インフィニット・ストラトス―Ins―   作:アメリカ兎

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休息

 

《……》

 そのデータを送信された№4、アリエス・ザ・ブラッドストーンは何も答えなかった。電脳空間に存在するAIはその喪失をデータとして処理する。№1カプリコル・ザ・オプシディアンは使命を果たし、№2アクリオス・ザ・ガーネットもまた先達として散った。残るは消息不明の№3と自分だけ。№5以降の完成はまだ先となる。

 残り三人。――果たして、自分だけで迎えることが出来るだろうか? その確率は計測できない。だが、アリエスは不思議とその不明の数値に敗北することはないと断言できた。

《やってみせるさ、№1。お前が示してくれたのだ、№2と共に》

 №3の不足は最早取るに足らない。その全てを自分が拭えばいいだけのことだ。

 

《…………》

 その姿を見送る一機のISがいた。しかし、アリエスは気づかないまま去っていく。

 

 

 

「どういうことか、説明してもらえますかね?」

 天鉢は千冬に詰め寄っていた。用件はただ一つ、自分達の装備に関する件だけだ。

「どうもこうも、言ったとおり。あちら側から装備の支給を断られた」

「……マジで?」

「『当社における装備の支給は社員に限らせてもらう』だそうだ」

「IS委員会に尻尾振った俺達はすっぱり切ったってことかよ、ふざけやがって」

「今から潰しに行くか?」

「やめんか、戦争する気かお前」

「この上なく強力な後ろ盾がある今がチャンスだと思うんだが」

「やめろよ!?」

 IS委員会、そしてIS学園。それを逆手にして企業の一つ二つ潰そうという叢夜を説得すること数分。舌打ちとともに諦めてくれた。

「六年近く命張って尽くしたってのに、冷たい会社だぜ……」

「そんなものだろ、傭兵事業なんて。死んだらそれまでだ」

「……現在、二人の要望に見合う装備を取り寄せられるかどうかは未定だ」

 千冬も頭を悩ませているらしい。しかし、素手で挑んだ叢夜の方を一瞥すると一枚の書類を取り出す。それはIS委員会が調べ上げた二人の経歴だ。

「まぁ、お二人の仕事ぶりを読ませてもらう限りでは最低限でもよろしいかと?」

「よろしくねぇよ」

「俺は構わん」

「もうお前黙っててくれ……俺はお前と違って丸腰で生き残れるほどタフじゃねぇんだから! 頼むから!」

「骨は拾ってやる」

「勝手に殺すな!」

 結局、もうしばらく装備の支給はないようだ。千冬との話し合いを終えた二人は新しく壊れた学園の敷地を見回ってメモを取るとカラーコーンを置いて立ち入り禁止の看板を立てておく。下手に怪我をされても困るからだ。

 肩を落として歩く天鉢と、黙々とペンを執る叢夜を見守る影。

『じー…………』

 ルナリア、セシリア、ラウラ、シャルロット、鈴音。いつの間にか二人ほど増えていた。一夏と箒は生徒会長に呼び出されて特訓中である。

 もっぱら五人が監視しているのは叢夜の方だ。丸腰でISを相手にして難なく生き延びている。あれだけの身体能力があれば苦労しないだろう。

「絶対怪しい……」

「そうですわね」

「教官程ではないが、あれだけの能力……何か裏がありそうだ」

「でもボクたち何してるんだろうね……」

『監視なう』

「なうじゃないよ、ルナリア……」

 撃破した無人機はIS学園へと搬送され、現在は解析中だ。終了時刻は明日となっている。専用機持ち各位は休息を摂るように指示されていた。

(只者じゃないのは鈴音から聞いてるし、証拠もあるし証言もあるし、絶対に何かあるはず)

 いや、いっそいざという時はこの手で……! ――そんな事を考えていたルナリアの肩をラウラが叩いた。

「ルナリア」

『なに?』

「後で私にもあの書籍を貸してくれないか。参考資料程度に目を通しておきたい」

 それに頷くと、視線を用務員二名に戻す。

「でも見てたところで何か分かるのかな」

「だったら、カマかけてみる?」

「どうするつもりですの」

「もちろん、こっちから襲ってみるのよ。怪我しない程度に」

(嫌な予感しかしない……)

 ルナリアの直感が危険だと告げているのでそれとなく鈴音を止めた。その直後に右手に違和感を感じたので一言断ってからその場を離れる。

「ルナリア、大丈夫かしら」

「まだ身体が万全ではないのではないか?」

「そりゃそうかもね。いくら天才科学者が治したといっても、ルナリアは私達と同じ。そう簡単に戦線に復帰できないわよ」

「問題なさそうでも、ボク達が頑張らないとね」

「そうですわね」

 目を離していた隙に叢夜がその場を離れていたので慌てて追いかけた。

 

 ――ルナリアは立ち入り禁止にされているアリーナへ入ると右手で通信に応じる。相手は束だ。

『上手く撃退できたみたいだね。一機逃しちゃったみたいだけど?』

『それは私じゃない』

『うーん、でも約束は約束。情報提供はちょっと無理かなー』

『それだけ?』

『うん、それだけ。じゃあねぇ』

 プツン、と一方的に通信を切られ、ルナリアは口をへの字に曲げてアリーナを後にする。

(残念賞な報告だけのために人目を避けるの面倒なんだけど……)

 言っても聞くはずがない。だが、右腕と右目の機能はISとの同調を高めるだけではない、その他諸々も搭載しているとは話半分に聞いていた。束博士のことだ、本当は面白半分に追加したに違いない。ルナリアは肩を落とす。

 頭を振って気を取り直した。ひとまず、目の前の脅威は去ったのだから。セシリア達が逃がしてしまった№4、アリエスに関しても対処方法が判明したことだ。しかし、まだ姿を見せない№3の襲撃がいつ来るとも分からない。

(焦っても仕方ないって、分かってるんだけど)

 悪い癖だ。もう少し肩の力を抜いていこう。

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