それでは本編どうぞ
何も考えられなかった。海外に連れていかれる。バンドの練習は?アイツらの指導は?ロックとの日々は?どう考えてもマイナスな方にしか考えが行かない。だから何も考えたくなくて、ひたすらに走った。一心不乱に走っていたらいつの間にか俺は旭湯の前にいた。
蒼生「・・・なんでよりによってここに来ちまったかな。」
ここにいると自然と思い出してしまう。初めてロックのギターを聴き衝撃を受けた事。ギターの話をするようになり、こっちに来てから他愛のない話も沢山するようになった事。付き合ってからの日々、沢山甘えて甘えられて、他の何をするより幸せだった事。そしてそんな日々が唐突に終わりを告げようとしていることに再び心が打ちのめされそうになった。
蒼生「くっ・・・」
頬に生暖かい感触。一筋の涙がこぼれるのを感じる。
???「あ、あの・・・」
蒼生「え?」
聞きなれた声。振り向くとそこには俺の最愛の人が戸惑いながら俺の方を見ていた。
蒼生「ロック・・・」
六花「あ、蒼生さん?その、どうかしたんですか?」
心配そうに純粋で真っ直ぐな目が俺を見てくる。話すべきか、話さないべきか。ふたつの考えが俺を交差する。
六花「何か言いにくいことなんでしょうか?」
蒼生「そう、だな。めちゃくちゃ言い難い。」
六花「・・・無理にとは言いません。でも私、さっきは色々助けてもらいました!今度は私が助けたいです!」
蒼生「・・・わかった。少し待ってくれ」
ロックの真っ直ぐな目を見てたら隠す気が段々失せてきた。覚悟を決めて話そう。
蒼生「・・・父さんから、日本を出ろって言われた。」
六花「え?で、でもそれってよく言われてたんじゃ?」
蒼生「今回は違うんだ。命令なんだよ。」
六花「そ、それじゃあ・・・」
一気にロックの顔が暗くなっていく。
蒼生「それで俺がカチンときてもう父さんのバンドよりも演奏できるから海外になんて行かないって言ったんだ。そしたら年末のJBBFに出て優勝しろって。父さん達も出るってさ・・・」
六花「JBBF!?」
【JBBF】毎年年末に行われる日本屈指のライブイベント。出場はプロアマ問わないが毎年世界レベルのバトルが行われている。ただでさえレベルが高いのに父さん立ちまで出ると来た。正直状況は絶望的だろう。
六花「・・・蒼生さんは、諦めてしまうんですか?」
蒼生「諦めたくはないよ。でも、相手が強大すぎる。練習時間も圧倒的に足りない・・・CIRCLEやGalaxyを借りたとしても集まれる時間も無い。勝算が無さすぎる。」
六花「・・・」
チュチュ「なるほどね。」
六花・蒼生「「!?」」
急に後ろから声がして振り返るとパレオとチュチュがそこにいた。
パレオ「盗み聞きして申し訳ありません。緊急事態だったと思いましてお話を聞かせていただきました。」
チュチュ「JBBFねぇ。面白いじゃない。本戦に出場するのは貴方たちのバンドなら訳ないはずよ。」
蒼生「でも、優勝なんて」
チュチュ「練習時間が確保出来ればいいのかしら?」
蒼生「・・・え?」
六花「チュチュさん?」
チュチュ「貴方に私のスタジオを貸すわ。設備も申し分ないと思うわ。まあアタシ達が練習してない時に限りね。」
蒼生「なんで、そこまで?」
俺はチュチュがそこまでする理由がわからなかった。正直だいぶ困惑している。
チュチュ「貴方には大きな借りがあるわ。後、他のバンドにも相談してみなさい?貴方はあなたが見てきた全てのバンドに大きなものを貸してきたはずよ。必ず力なになってくれるはず。」
蒼生「でもそれで迷惑は・・・」
チュチュ「言ったでしょう。みんな借りがあるのよ。それに借りがなかったとしてそれを迷惑がるような連中かしら?少なくともアタシたちは違うわ。パレオもロックもそうよね?」
パレオ「もちろんですー♪」
六花「はい!」
蒼生「お前ら・・・」
少しずつ、希望の光が見えてきた気がする。もし、仮に全員が力を貸してくれたとして、市ヶ谷の家の倉でさらなる練習場所の確保、AfterglowとRoseliaに練習も見てもらい弦巻の力で平日の放課後でも集合できるだろう。パスパレも協力してくれれば大きなモチベアップになる。
チュチュ「そして、貴方のバンドメンバー。この勝負を断るほど薄情ではないでしょう?ならマイナスな考えは全て捨てなさい。あと、JBBFはガールズバンドパーティが終わってからしばらく期間があるわよね?時間がある時は私達もサポートさせてもらうわ。」
蒼生「・・・色々すまねえ。力を貸してくれ、お前ら。」
チュチュ「sure!」
パレオ「はい♪」
六花「一緒にがんばりましょう!」
そして俺はささやかな希望を胸に家に帰った。母さんだけは起きていてすごく心配されたが今日は休みなさいと言われて自室に入れられた。翌日、全バンドから力を貸してもらう許可を得るのはそう時間はかからなかった。
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