みんな幸せになってほしいだけの短編集   作:RoW

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ちょっと短め


仮面系男子と幼馴染ギャル

朝七時という、学生が起きてくるような時間帯。一軒家にて、テンプレな光景が繰り広げられていた。

 

「理央、起きなー」

 

しかし、テンプレとすこし異なるのは、理央と呼ばれた少年を揺り起こしているのが理央の母親ではなく、制服を着た少女である、ということだ。

 

「んん、あと五分」

 

「だーめ、もうご飯できてるから」

 

「……ん」

 

「おはよう理央」

 

「……りさぁ」

 

理央はリサと呼んだ少女に体を補佐されながら起こす。別段、理央は体が悪いわけではない。ただ理央がリサに甘えているのに加え、リサが甘やかしているのである。

 

「はい、タオルで顔拭いてシャキッとしなー」

 

「ふいて」

 

「ほら、制服出しといたよ。一人で着れる?」

 

「……むり」

 

「もー、ほらバンザーイして。スボン脱がすからお尻浮かせて」

 

「んゆ」

 

「はい、下降りるよ。朝ごはん作ったから」

 

介護士と被介護者か!と言わんばかりの甘やかしっぷり。しかしながら、リサの甘やかしはこれだけにとどまらない。

 

「食べかす付いてるよ、ほら、顔かして」

 

「んぐ」

 

「お弁当鞄に入れといたよ。忘れ物ない?」

 

当然ながらこのお弁当もリサ手作りである。

この今井リサという少女、見た目のギャルっぽさとは裏腹に圧倒的な女子力を誇り、一部界隈では良妻とまで言われるほどである。

 

「よし、ネクタイもおっけー。カッコいいよ☆理央」

 

さて、ここまで介護されまくりの梶谷理央は一体どんなダメ人間なのかというとーー

 

 

 

「教師陣からお小言はたくさん貰ったろうから、俺からは少しで済まそう。自由を楽しめ!こんな自由な校風で、大人たちに守られてる時期なんてもう先にないんだから!ーー羽丘学園生徒会会長、梶谷理央」

 

外ではカリスマ性にあふれ、勉学の面で言えば模試でトップテンから溢れたことがない。スポーツも万能でとにかくなんでもそつなく平均以上にこなす。内弁慶ならぬ外弁慶である。

しかし、そんな天才的な少年唯一の弱点がアレである。

 

むしろ弱点、というよりもアレが素の姿なのである。

 

「理央は学校だとすごいしっかりしてるのになー」

 

「家でしっかりしてないというよりはリサと二人の時ばっか腑抜けてるんだよ」

 

「なーんでアタシと二人だと気をぬくの?」

 

「んー、わからん。リサになら弱いとか見せてもいいて感じがなんとなくするからか?」

 

「んー、複雑な気分だなぁ」

 

リサは人に尽くすタイプであるが故に日々人のお世話をしている。献身的に周りの空気話読み、困ってる人には手を差し伸べる。その上ギャル系ファッションリーダー的側面や、圧倒的コミュニケーション能力を誇るのだ。

 

所謂外面だけ完璧な理央ではあるが、その外面を外せる時がリサと二人の時というだけ。

だがそれがリサとしては不満なのである。

 

「アタシにだってかっこいいとこ見せてよ」

 

何気なくボソリと呟かれたその一言は決して含みのある言葉ではなく、ただリサの本心だったのだろう。それも、本来ならば口にするつもりのなかった言葉。こんな歯の浮くようなセリフを学校の昼休みに教室で呟いて仕舞えば、ゴシップ好きにはたまらない。

 

やれ、「また夫婦がイチャイチャしてるぞ!」「リオリサコンビにはみんな注目するよねー」だの「彼女が甘えたがってるぞ!」「リサちーかわいい!」やらクラスメイトからは言われたい放題である。

 

リサは恥ずかしさから顔を赤くして俯いてしまったが、リオリサコンビのリオの方は動揺する様子もない。

それどころかーー

 

「リサは甘えたいのか?」

 

理央はリサに顔を近づける。それはもうキスできるくらいの距離に。

こんな天然系の少女漫画の男キャラみたいなセリフを吐くのだから現場は騒然とする。

「またリオが天然かましてリサねえ困らせてるぞ」「天然イケメンな会長に迫られるなんてリサちゃんうらやましいな」

 

「なっ!?ちょ、ちょっと理央」

 

「どした?」

 

「こんなとこでそういう話は、恥ずかしいよ」

 

「今週の土曜バイトのシフトなかったろ?デートしようリサ」

 

「恥ずかしいっていったよね!?」

 

「なんで?俺は別に恥ずかしくないよ。リサは俺とデートするのが嫌なの?」

 

「嫌じゃない、ケド」

 

リサは迫りくる理央に顔を真っ赤に染めながら、別に理央が嫌なわけじゃない、と弁明する。乙女な一面を持つリサが想い人である理央に迫られてうれしくないわけがないのだが、羞恥心というものは誰にだってあるものだろう。

 

「梶谷ー、ちょっと職員室来て」

 

「……はい」

 

そんな少女漫画のワンシーンのようなことを繰り広げていると、教師から呼び出しがかかった。

デート計画を邪魔された理央は顔を少ししかめると席を立つ瞬間にリサの耳元に口を寄せると「また後で」とつぶやいた。

案の定リサの顔はいまだに赤い。もはや頭がオーバーヒート寸前である。

 

さらに理央は追い打ちをかけるように、教室を出る間際、リサにふっと優しくしかしイケメンに微笑みかけた。

 

この一連の行動にクラスの女子はキャーキャーと盛り上がる。

男子たちは死ねイケメンと妬みを漏らす。

 

「ねえリサ、理央くんって家だとどうなの?家隣同士なんでしょ?」

 

「……意外とだらしないよ」

 

リサは理央の名誉を守るためにオブラートに包んでそう話した。

 

 

 

 

 

学校が終わり二人は一緒に帰宅する。二人は幼馴染で家も隣同士である。

加えて梶谷家は両親共働きで朝早くに出勤し夜遅くまで帰ってこないというありがちな設定である。

ゆえに理央は家に荷物を置くと、たいていはリサの家に突撃するのだ。さらに夕飯までごちいそうになるという始末。理央の食事は今井家なくして成り立たないといっていい。だって朝昼晩全部リサやその母に作ってもらっているから。

 

「リサー、耳掃除して」

 

「オッケー」

 

帰るや否やリサに甘える理央。この男、帰宅後は朝ほどダメ人間ではないが、学校ほどしっかりしているわけでもない。

 

「デート、リサどこ行きたい?あ、そこいい」

 

「うーん、夏物の服を見に行きたいかなー」

 

「りょーかい」

 

「ん、反対向いて」

 

この二人流れるように膝枕に移行、そのままデートの計画を立て始めた。

理央はダメ人間であることは間違いないが、リサはその理央の世話をすることを嫌っていないどころか、喜んで世話をしている節がある。普段から甘え、甘やかしを延々と十数年続けてきているのだ。

 

しかし、本日の理央は一味違う。

 

「はい、おしまい。あんま汚れてなかったよ」

 

「ありがとリサ」

 

「どーいたしまして☆」

 

「今度はリサが寝て」

 

央は体を起こすと自分の膝をポンポンと叩いてアピールをした。

 

「ええっ!?い、いや大丈夫!アタシは昨日やったから」

 

嘘である。自分の汚れているところを想い人に見せたくないという乙女心である。

 

「そう?じゃあ何かしてほしいことある?」

 

「ど、どうしたの急にそんなこと言いだして」

 

普段はリサが理央に何かしているばかりで、逆はほとんどない。

だから、急にリサのために理央が何かをしようとしていることが珍しく、リサは動揺しているのだ。

 

「リサ、甘えたいんだろ?」

 

「……あーなるほど」

 

そんな話もしていたなとリサは数時間前の学校での会話を思い起こした。

 

「とくにないから理央はなにもしなくてーー「リサは抱きしめられるのが好きよ理央君」ちょ、ママ!?」

 

「わかった」

 

リサの母が現れ、助言してくれたことを理央はすぐさま行動に移す。

理央は立ち上がるとソファに座ったままのリサを正面から抱きしめた。右手はリサの背中に回し、左手は頭を撫でる。

 

「り、りお」

 

「ん、いやか?」

 

「ううん、このままがいい」

 

「や、ちょっとこの体勢きつい」

 

「え、あ、ごめん!」

 

「だから、こうする」

 

理央はリサを股の間に挟むように座らせ、後ろから抱え込むように抱きしめた。所謂あすなろ抱きである。

 

「リサいい匂い」

 

「ちょっ、やめてよ!今日体育あったしっ!」

 

「リサ、髪サラサラ」

 

「まぁ、手入れは欠かしてないからねー」

 

「リサ、体細いのに柔らかい」

 

「あの、照れるんだけど」

 

外でも中でも関係なく、この二人はイチャコライチャコラし始めるのだ。

気がつけばリサの母もどこかへいってしまっている。

 

「リサ、いつもありがとう」

 

「それは言わない約束でしょ。アタシだって、理央に助けられてるところ、あるんだから。友希那とのこととか」

 

「リサ」

 

「んー?」

 

「大好き」

 

「……アタシも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想、評価、お気に入り登録待ってます。
また、推しキャラ、シチュエーション教えてくれれば書くかもです。

あと、毎日投稿はもうすでにいっぱいいっぱいなので期待しないでください

アンケートリセット。得票率高いバンドから優先してヒロイン書くよ!

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