ボクの個性が発現した日のこと、君は覚えてるかな?
そう、ボクらが出会った日さ。
あの日、君は公園で泣いていたね。
泣いている君を見つけてしまってボクは最初、見て見ぬふりをして帰ろうかと思ったよ。
だって君とボクは赤の他人で、ボクは人見知りで、君が放つオーラは完璧な人避けを構築していたからね。
道理で、やけに公園が静かだなと思ったんだ。
偶然かもしれないけどね。
まぁそれは置いておいて、そんなボクが何故、君に話しかけるに至ったんだと思う?
うんうん、君の言うことは間違っていないと思うよ。
今度は今のボクが思ったことを言ってみるね。
その時、ボクは何故か、どうにかしなくちゃって思ったんだ。
そのどうにかする対象は…たぶん君だった。
もしかしたら、公園の方だったかもしれないけれど…うぅん、確かめようがないから進めるね。
とりあえず、君の涙を止めるために、まず原因を聞き出そうとしたわけだ。
そしたら君は、自分が無個性だったからだって答えた。
それを聞いて、ボクはなんとなくそれが原因じゃない気がして「無個性、だったから、どうしたの?」って聞いたら…
君はヒーローになれないって言った。
これだ!って思ったね。
だから、ボクは自分が知っていることの全てを使って、君を励まそうとしたんだ。
ふふふ…あぁいや、ごめんごめん。
だって可笑しくって。
あの時、ボクは肯定でも否定でもなくて、突然「体を鍛えたら、どう?」って言ったよね。
いくら他人との会話経験が皆無とは言え、「
あの時の君の顔は当然で、でもやっぱり可笑しいよ…ふふ。
こほん…ボクは君に発言の隙を与えずに、続けて「ヒーローは、みんな、そうしてるから」「お父さんも、お母さんも、個性はあったけど」「それでは戦えないから、それだけじゃ足りないから」って言った。
君は少しだけ顔を上げて、ヒーローになれるかなって聞いてきたよね。
ここでボクは少しだけ、考えた。
ヒーローってなんだろう。
考えるボクを見て、また顔が沈み始めた君にボクは、ハッキリと「なれるよ」って言った。
ボクは心の底からそう思った。
君は何故とも、どうしてとも言わずに、暫く呆けた後に初めて笑ったよね。
正直、言葉にするには難しかったから、聞かれなくてちょっぴり安堵した。
今考えてみれば、君はただ、なれるって誰かに言って欲しかっただけだったんだね。
君の笑顔を見て、ボクは、あぁ良かったなって。
突然、君が弾き飛ばされて。
気づいたら、木の枝に囲まれていて。
自分の髪の毛が緑色になって、枝分かれして、木の枝になっていて。
じゃあ、これは自分の個性?
あの子は大丈夫なの?
あの子を弾き飛ばしたのはボク?
どうやって止めるの?
どうして?
なんで?
止めて
誰か
助けて
バキッ
枝が折れる音でボクは目を覚ました。
君が必死の表情でボクに手を伸ばして、叫んでいて。
ボクは迷わず君の手を取った。
その時、ボクは心の底から安心したんだ。
そして、ボクは無意識に
あの日から特徴的な木が公園に一本増えたよね。
懐かしいなぁ。
そういえば、まだお礼を言ってなかった気がする。
あの後、すぐに寝ちゃって、気づいたらボクの家だったからね。
ありがとう、ボクを助けてくれて。
…え?言ってた?
まぁ、細かいことは良いんだよ。
あの日から、ボクのヒーローの定義は変わっていない。
君は今でも迷っているのかな?
悩んでいるのかな?
大丈夫、君はヒーローだよ。
だって、今の君はあの日よりずっと輝いているから。
君の憧れと同じ色をしているから。
個性「
感情に呼応して体色が変化するだけの個性。
補足:感情の度合と色の濃度は比例する。
なんの役にも立たない割に、他人に感情が悟られやすいだけの個性。
ド派手な色をした無個性。
そんな彼にも、
「個性が全てでは無い、先人がそう証明している」