問いかけるが琥珀は首を縦に降る。
「はい、僕は片付けられるものは片しておきます。」
「なんかごめんね、琥珀。」
「大丈夫ですよ。お気になさらないでください。」
そう言われた果南は琥珀にお礼を言うとボートにのって出発した。
ボートはある程度ショップから離れたところで停止する。
果南が指示を出すと千歌、曜、梨子の3人は自身の装備を整える。
そしてそれを確認しを得ると先には千歌と曜がボートから落ちる。
そしてそれを見た梨子が気を引き締めてから後を追うように落ちる。
【ザバン!】と音を立てて水のなかにはいるとその冷たさが身体全体を一瞬にして包み込む。
寒さなどはスーツのお陰であまり感じない。
しかしこの時期の海という先入観がそう感じさせる。
そんな不安を抱えた梨子のようすを知ってかは分からないが、千歌が彼女の手をとり「行こう!」と力強くいう。
梨子はその力強い言葉に感化され、「うん!」と同じく力強く答える。
そして、海の中へとその身体を流れ込ませる。
前書きでも述べましたが、現在非常にきついです。
なんとかがんばれる理由にするためにも小説を再開しようと思います。
気力が続く限りがんばっていきますので、もし待っている人がいたらどうか長い目で見ていただけると嬉しいです。